射水市役所で保育士として勤務する山本さん(平成30年度入庁)と西尾さん(令和6年度入庁)に、射水市で働くことについてお話を伺いました。お二人が射水市を選んだ理由、日々の業務内容、新人時代の経験、そして実習とは違う実際の保育現場で感じるやりがいについて語っていただきました。射水市ならではの保育環境や、若手職員へのサポート体制についても触れています。
― まず、お二人のこれまでの経歴と、保育士を目指したきっかけを教えてください。
山本: 私は富山市出身です。小さい頃から子どもが好きで、周りに小さい子が多かったこともあり、自然と保育士になりたいと思うようになりました。高校生の頃には保育士になろうと決めていました。
保育士資格と幼稚園教諭免許が取得できる4年制大学に進学し、卒業後すぐに射水市役所に採用され、今年の4月で8年目になります。

― 就職先として射水市を選んだのはなぜですか?
山本: 出身の富山市も考えましたが、市域が広いため、異動によっては通勤時間が長くなる可能性がありました。射水市は比較的コンパクトで、どの園になっても通勤しやすいと感じたのが理由の一つです。
また、学生時代に友人と射水市の保育園を見学したり、個人的に訪れたりする中で「ここで働きたい」という気持ちが強くなりました。最初に内定が出たのが射水市だったこともあり、ここで頑張ろうと決めました。
西尾: 私は射水市出身です。自分が通っていた保育園の先生がとても素敵な方で、その先生への憧れから「先生みたいになりたいな」とずっと思っていました。それが保育士を目指したきっかけです。
私も山本先生と同じように大学で資格を取得し、卒業後、射水市役所の保育士になりました。4月で2年目になります。(※取材は1年目の終わり頃に実施)
― 西尾さんは、採用試験について覚えていますか?
西尾: はい。一次試験が筆記、二次試験が面接でした。筆記試験は、保育に関する専門知識と、公務員としての一般教養の問題でした。本格的に勉強を始めたのが試験の3ヶ月前くらいだったので、もう少し早くから準備しておけば良かったと思いましたが、なんとか合格できて安心しました。
※現在の筆記試験は専門試験なし
二次試験の個人面接は、私一人に対して面接官が4〜5人いらっしゃいました。市長や副市長もいらっしゃったので、最初はとても緊張しました。ただ、面接官の方が少し雑談も交えながら進めてくださったので、徐々に緊張がほぐれ、落ち着いて話すことができたと思います。

― 実際に入庁されてからの業務内容を教えてください。
西尾: 池多保育園という比較的小規模な園に配属されました。1年目は、3歳、4歳、5歳児の縦割りクラス(16人程度)を、経験豊富な先輩の先生と二人で担任しました。
― 二人担任制での役割はどのように分担していましたか?
西尾: 立場としては二人とも担任ですが、1年目の私は主にサブ的な役割を担っていました。例えば、朝の会で前に立って話を進めたり、クラス全体の活動をリードしたりするのは、主にペアの先生が担当していました。私はその様子を見て、日々の保育の流れや子どもへの関わり方を学んでいく形です。
ただ、運動会や発表会など、年齢ごとに発表を行う行事の際には、「西尾先生は4歳児の担当」というように、一部の主担当を任せてもらうこともありました。
― どのように仕事を覚えていきましたか? 最初は戸惑うこともありましたか?
西尾: 最初は、子どもたちが怪我なく安全に一日を過ごし、無事に家に帰れるようにすること、そして自分自身も体調を崩さずに一日を終えること、それだけで精一杯でした。
4月からクラスに入っていましたが、しばらくはペアの先生からの指示を受けながら動いていました。自分で状況を見て判断し、動けるようになってきたと感じたのは、夏を過ぎた頃だったと思います。
ただ、保育の仕事は季節ごとに新しい行事や活動(夏は水遊び、秋は遠足など)があります。その都度、新しい流れや準備に慣れる必要があり、一年を通して学ぶことの連続でした。子どもたちの前に立って話すことにも最初は緊張しましたが、それも夏頃には少しずつ慣れてきました。

