京都府八幡市役所で働く寺田さんのインタビュー記事です。高齢介護課、健康推進課での長年の経験を経て、昨年新設された「ふるさと創生課」のスターティングメンバーとして抜擢された寺田さん。
京都府下で8年連続最下位という逆境からスタートした八幡市のふるさと納税を、1年で寄付額8倍へと成長させた舞台裏と、地域ブランド「ヤワタカラ」にかける想い、そしてこれからの公務員像について伺いました。
- 「現場」で培った土地勘と、10年かけて取り組んだ「健幸づくり」
- 京都府下8年連続最下位。ゼロからのスタートで見つけた「一番大切なこと」
- 事業者との信頼関係の構築が、寄付額8倍の奇跡を生む
- 「ヤワタカラ」ブランドを、地域を牽引する力へ
- 公務員の枠に収まらない。「面白い仕事」は自分で創り出す
「現場」で培った土地勘と、10年かけて取り組んだ「健幸づくり」
ーまずは寺田さんのこれまでの経歴や、八幡市役所に入庁された経緯から教えていただけますか。
寺田:京都府内の出身なのですが、大学卒業後は1年間、いわゆる就職浪人を経験しました。自分なりに「本当にやりたいことは何か」と考え直したとき、一番に浮かんだのが「身近な場所で人の役に立ち、喜んでもらいたい」という想いでした。そこから公務員試験に挑戦し、2011年に八幡市役所に入庁しました。

ー入庁後はどのような業務を担当されてきたのですか。
寺田:最初の4年間は高齢介護課で介護保険の保険料や地域高齢者の支援などの業務をしました。当時は八幡市の土地勘が全くなかったのですが、業務を通じて市内の住所やエリアごとの特徴を肌で感じることができ、非常に良い経験になりました。その後、健康推進課に異動し、そこには10年間在籍しました。
ー同じ部署に10年というのは、自治体では比較的長い方ですよね。そこではどのようなミッションがあったのでしょうか。
寺田:当時の市長が「健康づくり」に非常に力を入れており、単に病気を防ぐだけでなく、都市環境そのものを健康に過ごせるように整える【「健幸まちづくり」という新しい概念を取り入れ、新たな取り組みを八幡市でも進めていくという大きなミッションがありました。
ー10年間の中で、特に印象に残っている成果はありますか。
寺田:令和元年度からスタートした「やわた未来いきいき健幸プロジェクト」ですね。市民がウォーキングなどの健康活動をするとインセンティブがもらえる仕組みで、専用の活動量計やアプリを活用しました。人口約7万人の八幡市で、約5,000人が参加する一大事業に成長したんです。分析の結果、この事業によって年間数億円規模の医療費抑制効果があるというデータも出せました。公務員生活の中でも、ゼロから事業を立ち上げ、目に見える効果を実感できたことは大きな自信になりました。

京都府下8年連続最下位。ゼロからのスタートで見つけた「一番大切なこと」
ーその後、昨年4月から現在の「ふるさと創生課」に異動されたわけですが、こちらは新設された
部署なのですね。
寺田:はい。実は八幡市、ふるさと納税の受け入れ額が京都府内の自治体の中で「8年連続最下位」という不名誉な記録を持っていたんです。これまでは市としてふるさと納税と少し距離を置いていた背景があったのですが、新市長の強いリーダーシップのもと「本気で取り組もう」と立ち上がったのがこの部署です。
ー立ち上げ時の体制はどうだったのでしょうか。
寺田:最初は私を含めて専属2名、兼務3名の計5名という最小限の人数で発足しました。準備期間もほとんどない中でのスタートでしたが、何から手をつけるべきかを必死に考えました。
ーまず最初に取り組んだことは何ですか。
寺田:テクニックや戦略を練る前に、まずは「自分の足で事業者さんのもとへ通うこと」から始めました。事業者さんとの信頼関係を築くこと、これが何よりの土台になると確信していたからです。当時はふるさと納税の知識もまだ乏しかったので、「自分にできることは何か」と考えた結果、とにかく会いに行こうと。


事業者との信頼関係の構築が、寄付額8倍の奇跡を生む
ーその結果、1年目でどのような変化がありましたか。
寺田:まず返礼品の数は、1年間で約3倍に増えました。八幡市には特に大きな企業はありませんが、高い商品力を伝える事業者やこだわりのある作物を育てる農家さんなど、素晴らしい資源がたくさんあります。そういった「地域の宝」を一つひとつ掘り起こしていきました。
ー寄付額についても、驚くべき結果が出たと伺っています。
寺田:前年度比で、寄付額は約8倍にまで伸びました。もともとの数字が小さかったということもありますが、これほどまでに反応があるとは思っていませんでした。

