出雲市役所で働く加藤菜々子さんのインタビュー記事です。大学進学を機に県外へ出たことで地元の魅力に気づき、Uターン就職を決意。現在は農業支援センターで、行政職として新規就農者のサポートに奮闘しています。農業知識ゼロから専門用語を学び、農家の方々に寄り添う日々と、温かい職場の雰囲気、充実したプライベートなど、出雲市役所で働くリアルな姿を語っていただきました。
県外に出て初めて気づいた地元の魅力。Uターン就職で出雲市役所へ一本化
ーまずは簡単な自己紹介と、入庁までの経緯を教えてください。
加藤:出雲市出身で、大学は広島県で、就職のタイミングで出雲市に戻ってきました。大学では経済やまちづくりをテーマに学んでいました。
就活のときは一番の軸が、「出雲に帰ること、出雲で働くこと」。民間企業も並行して受けてはいたのですが、第一志望は市役所で、出雲市役所一本に絞って受験しました。
ー地元・出雲市にこだわったのには、何か理由があったのですか?
加藤:高校まで地元にいる時は、出雲大社などの観光地も身近にありすぎて、その魅力に気づけていませんでした。しかし、広島に出て県外の友達がたくさんできると、「出雲大社を知ってるよ」「出雲っていいね」と言われることがすごく多かったんです。さらに、県外に出たからこそ、地元の人の温かさや、帰ってきた時の空気感の良さなど、出雲の魅力に改めて気づくことができました。
そういった経験から、「出雲の魅力を全国の人にPRできるような仕事がしたい」と思うようになったのが大きなきっかけです。
「10アールって何?」知識ゼロから飛び込んだ、島根県一の農業地域を支える仕事
ー入庁後、どのような部署に配属されたのでしょうか。
加藤:入庁年度から3年間「農業振興課 農業支援センター」に所属しています。出雲市で農業をされている方への支援がメインの部署で、私はその中で「新規就農者支援」を担当しています。
出雲市で新たに農業を始めたい方や、就農5年未満の方を対象に、就農相談に乗ったり、機械やハウス施設を導入するための補助事業の手続きをサポートしたりするのが主な業務です。
出雲市は、県内でも最も農業が盛んで、新規就農される方も最も多いです。
ー農業の知識がない状態での配属に、戸惑いはありませんでしたか?
加藤:公務員の仕事として「農業」という分野があることは知っていましたが、まさか自分が携わることになるとは全く思っていなかったので、正直戸惑いはありました。最初の頃は専門用語が全く分からなくて、「10アール」「1反」といった面積の単位を言われても規模感が全く掴めませんでしたし、農業機械の名前を聞いても何に使うものなのか見当もつきませんでした。
ーその状況をどのように乗り越えていったのでしょうか。
加藤:同じ係の上司や先輩方に本当に助けていただきました。最初の1年は先輩にひたすらついて回り、言っていることをとにかく聞いて覚えました。市役所内だけでなく、JAさんや県の職員さんとの繋がりも非常に多い部署なので、分からないことはとにかく色々な方に聞いて回り、知識を吸収していきました。
そのおかげで、1年目が終わる頃には、ある程度一人で就農相談に対応できる状態にまで成長できたと思っています。
不安な気持ちに寄り添う相談窓口。2年目の県外イベントで叶えた「出雲のPR」
ー就農相談業務では、どのような難しさがありますか?
加藤:就農の相談に来られる方は、20代から50代くらいまでと年齢層が幅広いです。行政の支援を受けて就農するためには、一定の面積や投資が必要になります。そのため、相談ではご家族の状況や、ご家族の理解が得られているかといった、かなり踏み込んだ内容までお聞きしなければなりません。最初にお会いした時からしっかり心を開いて話してもらえるような空気作りや、コミュニケーションの取り方を常に意識しています。
ーお仕事の中で、特に印象に残っているエピソードを教えてください。
加藤:入庁2年目の時に、県外で開催された就農相談イベントに初めて一人で行かせてもらったことです。2年目の私に一人で行かせてくれるという責任を持たせてもらえたことが嬉しかったです。 そして何より、大学時代に感じていた「出雲の魅力を全国にPRしたい」という思いが形になった瞬間でもありました。
イベント自体は農業に興味がある方向けのものでしたが、そこで出雲へ移住することの魅力も同時にお伝えすることができたんです。自分で作った資料を使って、大好きな地元のPRができたこの経験は、私の中で非常に深く印象に残っています。
堅いイメージを覆す明るい職場と部活動。休暇もしっかり取れる安心の環境
ー入庁前と後で、市役所に対するイメージのギャップはありましたか?
加藤:公務員と聞くと、お堅い雰囲気の中で黙々と仕事をするイメージがあったのですが、良い意味でギャップがありました。同じ課の人はもちろん、他部署の職員の方々もフレンドリーで、とても明るい雰囲気の中で仕事ができています。上司であっても意見を交わしながら仕事を進められますし、業務に関連する話題から会話が盛り上がって、係の中で笑い声が聞こえてくることもよくあります。
ー若手職員として、先輩方との関係性はいかがですか?
加藤:配属された時は、周りがお父さんお母さんと同世代の方ばかりという環境でした。分からないことはすぐに聞ける優しくて温かい雰囲気がありつつも、指導していただくべきところはしっかりと指導してくださる、メリハリのある素晴らしい環境です。
ー職員同士の交流もあるのでしょうか?
加藤:はい、スポーツのサークル活動などで部署を越えた繋がりがあります。私は高校までテニスをやっていたこともあり、入庁してすぐにテニス部に誘っていただき、同期と一緒に参加しています。そこで普段の業務では関わりのない先輩方とも仲良くなれました。他にも「そば打ち同好会」や、最近できた「サウナ部」など色々な集まりがあって、趣味を通じて職員同士が繋がれる環境があります。
ーワークライフバランスや休暇の取りやすさについて教えてください。
加藤:私の仕事はチームで動くものやルーティンワークではなく、自分自身でスケジュールを管理しながら進めていく業務が多いです。もちろん忙しい時期には残業をせざるを得ないこともありますが、休める時にはしっかり休むというメリハリをつけて働けています。
ー最後に、出雲市役所への入庁を考えている方や、Uターンを悩んでいる方へメッセージをお願いします。
加藤:県外の大学へ進学した学生が、就職で地元に帰ってくるケースは決して多くはないと感じています。でも、社会人になってから地元に帰ってくることの良さ、地元に貢献できる喜びは本当に大きいです。このインタビューを通じて、その魅力が少しでも伝われば嬉しいです。ぜひ多くの人にUターンという選択肢を持ってもらい、一緒に出雲市で働ける仲間が増えることを心待ちにしています!
ー本日はありがとうございました。
取材・文:パブリックコネクト編集部(2026年1月取材)
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加藤さんの言葉からは、生まれ育った出雲への深い愛情と、市民へ寄り添う誠実な姿勢が強く伝わってきました。地元を離れてその良さに気づき、再び地域のために奔走する市役所職員ならではのキャリアが良くわかるインタビューでした。



