島根県隠岐の島町役場で働く田中さんのインタビュー記事です。高校進学を機に島を離れ松江の工業高校で土木を学んだ後、「地元に帰りたい」という強い思いでUターンし、土木技師として入庁しました。
農林水産課での豪雨災害対応や、現場に飛び出す毎日のリアル、そして隠岐の島町ならではの「相撲」や「祭り」を通じた温かい地域交流など、若手職員が感じるやりがいと充実したワークライフバランスについて語っていただきました。
- 「地元に帰りたい」松江の工業高校から隠岐の島町役場へのUターン
- 想像以上の現場作業!豪雨災害から始まった農林水産課での日々
- 年上の業者さんとも二人三脚。風通しの良い職場
- 都会より「静かな島」が好き。古典相撲や祭りで深まる地域の絆
- 休みも取りやすく、残業も適度。困っている人を助ける公務員のやりがい
「地元に帰りたい」松江の工業高校から隠岐の島町役場へのUターン
ーまずは簡単な自己紹介と、隠岐の島町役場に入庁した経緯を教えてください。
田中:中学校までは隠岐の島町で過ごし、高校進学のタイミングで島を出て、松江市にある工業高校へ進学しました。高校を卒業後、そのままUターンという形で隠岐の島町役場に令和4年度に入庁しました。
就職の一番の理由は、やはり「地元に帰りたい」という思いが強かったからです。全国的にもそうですが、隠岐の島町でも土木技師の人数が少ないという現状を知っていたので、「それなら自分が土木技師として地元で役に立てるのではないか」と考え、公務員試験を受験することを決めました。

想像以上の現場作業!豪雨災害から始まった農林水産課での日々
ー無事に入庁され、最初の配属先は農林水産課だったのですね。1年目はどのようなお仕事からスタートしたのですか?
田中: 私が入庁した前の年に、隠岐の島町では大雨による大きな豪雨災害がありました。そのため、入庁してすぐは災害復旧の対応から始まりました。
農林水産課では、農道や林道、ため池、漁港など様々な施設の管理を行っています。災害で壊れた道を直したり、工事を発注したりといった手続きがたくさんあるのですが、1年目は自分でメインの担当を持つのではなく、同じ課の先輩についていき、現場を見ながら補助的な業務をやらせてもらっていました。約1年間、先輩と一緒に行動しながら仕事の流れを一つひとつ教わりました。
ー現在は異なる仕事なのですか。
田中:同じ部署ですが、現在は農業系の施設の担当をしています。係は4人在籍しており、それぞれが農業、林業、水産業などの施設を分担して管理しています。具体的な業務としては、施設の維持管理や、国からの補助金を活用した改修工事、新しい施設の建設などに関わっています。
ー入庁してギャップはありましたか?
田中: それはすごくありました。入庁前は「公務員=デスクワークばかり」というイメージを持っていたのですが、実際に入ってみると、倒木の処理や道路の側溝の詰まりなど、ちょっとしたトラブルには自分たちで直接現場に出向いて直接作業することが非常に多かったんです。
非常に驚きましたし、雨や風、雪が降るなど天候が悪い時期は、施設に影響が出やすいため、ほぼ毎日のように現場に呼ばれて対応に追われることもあります。大変ではありますが、ずっとデスクワークばかりしているよりは、たまには外に出て体を動かして作業をする方が気分転換にもなりますし、私自身は今の働き方が結構好きですね。

年上の業者さんとも二人三脚。風通しの良い職場
ー土木技師として現場に出る中で、地元の建設業者さんなどと関わる機会も多いと思います。どのような関係性でお仕事をされているのでしょうか?
田中: 業者の方々は私よりも年上の方ばかりですが、非常に良い関係を築けていると思います。もちろんこちらから工事をお願いする発注者の立場ではあるのですが、厳格な上下関係というよりは、「一緒に協力して事業を進めていく」という感覚に近いです。
私自身、まだまだ知識や経験が不足している部分が多いので、現場を知り尽くしたベテランの業者さんからアドバイスをいただき、教えてもらいながら進めることもよくあります。島という環境柄、長い付き合いの業者さんも多く、気さくにコミュニケーションが取れるので楽しく仕事ができています。
ー職場の雰囲気についてはいかがですか?
田中: 農林水産課の先輩方は本当にフレンドリーで、面白い方がたくさんいます。高校を卒業してすぐの社会人1年目だったので、最初は右も左も分からず緊張していましたが、先輩方の方から積極的に話しかけてくれたり、色々な場に誘っていただいたりしたおかげで、すぐに馴染むことができました。

都会より「静かな島」が好き。古典相撲や祭りで深まる地域の絆
ー高校時代は松江市で過ごされましたが、都会での生活と隠岐の島町での生活を比べて、どう感じていますか?
田中: 松江市の方がお店も多くて便利かもしれませんが、私自身があまり都会でアクティブに遊び回るタイプではないんです。どちらかというと静かな環境が好きなので、隠岐の島町の落ち着いた空気感が自分には合っていると感じます。 そして何より、隠岐の島町には「地域の人たちとの横の繋がり」が深く根付いているところが一番の魅力だと思います。

ー「地域の横の繋がり」を感じるようなエピソードはありますか?
田中: 隠岐の島町では「相撲」がとても盛んなんです。「古典相撲」という伝統的な行事もあり、役場の中にも相撲をやっている職員がたくさんいます。私も小さい頃から相撲をやっていて、今も小中学生の相撲クラブの練習に教えに行ったり、逆に教えてもらったりしながら参加しています。
そうした相撲の繋がりで集まって飲み会を開いたりすることもあり、地域を超えた幅広い交流の場になっています。

また、最近引っ越した別の地区では、近くの神社のお祭りの準備を手伝ったり、神輿や風流(ふりゅう)といった伝統的な行事に参加したりしています。地域のみんなで協力して一つの行事を作り上げていく一体感は、この島ならではの素晴らしい文化だと実感しています。

休みも取りやすく、残業も適度。困っている人を助ける公務員のやりがい
ーお休みや残業など、ワークライフバランスについてはどう感じていますか?
田中: ワークライフバランスについては、非常に満足しています。有給休暇も自分の予定に合わせてしっかりと取得できますし、プライベートの時間も十分に確保できています。 残業については、全くないわけではありません。災害対応や年度末などの忙しい時期には残業することもありますが、それは一時的なものです。普段の業務ではそこまで遅くなることはなく、無理なく働き続けられる環境が整っていると思います。
ー土木の専門職として隠岐の島町役場で働く中で、一番のやりがいは何ですか?
田中: 私が担当する施設は、山の中にあるため池など、一般の方の目に触れにくい場所にあることも多いです。そうした難易度の高い現場の工事が無事に終わり、危険が解消された時は、「ホッとしたな」という安堵感が大きいです。
ただ、それ以上にやりがいを感じるのは、地域の方々が困っていることを直接聞いて、それを自分たちの手で解消してあげられた時です。地域の皆さんの安全な生活を守る手助けができるのは、公務員の土木職ならではの大きなやりがいだと感じています。

ー本日はありがとうございました。
取材・文:パブリックコネクト編集部(2026年3月取材)
高校卒業後、「地元に帰りたい」という真っ直ぐな思いで松江からUターンし、隠岐の島町役場に入庁した田中さん。伸び伸びと働きながら、相撲や神社のお祭りなど、島ならではの伝統行事を通じて地域コミュニティに深く根を下ろしている姿も非常に印象的でした。



