湖南市役所で働く滝さんのインタビュー記事です。民間企業での営業職を経て湖南市役所に入庁し、現在は商工観光労政課に勤務。在職中には文化庁への出向も経験されました。
多様な組織で働いたからこそ語れる、湖南市役所の風通しの良さや仕事のやりがい、そして唯一無二のキャリアを築ける環境について、詳しくお話を伺いました。
「定年まで働ける場所」を求めて。民間企業から公務員への挑戦
ーまずは、これまでのご経歴と自己紹介をお願いします。
滝:大学を卒業後、京都の不動産会社に就職し、賃貸営業や事務の仕事に4年ほど携わりました。その後、湖南市役所に転職し、入庁して今年で9年目になります。出向も含めると現在の部署で4部署目となり、各部署を2年から3年のペースで異動しながらキャリアを積んでいるところです。
ーもともと不動産業界で働かれていたのですね。なぜ転職をされたのですか?
滝:営業として数年働いた後、体調を崩したことがきっかけです。事務職へ異動したのですが、その際に今後のキャリアを見つめ直し、長く腰を据えて安定的に働ける環境を求め、公務員を志望いたしました。

契約、法規、そして地籍調査。前職の経験が活きた瞬間
ー入庁されてから、どのうような部署を経験されてきましたか?
滝:最初の3年間は総務課です。一定規模以上の工事や委託業務などに関する契約事務を担当しました。最後の年は条例や規則に関わる担当をしました。
その後、都市政策課に2年間在籍し、「地籍調査」という土地の境界を調査する仕事に携わりました。そして文化庁へ2年間出向し、現在所属している商工観光労政課で文化財の保護と活用を担当しています。
ーこれまでで特に印象に残っているお仕事はありますか?
滝:どれも印象深いですが、都市政策課での地籍調査です。土砂災害の危険がある地域の土地境界を調査する仕事でした。GPSデータで土地境界を登記することで、災害時の迅速な復旧につながります。市民との調整は大変でしたが、地図ができて喜ぶ市民の姿を見ると、大きなやりがいを感じました。
自らつかんだ国への出向。霞が関で得た「個」として働く経験
ーその後、文化庁へ出向されていますが、これはご自身で希望されたのですか?
滝:入庁して2、3年はまず市役所の仕事を覚えようと思っていましたが、その後は希望し続けていました。せっかく国や県といった、市役所とは違う組織で働ける機会があるのであれば、自分の経験としてぜひ行ってみたいという思いがありました。
ー文化庁ではどのようなお仕事をされていたのですか?
滝:絵画や彫刻、工芸品といった美術工芸品を国宝や重要文化財に指定するための事務手続き全般を担当する部署に2年間在籍していました。
ー市役所との違いはどういった点ですか?
滝:はい、全く違いましたね。まず、すごく忙しかったです。そして、働き方が大きく異なりました。湖南市役所は、一つの業務に対して担当を分担しチームで仕事を進めている感覚が強いです。もちろん主担当はいますが、みんなで協力し合う文化があります。
一方、文化庁では、係員といってもほぼ「一人係長」のような状態で、自分の担当業務は自分一人で黙々と進める感覚が強かったです。もちろん上司に相談はできますが、基本的に自分が動かなければ仕事は全く進みません。ですから、毎日必死に仕事に食らいついていく感じでしたね。
緻密な仕事術と新たな人脈。出向経験が現在の業務に直結
ーその厳しい環境の中で、どのような学びがありましたか?
滝:自己管理能力が格段に上がったと思います。これまでもスケジュールを立てて仕事を進めてきたつもりでしたが、いつまでにという大まかなものでした。しかし、文化庁では「何月何日の何時までにこれを終わらせる」というように、非常に詳細なスケジュールを立てて仕事を進める癖がつきました。
一つの会議を開催するにも、準備段階からタスクを細かく分解し、日時を決めて着実に進めていく。この緻密な仕事の進め方は、市役所に戻ってきた今でも大いに役立っています。

