子どもたちの元気な声が響く、伊勢崎市境いよく保育所。
ここで4歳児クラスの担任を務めるのは、入庁9年目となるMさんです。
「公立保育所」と聞くと、安定している一方で、異動があったり、ルールが厳格だったりするイメージを持つ方もいるかもしれません。実際に現場で働く保育士たちは、その環境をどのように捉え、日々の保育に向き合っているのでしょうか。
今回は、大学卒業後から伊勢崎市の公立保育所でキャリアを積み重ねてきたMさんにインタビュー。日々の業務の流れから、公立ならではの「異動」の捉え方、そして子どもたちや保護者とのコミュニケーションで大切にしていることまで、たっぷりとお話を伺いました。
- 子どもの「やりたい」と保育士の「ねらい」を紡ぐ、毎日の保育
- 「記憶に残る楽しさ」を作りたい。子どもたちの笑顔が原動力
- 異動は「転職」に近い?公立保育所ならではのキャリアと環境
- 「苦手」では終わらない。保育士としての成長
- 共に働く未来の仲間へ
子どもの「やりたい」と保育士の「ねらい」を紡ぐ、毎日の保育
ーまずは、Mさんの現在のお仕事内容と、1日の大まかな流れについて教えていただけますか?
Mさん:現在は、境いよく保育所で4歳児クラスの担任をしています。
1日の流れとしては、まず朝の受け入れがあり子どもの体調確認をします。それから朝の会を行い、各クラスでの日中の活動に入ります。その後、給食、お昼寝(午睡)、おやつと続き、帰りの会をしてお迎えを待つ、というのが基本的なリズムですね。
勤務時間については、早朝保育(7時から)と延長保育(19時まで)があるので、職員は早番・遅番などのシフト制で動いています。全部で5パターンほどの当番があり、シフトが少しずつズレていく形で、特定の方に負担が偏らないようにローテーションしています。

ー早番から遅番まで、柔軟に対応されているんですね。現在は4歳児クラスをご担当とのことですが、年中さんくらいの年齢は、どういった年頃なのでしょうか?
Mさん:そうですね。4歳児クラスは、年長さんになる前の段階で、いろいろなことが分かり始める時期です。
言葉でのコミュニケーションも活発になりますし、子どもなりの主張も増えてくるので、保育士としてもとても面白い反面、個々としっかり向き合う必要がありますね。
ー日中の活動内容は、どのように決めているのでしょうか?
Mさん:基本的には担任が作成する「週案」に基づいています。月曜日から金曜日まで、「この日は何をしようか」という計画を立て、「指導案」としてまとめます。
例えば、天気が良さそうなら「この日は園外保育でお散歩に行こう」「園庭で外遊びをしよう」と決めたり、月の制作物がある場合は「いつまでに終わらせるか」を逆算してスケジュールを組んだりします。もちろん、計画通りにいかないことも多々あります(笑)
天候の急変や、当日のお休みの子の状況、何より子どもたち自身の「これがやりたい!」「これはやりたくない」といった反応もあるので、その場の状況に合わせて柔軟に変更していくことも、保育士の大切なスキルだと感じています。

ー臨機応変さが求められるお仕事ですね。保育以外に、やはり事務作業もあるのでしょうか?
Mさん:正直なところ、事務作業は思っていたよりも多いですね。
代表的な事務としては、毎日の保育活動を記録する日誌や、月ごとの目標を立てる月案、一人ひとりの成長を記録する児童票などがあります。特に乳児クラスを担当する場合は、連絡帳の記入もあり、成長の変化が著しい分、記録の頻度も高くなります。
最近は保護者の方と情報を共有するアプリが導入されて、お便りの配信などが電子化され便利になりましたが、クラス便りなど担任が作成するものはまだ手作業の部分もあります。
事務作業の時間は、延長保育担当以外の日で事務時間を活用したり、担任を持たない補助の先生が保育に入ってくれている間に時間を確保したりして、効率よく進められるよう工夫しています。

「記憶に残る楽しさ」を作りたい。 子どもたちの笑顔が原動力
ーこれまでの保育士経験の中で、特に印象に残っているエピソードや、やりがいを感じた瞬間があれば教えてください。
Mさん:以前、子どもたちとスライム作りをしたところ、予想以上に大ヒットしました(笑)
私は、ちょっと変わったものや凝った制作に挑戦するのが好きで、それは保育士である私自身が楽しむことで、そのワクワク感がきっと子どもたちにも伝わると考えているからです。
ースライム作りは、子どもたちが喜びそうですね!
Mさん:そうなんです。準備は少し大変なんですが、子どもたちが目を輝かせて「楽しい!」と言ってくれて、その後も毎日のように遊んでくれました。
何より嬉しかったのは、子どもたちの記憶力の凄さです。1年、2年経っても「あの時のスライム、楽しかったよね」と覚えてくれているんです。たった1回の活動でも、本当に心が動いた体験というのは、子どもたちの心に深く残るんだなと実感しました。
「またやりたいから、お家でも買ってって言ったよ」なんて話を聞くと、やってよかったなと心から思いますし、そうした子どもたちの反応が一番のやりがいですね。

