高山市役所で働く建築技術職の門前さんのインタビュー記事です。大学で建築を学んだ後、合併前の丹生川村役場に事務職として入庁。合併を機に建築職へと転身し、現在は建築住宅課で活躍されています。専門知識を活かし、建築確認や法律審査、公共施設の建設・管理、そして高山市の美しい景観を守る仕事まで、多岐にわたる業務経験を持つ門前さん。20年にわたる市職員としての経験から見えてきた、自治体で建築技術職として働くことの魅力や難しさ、そして高山の街づくりへの想いを伺いました。
ーこれまでのご経歴を自己紹介いただけますでしょうか?
門前:元々は合併前の丹生川村役場に、事務職として採用され入庁いたしました。しかし1年後の市町村合併時に、大学での専攻が建築関係だったということもあり、現在の建築職へと移りました。
建築技術職として建築住宅課(入庁当時の名前は都市整備課)の在籍期間が長く、途中教育委員会への異動期間もありましたが、基本的には同じ課に所属していました。市職員としては計20年勤めています。
ー 最初に配属された都市整備課では、どのようなお仕事をされていたのですか?
門前:都市整備課では、主に建築確認業務を担当していました。建物などを建てる際に、法律や条例に適合しているかを確認する仕事です。これは、今の建築住宅課でも引き続き行っている業務の一つですね。合併当初の3、4年くらいは、これがメインの仕事でした。
ー 市内の様々な建築物に関わる審査業務ですね。
門前:はい。建築確認のほか、宅地造成などの開発行為に関する審査も行っていました。

ー その後、教育委員会へ異動されたとのことですが、そこではどのような業務をされていたんですか。
門前:教育委員会では、学校施設などの管理が中心でしたね。施設の維持管理や改修計画などを担当していました。
例えば、学校施設の長寿命化改修事業というものがあります。これは、単に古くなった設備を更新するだけでなく、これからの教育環境に対応できるよう、機能面も見直して改修していく事業です。
― 学校の改修というと、耐震補強などが思い浮かびますが、それだけではないのですね。
門前:そうですね。以前は耐震補強工事が多かったのですが、最近はそれだけではなく、より快適で使いやすい学習環境を作るための改修が増えています。例えば、昔ながらの教室が並ぶ廊下という形だけでなく、オープンスペースのような、子供たちが自由に本を調べたり、交流したりできる空間を設けたり。
また、配管なども長持ちするものや、管理しやすいものに更新していくといったことも行います。デザイン面でも、コンクリート打ちっぱなしのような無機質な感じではなく、木材を多く使って温かみのある雰囲気を出したり、子供たちが安心して過ごせるような工夫を凝らしたりしていますね。
ー 建物の構造だけでなく、機能やデザイン面まで幅広く関わるのですね。
門前:はい。教育委員会のような、いわゆる「原課(事業を行う課)」にいると、施設の計画段階から関わることができます。実際に施設を利用する先生や生徒さんたちの声を聞きながら、どういった施設が必要とされているのか、どうすればもっと使いやすくなるのかを考えて計画に反映させていく。これは、原課ならではの面白さであり、やりがいを感じる部分ですね。
ー 現在所属されている建築住宅課の業務内容についても教えていただけますか?
門前:建築住宅課には、大きく分けて公共建築物を担当する係と、私が今在籍している開発指導係があります。公共建築係では、事業課とともに市役所庁舎や図書館、体育施設といった施設の新築や改修工事の設計・監理を行います。
開発指導係は、先ほどお話しした建築確認や開発行為の審査に加え、高山市特有の景観条例に関する審査や指導も主な業務です。
この条例は、**特に古い町並みが残る地域を中心に、建物の色や形、高さ、素材などを定めたものです。
ー そういった業務もあるんですね。
門前:法律のように明確な基準だけでなく、「街並みとの調和」といった、ある意味で抽象的な部分も判断基準になってきます。事業者の方にも当然、建設計画に対する想いがありますから、一方的に規制を伝えるのではなく、条例の背景や目的を丁寧に説明し、理解を求めながら、お互いが納得できる形を探っていく必要があります。
ー コミュニケーションが非常に重要になるのですね。
門前:はい。相手の方も、なぜ規制があるのか、その意味が分かれば納得して協力してくださることが多いです。条例の意図をしっかり伝え、理解してもらうことで、結果的により良い建物、街並みに合った建物ができることもありますね。
あとは、法律は頻繁に改正されますので、常に最新の情報を把握しておく必要があります。建築基準法だけでなく、都市計画法や景観条例など、関連する法規は多岐にわたりますので、覚えることは多いですね。
ー やりがいはどういった点で感じますか?
門前:そもそも多種多様な建築計画や図面を見られるというのは面白いですね。あとは、この審査業務が市民の安全や快適な暮らし、そして高山の魅力的な街並みを守ることに繋がっていると思うと、大変さの中にもやりがいを感じます。
ー職場の雰囲気はいかがですか?
門前:上下関係が特に厳しいということはないですね。職員数がそれほど多くないということもあってか、年齢や役職に関係なく、比較的フラットに意見交換ができる雰囲気だと思います。
もちろん、仕事を進める上での指示や確認はありますが、「これはどう思いますか?」とか「ちょっと分からないんですけど」といった相談は、上司にも同僚にも気軽にできます。
特に新しい職員が入ってきたときは、部署全体でサポートしようという意識があるように感じます。
ー それは心強いですね。ワークライフバランスはいかがでしょうか。
門前:窓口対応が多い時期や、工事の繁忙期などは忙しくなりますが、基本的には自分でスケジュールを管理して仕事を進めることができます。ですので、ものすごく残業が多いというわけではないですね。
お休みも、基本的には土日祝日はしっかり休めますのでワークライフバランスは取れていると思います。
ー最後に、高山市役所の建築技術職応募を考えている方へメッセージをお願いします。
門前:高山市は、歴史的な街並みという素晴らしい財産を持つ一方で、人口減少や空き家問題、そして近年の観光客増加に伴う新たな課題など、様々な変化に直面しています。建築技術職は、こうした課題に向き合いながら、高山の魅力を守り、さらに発展させていくための街づくりに直接関わることができる、非常にやりがいのある仕事です。
法律や条例の知識はもちろん必要ですが、それ以上に大切なのは、高山の街が好きで、より良くしていきたいという情熱だと思います。専門知識を活かして、歴史と未来が共存する魅力的な街づくりに貢献したいと考えている方にとって、高山市役所は素晴らしい活躍の場になるはずです。ぜひ、チャレンジしてみてください!
ー本日はありがとうございました。
取材・文:パブリックコネクト編集部(2025年03月取材)