静岡県袋井市役所で土木技術職として働く田中さんのインタビュー記事です。
高校卒業後、公務員として地元に貢献したいという思いから袋井市役所に入庁した田中さんに、市民生活に密着した業務に携わる中で感じるやりがいや大変さ、そして袋井市の魅力について語っていただきました。
また、終盤では自治体だけでなく、地域をあげて土木の魅力を発信する「遠州どぼくらぶ」の活動についてもお話しいただきました。
ーまずは簡単に自己紹介をお願いします。
田中:私は浜松市の出身で、高校を卒業後、平成30年度に土木技術職として袋井市役所に入庁しました。現在は都市整備課道路街路係で、主に道路に関する業務携わっています。
ー土木の道に進もうと思ったきっかけを教えてください。
田中:父が工業高校出身だったということもあり、私も高校進学を考える際には自然と工業高校に進もうと決めていました。当時は専攻まではあまり深く考えておらず、工業高校で学んだことを活かし就職できればいいかな、くらいに思っていました(笑)
地元の工業高校に入学しそこで土木科を専攻したのですが、正直に言うと、学びたい分野が決まっておらず、自分の学力に一番見合っていたというのが専攻の大きな理由です。
ただ、今振り返ってみると、このタイミングで土木と出会えて本当に良かったと思っています。高校で学んでいく中で、土木の面白さに気づき、将来は土木の道で働きたいと考えるようになりました。

ー卒業後の進路を考えるにあたって、進学と就職で悩んだことはありましたか?
田中:そうですね、少し悩んだ時期もありました。クラスメイトの中にはより専門的な知識を身に付けようと大学進学を目指す人もいたのですが、私は公務員になるという選択肢があることを知って、進学ではなく就職という道を選びました。元々土木の知識を活かし地域に貢献できる仕事がしたいと思っていたので、公務員、特に土木技術職は魅力的に感じました。
ー袋井市役所を志望した理由を教えてください。
田中:袋井市には、子どもの頃からよく遊びに来ていて、有名な観光スポットはったさん(法多山尊永寺)にも、何回か訪れたことがあります。身近な場所であり、魅力的な場所だと感じていました。元々、地元以外の市町村で働いてみたいという思いもあったので、魅力を感じていた袋井市を受験しました。地元の浜松市役所も受験しましたが、今お話ししたとおりとても魅力に感じていたことや、募集時期が早かったこともあり、袋井市役所が第一志望でした。

ー就職活動を振り返ってみていかがでしたか?
田中:初めての就職活動だったので、とにかく必死でしたね(笑)
グループディスカッションと個人面接があったのですが、人前で話すのが苦手だったのでとにかく練習しました。長期休み等も利用しつつ、先生方に協力してもらい、面接の練習をひたすら繰り返していました。
ー入庁前、不安に思うことはありましたか?
田中:高校卒業後いきなり働くといったことに対しては、あまり心配していなかったのですが、浜松市出身のため、袋井市の地理にあまり詳しくないということが不安でしたね。袋井市役所で働くからには、市のことや地名をよく知っておかなければならないと思っていたため、入庁してからそれが覚えられるかどうか不安でした。
ー入庁後はどのようにして業務を学びましたか?
田中:入庁してからは、先輩職員の方々に教えていただきながら、業務を覚えていきました。現場に出ることも多く、先輩に同行して、実際に見て学ぶという機会がたくさんありました。入庁して半年後には、自分の担当する工事を任されるようになりました。1年目の頃から、責任ある仕事を任せてもらえたことは、とても良い経験になりました。

ーこれまでに経験した業務について教えてください。
田中:主に道路整備に関する業務を行っています。道路拡幅や新設工事など、市民の生活に密着した仕事です。地元の方々から要望をいただいたり、コンサルタント会社や地元の工事業者と協力しながら、設計から工事の監督まで、幅広い業務に携わっています。
これまでにいくつかの係を経験してきましたが、土木技術職として業務が大きく変わるわけではなく、事業の規模や場所、そして関わる人たちが変わってくるようなイメージですね。区画整理係では、市が主体となって行う大規模な区画整理事業に関わり、細かいインフラ整備から道路や造成工事の発注まで、幅広い業務に携わりました。一方、道路係や街路係では、より地域に密着した道路整備が中心となります。
ー市役所で働いていて、やりがいを感じるのはどのような時ですか?
田中:やりがいを感じる瞬間は、やはり地元の方々から感謝の言葉をいただいた時です。特に、大規模な工事で、地域に貢献できたと実感できた時は、大きなやりがいを感じます。「道路が広くなって便利になったよ」「ありがとう」といった言葉を聞くと、この仕事をしていて良かったと心から思います。
また、自分が関わった道路が綺麗に舗装されているのを見ると、つい友達に自慢したくなります(笑)自分で作った道路には、やはり特別な思い入れがありますね。これは実際に工事を担当すると実感すると思います。

