高知県庁で建築職として働く橋田さんのインタビュー記事です。
大学で建築を学び、生まれ育った地元・高知に戻り県庁職員となった橋田さん。
そこには、民間企業とは異なる公務員ならではの働き方と、地元に貢献できる大きなやりがいがありました。
大規模プロジェクトに携わった際の苦労や達成感、風通しの良い職場の雰囲気、そして気になるワークライフバランスまで。
建築の専門性を活かしたキャリアを考えるすべての方に、ぜひ読んでいただきたい内容です!
プロフィールと建築職を志したきっかけ
ーまずは、これまでのご経歴と、建築職を志したきっかけを教えてください。
橋田:高知県の宿毛市出身で、高校までは高知県で過ごしました。
大学進学を機に県外へ出て、大分県の大学で建築を学びました。卒業後は、民間企業などを経験することなく、新卒で高知県庁に入庁しました。
大学では建築の基礎的なことは講義等で習いましたが、イマイチ仕事とどう繋がるかは三回生くらいまではイメージがつきませんでした。
インターンシップで民間企業や高知県庁を訪問させてもらった時に自分が学んだことがやっとこんなところで活かせるのかと思ったこと、様々な条件下で様々なデザインの建物を純粋に「面白いな」と感じたことが今でも記憶に残っています。その面白さに惹かれて、建築の専門性を活かせる仕事に就きたいと改めて考えるようになりました。
ちなみにですけど、建築と一言で言っても、実際に現場で施工に携わる仕事もあれば、設計業務、ゼネコンのような全体を統括する仕事など、道は多岐にわたります。
公務員として、高知県庁を選んだ理由
ー民間企業ではなく、公務員を目指そうと思ったのはなぜですか?
橋田:環境や働き方の面が大きかったですね。環境についていえば、ゼネコン等はどうしても全国転勤や現場が遠方になれば長期の赴任等がどうしても発生します。
働き方で言うと私が就職活動をしていた頃は建設業界は働き方改革の過渡期で、まだ土曜日も仕事というのが当たり前の雰囲気がありました。やっぱり、ハイペースで引っ越しを伴う赴任は将来的には避けたいし、土日はしっかり休みたいなという思いがあったというのが本音です。
実は、大学生のはじめの方は公務員は事務職しかないと思ってました。そんな中就活中の大学の先輩から「公務員にも建築職があるよ」と教えてもらったんです。「ええこと聞いたぞ」と思いすぐ調べましたね(笑)
また、私の家系は公務員ばかりで、その働き方を間近で見ていてたのもあり、ワークライフのイメージが湧きやすかったのもあります。
建築の専門性を活かしながら、自分の望む働き方ができる。まさに理想的な選択肢でした。

ーその中でも高知県庁を選んだ決め手は何だったのですか?
橋田:やはり「地元の高知に帰りたい」という思いが一番強かったですね。県外の大学に進学して改めて、高知の良さを感じていましたし、自分の両親には「帰って来るんよね」みたいな雰囲気もありましたから(笑)
また、現実的な問題として、建築職を募集している自治体は全てじゃなくて比較的規模が大きい自治体とかではないと募集がかなり限定的になってしまうんです。
通年で安定して建築職の採用があるのは、やはり県や国といった規模の大きな組織になります。地元・高知で、建築の専門職として働く。その二つの希望を叶える場所が、高知県庁だったんです。
県庁の建築職のリアルな仕事内容とやりがい
ー入庁後の配属と、具体的な仕事内容について教えてください。
橋田:最初の配属は、現在も所属している土木部の建築課でした。仕事内容をひと言で言うと「営繕業務」になります。公共工事をメインに扱うのですが、少し分かりにくいかもしれませんね。
例えば、高知県には有名な牧野植物園や県民体育館といった様々な公共施設があります。それらの施設を実際に管理しているのは、それぞれを所管している事業課になります。
その事業課から「施設を修繕したい」「建て替えをしたい」といった話が出た時に、私たち建築職の職員が専門的な立場から相談に乗ります。どれくらいの費用がかかるのか、スケジュールはどのように立てていくのか、など計画の根幹部分から関わっていくのです。
そして、いざ事業が始まれば、設計業務や工事は民間の会社に委託しますが、私たちは「発注者側の専門機関」として、お金の調整や技術的なやり取り、工事の監理などを行います。
事業課の方々と共に、専門的な知見からプロジェクトを前に進めていくのが、私たちの重要な役割です。
ー特に印象に残っているお仕事はありますか?
