射水市役所で保健師として働く山崎さんと荒木さんのインタビュー記事です。看護師志望から保健師への道を選んだ経緯、専門性を深める射水市ならではの環境、子育てと両立できる働きやすさ、そして市民一人ひとりに寄り添う仕事のやりがいや難しさについて、それぞれの視点からお話していただきました。
ーまず、お二人のご経歴について教えていただけますか?
山崎:私は2016年度の新卒入庁で、現在9年になります。この間に育児休業を2回取得しました。配属先としては、母子保健を担当する「すこやか保健係」、子どもの発達相談を主に行う「子ども発達相談室」を経て、現在は成人保健などを担当する「健康増進係」に所属しており、3か所目になります。
荒木:私は2022年度の新卒入庁で、現在3年になります。入庁時から「子ども発達相談室」に所属しています。

ー看護師免許もお持ちだと思いますが、なぜ保健師の道を選ばれたのでしょうか?
山崎:元々は看護師志望で看護学校に入学しました。しかし、学生時代の地域看護学実習で市町村保健師の仕事を見学したときに、保健師の仕事に強く興味を持ちました。
病気になってから治療するのではなく、病気にならないために、地域の皆さんの健康づくりをお手伝いしたい、と思うようになりました。それで、保健師を目指すこととし、看護学校卒業後に保健師養成課程のある学科に編入して、プラス1年間、保健師になるための勉強や実習を重ね資格を取得しました。
ー荒木さんはいかがでしたか?
荒木:私は総合大学の看護科在学中に、看護師になるか迷った時期がありました。視野を広げたくて1年休学し、海外ボランティアに参加しました。直接的に医療に関わる活動はしていませんが、フィリピンの小学校でのボランティアなどを通して、衛生環境の改善などに関心を持ちました。また、同時に語学が堪能な人、国際協力の専門家など、様々な分野で活躍する人たちと出会う中で自分にできることを生かしたキャリアを築きたいとも思いました。
その経験から、人の健康や生活に関わる仕事がしたいと改めて気づき、地元の公衆衛生分野、つまり保健師の仕事に興味を持ちました。幸い、大学で保健師課程も履修できたので、卒業後、地元である射水市で保健師になろうと決めました。
ー無事入庁されて、現在はそれぞれ異なる部署でご活躍されていますが、射水市では保健師はどのような部署に配属される可能性があるのでしょうか?
山崎:私たちが所属している保健センターの他に、市役所の庁舎内にある国民健康保険加入者の健康づくりを担当する課や、こども福祉課など福祉関連の部署にも保健師がいます。

ー保健師の仕事内容は自治体によって特色があるかと思いますが、射水市ならではの特徴や、特に力を入れている分野などはありますか?
荒木:「子ども発達相談室」は、子ども子育て総合支援センター内にあり、同施設には「幼児ことばの教室」があります。幼児ことばの教室の保育士、子ども発達相談室に配属されている言語聴覚士と業務に取り組むほか、医師や作業療法士など本市の母子保健事業にご協力いただいている専門職の方とも密に連携を取りながら業務に当たっています。
専門職同士が顔の見える関係で、すぐに相談・連携できる体制が整っているのは、射水市の強みですね。

ー教育体制についてもお伺いしたいです。荒木さんは入庁後、どのように仕事を覚えていかれましたか?
荒木:入庁すると、まず係内で「教育担当」の先輩保健師が決まっており、日々の業務については都度教えてもらいました。例えば市民への相談対応の業務では、最初は先輩の対応を見学し、慣れてきたら同席してもらいながら自分で対応し、徐々に独り立ちしていく、という流れでした。
業務内容にもよりますが、半年から1年くらいかけて、一人で対応する機会が増えていったように思います。
また、高岡厚生センターや県が主催する新任保健師向けの研修会にも、教育担当の先輩と一緒に参加する機会がありました。
ーそうなんですね。
荒木:保健師は多職種と連携することもたくさんあります。保健師一人だけで完結する業務の方が少ないかもしれません。独り立ちした後も、難しいケースや判断に迷うことがあれば、いつでも先輩や上司に相談できる環境です。
ー質問や相談はしやすい雰囲気ですか?
荒木:はい、入庁当初は、むしろ先輩の方から「大丈夫?」「困ってることない?」と頻繁に声をかけてもらいました。電話対応で私が戸惑っていたら、すぐに隣の先輩が気づいて助けてくれるなど、本当に良くしてもらいました。
経験を重ねるうちに、自分から質問や相談ができるようになってきましたが、先輩方は皆さん優しいので、いつでも聞ける安心感がありました。
ー山崎さんも後輩に対しての対応は気を配ることが多いですか?
山崎:そうですね。後輩から相談を受けることもありますし、様子を見ていて何か困っていそうだなと感じたら、こちらから声をかけることもあります。保健師はある意味、人の様子を観察し、変化に気づくプロでもあると思うので、そのスキルは職場内の仲間同士でも自然と発揮されているのかもしれません。全体的に話しやすい雰囲気だと思います。
ー特に大変だったこと、難しいと感じることは何ですか?
荒木:対人援助の仕事には明確な「正解」がないことです。相談に来られる方の状況や背景、抱えている悩みは本当に様々です。その方にとって最善の支援は何か、どのように関わっていくべきか、ガイドライン通りにはいきません。事務手続きなどのマニュアルはありますが、一人ひとりに合わせた対応を考えるのは、難しくもあり、この仕事の奥深さでもあると感じています。
ときには、相談対応をした後に、先輩ならどう対応しますかと聞くこともありました。

