岐阜県高山市役所で働く中井さんのインタビュー記事です。高校の授業をきっかけに「大好きな高山をもっと良くしたい」という想いを抱き、卒業後すぐに入庁されました。現在は市民課で、市民に寄り添う戸籍業務を担当しています。仕事のやりがいや職場の雰囲気、そして高山市で働く魅力について、詳しくお話を伺いました。
地元への思いが芽生えた高校での経験
ーまずは自己紹介と、これまでの経歴について教えてください。
中井:生まれも育ちも高山市で、高校卒業後すぐに市役所に入庁し、今年で3年目です。高山市役所を受験したのは、高校の授業「地元プロジェクト」がきっかけでした。
高山の古い町並を取材し、その魅力をSNSで発信する活動を通して、地元の温かい人々に触れ、この街に貢献したいという思いが芽生えました。この経験がなければ、市役所で働くという選択肢はなかったかもしれません。
市民の人生に寄り添う戸籍業務
ーでは、入庁されてから現在までのお仕事について教えてください。
中井:入庁してから3年間、市民課に所属し「市役所の窓口業務」を行っています。住民記録と戸籍業務がありますが、私は主に戸籍に関する業務、出生届や婚姻届、死亡届といった戸籍届出の受付・審査、証明書発行を行っています。
ーどのように仕事を覚えていったのでしょうか?
中井:最初のうちは、先輩職員に付きっきりで指導していただきました。まずは先輩の隣で実際の窓口対応を見ながら業務の流れを覚え、次に自分がやってみて、それに対してフィードバックをもらう、という繰り返しです。
ー独り立ちできるようになったのは、どれくらいの期間でしたか?
中井:高山市では土日祝日も午前中だけ窓口を開けているのですが、その際は戸籍担当と住民記録担当が一人ずつという最小限の体制で対応します。配属されてすぐに「6月からは土日祝の窓口を一人で担当してもらうよ」と言われていました。
そのため、2ヶ月という明確な期限があるなか、集中して仕事を覚えていきました。もちろん、よくある届出や基本的な手続きの流れは一通り覚えたという段階なので、珍しいケースや複雑な手続きに直面することもあります。その都度、法律の書籍を読み返したり、先輩に相談したりしながら対応しています。
ー実際に窓口業務に携わってみて、特に難しいと感じたのはどのような点ですか?
中井:二つあります。一つは、社会人としての言葉遣いや分かりやすい説明の仕方です。簡潔に分かりやすくお伝えすることは非常に難しく先輩の話し方を真似したり、直接アドバイスをもらったりしながら、日々勉強しています。
もう一つは、業務の背景にある法律を深く理解することです。戸籍は身分関係に法的な効果が生じるため、専門的な知識が不可欠で、体系的に理解するのに時間がかかりました。

アットホームな職場の雰囲気
ー入庁前に抱いていたイメージと、実際に働いてみて感じたギャップはありましたか?
中井:良い意味でのギャップがたくさんありました。まず、市民課の業務範囲の広さには驚きました。入庁前は、漠然と住民票などを発行する場所というイメージしかありませんでしたが、パスポートの申請受付なども行っていることを知りました。
あとは、職場の雰囲気も、入庁前は市役所というと少し堅苦しくて、上下関係も厳しい場所なのかなと想像していました。しかし、実際は全くそんなことはなく、とてもアットホームな雰囲気です。
業務中は集中する中でも、少し手が空いた時には世間話をしたり、冗談を言い合ったりと、和やかな時間が流れています。先輩方も本当に親切で、気さくに話しかけてくれる方ばかりなので、すぐに職場に馴染むことができました。
ー先輩方は、業務についてもしっかり教えてくれる環境なのですね。
中井:本当に温かく、そして根気強く教えてくださる方ばかりです。分からないことがあって質問すると、どんなに忙しくても必ず手を止めて話を聞いてくれます。分かるまで何度も説明してくれたり、実際にやって見せてくれたり、本当に丁寧に指導していただきました。
また、私のような若手職員の意見、例えば改善案などにもしっかりと耳を傾けてくれる風通しの良さも感じています。
ー新人職員をサポートするような制度はあるのでしょうか?
