「育休を取りたいけれど、繁忙期と重なってしまう」 「長く職場を離れると、同僚に迷惑をかけてしまうのではないか」
ライフイベントと仕事の責任の狭間で、そんな葛藤を抱える方は少なくありません。 特に、年度末の繁忙期や人事異動が重なるタイミングでの長期取得は、多くの方にとって高いハードルに感じられることでしょう。
群馬県伊勢崎市役所、資産税課。 ここで働くJさんは、第2子誕生の際、職場への負荷を最小限に抑えつつ、家族との時間を最大限確保するために「育休の分割取得」という選択をしました。
合計4ヶ月間の取得を実現させた背景には、どのような計画と、職場の理解があったのでしょうか。 「制度は特別な人のためのものではない」と語るJさんに、仕事と家庭を両立させるための工夫と、それを「お互い様」と支え合う伊勢崎市役所の温かな風土についてお話を伺いました。
- 専門性を磨き、市民の財産と公平性を守る「資産税課」の仕事
- 職場への配慮と家庭への想いの両立。育休の「分割取得」
- 「迷惑をかける」ではなく「お互い様」。背中を押してくれる職場の風土
- 育休を経て変化した「仕事」と「家族」への向き合い方
- 制度は「特別なもの」じゃない。誰もが人生の節目を支え合うための仕組み
専門性を磨き、市民の財産と公平性を守る「資産税課」の仕事
ーまずは、現在担当されている業務内容について教えていただけますか?
Jさん: 私は現在、財政部資産税課の土地係に所属しています。
主な業務は、固定資産税の適正な課税を行うための土地評価です。不動産登記法による権利異動や、実際に現地へ赴いて土地の利用状況を確認する現地調査、関係法令に基づき土地の評価などを行っています。
資産税課全体では現在30名程度の職員が在籍しており、私が所属する土地係のほかに、資産税係、家屋係という3つの係で構成されています。
ー入庁されてからはどのようなキャリアを歩んでこられたのでしょうか。
Jさん: 今年の4月で入庁9年目になります。最初の配属は国民健康保険課で、そこで窓口業務などを経験しました。その後、4年前に現在の資産税課へ異動してきました。
どちらも市民の皆さんの生活に密接に関わる「税」や「保険料」を扱う部署ですので、いわゆる「役所らしい」仕事を経験してきているなと感じます。

ー「資産税」というと、時期によって繁忙の波がありそうなイメージですが、実際のところはいかがですか?
Jさん: おっしゃる通りです。固定資産税は毎年1月1日時点の状況に基づいて課税されるため、年末までに調査を終え、年度末までに評価を完了させる必要があり、秋から年度末までにかけては繁忙期となります。
ただ、課内は若い職員も多く、同世代の仲間がたくさんいるので、お互いにフォローし合いながら業務に取り組める環境です。
職場への配慮と家庭への想いの両立。育休の「分割取得」
ー今回育児と仕事の両立についてもお伺いしたいのですが、Jさんは現在お二人の子どもがいらっしゃるそうですね。
Jさん: はい、3歳になる上の子と、今8ヶ月の下の子がいます。まさに子育て真っ最中ですね。
ーそれぞれ育休も取得されましたか?
Jさん: 第1子の時は、生後すぐに1ヶ月程度取得しました。そして今回、第2子の時は合計で4ヶ月間取得しました。
ただ、第2子の時は連続して4ヶ月休んだわけではなく、最初に2ヶ月取得して一度職場に復帰し、その後また2ヶ月取得するという「分割取得」の形を取りました。
ー分割取得ですか?なぜそのような形を選ばれたのでしょうか?
Jさん: 本音を言えば、まとめて取りたいという気持ちもありました。
ただ、第2子が生まれたのが2月の末で、ちょうど年度末の繁忙期や人事異動の時期と重なってしまったんです。私の所属する係でもベテラン職員が異動することになり、残るメンバーの中では私が業務を引っ張っていかなければならない立場になりました。
新しい体制になる中で、いきなり長期間抜けてしまうと現場に大きな負担をかけてしまうという懸念があったため、まずは3月に年度末の業務と引継ぎをしっかり行い、産後の大変な時期に2ヶ月休んで、一度復帰して新年度の業務に着手し、業務が落ち着いたタイミングで再度2ヶ月休む、という計画を立てたんです。
ー職場への責任感と家族への想い、両方を大切にされた結果の選択だったのですね。第2子ではより長く休もうと決めていたのでしょうか?
Jさん: 第1子の時に1ヶ月取得した際、産後の妻の身体的負担が想像以上に大きいことや、新生児育児の過酷さを身を持って実感していたため、第2子ではもう少し長い期間取得したいと考えていました。
妻ももちろん育休を取っていますが、やはり子どもが2人になれば大変さは倍以上になります。上の子のケアもしなければなりませんし、妻一人に任せるのは負担が大きいと感じました。
妻からも「取れるなら長めに取ってほしい」という要望がありましたし、私自身、もっと積極的に育児に関わりたい、夫婦で協力して家庭の基盤を安定させたいと強く思い、長期での取得を希望しました。
「迷惑をかける」ではなく「お互い様」。背中を押してくれる職場の風土
ー育休取得に対して、職場の反応はいかがでしたか?
Jさん: 第1子の時もそうでしたが、職場のみんなは非常に協力的でした。
特に私の係は若い職員が多く、育休への理解がある環境だったので、同僚からも「育休楽しんで!」と明るく背中を押してもらえました。
上司にも早い段階から相談していたので、業務のスケジュール調整などもスムーズに進めていただけました。「迷惑をかけるかもしれない」という不安はありましたが、上司が「仕事のこと係で協力して何とかするから、育児頑張ってください」と快く送り出してくれたおかげで、安心して休みに入ることができました。