ー8倍!それは凄まじい伸び率ですね。
寺田:実は、昨年は広告を打つための予算がありませんでした。だからこそ、地域の特産品を持って泥臭く各地のイベントに出店し、PR活動を続けました。土日の出勤も増えましたが、「出展できるイベントはすべて受ける」という方針で、とにかく露出を増やしたんです。
ー戦略的なマーケティングというよりは、情熱と行動力ですね。
寺田:とにかく顔の見える関係性を大切にしました。事業者さんも、私たちが必死に動いている姿を見て「あいつらが頑張っているなら、一緒にやってやるか」と思ってくださった。何げない会話をするだけのようなコミュニケーションでも、そこから「こんな新しい商品を開発してみようか」というアイデアが生まれるんです。この「顔の見える信頼関係」こそが、八幡市の最大の武器だと感じています。


「ヤワタカラ」ブランドを、地域を牽引する力へ
ーふるさと納税と並行して、「ヤワタカラ」という地域ブランドの展開も注力されていますよね。
寺田:はい。市が認定する特産品ブランドですが、これまでは「すでにある良いもの」を認定するフェーズでした。しかしこれからは、ブランド自体が価値を持ち、事業者が「ヤワタカラに認定されたいから新しい商品を開発しよう」と思えるような、牽引力のある存在にしていきたいと考えています。
ーブランドが商品を引っ張っていく、という発想ですね。
寺田:そうです。自治体が伴走支援することで、事業者さんが単独では難しかった新しい挑戦を後押ししたい。ふるさと納税はそのための強力な「手段」の一つです。地域の特産品を通じて八幡市の魅力を対外的に発信し、最終的には地域経済全体を盛り上げていく。それが「ふるさと創生課」の真の役割だと思っています。
公務員の枠に収まらない。「面白い仕事」は自分で創り出す
ー寺田さんが「一緒に働きたい」と思うのはどんな方でしょうか。
寺田:「自分とは違う考え方を持っている人」ですね。同じタイプが集まるよりも、異なる視点がある方が事業を推進する上での選択肢は広がります。そして何より、八幡市を「良くしたい」という純粋な愛着を持っている人と一緒に仕事がしたいです。
ルーティンワークを正確にこなすことも大切ですが、それだけならこれからはAIに取って代わられてしまいます。前例がどうだったかではなく、「なぜこれをやるのか」を自分の頭で考え、納得できないなら変えていく。そんな探求心がある人と働きたいですね。
ー八幡市役所には、そういった挑戦を受け入れる土壌があるのでしょうか。
寺田:あります。私自身、ふるさと納税の担当になって、他自治体の担当者さんと交流する機会が増えましたが、皆さんいい意味で「公務員の枠」に収まっていないんです(笑)。成果が見えやすく、結果がダイレクトに返ってくるこの仕事は、本当に面白いですよ。

ー最後に、これから公務員を目指す方や転職を考えている方へメッセージをお願いします。
寺田:「公務員は堅苦しくてつまらない仕事だ」と思っている人にこそ、八幡市の現場を見てほしいです。自分の行動ひとつで街が変わり、市民や事業者さんに感謝され、信頼が積み重なっていく。そんな「手応え」のある瞬間がここにはたくさんあります。決まったレールを走るのではなく、自分の頭で考え、泥臭く動いて、一緒にこの街の未来を創っていきましょう。
ー本日はありがとうございました。

取材・文:パブリックコネクト編集部(2026年4月取材)
出した成果の裏側にあったのは、泥臭く、情熱的な「対話」の積み重ねでした。寺田さんの話を聞いていると、自治体職員という仕事が、クリエイティブでエネルギッシュなものに感じられるインタビューでした。
【八幡市ふるさと応援寄付金サイト】
さとふる https://www.satofull.jp/city-yawata-kyoto/
楽天ふるさと https://www.rakuten.co.jp/f262102-yawata/
ふるさとチョイス https://www.furusato-tax.jp/city/product/26210
ファミマふるさと納税 https://furusato.family.co.jp/municipality/detail/?municipalid=262102
ココふる https://yawata-city.cocofuru.jp/



