高知県庁で農業職として働く谷さんのインタビュー記事です。
大学で植物病理を研究後、新卒で入庁。現在は普及指導員として、高知県の特産柑橘である土佐文旦の産地を農家さんと共に盛り上げています。
研究職から現場の最前線へ、仕事のやりがいや厳しさ、そして若手職員が安心してスタートできるという高知県庁の風通しの良い職場の雰囲気について、詳しくお話を伺いました。
- 【好き】を仕事に。植物好きから始まった、公務員への道
- 研究職から普及指導員へ。農業の最前線で描くキャリア
- 農家さんと共に産地を盛り上げる。仕事のやりがいと乗り越えるべき壁
- 若手も安心!風通しの良い職場の雰囲気とワークライフバランス
- 未来の仲間へ。ゼロからのスタートでも、やる気さえあれば大丈夫
【好き】を仕事に。植物好きから始まった、公務員への道
ーまずは、これまでの経歴を教えてください。
谷:出身は高知県です。大学は兵庫県の神戸大学農学部で、植物病理、特に小麦の病気について研究していました。
卒業後、新卒で高知県庁に入庁し、現在6年目になります。
ー学生時代から農業分野に興味があったのですね。なぜ公務員、そして高知県庁の農業職を選ばれたのでしょうか?
谷:もともと植物が好きだったのが大きいですね。大学もその興味から農学部を選びました。
就職を考えた時、まず地元の高知県で働きたいという思いがありました。そして、大学で学んだことを活かせる仕事は何かと考えた時に、一番近かったのが県庁の農業職だと思いました。
研究職から普及指導員へ。農業の最前線で描くキャリア
ー入庁後のキャリアについて教えてください。まずは研究職からスタートされたのですね。
谷:そうですね。最初の5年間は、高知市にある果樹試験場で研究員として勤務していました。
ハウスみかんや、土佐文旦、ユズなどの栽培に関する研究が主な仕事でした。
ー研究職というと、少しイメージが湧きにくいのですが、具体的にはどのようなお仕事をされていたのですか?
谷:果樹の栽培に関する研究をしており、例えば、私は担当がハウスミカンだったので、試験場内にある圃場でミカンの栽培についての実験や観察、データ収集を行っていました。
他にも、自分で農薬を撒いたり、肥料をやったり、枝の管理をしたりと、圃場作業も行っていました。
午前中は生育調査、午後は別の圃場で作業をする。別の日には調査したデータを整理して報告書を作成するというような日々でした。
ーそして、現在は普及指導員として働かれているとのことですが、どのようなお仕事をされているのでしょうか?
谷:今年から高知県の西部にある幡多農業振興センターに異動し、普及指導員として働いています。
メインの担当は、特産品である「土佐文旦」です。幡多地区の宿毛市は文旦の産地で、特に40〜50代の若い世代の農家さんが、産地を盛り上げようとすごく頑張っていらっしゃるんです。
私は栽培の指導をしたり、新しい取り組みのお手伝いをしたりしています。
ー農家さんと直接関わる機会が多いのですね。1日のスケジュールはどのような感じですか?
谷:例えば、農家さんのところを数件回って、お話を伺います。
農家さんから「こういう病気が出てるんだけど、どうしたらいい?」と相談を受けたり、最近だと「暑すぎるから熱中症に気をつけてください」という声かけをしたりしています。
その場で答えられない専門的なことは、一度事務所に持ち帰って調べてからお答えします。そうやって現場を回った後、事務所で講習会の資料を作るなど、日によって様々ですね。
ー研究職と普及指導員という2つのキャリアを経験されていますが、農業職には他にどのようなキャリアの可能性があるのでしょうか?
谷:異動先としては、県内の普及所のほか、私がいたような研究を行う試験場、本庁での行政担当など、様々な選択肢があります。県外の東京事務所に行くケースも聞いたことがありますね。
担当する作物も、私が担当している果樹のほか、野菜、米、花など、多岐にわたります。異動の際には本人の希望も一定考慮してもらえます。
農家さんと共に産地を盛り上げる。仕事のやりがいと乗り越えるべき壁
ー農業職として働く中で、どのような時にやりがいや魅力を感じますか?
谷:今の普及指導員の仕事で言うと、やはり熱意ある農家さんと一緒に、産地を盛り上げていけることですね。
担当している産地は、若い世代が中心となって本当に頑張っているんです。その方々と「もっと良い文旦を作ろう」「もっと産地を元気にしよう」と、高い目標を持って一緒に汗を流せることに、大きなやりがいを感じます。
ー逆に、仕事の厳しさや大変さを感じるのはどのような時でしょうか?
谷:普及指導員という仕事の中で痛感するのは、やはり「経験の差」ですね。
私は農業未経験で入庁しています。一方で、農家の方々は何十年も農業をされている大ベテランです。異動してきた当初は「こんな新人に何ができるんだ」「経験が浅いやつで大丈夫か」という雰囲気を感じることもありました。
農家の方々の期待に応えられるか、というプレッシャーはずっと感じています。
若手も安心!風通しの良い職場の雰囲気とワークライフバランス
ー職場の雰囲気や人間関係について教えてください。
谷:今の職場も前の職場も、若い人が多かったのですごく相談しやすい環境ですね。
年が近い職員も多く、気軽に話ができますし、上司の方々も「ちゃんと仕事が進んでるか?」と気にかけてくださり、コミュニケーションをよく取りながら仕事ができています。
あと、今の職場ではバドミントンのサークルがあって、若手同士の交流の場もあるみたいです。私はまだ参加できていないのですが、興味はあります(笑)
ー未経験で入庁しても、周りのサポートがあるのですね。
谷:はい。高知県庁の農業職には「トレーナー制度」というものがあって、新採用職員一人ひとりに、同じ職場の先輩が「トレーナー」としてついてくれるんです。
私も最初は何も分からなかったのですが、トレーナーの方に仕事や果樹の栽培について一から教えてもらいながら、覚えていきました。
最近では「メンター制度」も始まって、若手職員をサポートする体制はさらに手厚くなっていると思います。
ーワークライフバランスはいかがですか?
谷:繁忙期はどうしても残業することもありますが、その分の手当はきちんと出ます。休みについても、事前に申請すれば希望日に取得できますし、上司やチームのメンバーも協力的です。
有給休暇も取得しやすく、ワークライフバランスが取りやすいと感じています。
未来の仲間へ。ゼロからのスタートでも、やる気さえあれば大丈夫
ー最後に、高知県庁の農業職を目指す方へメッセージをお願いします。
谷:高知県庁の農業職では、「5年会」などの若手職員同士の交流の機会も盛んです。また、トレーナー制度やメンター制度といった若手をサポートする体制もしっかり整っています。
私自身も知識ゼロからのスタートでしたが、周りの先輩方に支えられてきました。
高知県の基幹産業である農業を生産者の皆さんと一緒に盛り上げるという、やりがいの大きな仕事が待っていますので、少しでも興味がある方は、ぜひ挑戦してほしいです!
ー本日はありがとうございました。
取材・文:パブリックコネクト編集部(2025年7月取材)