「走れる公務員」と「踊れる公務員」。事前に頂いたプロフィールに綴られた二つの肩書きは、一見すると全く違う世界を歩んできた二人を物語っているようでした。一人は中学から大学まで陸上競技に打ち込んだ「走れる」西村さん。もう一人は幼少期からクラシックバレエを始め、プロダンサーを目指してイギリスへ単身留学した「踊れる」山本さん。全く異なる青春時代を過ごしたお二人ですが、たどり着いた先は同じ、座間市役所という職場でした。二人を導いたのは、コロナ禍という時代が突きつけた「安定」への問いだったのかもしれません。今回は、同期として支え合いながら働くお二人に、それぞれの歩みと座間市役所で見つけたやりがいについて伺いました。
- 「走れる公務員」と「踊れる公務員」。その真意とは?
- 陸上とバレエ、それぞれの青春が導いた「安定」という選択
- なぜ座間市役所だったのか
- 現在の仕事。入庁後に立ちはだかった壁とは?
- 思っていたよりずっと楽しい。一変した公務員のイメージと日々のやりがい
- 思うままにチャレンジしてほしい。就職活動をする皆さんへ
「走れる公務員」と「踊れる公務員」。その真意とは?
ーまずはお二人のご出身や入庁年度、現在の所属について教えてください。
西村: 私は座間市の出身で、生まれた時からずっと座間市に住んでいます。令和5年度に入庁して、令和5年度から令和7年度までは保育・幼稚園課、令和8年度から職員課に異動することとなりました。
山本: 私も西村さんと同じ令和5年度入庁です。生まれてからずっと座間市に住んでいて、イギリスへの留学以外で座間市を離れたことがありません。令和5年度から現在まで、人権・男女共同参画課で働いています。
ーお二人は同期なんですね。見るからに仲がよさそうですが、同期でも仲がいい方なのでしょうか?
山本: そうなんです。事務職だけでも同期は20人くらいいるのですが、その中でも西村さんとは特によく話す仲です。実は、今日もインタビューと聞いて、お揃いの服装で出勤しました(笑)
西村: 入庁するまでは全然知らなかったのですが、実は同じ中学校の先輩後輩だったみたいなんです。今ではこんなに仲良くなっているのですが、山本さんは、私の先輩にあたります(笑)

ーちなみに、事前に頂いたプロフィール情報に「走れる公務員」「踊れる公務員」と紹介いただきました。とても気になるのですが、それぞれの意味を教えてもらえますか?
西村: まずは走れる西村からお話しします!(笑)
私は中学の頃から大学までずっと陸上競技部に所属していて、長距離ブロックで走ってきました。今ではダイエットの感覚に近いのですが、美味しいものをたくさん食べたいのでランニングを続けています。仕事が終わった後、早めに帰れる日には走るようにしているんです。それで「走れる公務員」と名乗らせていただきました。

山本: 踊れる方は山本です。
私は6歳の頃からクラシックバレエを始めました。ずっとプロのバレエダンサーを目指していて、学生時代はそれこそ週7日、学校が終わった後にレッスンに通い、夜遅くまで練習して帰る生活を続けていました。大学も音楽大学のプロダンサー養成コースに進学したくらい本気で打ち込んでいました。
その後はイギリスへバレエ留学もしたのですが、新型コロナウイルスの影響もあり、プロダンサーの道は諦めざるを得なくなってしまいました。ただ、今でも週に2回はレッスンに通っていて、年に2〜3回は舞台にも出演しています。

