「市役所の仕事は前例踏襲で退屈だ」そんな固定観念を抱いている人にこそ、ぜひ知ってほしい部署があります。
青森県八戸市が、若者の自己実現やUIJターンの促進、そして人口減少に歯止めをかけるべく新設した「若者活躍応援課」です。総合政策部に所属するこの新しい部署には、決まりきったルーティンや、若手の意見を阻む壁は一切存在しません。
今回は、ベテランでもあり、課の頼れるリーダーМ課長と、総務省への出向経験も持つHさんにお話を伺いました。「とにかく毎日がやりがいと楽しさに満ちている」と笑顔で語るお二人。そこには、お互いを深く信頼し合う素敵な関係性と、「自分たちの手で地域の未来を切り拓く」というクリエイティブな熱量がありました。
- ゼロからのスタート?新設部署「若者活躍応援課」のミッション
- 前例もルールもない!「楽しみとやりがいしかない」と言い切れる理由
- 氷河期を乗り越えたベテラン、関東からUターンした若手、それぞれのキャリアパス
- 自分で地域を変えられる。国や民間にはない「地方公務員」の魅力
- 100年先も元気な八戸へ。未来の仲間に向けたメッセージ
ゼロからのスタート?新設部署「若者活躍応援課」のミッション
ーまずは、「若者活躍応援課」がどのような部署なのか、簡単に教えていただけますか?
M:若者活躍応援課は、今年(令和8年)の4月に総合政策部の中に新しく設置された、いわゆる企画経営系の部署になります。私はここで課長職を担っております。
部署設立のきっかけは、現在の八戸市長が掲げた公約です。八戸市では若者の人口流出に歯止めがかかっていないという大きな課題があり、市長の「なんとかしたい」という強い思いから、この専門部署が立ち上がったんです。
ー若者の人口流出という大きな社会課題に立ち向かうためのチームなのですね。具体的にはどのような業務を行っているのでしょうか。
M:主なミッションは、若い人たちが八戸で自己実現できるようなまちにしていくこと、そして八戸の魅力を知ってもらい、大学進学などで一度県外に出たとしても「また戻ってきたい」と思えるような仕掛けを作ることです。
具体的には、若者がやりたいことを実現するための「八戸未来創造塾」や、産学官が連携したUターン事業、総務省の事業である「ふるさとみらいカレッジ」など、新規プロジェクトを次々と仕掛けています。
ーとても幅広い事業ですね。Hさんは、地元そして若手としての視点をお持ちだと思いますが、この課題についてどう感じていますか。
H:実際に私の同級生でも、県外や市外に出ていってしまった人はたくさんいます。でも、友人たちと話していると、「本当は八戸に戻りたい」「八戸で暮らしたい」という本音を漏らす人がすごく多いんです。
だからこそ、戻りたいと思ったときにしっかり受け皿になれるような、魅力的なフィールドを私たちが作っていかなければいけないと、強く実感しています。

前例もルールもない!「楽しみとやりがいしかない」と言い切れる理由
ー新設部署ということですが、前例がない中でのスタートだと不安も大きかったのではないでしょうか?
H:それが、私にとってはやりがいと楽しみなことしかないんです(笑)
もちろん新しい部署なので一から作っていくものばかりですが、あまり「こうしなければいけない」という決まりきった形が存在しない分野なので、自分の発想次第で本当に何でもできる。そこがとにかく面白いです。
M:Hさんがそう思ってくれていると本当に心強いですね。私はここに来る前は政策推進課という部署にいたのですが、そこでも市として取り組むべき事業をゼロから形にするという面白さを感じていました。
今回もこうして若者に特化した専門部署ができたことで、より深く議論しながら新しいことが進められるようになると思っています。市役所の仕事と聞くとルーティンワークを想像されるかもしれませんが、自分たちが必要だと思うことを自由に企画して実現できるのは、この部署ならではのやりがいだと思います。
ーお話を聞いていると、お二人のコンビネーションも素晴らしいですね。普段の職場全体の雰囲気はいかがですか?