ーケースの共有や相談は、日常的に行われているのですか?
山崎:困ったケースや難しい対応があった時は、その都度、事務所内で先輩や上司に相談し、みんなで知恵を出し合いながら対応方針を決めていくことが多いです。特に関わりが難しいケースや、多職種での検討が必要な場合は、「ケース会議」のような場を設けることもあります。
1つのケースに対して最善の支援策をみんなで考えることで、担当者だけでなく、参加者全員の学びになりますし、特に若手にとっては、先輩方の考え方や対応方法を学ぶ貴重な機会になります。
また、若手が抱えている困難を共有し、みんなでサポートすることで、より良い支援につなげていくという目的もあります。ですから、経験年数に関わらず、それぞれの立場から意見を出し合い、議論していくことが多いですね。
荒木:私の所属する子ども発達相談室では、毎月複数回、相談会を実施しており、年間延べ100件以上の相談に対応しています。日々の相談の中でアドバイザーの専門家(言語聴覚士や作業療法士など)に意見を聞いて、「こういう状況で、私はこう対応したのですが、どう思われますか?」といった形で、保健師同士で経験や意見を共有し合っています。
ーお仕事のやりがいについても教えてください。
荒木:本当に様々な背景や悩みを持った方と関わらせていただく中で、その方にしっかりと寄り添い、一緒に悩み、考えて、その方にとって一番良い選択ができるようお手伝いできるところに、この仕事の醍醐味を感じます。
現在の母子保健分野でも、様々な選択肢の中から、親御さんと一緒に一番良い道を探していくプロセスに、大きなやりがいを感じます。地域の中で、一番身近な相談相手として頼っていただけた時、誰かの力になれたと実感できた時は、本当に嬉しいですね。
山崎:私は今、成人保健の分野を担当しているので、がん検診、健康教室や相談会の開催、健診結果を受けての個別支援などが主な業務になります。長年の生活習慣を変えるのは、ご本人にとって非常に大変なことです。
ですから、一方的に指導するのではなく、ご本人の生活状況や思いに寄り添った改善方法を提案し、少しずつでも改善に向けて一緒に取り組んでいくことを大切にしています。その結果、健診の数値が改善したり、ご本人が「頑張って良かった」と喜んでくださったりした時は、私も自分のことのように嬉しく、大きなやりがいを感じます。
ー働き方についてもお聞きします。
山崎:私は、2度の育休復帰後は、「部分休業」制度を利用して、夕方の勤務時間を1時間短縮して働いていました。他にも育休復帰をした職員の多くが部分休業を利用していると思います。
復帰前に上司と相談して、自分の状況に合った働き方を選ぶことができますし、子育てしながら働くことへの理解があると感じています。
また、この4月からは「休憩時間変更」制度を利用する予定です。これは、お昼の休憩時間を通常1時間のところ45分に短縮し、その短縮した15分を終業時刻に充てることで、少し早く退勤できる制度です。
勤務時間自体はフルタイムと同じ扱いになるので、給与への影響はありません。子どもが少し大きくなってきたことと、仕事にもより力を入れていきたいという思いから、この制度を利用することにしました。
ー働き方の変化で仕事に影響はありましたか?
山崎:時短勤務中は業務量を配慮してもらいました。限られた時間で効率的に仕事を進めることを常に意識するようになりましたし、周りのサポートもあって助かっています。
ー職場の雰囲気についてはいかがですか?
山崎:仕事の話はもちろんですが、仕事に関係ない雑談もしやすい雰囲気だと思います。女性が多い職場なので、子育ての話や、夕飯の献立の話、あとは若い子も先輩も、みんなで好きなアイドルやドラマの話で盛り上がったり(笑)。もちろん、仕事中は集中して業務に取り組んでいますが、休憩時間は和気あいあいと楽しくコミュニケーションをとっていますよ。
ー本日はありがとうございました。
取材・文:パブリックコネクト編集部(2025️年3月取材)