橋田:特に印象に残っているのが、入庁して初めて大型物件の担当をした「牧野植物園」の新研究棟の建設です。工事が始まったのがちょうどコロナ禍の真っ只中で、世界的に資材価格が高騰するという事態に見舞われました。
公共工事は決められた予算の中で進めなければなりません。一方で、実際に施設を使われる方々の要望も叶えたい。そして、オープンまでの時間も限られている。
その中で、前例のない資材高騰にどう対応するか、本当に頭を悩ませました。業者さんとの打ち合わせも数えきれないほど行い、先輩方もやったことのないような対応を求められる場面もありました。
まさにパイオニアのような気持ちで、手探りで進めていきました。
ー大変だった分、やりがいも大きかったのではないでしょうか。
橋田:そうですね!新築物件のプロジェクトは、最短でも3年、大規模なものになると5年以上かかることもあります。その始まりから終わりまで、一貫して見届けられるというのは、この仕事の大きなやりがいです。
特に牧野植物園のプロジェクトでは、「本当に工期内で完成するのだろうか」と何度も頭を抱えました。だからこそ、様々な困難を乗り越えて無事に建物が建った時の達成感は、本当に格別でした!
県民の皆さんが利用する施設が、自分の手で形になっていく。その過程すべてに関われることが、建築職としての誇りです。


働きやすさの秘訣は「風通しの良さ」
ー実際に入庁してみて、働く前のイメージとのギャップはありましたか?
橋田:ありましたね。公務員というと、どうしても「お堅い仕事」というイメージがあったのですが、実際に入ってみると、驚くほど風通しが良く、これはすごく良いギャップでした。
ー職場の雰囲気について、もう少し詳しく教えてください。
橋田:高知県庁の建築職は、主に「建築課」「建築指導課」「住宅課」という3つの課を軸にぐるぐる異動するようになります。少数ですが、林業系や他の土木部内の課に席があったりもします。
異動したとしても周りはみんな顔見知りの先輩や同僚ばかりなので、余計に仲がいいのかもしれませんね。誰にでも気軽に相談できる雰囲気があります。
業務外の交流も盛んで、飲み会もありますし、昨年は課長と一緒にカヌー大会にも出場しました(笑)
もちろん参加は自由ですが、そういったイベントを通じて、さらにコミュニケーションが円滑になっていると感じます。
ーワークライフバランスはいかがですか?
橋田:正直に言うと、どうしても残業が多い時期もあります。特に、各課からの次年度の予算要求の処理をする秋頃や、工事の発注が重なる年度始めは忙しくなりますね。
また、建築職というのは専門性が高く急に欠員が出た場合に、事務職と違い代えがなかなかききません。その時なんかは全員でカバーしたりが必要になるのでどうしても忙しかったりします。
ですが、365日毎日ということではないのですし、僕のポリシーとして「土日は絶対休む」と決めているので、そこは極力守っています(笑)
また、休暇制度も充実していて、忙しい時期は休日を振替することもでき、少し落ち着いた頃に連休をつくったり、5日間の夏期休暇や年間20日付与される有給休暇(使わなかったら繰越もできます)もあるので業務とのバランスをとりながら常にまとまった休みを取れる状態にしているので、プライベートの時間も大切にできていますね。
最近は月に1回、旅行に行くのを年間目標にしています。
未来の仲間にメッセージ
ー最後に、高知県庁の建築職を目指す方へメッセージをお願いします。
橋田:公務員=固い・真面目な人ばかりな職場なイメージをもっているかもしれませんが、元気で明るい人、ユーモアがある人など皆さん結構パワフルです。何よりも「責任感」が強い人が多く、そんな方はこの仕事にすごく向いていると思います。
また、「地元・高知に恩返しがしたい 高知が好きやき」という強い思いを持っている方に来ていただけると嬉しいですね。Uターン又はIターンしていただいて県外で学んだ経験や知識を、ぜひ高知県のために活かしてほしいです。
そして、これから家庭を築く方や、すでにご家庭をお持ちの方には、自信をもってお勧めできる職場です。私はまだ独身なので自分時間をたくさんとっていますが、先ほどお話ししたように、ワークライフバランスが非常に取りやすい環境が整っています。
設計や工事監理などをはじめ、思っているよりも幅広い業務に従事できますし、「発注者」として建築に携わるのも楽しいので高知県の未来を形づくるこの仕事に、少しでも興味を持っていただけたら嬉しいです。
皆さんにお会いできる日を楽しみにしています!
ー本日はありがとうございました。
取材・文:パブリックコネクト編集部(2025年7月取材)