H:実は、この課ができたときにM課長が最初にメンバーに向けて言ってくれた言葉が、私たちの大きな支えになっているんです。M課長は「どんどんチャレンジしていこう。責任は自分が取るから。怖がらずに、とにかく楽しんでいこう」と言ってくれたんですよ。
M:いやいや、そんな格好いいものではないですよ(笑)でも、自分たちが楽しんで仕事をしていなければ、若い人たちに八戸の魅力なんて絶対に響かないと思うんです。だから、メンバーにはとにかくのびのびと楽しんでほしいなと思っています。
H:決してこの場でM課長を持ち上げるわけではないんですけど(笑)本当に市役所のイメージ以上に意見が通りやすいですし、若手でも自分の考えを形にできる素晴らしい職場風土です。そうした環境を作ってくれている上司に感謝しています。

氷河期を乗り越えたベテラン、関東からUターンした若手、それぞれのキャリアパス
ーお二人のこれまでのキャリアについても教えてください。そもそも公務員を目指したきっかけは何だったのでしょうか?
M:私は平成14年の入庁になります。当時はちょうど就職氷河期の終わりかけで、公務員の採用倍率が20倍を超えるような非常に難しい時代でした。民間企業の経営が厳しく、リストラを多く行っていた時期でもあり、最初は安定性を求めて公務員を志望しました。
今思えば、色々とチャレンジしてみることも好きだったので、「難しい」と言われていたからこそ、公務員試験を受験してみたいという気持ちもありましたね。
また、当時は「平成の大合併」の時期で、私の地元である南郷村(現・八戸市南郷)が八戸市と合併するという話題があり、そうしたダイナミックな行政の仕事に携わってみたいという興味もありました。
ー入庁前からチャレンジ精神にあふれていたのですね。入庁後はどのような部署を歩まれたのですか?
M:最初の3年間は農業振興課で畜産の仕事、その後は道路建設課で道路を作るための用地買収に6年間携わりました。用地買収は、市の業務の中では「大変な部署」とイメージされることも多いですが、民法や不動産登記の知識を必死に学び、交渉スキルを身につけられたここでの経験は大きな財産です。
その後、資産税課を経て、秘書課で市長秘書を3年間務めました。ここではトップの判断を間近で見られたため、経験と視野が大きく広がったと思っています。そして政策推進課での9年間を経て、現在の若者活躍応援課へと繋がっています。
ー非常に多彩なご経験ですね。Hさんはいかがでしょうか?
H:私は生まれも育ちも八戸なのですが、大学進学で首都圏へ出ました。どうしても外に出たかったというわけではなく、自分が学びたい分野を選んだ結果としての県外進学だったのですが、一度八戸を離れたことで、初めて地元の暮らしやすさや温かさといった「八戸の良さ」を再確認し、就職を考えたときは「絶対に八戸に戻りたい」と決めていました。
営利を追求する民間企業での働き方よりも、市民の生活や地域のために直接働ける市役所の仕事が自分の性に合っていると感じ、民間企業は受けずに八戸市一本で受験しました。
ーHさんも入庁後は様々な現場を経験されているのですか?
H:はい、最初はこども未来課で保育園関係の福祉業務を3年間経験しました。その後、政策推進課へ異動になり、そこでM課長と同じ部署になりました。政策推進課では市全体の取りまとめや周辺市町村との広域連携に関わり、視野がグッと広がると同時に、たくさんの職員との繋がりができました。
その後、1年間総務省への出向を経験させていただきました。ここでは選挙関係の部署で参院選や衆院選に携わったのですが、市町村の業務とは全く異なる、とても貴重な経験をすることができました。
そしてこの4月、若者活躍応援課に配属となりました。

自分で地域を変えられる。国や民間にはない「地方公務員」の魅力
ーHさんは「若手」が活躍できるような環境だと感じた具体的なエピソードなどはありますか?