中井:「エルダーサポーター」という、新入職員一人ひとりに対して、先輩職員がサポーターとして一人付いてくれる制度があります。私の場合は、直接業務を教わる担当の先輩とは別に、市民課の別の係の先輩がサポーターとして様々なサポートをしてくださいました。
また、月に一度、「わかばノート」という交換日記のようなノートを使って、その月にあったことや業務で不安に思っていること、悩んでいることなどを書き出して提出します。
ーユニークな制度ですね。
中井:そうなんです。そのノートには、エルダーサポーターの先輩だけでなく、係長や課長もコメントを書いて返してくれます。直接は言いづらいような悩みも文字にすることで伝えやすいですし、上司の方々が自分のことを見てくれている、気にかけてくれているという安心感にも繋がりました。この制度のおかげで、精神的にすごく支えられたと感じています。
ーその他に、研修制度などはありますか?
中井:新規採用職員向けの集合研修が年に2回あるほか、各部署が主催する専門的な研修も随時開催されています。
また、総務課から様々な外部研修の案内が回ってくるので、自分の興味や業務に合わせて自主的に参加することも可能です。私自身は、法務局が主催する戸籍業務に関する専門研修などに参加し、スキルアップに繋げています。
ー日々の業務の中で、どのような時にやりがいや面白さを感じますか?
中井:戸籍の仕事は、人の出生から亡くなるまで、人生のあらゆる節目に関わる非常に重要な業務です。そこに携われていること自体に、大きな責任とやりがいを感じています。
また、戸籍法という専門的な法律に基づいて仕事を進めるため、最初は難しく感じることも多いのですが、勉強を重ねて知識が深まり、これまで分からなかったことが理解できた瞬間は、自分の成長を実感できてとても嬉しいです。
ー市民の方との関わりの中で感じるやりがいはありますか?
中井:もちろんたくさんあります。窓口では、手続きを終えた方から「ありがとう」「助かりました」と声をかけていただく機会が多くあります。特に、複雑な手続きで困っている方のご案内を無事に終え、安心された表情を見た時には、この仕事をしていて良かったなと心から思います。高山市民の温かさに触れる瞬間でもあり、そうした感謝の言葉が日々の業務の原動力になっています。
プライベートも充実できる働き方
ーワークライフバランスについてもお伺いします。残業やお休みの状況はいかがですか?
中井:残業時間は日によって様々です。窓口が混み合う時期は、1〜2時間ほど残業することもあります。
またお休みについては、土日に出勤した分は平日に代休を取得できますし、夏季休暇や年次有給休暇も計画的に取れています。土日出勤も月に1,2回です。
希望した日に休みが取れないということはほとんどありませんし、シフト制で他の職員と交代することもできるので、プライベートの予定も立てやすいです。
ー職員同士の交流はありますか?
中井:同じ課の先輩方とは、仕事終わりに食事に行くことがよくあります。また、高山市役所には18歳から20代の若手職員が所属する「青年部」という組織があり、課を超えた交流の機会も多いです。
青年部では、バレーボール大会やボウリング大会といったスポーツイベントや、その後の懇親会などが企画されていて、普段は関わりのない部署の同期や先輩とも親しくなれる良い機会になっています。
ー職員として働く中で、改めて感じる高山市の魅力はどんなところでしょうか?
中井:「人の温かさ」は一番の魅力だと感じます。窓口で市民の方と接していても、職員同士で関わっていても、それを日々実感します。
また、春と秋の高山祭や、高山ウルトラマラソンといった全国的に有名な大きな行事があることも、街の活気に繋がっていると感じます。豊かな自然に囲まれて、歴史や文化を感じながら働ける環境です。
ー本日はありがとうございました。
取材・文:パブリックコネクト編集部(2025年8月取材)