山形県東根市消防本部の消防士・救急救命士へインタビュー。地元への貢献を胸に飛び込んだ消防の世界。24時間勤務のリアルな現場、救急救命士としてのやりがい、そして東根市で働く魅力を語っていただきました。
ーまずはご経歴をお聞かせください。
羽柴:東根市出身で、地元に貢献できる仕事がしたいと思っていました。その中でも、消防士は、火事や災害の現場で自分の命を懸けても人の命を助ける、かっこいいというイメージを抱いており、憧れがありました。
高校卒業後は公務員の専門学校に1年間通い、地元である東根市消防一本に絞って受験しました。平成24年に東根市消防本部に入庁し、消防士として働き始めました。
消防士として様々な災害現場に出動する中で、救急業務で人と接する機会が多く、救急救命士の業務に魅力を感じるようになりました。そして、令和5年に救急救命士の資格を取得しました。
ー現在の所属と仕事内容について教えていただけますか?
羽柴:東根市消防本部の消防署に所属しています。消防隊、救助隊、救急隊を担うほか、救急救助係として事務作業も行っています。
ー東根市消防本部の体制について教えていただけますか?
羽柴:東根市消防本部には、総務課と消防署があります。
総務課には、庶務係、警防係、保安係、救急救助係、予防係があり、それぞれ専門的な業務を担当しています。
消防署では約40名の職員が二交代制で勤務しており、消防隊が火災現場での消火活動を、救助隊が交通事故や自然災害における人命救助を、そして救急隊が病気や怪我人の搬送といった救急業務を担当します。
これらの災害対応に加え、消防署の職員は、総務課の業務も兼務しています。私の所属する救急救助係では、救急資機材の管理や県、国からの調査資料の作成、日常の救急活動報告書の作成といった事務業務を行っています。
(参考:消防本部の紹介)
https://www.city.higashine.yamagata.jp/section_list/section026/738
ー羽柴さんの普段の勤務スケジュールはどのような流れですか?
羽柴:朝の8時半に勤務交代があり、車両点検、訓練などを行います。

昼休憩を挟んで午後は訓練が続きます。

17時15分から夜間休憩に入ります。その後は通信指令の業務や事務作業を行い、21時からは仮眠時間と夜間通信の当番を2時間交代で行います。

6時からは資機材点検や勤務交代の準備を行い、8時半に次の勤務班と交代します。
ー24時間勤務は大変ではないですか?
羽柴:最初は身体が慣れず、明けの日は日中寝て過ごすこともありましたが、今は慣れて問題ありません。ただ、仮眠時間中に災害が発生すると丸一日寝られないこともあり、体力的に大変な時もあります。
平日の日中に休みが取れるので、家族や自分の時間もしっかり確保できます。趣味を満喫している職員も多いですね。
ー職場の雰囲気を教えてください。
羽柴:職場は若い職員が多く、和気あいあいとした雰囲気で休憩時間は世間話や家族の話などをして過ごしています。ですが訓練の時は厳しさもあり、緊張感があふれます。
メリハリがついてるというか、オンオフがしっかりしてるイメージですね。
ー東根市の救急や火災の出動は、どれくらいあるのでしょうか。
羽柴:東根市では、年間約1,900件から2,000件の救急出動があります。これは、1日あたり5~6件の出動に相当します。
救急搬送にかかる時間は、搬送先の病院によって異なりますが、市内の病院であれば平均で約1時間です。遠い病院への搬送となると、2時間以上かかることもあります。救急隊員は、搬送後に報告書の作成などの事務処理も行います。
救急活動においては、迅速な対応が求められます。救急隊が現場に到着するまで平均で約10分かかりますが、その間に心肺停止状態になった場合は、救命できる可能性が低くなります。居合わせた人が心臓マッサージやAEDを使用するなどの応急処置を行うことで、救命率は上がります。救命活動は、時間、場所、協力、そして救急隊と病院の連携が不可欠です。

火災発生件数は年間15件から20件で、救助活動は年間30件から50件ほどです。火災の規模や種類によって、活動時間は大きく異なります。短時間で済む野火火災もあれば、半日近くかかる建物火災もあります。
火災発生時には、状況把握や活動内容の記録を行い、後日、原因調査を行います。火災原因調査は、消防署の職員と総務課の予防係職員が合同で行い、半日以上かかる事もあります。
ーお仕事の中で、やりがいを感じるのはどんな時ですか?
羽柴:困っている人のもとへ駆けつけるのが消防の仕事なので、ほぼ必ずと言っていいほど感謝の言葉をいただけるのですが、「ありがとう」「助かりました」という言葉は、消防士として、救急救命士として、常日頃から人の役に立っているという実感を与えてくれます。
そして、これからも困ってる人に寄り添えるような人間であり続けたいと思わせてくれます。
また、訓練を通して出来ないことが出来るようになったり、1人ではできないこともみんなで協力して達成できたりする時に、大きな達成感を感じます。
ー仕事をする中で、印象に残っている出来事はありますか?
羽柴:救急救命士の資格を取得後、呼吸と心臓が止まっている方の現場へ出動しました。処置を行い、社会復帰できるレベルまで回復された時は、この仕事をしていて本当に良かったと思いました。
ー入庁後、実際に働いてみてギャップを感じることはありましたか?
羽柴:そうですね、入庁前は火災現場のイメージが強かったのですが、実際は火災以外にも救急や救助、油漏れ対応、猫の救出といったアニマルレスキューなど、幅広い業務があります。
また、雪が多い地域なので秋に消火栓の水抜き、冬場は水利の雪かきなども行います。想像以上に活動内容は多岐に渡っていました。
ー消防本部が舞台のドラマで、職員の方が非番の時にまちを回っているのを見ました。実際はそのようなことはするのでしょうか?
羽柴:非番の時に街中を歩くのはリアルだと思います。実際、私も新人の時には街中を回ってました。仕事で必要な東根市の地水理を完全に覚えるまでに、1〜2年は掛かりましたね。
また、東根市は新しい建物がどんどんできているエリアなので、今でも街中を歩いてます。慣れたから良いというわけではなく、常にアップデートする必要があります。
ー最後に、消防士、救急救命士を目指す方へメッセージをお願いします。
羽柴:ぜひやる気と元気と、あとは健康な体がある人は、ぜひ東根市消防を受験していただいて、一緒に働けたらと思います。少しでも興味のある方はぜひ受験してみてください。一緒に東根市の安心・安全を守りましょう。
ーありがとうございました。
取材・文:パブリックコネクト編集部(2025年2月取材)