H:一つとても印象に残っている業務があります。政策推進課時代に地域おこし協力隊の担当になったのですが、当時は地域おこし協力隊の活動が、各分野を所管する部署でバラバラになっていて、市全体としての体系的な連携ができていない状況だったんです。
このままではいけないと思い、私自身の提案で、市の受け入れ体制を大きく変えようとしたのですが、若手である私の「変えたい」という提案に対して、当時の上司たちが「ぜひやってみろ」と背中を押してくれたんです。
ー若手の意見であっても、組織として応援してくれるのですね。
H:はい。市全体で前向きに取り組む体制を作ったことで、周辺の町村とも連携して大きなイベントを開催することもできました。
実は、1年間の国への出向を経験したことで、地方公務員として働く魅力も強く感じるようになったんです。国の仕事は法律や制度を作るスケールの大きなものですが、一職員の意見で何かを動かすのは簡単ではありません。それに対して地方公務員は、私のように経験の浅い職員でも、地域のために「こうしたい」と考えたことを、自分の手で直接実行して、目の前の地域を変えていくことができます。
それが何よりの魅力ですし、特に八戸市は「地域のためにもっと変えていこう」という前向きなパワーに満ちた自治体だと誇りを持っています。
ーM課長は、八戸市役所で働く魅力をどのようなところにあると思いますか?
M:八戸市は北東北の中核的な役割を担う都市です。そこで働くということは、自分たちの手でまちを良くしていくという大きな誇りとやりがいを持てる仕事だと思っています。
また、仕事面だけでなく、プライベートを充実させられる環境があることも魅力ですね。
ーM課長ご自身も、公私ともに充実されているのですか?
M:はい、私はJリーグなどを担当する審判員を指導・評価する「1級インストラクター」の資格を持っておりまして、休日にサッカーの審判インストラクターとして活動しています。兼業の許可ももらっているため、休日は全国各地の試合に赴いています。
公務員としての本業を大切にしながら、自分のスキルや情熱を別のフィールドでも活かすことができるんです。そうやって仕事とプライベートを切り替えてどちらも楽しめるのは、とても素敵なことだと思います。
そうした個人の活動にも広く理解がある、応援してもらえる環境があるというところも、八戸市役所で働く一つの魅力だと思っています。

100年先も元気な八戸へ。未来の仲間に向けたメッセージ
ーそれでは最後に、これから八戸市役所を目指す受験生や、地元へのUターンを考えている方々へメッセージをお願いします。
M:公務員だからこれができない、という枠にとらわれる必要は全くありません。「公務員でもここまでできるんだ」「公務員だからこそこれができるんだ」という若い柔軟な発想で、これからの行政をどんどん変えていってほしいですね。
まずは何より、八戸というまちを好きになってもらいたいと思っています。そして、若い人たちが「このまちに残りたい、戻ってきたい」と思えるような取り組みを、ぜひ私たちと一緒に前向きに仕掛けていきましょう。
みなさんの挑戦を待っています!
H:私たちが今、若者活躍応援課で真剣に考えているのは、人口減少が進む中で「100年先も八戸市がずっと元気でいるためにはどうしたらいいか」ということです。
これからの未来を作る若い世代が、どうすれば八戸でもっと生き生きと自分らしく暮らせるか、それをクリエイティブに考えて形にできるのがこの仕事です。
八戸にいる方はもちろん、私のように一度外に出たという方も、ぜひ八戸に戻ってきて、これからの地域の未来を一緒に作っていきましょう!
ー本日はありがとうございました。
「失敗しても、責任は俺が取る」M課長が新設部署の立ち上げ時に放ったその言葉に、八戸市役所の持つ「本当の強さ」と温かさが凝縮されていると感じました。お堅い、前例踏襲といったお役所のイメージを覆し、若手職員が「楽しさとやりがいしかない」と語る職場。そこには、お互いをチームメイトとして尊重し、信頼し合うベテランと若手の理想的な関係性がありました。自分のアイデアで地域の未来を100年先まで変えていける。そんな地方公務員ならではのダイナミズムを、お二人の熱量から真っ直ぐに受け取った取材でした。
取材・文:パブリックコネクト編集部(2026年5月取材)



