島根県隠岐の島町役場財政課で働く林さんと濵中さんのインタビュー記事です。お二人は島内の高校を卒業後、島外の大学へ進学し、新卒として故郷の役場へとUターン入庁しました。今回は「採用試験」をテーマに、筆記試験の戦略や緊張感あふれる面接の裏側、入庁後に分かる職場のリアルな魅力を詳しく語っていただきました。
故郷へのUターンを決意した経緯とそれぞれの就職活動
ー自己紹介をお願いします。
林:入庁4年目の林です。島内の高校から本土の大学へ進学し、新卒で隠岐の島町役場に入庁しました。以来4年間、ずっと財政課で業務を行っています。
濵中:入庁2年目の濵中です。私も島内の高校から本土の大学へ進学し新卒で入庁しました。同じく財政課に所属しています。
ーお二人は大学卒業後、すぐに地元に戻って役場で働こうと考えられていたのですか。
濵中:私は地元に帰る気持ちが強かったので、民間企業は考えず隠岐の島町役場一本に絞って就職活動をしていました。
林:私は地元のために働きたいと思いつつ、一度民間企業を経験するかで迷っていました。そのため試験準備と並行し、大学3年時は地域おこし系の民間企業で長期インターンをしていました。街おこしの会社で、有給できちんとお金をもらいながら、市役所などの自治体と連携し、地域で特産品を作るために地元のおばあちゃんたちと一緒に活動したり、里山をうまく利活用するためのアイデアを出して実際にプロジェクトを動かしたりという仕事をしていました。
ー民間企業でのインターン経験は、最終的な決断にどう影響したのでしょうか。
林:インターン終了時に「このままうちの会社に新卒として残って働かないか」と声をかけてくれたのです 。すごく悩みましたし、ありがたいお話だなと思ったのですが、最終的に天秤にかけた結果、やっぱりすぐにでも地元に戻って、自分の目で今の隠岐の島町を見て、役場の内部という中からの景色を経験する方が今の自分にとって大切なんじゃないかと思い、Uターンして役場を受験することを選びました 。

短期集中で臨んだ筆記試験の戦略と具体的な対策法
ーまず筆記試験(教養試験)について、濵中さんはいつ頃から、どのような勉強をされていたのですか。
濵中:私は試験の1、2か月前という直前から、市販の参考書や過去問題集を買い集めて勉強を始めました。大学の対策講座などは利用しませんでした。
ーわずか1〜2か月の勉強期間で合格点を取るというのは容易ではないと思いますが、何か要因があったのでしょうか。
濵中:高校までの受験勉強の「貯金」で教養科目の知識が使えたことと、法学部出身というアドバンテージはあったかもしれません。何より、短期間の中で「どの科目を捨て、どの科目を完璧にするか」という戦略を徹底したことが大きかったです。
ー具体的には、どの科目をどのように重点的に対策されたのですか。
濵中:配点比率の高い「数的処理」と「判断推理」の数学的分野を徹底的にやり込み、確実に解けるようにしました。逆に日本史や世界史などの暗記分野は深追いせず、過去問題集の範囲だけを頭に入れていました。
ー林さんは筆記試験に向けて、どのような対策を行っていましたか。
林:私は大学の公務員試験対策の講座を3年生の夏前から受講していました。ただレベルが高かったため、すべての授業を完璧に理解しようとせず、自分の志望先に必要な部分だけを「つまみ食い」する感覚で活用しました。

張り詰めた面接試験の空気感と明暗を分けた「素直な言葉」
ー二次試験の面接ですが、どのような準備をして臨まれましたか。
濵中:役場一本だったのでプレッシャーは大きかったです。想定質問リストを大量に洗い出し、志望動機や自己PRなどの回答をすべてノートに書き出して台本を作り込んで本番に臨みました。
ー実際の面接試験の様子や雰囲気はどうでしたか。
濵中:面接官が4〜5人ほどずらりと並び、独特の張り詰めた雰囲気でした。プレッシャーに弱かった私は緊張してしまい、用意していた台本が頭の中から真っ白に飛んでしまいました。
ただ、台本通りに喋ることは諦め、その場で本音を素直に伝えるしかないと開き直りました。例えば「関西の大学に進学したのに、なぜ隠岐の島町に戻って就職しようと思ったの?」と聞かれた際、「都会の生活が合わず、地元の静かな環境が良いと思ったからです」と本音をストレートにぶつけました。
ーその素直な本音が、面接官の心に響いたのですね。
濵中:面接官が求めていたのは綺麗な志望動機ではなく、その人の人間性や「本当にこの町で働いてくれるか」という本気度だったのだと思います。面接では格好いい言葉を用意するよりも、飾らずに本音を話す意識を持ったほうが良いのかもしれないですね。
ー林さんの面接試験はいかがでしたか。
林:私は民間企業の面接や県の試験を経験していたため場慣れしており、そこまで緊張しませんでした。ただ、本番は想像以上にキッチリとした雰囲気で、役場の面接独特の張り詰めた空気感を強く肌で感じました。

「町民憲章」の質問から学ぶ、一歩踏み込んだ自治体研究の重要性
ー林さんが「もっとやっておけば良かった」と感じる自治体研究のポイントはありますか。
林:私は「総合振興計画」などの行政文書を事前に読み込んで臨んだのですが、試験の中で隠岐の島町が定めている「町民憲章」の標語について質問されたのです。全く把握しておらず答えることができず、非常に焦りました。
華やかな施策や行政計画ばかりに目を奪われがちですが、根底にある「町民憲章」のような基本的な標語が盲点になりやすいなと気づきましたね。ホームページにある基本的な標語にも目を通しておくことをおすすめします。
1年目から町の根幹を支えるやりがいと、入庁後に驚いた「職場のフラットさ」
ー現在所属されている「財政課」での仕事内容について教えてください。
林:浅はかながら私は財政係で、町全体の予算を編成するための事務手続きや支出内容の精査を行っています。また、町が国などからお金を借りる借金に関する「地方債」の手続きや管理も担当しています。
ー若手のうちから、非常に責任の重い部署を任されているのですね。
濵中:入庁 1年目の最初から、町全体の予算や地方債という重要なお金を扱う部署に配属され、がっつり仕事を任されたことには本当に驚きました。責任を感じつつも、若いうちから経験を積ませて一人前に育てようという役場側の強い目的を感じています。
林:ただ、財政課は庁舎内の全部署との接点が多い一方で、一般の町民の方と直接窓口で関わる機会がほとんどありません。裏方として町を支える仕事もたくさんあるという多様性を知っておくと、入庁後のミスマッチがなくなると思います。
ー他部署との関係性や職場の雰囲気はどうでしょう。
林:他部署の予算を精査する立場ですし、大先輩の方々と直接予算交渉をするため、怖い職場なのだろうと最初は身構えていました。しかし、良い意味で大きく覆りました。仕事中は真剣ですが、相談が始まると町長や課長たちも驚くほどフランクに接してくださいます。カ
チッとした試験を突破した先には、部署の垣根を超えて誰もが温かく若手を支えてくれる素晴らしい職場が待っていますので、ぜひ自信を持って挑戦してほしいと思います。
ー本日はありがとうございました。
取材・文:パブリックコネクト編集部(2026年5月取材)
今回のインタビューでは、隠岐の島町役場を目指す受験生に向けて採用試験対策の体験談をお伺いしました。難関試験を乗り越えた先には、1年目から責任ある仕事を任され、町長や課長ともフランクに話せる温かい職場が待っています。皆さんの挑戦を応援しています。