陸上とバレエ、それぞれの青春が導いた「安定」という選択
ー学生時代はそれぞれ打ち込んでいたものがあったようですが、どのような就職活動をされてきたのでしょうか?
西村: 私は、実は学生時代に客室乗務員に憧れていました。ただ、就職活動の際にコロナ禍に入ってしまい、航空業界へのイメージが変わってしまったのと、説明会に行った時に客室乗務員という職自体、自分の空気感とは少し違うかもしれないと感じてしまい、結局受験には至りませんでした。
山本: 私はプロのバレエダンサーになるつもりでイギリスに単身で留学していたので、もう当面日本に戻らないつもりだったのですが、コロナの影響で通っていたダンススクールが閉校になってしまったんです。当時、校長先生からも「一度日本に帰った方が安全だよ」と言われ、諦め半分で帰国することになりました。
ーそこからなぜ「公務員」という選択肢が現れたのでしょうか。
西村: コロナを経験してから、社会の状況というのは、その時々でどうなるか分からないなと感じたんです。そうした中でも安定して仕事ができるのは公務員なのかなと思ったのが、公務員を目指したきっかけです。
山本: 私も西村さんとほとんど同じ理由なんです。イギリスから帰国した時、自分が目指していたバレエ界や芸術の世界は、社会情勢の変化にとても弱いということを痛感しました。
そこから、社会が変わっても安定して働ける仕事を見つける方が、一つのことに打ち込みたいという自分の性格にも合っているのかもしれないと思うようになったんです。
また、父が公務員だったことも大きなきっかけとなっています。父が働く姿を小さい頃から見ていたので、安定しているからこそ家族で安心して過ごすことができたのだなと改めて感じ、公務員という安定した職業に魅力を感じました。
ーとはいうものの、山本さんとしては気持ちの切り替えが大変だったのではないでしょうか?
山本: そうですね…今だからこそこうやって普通に話せますが、本当に人生で一番辛かったのがその時期でした。どんなに辛いことがあっても、バレエをやめるなんて考えたことがなかったのですが、プロになれないのなら、バレエをやっている意味がないとまで思い詰めていたんです。
先程もお話しした通り、今でもバレエのレッスンや舞台は継続していて、今ではこの道を選んで良かったと思うことができています。

なぜ座間市役所だったのか
ー安定を求めて公務員を志したというお話でしたが、なぜ座間市役所を選んだのでしょうか?
西村: 他の自治体も色々考えてはみたのですが、地元というところが大きかったです。地元にはずっとお世話になってきましたし、少しでも恩返しができたらいいなという想いがありました。
また、大学の頃は遠くまで時間をかけて電車で通学していたので、社会人になったら通勤時間にとらわれない、近場がいいなと考えていました。
山本: 私は色々な自治体を調べて受験するなんていう余裕が全くなかったので、自分が生まれ育った座間市一本でしか考えていませんでした。本当にバレエしかやってこなかったので、まずは受験するしかないという気持ちでチャレンジしてみたところ、ありがたく採用していただけました。
現在の仕事。入庁後に立ちはだかった壁とは?
ー現在、それぞれどんなお仕事をされているのか教えてください。
西村: 私は主に会計年度任用職員の方の任用に関する事務を担当しています。任用の手続きのほか、退職された方の対応や、健康保険に関わる金額の算出なども行っています。
前の職場では保育園・幼稚園に関する事務を担当していて、入園を希望する方の申請を受け付けたり、在園の調整をしたりしていました。
山本: 私は主に国際交流に関わる仕事をしています。
座間市は国際姉妹都市としてアメリカのスマーナ市(テネシー州)と提携を結んでいて、その相互交流事業を担当しています。市内の青少年をスマーナ市へ派遣したり、逆にスマーナ市の青少年を受け入れたりする業務です。
あわせて、市内に住んでいる外国人市民の方々のサポートや相談対応も行っています。
ーイギリス留学の経験が今の仕事に生きている部分もありそうですね。
山本: そうですね。日常会話であれば何とかコミュニケーションが取れるので、市内に住んでいる外国人の方や、交流事業で来られる方とお話しする場面では、留学で得た「語学力」も活かせていると感じます。
ー西村さんは、陸上競技の経験が、仕事に活きていると感じることはありますか?
西村: 山本さんの英語に比べたら地味かもしれませんが、働く上で体力ってすごく大事だなと感じています。どれだけ仕事ができても、体調を崩してしまうと持っているものを最大限発揮することができません。
ずっと陸上をやってきて、体力には人一倍自信があるので、業務が立て込んでいても、一つ終わったら「よし、次をやろう!」とすぐに切り替えることができています。体力があるからこそ、私ならではのパフォーマンスを発揮できているのかなと思います。
ーちなみに、お二人は入庁してからどういったことで苦労されましたか?
西村: 最初に配属された保育・幼稚園課では窓口業務が中心だったのですが、窓口対応についてはとても大変だったという印象です。
自分の対応によって、強めにご意見をいただくようなこともあったのですが、学生時代には全く経験してこなかったということもあり、その都度落ち込んでいました。