ー現在のお仕事は、文化庁でのご経験と関連があるのでしょうか?
滝:はい、現在の商工観光労政課では、市内の国宝や重要文化財の修理事業や、まだ指定されていない文化財の調査、そしてそれらを今後どう保護・活用していくかという計画の策定などを担当しています。文化庁での経験がダイレクトに活きていますね。
文化庁在籍時に、文化財業界の専門家の方々と多くの繋がりができました。何かを進める上で気軽に相談できる相手ができたことは大きいですし、計画策定のために有識者会議を立ち上げる際には、その時にお世話になった方々に委員をお願いすることもできました。
湖南市には学芸員の職員が少ないため、専門的な調査を行うには外部の方々の協力が不可欠です。そういった意味で、出向で得た人脈は本当に大きな財産になっています。
異動は転職?多様な経験は、すべてが繋がる財産になる
ー公務員は異動のたびに全く新しい仕事に就くことになり、「まるで転職のようだ」とよく言われます。滝さんご自身は、その点についてはどう感じていますか?
滝:おっしゃる通り、総務課で事業者の方を相手にしていたのが、次の都市政策課では市民の方々と話すことが中心になるなど、全く違う仕事に就く「転職」のような感覚は確かにあります。
ですが、前の部署でやっていた仕事が次の部署で全く活きない、ということは決してありません。例えば、総務課時代に知り合った事業者が、地籍調査で再会し仕事がスムーズに進んだこともありました。その方から「滝さんだから信用できる」と言っていただけた時は本当に嬉しかったです。
今は商工観光労政課で文化財を担当していますが、課が管理している市の土地をどう活用するか、売買する必要があるか、といった話が出た際には、間違いなく都市政策課にいた時の知識が役立ちます。
異動で仕事内容は変わりますが、これまでの経験や人脈はすべて繋がり、自分の力になります。私自身、2〜3年で違う仕事に挑戦できるこの環境は、性に合っていると感じています。
風通しの良さが魅力。組織の壁を感じずに仕事ができる環境
ー民間、国、そして市役所と様々な組織を経験されていますが、湖南市役所ならではの特徴や魅力はどんなところに感じますか?
滝:湖南市役所には風通しの良さがあり、上司にも意見を伝えやすく、受け止めてもらえます。もちろん、必要な指導もいただけます。これは市役所全体の良い文化だと感じています。
また、私自身、1年目や若手には積極的に声をかけるよう心がけています。電話対応などで戸惑っているようであれば、すぐにサポートに回ります。指導係の人にしか質問できない雰囲気では、仕事が滞るためです。
課全体で新人職員をサポートする意識が高く、1年目にも重要な仕事を任せます。分からないことは気軽に質問でき、逆に私たちベテランが若手から学ぶこともあります。指導というよりは「同じ仕事をする仲間」という感覚ですね。
プライベートも充実。自分で作るワークライフバランス
ーワークライフバランスについてはいかがですか?
滝:商工観光労政課はイベントがあるので土日の出勤は比較的多い部署です。ですが、代休はもちろんきちんと取得できます。
残業は、イベント前などはどうしても増えますが、これも自分で計画を立てていけば、そこまで多くはなりません。余裕を持ったスケジュールを立てることが重要です。市民の方と一番近い市役所の仕事は、突発的な電話対応など、予定外の業務が必ず発生します。
それも見越して計画を立てておけば、残業をコントロールし、自分のペースで仕事とプライベートを両立できると思います。私自身、今の働き方に特に不満はありません。


市民の反応が、仕事のやりがいと成長に繋がる
ー改めて、湖南市役所で働くやりがいについて教えてください。

滝:国で働いていると、自分の仕事に対する国民の反応はなかなか見えにくいものですが、市役所の仕事は、良くも悪くも市民の方からの反応がダイレクトに返ってきます。
例えば今、私は国宝である善水寺の屋根の葺き替え修理事業に携わっています。私が作成した書類一つが、こうして国宝という文化財を守ることに繋がっていることを実感すると、一つひとつの業務をより丁寧に、正確に行おうという気持ちになります。
また、観光庁の事業で、市内の寺社仏閣に多言語の解説文を設置する仕事も進めています。先日も取材に行ってきたのですが、お寺の方から「声をかけてくれて良かった」と言ってもらえたり、その解説文を見て訪れる外国人観光客が一人でも増えたりすれば、それは間違いなく自分の仕事が実を結んだ証拠です。そういった成果が目に見えるのは、大きなやりがいですね。
ー本日はありがとうございました。