「いろんなものを経験して、自分もブラッシュアップできればと思っていたんです」——そう穏やかに語るのは、東根市役所ブランド戦略推進課で働く入庁15年目の渋谷さん。これまでに生活環境課、生涯学習課、農業委員会、そして現在のブランド戦略推進課と、4つの部署で幅広い業務を経験してきました。
今回は、東根市の一般行政職を目指す方に向けて、仕事内容の幅広さや働く魅力、職場の雰囲気について、たっぷりとお話を伺いました。
仙台から東根へ。人と関わる「行政職」に惹かれて
ーまずはご経歴から伺います。ご出身と、公務員を目指すようになった経緯を教えてください。
渋谷:出身は宮城県仙台市で、今もそこから車で1時間ほどかけて通勤しています。公務員を意識したのは、高校の先生だった父の影響が大きいですね。暦通りの仕事で土日や祝日は家にいて、ワークライフバランスがしっかりしているなと、小さい頃から漠然と感じていました。
本格的に目指したのは大学生になってから。最初は父と同じ教員も考えたんですが、転機になったのは、フィールドワークの多いゼミで行政の方や外郭団体の方と関わったことでした。
公務員といえば「事務仕事」「デスクワーク」のイメージが強かったのですが、「人と関わりながら進める仕事もあるんだ」と知って、衝撃を受けました。もともと人とコミュニケーションを取って進めるような仕事がしたいという思いがあったので、「行政職って面白そうだな」と志望の動機になりました。
ー数ある自治体の中で、東根を選んだ理由は何でしょうか。
渋谷:母方の祖父母が山形県の大江町に住んでいて、幼い頃から頻繁に通っていたんです。仙台から大江までは距離があるので、その中継地点として東根によく立ち寄っていました。
就職活動で県外にも目を向けたとき、何度も訪れていた東根が思い浮かんだんです。もともと自然が好きで卒業論文のテーマも環境に関わるものでしたから、自然豊かな東根がなおさらいいなと。
また、空港や新幹線、高速道路も通っていて発展する材料が多く、自分もまちと一緒に成長していけたらと、面接でも話しました。

環境・スポーツ・農地・6次産業。4つの課で広げてきた15年
ー入庁されてから現在まで、どんな部署を経験し、それぞれで何を担当されてきたのか教えてください。
渋谷:入庁して15年目になります。最初の4年間が生活環境課、次の5年間が生涯学習課で、うち4年がスポーツ振興、1年が文化振興の担当でした。その後、農業委員会に3年間。そして現在のブランド戦略推進課が3年目です。
環境、スポーツや文化、農地、そして農産物のブランド化と、振り返るとずいぶん幅広い分野を経験してきました。
ーそのうち、生活環境課・生涯学習課・農業委員会では、具体的にどんな仕事をされていたのですか。
渋谷:生活環境課では、浄化槽や太陽光発電システムの設置補助、環境マネジメントシステムに関する国際規格のISO14001などを担当しました。
生涯学習課では、スポーツ振興として山形県縦断駅伝の中継所の運営・設営や、日本体育大学と業務提携を結んでの講義・イベント、スポーツ推進委員の方々と地域や公民館での事業のサポートなどを担当していました。文化振興では、国の天然記念物にもなっている東根の大ケヤキや文化財の管理、資料館とカフェが併設された「東の杜」という施設の指定管理業務なども担当しました。
農業委員会では、農地を宅地などに変える農地転用や、農地の売買・貸し借りの許可業務をしていました。
ー現在のブランド戦略推進課では、どんな業務を担当されているのですか。
渋谷:課全体ではふるさと納税、市の一大イベントのさくらんぼマラソン大会、GIに登録された「東根さくらんぼ」のブランド化、6次産業化、海外販路の展開などを扱っています。その中で私が中心的にやっているのが、GI東根さくらんぼ、6次産業化、海外販路の3つです。
6次産業化は、農産物をただ生産するだけで終わらせるのではなく加工して流通に回す、1次・2次・3次を掛け算して「6次」という造語なんです。私の業務は農林部門寄りですが、さくらんぼマラソンは一大イベントなので課のみんなが役割を持って総出で取り組んでいます。
ー人事異動について、渋谷さんご自身はどう捉えていますか。
渋谷:「ここに行きたい」と異動希望を書くタイミングもあるんですが、私は一度もそうしたことがなくて。純粋にいろんなものを経験して、自分もブラッシュアップできればと思っていたので、異動にマイナスイメージは持っていません。
もちろん新しいことを覚え直したり、職場の関係性を一から築いたりという大変さはありますが、自分としてはとくに抵抗感はないですね。