ー第2子の時の「分割取得」や「合計4ヶ月」という期間についても、理解は得られましたか?
Jさん: はい。やはり「2人目の子育ては1人目より大変だ」ということを周囲も理解してくれていましたし、資産税課では私のほかにも男性職員が長期の育休を取得している実績もあります。そういった前例があったことも、非常に心強かったですね。
「仕事に穴を開けてしまう期間が長くなる」という申し訳なさはありましたが、その分、復帰している期間はしっかり働こうと切り替えることができました。
ー実際に育休に入られて、復帰する際の不安などはありましたか?
Jさん: 復帰時の不安は多少ありましたね。特に今回は分割取得の間に人事異動があり、人が入れ替わっていたので、「復帰してすぐに新しい体制でうまく仕事が回せるだろうか」という心配はありました。
あと、笑い話のようですが、数ヶ月間ずっと家で赤ちゃんの世話をして、会話相手が子どもと妻だけという生活をしていたので、復帰直後は「市民対応」の勘を取り戻すのに少しリハビリが必要でした。電話が鳴って受話器を取っても、言葉が出てくるのがワンテンポ遅れてしまうような感覚がありましたね(笑)
でも、仕事の内容自体は大きく変わるものではないですし、不在の間は同僚がしっかりカバーしてくれていたので、大きなトラブルもなくスムーズに業務に戻ることができました。
育休を経て変化した「仕事」と「家族」への向き合い方
ー育休中の過ごし方についてもお聞きしたいのですが、第1子の時と第2子の時で、受け止め方に変化はありましたか?
Jさん: 第1子の時は、1ヶ月間ということもあり、本当に「あっという間」でした。
右も左もわからない初めての子育てで、1日が飛ぶように過ぎていく感覚でした。夜泣きもあったので、妻と交代で睡眠を取りながら、必死に対応していた記憶しかありません。
それでも、産後の妻の体を少しでも休ませてあげられたことは、取って良かったと思える一番の理由です。
ー第2子の育休ではいかがでしたか?
Jさん: 今回は期間も比較的長かったですし、自分自身に少し子育ての知識と経験があったので、より深く子どもたちと向き合えた気がします。
もちろん、子ども2人の世話は大変なのですが、その大変さを味わうと同時に、子どもの成長を目の前で見守れる喜びを強く感じました。仕事をしていると、どうしても子どもと過ごす時間は限られます。平日は朝と夜のわずかな時間しか会えません。でも育休中は、朝起きてから寝るまでずっと一緒です。
上の子とじっくり遊んだり、下の子の初めての瞬間に立ち会ったり。そうした時間を過ごしたことで、「子どもと一緒にいる時間って、本当に尊くて大事なものなんだな」と心から実感しました。