― 不安な時や分からないことがあった時は、どうしていましたか?
西尾: 周囲の先生方にたくさん助けていただきました。どの先生に質問しても、皆さん丁寧に教えてくださるので、とても心強かったです。休憩中に少し時間をもらって質問したり、月に2回ある職員会議の場で相談させてもらったりしました。分からないことを一人で抱え込まなくていい環境だったと思います。
― 山本さんは7年間で3つの園を経験されたそうですが、射水市の保育園にはどのような特徴がありますか?
山本: 私が経験した園だけでも、それぞれ特色が異なります。
最初に配属された池多保育園は、西尾先生も経験したように小規模でアットホームな雰囲気でした。園庭が広く、園でリンゴを育てて収穫するなど、自然に触れる機会も多かったです。
次に異動した大門きらら保育園は、園児数が250人近くいる大規模園です。クラスの人数も多く、同じ学年の子が大勢いるため、活動に活気がありました。誕生会なども多くの友達に祝ってもらえるなど、大規模園ならではの良さがありました。
現在在籍している放生津保育園は、また小規模な園ですが、地域行事への参加が活発です。例えば、地域の祭りを「まっつん」と呼んで親しみ、祭りの際には園にも獅子舞がやってきて園児たちは大盛り上がりです。その後、園児たちは獅子舞の真似をして遊ぶなど、地域との繋がりを感じる機会が多い園です。
― 射水市として、保育の方針は統一されていますか? それとも園ごとに異なりますか?
山本: 市としての大きな保育目標はありますが、具体的な行事の内容や日々の保育の進め方は、各園の裁量に任されている部分が大きいと感じます。その年の子どもたちの様子や、担任の先生の考え方などによって、柔軟に計画を立てています。
また、射水市では職員の異動があるので、先生が変われば保育の進め方にも変化があります。「今年はこういう方針でやってみよう」といった話し合いは、日常的に行われています。
― 異動があることについては、どのように感じていますか?
山本: 毎年4月の年度替わりは、自分が異動するしないに関わらず、環境の変化に対応するため少し慌ただしくなります。異動の内示が年度末近くに出るため、引き継ぎの時間が限られるという側面もあります。
しかし、様々な園で経験を積めることは、自分の保育の知識や技術の幅を広げる上でメリットだと感じています。多様な環境で、異なる個性を持つ子どもたちや、様々な考えを持つ先生方と出会うことができます。経験年数に関わらず、他の先生の意見から学ぶことも多いです。
いろいろな経験を通して自分自身が成長できますし、子どもたちにとっても、多様な考えを持つ先生と関わる機会があることは良いことかもしれません。
― お二人の話から、先生同士で「一緒に考える」という姿勢が共通しているように感じます。
山本: そうですね。保育はチームで行うものです。保育士間での経験年数の違いはあっても、子どもたちにとっては皆「先生」です。その子にとってより良い関わり方や環境について、立場に関係なく皆で一緒に考えることが大切だと思っています。
西尾: 私もそう思います。例えば、子どもへの関わり方で悩んだ時も、先輩方は一方的に答えを示すのではなく、「どうしたらいいかな」と一緒に考えてくださいました。
― 仕事のやりがいや面白いと感じる瞬間はどんな時ですか?
山本: 子どもたちの成長を日々見られることです。昨日できなかったことができるようになったり、少しずつ難しいことに挑戦したりする姿を見ると、嬉しい気持ちになります。
運動会や発表会などの行事は、準備に時間もかかりますが、子どもたちが練習の成果を発揮している姿を見ると、「一緒に頑張って良かった」と感じ、達成感があります。
西尾: 私は働く前の実習生としての短い期間でも、子どもたちの「できた!」という瞬間や成長を見て、「保育は楽しい」と感じていました。
実際に保育士として1年間、同じ子どもたちと毎日過ごしてみると、実習の時以上に、子どもたちの成長の大きさや変化に気づくことができました。春にはできなかったことが、一年を通してたくさんできるようになっている。
「こんなこともできるようになったんだな」と思うと、感慨深いものがあります。例えば、お箸を使えるようになったり、苦手な食べ物に挑戦しようとしたりする姿など、日々の小さな成長を見守れることにやりがいを感じます。

― 学生時代の「実習」と、実際に「働く」ことの違いについて、どう感じていますか?
西尾: 実習は、記録物の作成も多く、短い期間で子どもたちとの関係を作り、活動を計画・実践することが大変でした。でも、その大変な実習を経験したからこそ、「子どもと関わる仕事がしたい」という気持ちが強くなった面もあります。実習を経験することは大切だと思います。
ただ、実習が大変で「保育士に向いていないかも」と感じる人もいるかもしれません。私の経験から言えるのは、実際に現場で働いてみた方が、実習とは違う責任はありますが、楽しさややりがいを感じる場面が多かったということです。
山本: 西尾先生の言うことはよく分かります。私も実習は大変だった記憶があります。慣れない環境で緊張しましたし、実習が理由で保育士を諦めた友人もいました。
実際に保育士として働くと、実習とは違う責任の重さがありますが、それ以上に、子どもたちや保護者の方、同僚の先生たちと時間をかけて信頼関係を築いていくことができます。これは数週間の実習では得難い経験です。
もし、子どもが好きで保育士を目指しているけれど、実習で迷いを感じている方がいるなら、実習の大変さだけで判断しないでほしいと思います。実際に働いてみると、この仕事の良さを感じられるはずです。
― 本日はありがとうございました。
(取材・文:パブリックコネクト編集部 2025年3月取材)