八幡市消防本部で働くももたさんのインタビュー記事です。大学まで柔道に打ち込んできたももたさん。その体力と精神力を人のために活かしたいと消防士の道へ。
男女関係なく成長を後押ししてくれる八幡市消防本部の魅力や、仕事のやりがい、そして今後のキャリアについて、語っていただきました。
ーまずは、ももたさんが消防士を目指された経緯についてお聞かせください。
ももた:令和6年に入庁し、現在消防士として2年目になります。大学では柔道に打ち込んでいたのですが、就職を考えたときに、今まで培った体力や、理不尽なことにもへこたれない精神力にも自信があり、それを活かせる仕事をしようと考えていました。
この強みを、困っている人や助けを求めている人のために活かしたいと考え、消防士になろうと決意しました。情報収集は、SNSなどで色んな地域の消防士PRのものを見ていましたね。

ー柔道で培ったものが、今の仕事に繋がっているのですね。八幡市を選ばれた理由は何だったのでしょうか?
ももた:地元である京都で働きたいという思いがありました。それで、柔道引退後に受けられる自治体を探しており、八幡市を選びました。
―決め手はなんだったのですか?
ももた:八幡市はほとんど訪れたことがなかったのですが、二次選考での面接の雰囲気が決め手となりました。実は、その後の三次試験の日程が他自治体と重なってしまい、どちらかを選ばなくてはならなくなったんです。
二次面接の際は、実際に面接官として、現場で働く上司の方々が出てこられたのですが、とても話しやすい雰囲気を作ってくださいました。それでこの職場なら、自分が伸び伸びと働けるんじゃないかと感じ、八幡市を選びました。
ー入庁後の流れについて教えてください。まずは消防学校に入られたのですよね。
ももた:はい、4月に入庁して、まずは消防学校に半年間通いました。10月頃に消防学校を卒業して八幡市消防本部に戻ってきたのですが、すぐには正式配属されません。まずは2ヶ月ほど、まだ一人としてカウントされない形で、実務研修を受けました。消防隊や救助隊など、いろいろな部署をローテーションで経験させていただき、それが終わってから12月に正式に配属されました。
ー消防学校での学びと、現場での実務研修では、どのような違いがありましたか?
ももた:消防学校は、本当に「基礎の基礎」を教わる場所で、土台を作ってくれるところです。でも、現場ではその土台を応用して、さらに派生させていく必要があります。特に、隊で連携して活動するという経験は、消防学校ではあまりできません。
例えば、火災訓練では隊長、機関員、隊員2名というチームで動くのですが、隊長の指示で動き、他の隊員と連携してホースをどう伸ばすかなど、常にコミュニケーションを取りながら一つの火災に向かっていきます。こうした実践的な連携は、消防学校の後半の2週間くらいしか経験できず、しかも大人数なので回数も限られていて、ほとんど分からない状態でした。現場での研修は、その点で全く違いましたね。
ー現在は、消防隊としてどのようなお仕事をされていますか?
ももた:消防係に所属しています。火災の際には最前線で活動する部隊です。ただ、八幡市の特徴として、消防隊でも指令業務や救急、救助の応援など、非常に幅広い業務に携わります。一つの役割に縛られず、様々な事案に対応する力が求められる職場です。
ー勤務体制はどのようになっているのでしょうか?
ももた:当務、非番、当務、非番、公休、公休というサイクルが基本です。月曜日に勤務すると、火曜日は非番、水曜日に勤務し、木曜日は非番、金曜日・土曜日が週休日で、日曜日が勤務という流れです。月に1回程度、3当務といって、当務・非番・当務・非番・当務・非番・公休・公休というサイクルが入ります。勤務時間は、朝の8時半から次の日の朝8時半までの24時間勤務です。
私が所属している本署には一課と二課があり、当番制で勤務しています。1回の勤務に出る人数は、最低でも15人は必要です。その15人の中で、当直長、消防隊(4名)、救助隊(4名)、救急隊(3名)、指令員(3名)といった役割に分かれています。私は消防隊なので、基本的には火災に出動します。
ただ、日によっては役割が変わり、昨日は警戒隊だったので、心肺停止の方の救急応援に行ったり、ボヤなどの通報があれば火災の危険がないかを確認しに行ったりしました。また、そこまで人手が必要ない救助事案であれば、私たち消防隊が出動することもあります。
ー実際に現場に出て、特に印象に残っている経験はありますか?
ももた:まだ火災現場の経験はありませんが、救急の応援で出動した際に、初めて心臓マッサージを行いました。その時の、自分の処置一つが人の命に直結するという責任の重さと、手の感覚は今でも忘れられません。
一生懸命訓練してきたことが、誰かの命を救うことに繋がった瞬間、「この仕事を選んで良かった」と心から思えました。
ー入庁前に抱いていたイメージと、実際に働いてみて感じたギャップはありましたか?
ももた:一番大きなギャップは、女性である私を「特別扱い」せず、一人の消防士として最前線に立たせてくれることです。正直なところ、入る前は女性だからという理由で、補助的な役割に回されるのだろうと漠然と思っていました。
しかし、要救助者に最初に接触するという、救助活動で最も重要な任務を任せてもらえるように、日々訓練に励んでいます。体力や性別に関係なく、やる気と能力があれば、一番大事な仕事を任せてもらえる。これは私にとって嬉しい驚きであり、非常に良いギャップでした。
消防隊に所属する女性は今の課では私だけですが、だからといって体力を使わない部署に配属されるのではなく、最も体力や筋力が求められる消防隊に配属していただけたことに、大きなやりがいと感謝を感じています。
ー期待に応えるために、日々厳しい訓練に励まれているのですね。
ももた:自信があったはずの体力も、まだまだ足りないと感じることばかりです。防火服や空気呼吸器といったフル装備は本当に重く、それを着装して一刻も早く現場に向かうスピード感が求められます。
先日も、先輩方ですら大変な訓練で、限界まで追い込みましたが悔しいことに最後までやり遂げることができませんでした。もっと体力をつけなければ、と日々痛感しています。そこが今、一番の課題であり、乗り越えるべき壁ですね。
ー職場の雰囲気はいかがですか?男性が多い環境で、馴染むのは大変でしたか?
ももた:最初は、皆さんがすごく気を使ってくださっているのが伝わってきました(笑)。でも、半年経って私の性格も分かってもらえたのか、今ではとても自然に接してくれます。私が訓練でしんどそうな顔をしていたら、すぐに先輩が気づいて声をかけてくれたり、親身に相談に乗ってくれたり。本当に温かい職場です。
ー厳しさの中にも、温かさがあるのですね。
ももた:はい。特に尊敬する係長は、何でもできるすごい方なのにとてもフレンドリーで、公私にわたって相談に乗ってくれます。その係長が「色々な人とコミュニケーションを取った方がいいよ」と背中を押してくれたおかげで、職場に溶け込むことができました。ただ厳しいだけでなく、オンとオフのメリハリをつけながら、私たちの成長を真剣に考えてくれていると感じます。
ー最後に、改めてももたさんが感じる八幡市消防本部の魅力を教えてください。
ももた:訓練は本当に厳しいですが、その後のフィードバックが素晴らしいところです。決して否定から入るのではなく、「ここの動きは良かったよ」「次はこうしたら、もっと良くなる」というように、必ずポジティブな言葉で課題を伝えてくれます。これによって、次も頑張ろうという意欲が湧いてきます。
そういった環境があるところが、八幡市消防本部の一番の魅力だと思います。
ー本日はありがとうございました。
取材・文:パブリックコネクト編集部(2025年6月取材)