ー仕事への向き合い方についても、何か変化はありましたか?
Jさん: これも大きく変わりました。「時間の大切さ」を痛感したからです。
今は、市民サービスの向上を第一に考えつつも、いかに効率よく仕事をして、定時で帰るかを常に考えています。朝は8時半に出勤する前に、子どもの世話や準備をして、自分のお弁当も作ります。そして出勤したら、フルスロットルで業務をこなし、定時の17時15分のチャイムが鳴ったら家族の為になるべく早く片付けて帰宅するようにしています。
限られた時間の中で成果を出すために、業務の優先順位をシビアに見極めるようになりましたし、家族のためにも、残業はなるべくしないという前提の業務管理を意識するようになりました。

ー時間の使い方が変わったのですね。子どもの体調不良など、急な対応が必要な場面も増えると思いますが、その点はどうされていますか?
Jさん: 現在は妻が育休中なので助かっていますが、妻が働いていた時は、私の職場の方が保育園に近かったこともあり、私が迎えに行くことも多かったです。
伊勢崎市役所には「子の看護休暇」などの制度が整っていますし、何より上司が「子どもが心配だろうからすぐ帰ってあげなさい」と言ってくれる環境なので、突発的な休みや早退も非常に取りやすいです。
また、保育園の行事なども事前に伝えておけば問題なく休めるので、子育て世帯にとっては本当に働きやすい職場だと感じています。
制度は「特別なもの」じゃない。誰もが人生の節目を支え合うための仕組み
ー育休取得に関して、キャリアへの影響などで不安はありませんでしたか?
Jさん: キャリアについては、伊勢崎市役所では制度上、育休取得が昇任や昇格に直接的なマイナス影響を与えることはないと聞いていたので、特に不安には感じていませんでした。
将来のことを心配をせずに、家族との時間を優先できる環境があるのはとてもありがたいと思います。 金銭面に関しても、育児休業手当金がしっかり支給されるので、取得により生活がカツカツになるようなことはありません。
事前に制度を理解しておけば、キャリアや生活に関する心配は不要だと思います。
ー最後に、これから入庁を考えている方や、ライフイベントを控えている方に向けてメッセージをお願いします。
Jさん: これから結婚、出産、育児など、様々なライフイベントを迎える方がたくさんいると思います。そんな時は、遠慮せずに育休や時短勤務といった制度を積極的に活用してほしいですね。
私自身、最初は「職場に迷惑をかけるんじゃないか」という不安がありました。でも、上司や同僚の温かいサポートのおかげで、安心して育児に専念することができました。その経験を通じて感じたのは、「制度は特別な人のためのものではなく、誰もが人生の節目を支え合うための仕組みなんだ」ということです。
育休で得た経験や、時間の使い方の変化は、必ず将来の仕事にも活きてきます。ですから、「申し訳ない」と思うのではなく、「この経験を糧にして、また仕事で返していこう」という前向きな気持ちで、制度を使ってほしいなと思います。
伊勢崎市役所には、そんな働き方を応援してくれる仲間と環境が揃っています。ぜひ、私たちと一緒に働きましょう。

ー本日はありがとうございました。
「妻と子どもしか会話してなかったので、復帰直後は電話対応で言葉が出るのがワンテンポ遅れました」と、笑うJさん。その笑顔からは、育休という期間が単なる「休み」ではなく、家族と深く向き合う素敵な時間であったことが伝わってきました。
制度があるだけでなく、それを「お互い様」と捉え、快く送り出す上司や同僚の存在。その温かな土壌があるからこそ、Jさんもまた「次は自分が誰かを支えよう」と自然に思えるのではないでしょうか。伊勢崎市役所には、互いの人生を応援し合う、優しく頼もしい循環があるのだと感じる取材でした。
取材・文:パブリックコネクト編集部(2025年11月取材)