山本: 私はずっとバレエしかやってこなかったので、努力の方向性がまったく違うことに戸惑いました。
バレエは他のスポーツとも似ていて、トレーニングや根性、度胸でどうにかなる部分が大きかったのですが、行政の仕事は自身の対応だけでなく、責任を持って期日までに間に合わせたり、周囲に併せて計画的に進めたりする力が求められます。
一度、上司との面談のなかで「計画的に進めてみようか」と助言を頂いたのですが、そこではっとさせられたのを覚えています。自分の至らないところに気づくことができ、今では周囲のフォローもあり、少しずつ成長できています。
思っていたよりずっと楽しい。一変した公務員のイメージと日々のやりがい
ー入庁前は、お二人とも「公務員」や「市職員」にどんなイメージを持っていましたか?
西村: とても堅くて真面目というイメージがありました。一方で、真面目だからこそ一つひとつきちんとこなしてくれるという信頼感も持っていました。
山本: 私はなんとなく頭のいい人たちの集まりというイメージがあって、少なくとも「楽しい職場」という考えはなかったですね。
ー実際に働いてみて、イメージに変化はありましたか?
西村: 今の職場も前の課もとても和気あいあいとした雰囲気で、仕事に対しては真面目なものの、皆さんユーモアもあってとても楽しいです。それぞれの良いところを受け止めてくれる雰囲気があって、自分を出してのびのびと仕事ができる環境をつくってくれる方が多いなと感じています。
山本: 西村さんが言われたとおり、真面目な方もたくさんいる一方で、ユーモアがある方も多く、働いていて毎日楽しいですし、なにより親切で優しい方が多いという印象です。
仕事に関しても前例踏襲のような堅い仕事ばかりかと思っていたのですが、担当している国際交流の仕事はクリエイティブな部分も多くて、型にとらわれない業務がとても沢山あることに驚きました。
ーお二人にとって、ここで働くやりがいを感じるのはどのような時ですか?
西村: 地元の方の役に立ちたいという思いで座間市役所に入ったので、やはり何かしら市民の方の為になるようなことができて、「ありがとう」と言っていただいた時ですね。
窓口対応で落ち込んだ時期もあったのですが、だからこそ、もっとできるようにならなければと思って努力をしてきました。自身が成長することで、感謝の言葉をいただけることも増えるので、それもモチベーションにつながっています。
山本: 私の担当している業務では、市内の学生を選抜してスマーナ市へ送り出し、スマーナ市からも学生を受け入れるという事業を、3年かけて一つのサイクルとして進めています。最初に会った時は少し頼りなかった子でも、3年後には自信を持って国境を越えた絆を育んでいる姿を見られるのは、本当にやりがいに感じます。
保護者の方から「皆さんのおかげでこの子も変わりました」と言っていただいたこともありました。心から「やってよかった」と思える瞬間ですよね。
思うままにチャレンジしてほしい。就職活動をする皆さんへ
ー最後に、就職活動をしている方に向けて、お二人からメッセージをお願いします。
西村: 学生時代に数年後の自分が働いている姿を想像するのは難しいと思います。
ただ、今自分がやっていること、頑張っていることは絶対に無駄にならないと思っています。今頑張っていることを続けながら、それを仕事に活かすことができれば、自分らしく輝けるはずです。
ぜひ、今打ち込んでいることも含めて、頑張ってください!
山本: 一つのことしかやってこなかった方や、大学で全然違う道を目指していたという方もいると思いますが、私みたいな人もいるということを伝えたいです!
「自分は〇〇しかやってこなかったから…」と気後れして諦めるのではなく、自分の思うままにチャレンジしてみてほしいなと思います。
バレエしかやってこなかった先輩が、今はこうして楽しく働いています!きっと、皆さんも個性を活かして楽しく働くことができますよ!

ー本日はありがとうございました。
取材中、冒頭から飛び出した「走れる公務員」と「踊れる公務員」という言葉。陸上とバレエ、全く異なる青春を過ごしたお二人が、コロナ禍という同じ時代の空気を吸いながら、同じ「安定」という結論にたどり着き、座間市役所の同期として働いている姿には、不思議な巡り合わせを感じました。「今日もお揃いなんです」と笑いながら仕事について語る二人を見ていると、この職場の温かさや、地域の為に働くやりがいが滲み出ているのかと思います。
取材・文:パブリックコネクト編集部(2026年7月取材)