異動は「転職」に近い? 公立保育所ならではのキャリアと環境
ー公立園で働くなかで、民間園との違いや「公立ならでは」の特徴を感じることはありますか?
Mさん:大きな特徴は、やはり「異動」があることですね。
伊勢崎市には公立保育所が5園あり、定期的に異動があります。最初は「慣れた環境から離れるのは嫌だな、異動したくないな」と思っていたのですが、実際に異動を経験してみると、考えが大きく変わりました。
ーどのように変わったのでしょうか?
Mさん:同じ伊勢崎市内でも、地域によって保護者の層や子どもたちの雰囲気が違い、それぞれの園に特徴があります。異動することで、まるで違う職場に来たかのような新しい発見があり、自分の保育スキルや対応力の幅を広げることができます。
今では、異動は自分のスキルアップのための絶好の機会だとポジティブに捉えています。5園が集まって会議や研修を行う機会もあるので、公立保育所全体で情報を共有し、市全体で子どもたちの育ちを支えていけるのも強みだと思います。
ー職場環境としてはいかがですか?
Mさん:これも公立園の特徴かもしれませんが、年齢層が幅広いですね。新卒の若い職員から、私のような中堅、そして大ベテランの先輩まで、バランスよく在籍しています。
安定的に長く働き続ける方が多いので、経験豊富な先輩から学べる機会が多いのも魅力です。もちろん、若い職員が意見を言いづらいということもなく、職員会議などでは上の方が率先して全員が発言しやすい雰囲気を作ってくれています。
ーお休みの取りやすさなど、働きやすさについてはいかがですか?
Mさん:とても働きやすい環境だと感じています。
担任を持たない補助の先生や、一時保育担当の先生がいるので、お互いにカバーし合いながら休暇を取ることができています。もちろん、行事の前など忙しい時期はありますが、事前に相談すれば希望通りに休みを取れることが多いですね。
子育て中の職員も多いので、急な発熱でお迎えに行かなければならない時も、「行ってらっしゃい!」と快く送り出す雰囲気があります。お互い様という精神が根付いているので、ライフステージが変わっても安心して働き続けられる職場だと思います。
「苦手」では終わらない。保育士としての成長
ー保育士のお仕事で、大変だなと感じる部分はありますか?
Mさん:私個人としては、「人との対話・コミュニケーション」に難しさを感じることがありました。
保育士の仕事は子どもと関わるだけでなく、保護者の方、そして職員同士との連携が不可欠です。子ども一人ひとりへの伝え方が違うように、保護者の方への伝え方も、その方の性格や状況によって変えていく必要があります。
働き始めの頃、私は保護者対応がとても苦手だったんです…。「なんて話しかけようか」と毎回身構えて、準備をしてからじゃないとスムーズに話せないような状態でした。
ただ、経験を重ねるうちに人のことをよく見ることの大切さに気づいたんです。子どもたちの様子だけでなく、保護者の方の様子もしっかり観察して、「このお母さんは明るく話しかけた方が伝わるな」「このお父さんは落ち着いて要点を伝えた方がいいな」と、自分の中で分析するようになりました。
今では、先輩の先生方のうまい対応も参考にしながら、自分なりのコミュニケーションスタイルを確立できてきたように思います。苦手だったからこそ、意識的に向き合い、克服できたことが今の自信に繋がっています。
共に働く未来の仲間へ
ーMさんは、今後保育士としてどのようなキャリアを描いていますか?
Mさん:キャリアアップ研修などを通じて、さらに専門性を高めていきたいです。
「幼児保育」「乳児保育」「食育・アレルギー対応」などの分野別研修もあるため、自分の希望に合わせて受講することができます。
今後は、体操などの実技研修に参加したり、保育に役立つ様々な資格取得にも挑戦したりして、身につけたスキルを子どもたちに還元していきたいですね。手遊びやわらべうたなど、古き良き保育の良さも大切にしながら、新しい知識も吸収していきたいです。
ー最後に、保育士を目指している方へメッセージをお願いします。
Mさん:保育士を目指す皆さんは、根本に「子どもが好き」という気持ちがあると思います。
保育士は、子どもたちの「楽しい」「嬉しい」というキラキラした感情を一番近くで共有でき、その成長を見守ることができる、パワーをもらえる素晴らしい仕事です。
もちろん大変なこともありますが、伊勢崎市には、困った時に相談できる頼れる先輩や上司が必ずいます。職員同士の仲も良く、チームワークで保育を行う温かい職場です。
「私に務まるかな」と不安に思うこともあるかもしれませんが、恐れずに飛び込んできてください。
皆さんと一緒に、子どもたちの笑顔を支えていける日を楽しみにしています。

ー本日はありがとうございました。
「子どもたちが数年経ってもスライム作りを覚えてくれている」。楽しそうに語るMさんの笑顔は、まさに子どもたちに向けられる温かい眼差しそのものでした。
特に印象的だったのは、公務員ならではの「異動」を「スキルの幅を広げるチャンス」と捉える前向きな姿勢です。環境の変化を恐れず、むしろ楽しみながら吸収していく。その柔軟な強さが、多様な親子に寄り添う伊勢崎市の保育の質を支えているのだと感じます。
困った時は「お互い様」と送り出してくれる職場環境も含め、保育士自身も笑顔でいられる。伊勢崎市で働く魅力はこういった働きやすさなのかもしれません。
取材・文:パブリックコネクト編集部(2025年11月取材)