繁忙期のリアルと、忘れられない仕事
ーお仕事の厳しさの面も、正直に伺いたいです。
渋谷:やっぱり繁忙期は絶対にあります。公務員は安定していて休みも取れて定時で帰れる、と捉える方も多いと思うんですけれど、実はそうでもないところも結構あって。特に今の部署はさくらんぼにフォーカスした事業が多いんです。
ふるさと納税もさくらんぼが大半、さくらんぼマラソン大会も1万人を集める規模。また、首都圏でのさくらんぼ物販や、GI東根さくらんぼの基準を生産者に共有する「目揃え会」の開催など、さくらんぼの時期に合わせて業務が一気に入ってきて、事業によっては休日出勤することもあります。
ただ、マイナスに聞こえてほしくはなくて。忙しいけれど、その分本当にやりがいがありますね。
ーこれまでで特に印象に残っている仕事はありますか。
渋谷:2つあります。1つは、生涯学習課でスポーツ担当になった1年目。生活環境課からの異動で、様々な団体を担当して会議をしたり計画を作ったりと、前の部署とは本当に畑違いの仕事でした。
その年の単発のスポーツ大会のために団体を立ち上げ、予算化し、業者と日程の調整をしないといけなかったんですが、スケジュール感が全くわからなくて、今思えばよくできたなというぐらいギリギリの状況で進めていました。
終わったときは本当にホッとして。それと「あのしんどさ以上のものはないな」という、自分の中での拠り所ができたんです。それ以降、大変だなと思っても「あの時に比べれば全然乗り越えられる」と思える指針になりました。
ーもう1つは何でしょうか。
渋谷:昨年、海外販路の関係で台湾と香港に行ったことです。私自身は海外旅行の経験もなく、パスポートも初めて取りました。
コロナ禍以降、渡航によるプロモーションは実施していませんでしたが、それを直接現地に行って、市場の状況や果物のニーズを肌で感じ、輸出業者さんとも話して「果物の海外展開の可能性はまだ結構あるな」という認識ができました。現地の方とのコミュニケーションの中で学ぶことが多く、とても貴重な経験をさせていただきました。

仲良く、楽しく。人とのつながりがつくる職場
ー仕事をする上で大切にしていることはありますか。
渋谷:コミュニケーションを取ること、人と関わることが本当に好きなんです。昔から人とのつながりを大事にしてきました。
「職場の雰囲気が悪いと仕事も絶対にうまくいかない」というのはこれまでの経験上理解しているので、誰とでもさっと話せるパイプ役のような存在でいたいと思っています。積極的に話しかけて、いい環境を作るというのは、自分の中でこだわっているところです。

ーワークライフバランスについてもお聞きします。お休みの取りやすさはいかがですか。
渋谷:休みは取りやすい雰囲気で、逆に上司から「取りなさい」と言われるぐらいです。繁忙期はなかなか難しいですが、業務が落ち着く7月頃に年休や夏休みをまとめて取ったりして、メリハリをつけています。
ー渋谷さんご自身も育休を取られたそうですね。
渋谷:今年子どもが生まれて、産後パパ育休を2月と3月に分けて合計1カ月ほど取りました。他部署の職員が立て続けに取得したこともあって、「じゃあ自分も」と思えたんです。
実際に育休を取ってみて、子どもを育てるのは本当に大変なんだと実感しました。育休を取らなかったら、自分は仕事、妻は育児で「お互い大変だね」くらいで、それが平等だと思っていたと思うので、すごくいい機会でした。
育休以外にも、子どもの看護や入学式などに使える休暇もあります。制度として整っているだけでなく、職場全体で実際に活用されているのが、東根市役所のいいところだなと感じています。
ー最後に、東根市の一般行政職を目指す方へメッセージをお願いします。
渋谷:少し固い言い方になりますが、公務員ですので、倫理観や責任感はやっぱり大事です。ただ、役所の仕事は多岐にわたるので、必ずやりがいを感じる業務に出会えます。
職員と市民の方々、関係機関との協調性もとても大事で、職員同士のコミュニケーションが取れていないと、市民サービスにもつながっていかない。だからこそ、みんな仲良く、楽しく仕事をしていきましょう!一緒に仕事できるのを楽しみにしています!

ー本日はありがとうございました。
渋谷さんは、どんな質問にも明るくよどみなく、それでいて一つひとつ言葉を選びながら、終始あたたかい雰囲気で話してくださいました。4つの課で広げてきた15年は、業務の幅の広さもさることながら、どの場面にも「人と関わりたい」という前向きな芯が通っていたように思います。
大変な時期のことも率直に、けれどどこか楽しそうに語る姿が印象的で、「みんな仲良く、楽しく」という最後の一言が、渋谷さんの仕事観そのものを表しているように感じました。
取材・文:パブリックコネクト編集部(2026年6月取材)