ー逆に、入庁してから大変だと思ったことも教えてもらえますか?
田中:大変なことは、関係者との調整です。工事を行う際には、地元住民の方々、工事業者の方々、コンサルタント会社の方々など、多くの人と協力しなければなりません。
それぞれの立場や意見を尊重しながら、合意形成を図っていくことは、簡単なことではありません。予算の制約もある中で、関係者が納得する形で、且つより良い道路整備を行うためには、思っている以上に繊細な調整が必要だと日々感じています。
ー現在の業務では、工業高校で学んだことも活かされていますか?
田中:測量に関する知識や経験などは、市役所での仕事にも役立っていると思います。
しかし、学校で学んだこと以外にも、現場でしか経験できないようなことはたくさんあります。毎回同じ工事現場は無いと思っていますし、現場では思いがけないような調整が必要になることもあります。現場経験を重ねないと分からないことばかりで、毎日が勉強ですね。
ー土木技術職としての働き方について教えてください。
田中:土木関係の業務は年度単位で計画を進めていく事が多いため、抱えている工事によって上下はあるものの年間を通じて比較的仕事量は安定しているかと思います。
ただ、年度末は、完成した現場の検査や次年度の事業計画などがあるため繁忙期となります。残業が必要になることもありますが、工事期間を含め休日に出勤するようなことはほとんどありません。
自身で業務を調整すれば休みも取りやすいので、とても働きやすい環境だと思います。
ー働く環境として袋井市役所の雰囲気や特徴を教えてください。
田中:袋井市役所は、一言でいえばアットホームな雰囲気です。私が所属する部署は、比較的若い職員が少ないということもあり、ベテランの先輩職員の方々が引っ張ってくれているという感じです。最初は人前で話すのが苦手でしたが、先輩職員の方々に支えられ、今では地元の方々への説明なども、自信を持って行えるようになりました。
特徴的なところとしては、近隣4市町の土木技術職と連携して「遠州どぼくらぶ」というチームを立上げ、土木の魅力を発信する取り組みをしています。
ー「遠州どぼくらぶ」とはどのような活動をしているのでしょうか?
田中:建設業界、特に土木は「きつい」とか「厳しい」といった、どちらかというとマイナスなイメージを持たれているという現状があります。そこで、私たちは土木業界のイメージを変えるため、「遠州どぼくらぶ」を立ち上げました。
若い世代、特に子どもたちに土木の面白さを知ってもらい、将来、市役所に限らず多くの人に土木の魅力を発信し、土木に携わる人材を増やしたいと考えています。普段は中々見ることができない工事現場の様子をSNSに投稿したり、土木の魅力を知ってもらうためのイベントを行ったりもしています。自治体だけでなく、地元の建設業者や市内大学の理系学部の学生を巻き込むなど、地域全体で土木の魅力を発信していこうという雰囲気があり、とてもいい取り組みだと思っています。




↑「遠州どぼくらぶ」の活動は、是非こちらでもご確認ください↑
ー袋井市の魅力を教えてください。
田中:袋井市は「ちょうど良い田舎」ですね(笑)田んぼが広がるのどかな風景の中に、お店や海もあり、とても住みやすい魅力的な街です。田舎でありながら浜松市にも近いので、どこかへ出かけるにしてもあまり不便は感じません。
夕暮れ時の田んぼの景色は、とても綺麗ですよ。海も近いので、気軽に海辺でリフレッシュすることもできます。
ー最後に、土木技術職を目指す方へのメッセージをお願いします。
田中:土木職、特に自治体の土木技術職は、地域に貢献できるやりがいのある仕事です。地元の方々だけでなく、職人さんやコンサルタント会社、大学の先生など、様々な人と関わることができるのも魅力です。私自身、人と話すのは苦手でしたが、この仕事を通してコミュニケーション能力も身につきました。
もし、少しでも土木に興味がある方、地域に貢献したいという思いのある方は、袋井市役所で土木技術職として働く選択肢も考えてみてください。きっと、新しい自分に出会えるはずです。

ー本日はありがとうございました。
取材・文:パブリックコネクト編集部(2025年1月取材)