愛媛県大洲市観光まちづくり課で働く久保さん。県外の大学に進学し、卒業後は地元大洲に戻ってきたという経歴です。生まれ育った地で「観光」をテーマにまちづくりをする。新たな魅力に気づくことができるとても魅力的な仕事のようです。そんな久保さんに大洲市で働くやりがいを伺いました。
—まずは久保さんの経歴について簡単に教えてください。
久保:私は大洲市の河辺という地域の出身で大学時代だけ広島に出ていました。積極的に地元から離れようと思っていたわけではないのですが、ずっと地元以外を知らずにいるのもどうかと思ったのと、両親からも外から見たらわかることもあるからと勧められたこともあり、広島の大学への進学を決めました。
大学卒業後、令和4年度に大洲市役所に入庁しました。
現在は観光まちづくり課という部署で、歴史的資源を活用したまちづくりといった業務に携わっています。
—そのまま地元を離れて働こうとは思わなかったですか?
久保:確かに都会の便利な暮らしにも憧れていた時期はありましたが、実際に離れてみると大洲の良さというものが見えてきましたね。
例えば、大洲と比べれば広島の方がだいぶ都会なので、人の多さとか交通機関の混雑状況は全然違って見えました。そういった環境で生活しているうちに、人が少ない大洲の方が、地元とより密接に関わるような仕事ができるのではないかと思い、地元に戻ることを決めました。
大洲は誰とでも挨拶ができるような環境で、地域の人みんなが仲がいいという印象をもっていて、そういった環境で地元のために働きたいと思ったんです。
—就職活動をする上で、民間企業も選択肢にありましたか?
久保:私は公務員一本だったので、民間は考えていませんでした。
実は父も大洲市の職員で、現在でも勤務場所は異なるものの同じ市職員として働いています。父は広報関係の仕事をしていたこともあり、市内の写真をとったり、一緒にイベントに行ったりということもありました。家でもよく仕事の話を聞かせてもらったりと、父の働く姿を見て育ってきたので、昔からぼんやりとではありますが公務員として働くことを意識していました。
また、大学のゼミも公務員を目指す人が多かったので、私の中では就職=公務員といった考えになっていました。
—お父様のお仕事が魅力的に映ったのはとても素敵ですね。久保さんの現在の業務について詳しく教えていただけますか?
久保:現在は観光まちづくり課という部署に在籍しているのですが、1年目は観光振興係で、主にイベントを企画、開催するようなことをしていました。
現在はまちづくり係となり、最初にお話しした通り歴史的資源を活用したまちづくりといったことに携わっています。
大洲市には過去製糸業で財を成した方々が住んでいた貴重な古民家が沢山残されています。古民家は古くなるにつれて維持管理が大変になるので、所有し続けるのが難しい、取り壊すべきかといった声もあります。
ただ、せっかくの歴史的風致を活かすことができないかということで、2019年あたりから、この古民家を活用した観光を進めることとなったんです。
例えば、古民家を活用した分散型の宿泊施設が1つの例ですね。1つの建物に全てが入っているわけではなく、複数の古民家を活用して、フロント棟や宿泊棟がそれぞれ点在しているようなイメージです。
観光地域づくり法人(DMO)と共に、官民連携してこのようなまちづくりを進めています。
私はこういったまちづくりの中で、主に戦略ビジョンを作るような業務を行っています。
戦略ビジョンとは、古民家改修にかかる補助金制度を検討したり、観光まちづくりをどのように進めるのかといった計画を指します。
もちろん私1人で全てを考えているというものではなく、私が考えた戦略ビジョンについて、上司とも相談しつつ進めていっています。
—建築や都市開発とはまた異なるかたちでのまちづくりですね。久保さんにとっての仕事のやりがいはどういったところにありますか?
久保:元々地元なので、大洲のことはわかっていると思っていました。ところが、実際にこうして大洲の魅力を発信するような仕事に就いてみると、大洲の魅力をわかっていなかったんだなということを実感しますね。
高校まで住んでいた時と今とで、見える風景は全く違って見えています。もちろん実際に建物や環境が変わったということもありますが、それ以上に魅力がわかっていなかったのだと思います。
業務をしながら地元の魅力を知ることができるのはとても楽しいですし、やりがいにも感じますね。
—入庁前にイメージしていた働き方と現在の働き方、大きな違いはありましたか?
久保:父の働く姿をみていたということもあり、働き方は概ねイメージしていたとおりでした。
ただ、現在の観光まちづくり課が特殊ということもありますが、とにかく動くことが多いですね(笑)一般的には、デスクワークや事務仕事といったイメージが多いかと思いますが、現在は事務だけでなく、イベントのスタッフとして働いたり、実際にまち中に出ていくといったことが頻繁にあります。
これに関しては、自分が思っていたような働き方とは違っていたかもしれないですね。
—地元として、且つ観光担当として感じる大洲市の魅力を教えてください。
久保:まず他の地域に比べて、人がとても温かいと感じています。これは一度外にでたからこそ、より一層感じているところですね。
観光に関しては、現在まさにまちづくりを進めているので、是非景観や雰囲気を楽しんでいただきたいですね。ここ最近認知度は上がってきていますが、混雑するようなことは少なく綺麗な街並みを静かに楽しむことができるのは魅力的に感じてもらえると思います。
また、大洲市は2023年に「世界の持続可能な観光地」文化・伝統保全で世界1位に輝きました。これは行政だけでなく、まち全体でまちづくりを進めた結果であり、文化を保護するだけではなく、活用するといった姿勢が評価されたのだと思っています。
6月に入ると日本三大鵜飼に数えられる「大洲のうかい」も始まります。鵜匠船と客船の屋形船が併走して川下りをする、国内でも珍しい「合わせうかい」という手法を見ることができるのでこちらもとてもお勧めです。
—久保さんの今後のビジョンについて教えてください。
久保:まずは現在の観光まちづくり課としての仕事が本当に楽しいので、ここでできることをもっと進めていきたいと思っています。
世界1位に選ばれるなど、認知度は上がってきているかと思いますが、まだまだ魅力は発信できるはずです。地元、国内だけでなく、世界の人々に向けて大洲の魅力を発信していきたいですね。
今後に関しては、まだまだ経験も浅くビジョンといえるような大きな話はできませんが、逆に今後自分がどういった仕事をするのかは今からとても楽しみですね。
例えば、父が携わった業務を辿るというのも面白そうだと思っています。父は広報担当として働いていた時期もあったので、実際自分が広報担当となったら、父が伝えた魅力と自分が伝える魅力、それぞれ違う視点で見てみたいですね(笑)
—親子で発信した魅力、どういった違いがでるのか楽しみですね!最後に、求職者の方にメッセージをお願いします。
久保:地元で働くということに私はとても魅力を感じています。
自分の地元で、地元の人のために働くことができるのはとても楽しいですね。
これから多くの魅力を発信するためにも、大洲を知る人、大洲出身の方には是非一緒に働いてもらいたいと思っています。
外からどう見えるのか、といった視点も重要ですが、やはり大洲の魅力は地元の人間が伝えた方がよく伝わると思っています!
—本日はありがとうございました。