静岡県焼津市。日本有数の水産都市として知られるこの街には、実は静岡県で唯一「市が単独で管理する港湾」があることをご存知でしょうか?
今回は、その「大井川港」の最前線で働く、大井川港管理事務所の半田さんと小木さんにインタビューを行いました。
地元焼津出身で入庁11年目の半田さんと、民間物流企業から転職し今年度入庁したばかりの小木さん。
異なる経歴を持つお二人に、港湾管理という専門的な仕事の面白さから、市直営ならではのやりがい、そして気になるワークライフバランスまで、焼津市役所で働く魅力を語っていただきました。
職場は海の目の前!大井川港管理事務所の仕事とは?
ーまずはお二人の簡単な自己紹介と、現在の担当業務について教えてください。
半田:私は2015年度に入庁し、今年で11年目になります。現在は3箇所目の部署となる「大井川港管理事務所」で、港湾の管理振興担当をしています。
業務としては、大井川港に入ってくる船の出入りの管理や、船員さん・港湾利用事業者さんの手続き対応、港湾施設の維持管理、そして港のPR活動などを行っています。
大井川港は静岡県内で唯一の市営港湾なんです。
小木:私は今年の4月に入庁したので1年目となります。それまでは民間の物流企業で6年ほど働いていました。配属は半田さんと同じ大井川港管理事務所で、担当業務もほぼ同じです。

ー大井川港管理事務所だと、職場は市役所外ということになりますか?
小木:そのとおり本庁勤務ではなく、出先機関での勤務になります。大井川港管理事務所は、焼津市の中でも最南端に位置していて、事務所の目の前がすぐ海という環境です。

ー海の目の前というのは素敵なロケーションですね。市直営の港湾とのことですが、これはどういうことなのでしょうか?
小木:通常、大きな港湾は県が施設整備やハード面の管理をすることが多いのですが、大井川港は焼津市が単独で港湾の管理から賑わいの創出まで担っています。
利用者の方との距離が非常に近く、スピーディーな対応ができるため、使い勝手が良いのが大きな特徴ですね。
半田:利用者の方からのご要望を聞きやすい環境にあります。
もちろん、全てのご要望をすぐに実現できるわけではありませんが、関係者の方々と一緒にスピード感や柔軟性を持って対応していける点は、直営ならではの良さだと感じています。
「市直営管理」のメリットと苦労
ー直営ならではの大変さというものもあるのでしょうか?
小木:やはり「管理の責任」と「予算」ですね。
港の修繕工事から振興イベントの費用まで、お金の面も含めて全て自分たちで管理・維持していかなければならない点は、責任重大であり大変な部分でもあります。

ー市として、何か力を入れているプロジェクトなどもありますか?
小木:現在、市としてクルーズ船の誘致に向けた動きがあります。私たちはその船が安全に入港・着岸できるようにするための「ハード面の整備」を進めています。
具体的には、水深を確保するために海底を掘る「浚渫(しゅんせつ)」作業や、船を岸壁に留めるための「係船柱(けいせんちゅう)」の整備などが我々の役目です。
大型船の巨大な力に耐えられるよう、係船柱を増やしたり強化したりする計画を進めています。船のサイズに合わせて強度や配置を考えなければならない重要な設備なんです。

港を守る仕事とは
ー港湾の仕事ならではの面白さや、やりがいはありますか?
半田: 港というと漁港をイメージされる方が多いかもしれませんし、実際、大井川港は桜エビやしらすの水揚げでも有名なのですが、大井川港は、石油類、LPG(液化石油ガス)、セメント、化学薬品など、さまざまな産業の製品を取り扱う物流港となります。
地域の産業や私たちの暮らしを支える物流拠点として、地域経済に貢献している大切な港ですので、港湾に携わること自体にやりがいを感じています。
ー小木さんは民間での経験も踏まえて、いかがですか?
小木:私は前職で「港を使う側」の物流会社にいたので、全く逆の立場になりました。
使う側だった時は「もっとこうしてほしい」と要望を出すだけでしたが、管理する側になってみると、港湾法や船員法など独特な法律やルールがあり、その中で調整しなければならないという難しさを知りました。
「お願いされたこと」と「法律上の制限」のバランスを取りながら、いかに安全に港を運営するのか、悩みどころであり、やりがいでもありますね。
ーこれまで業務に携わる中で、特に印象に残っていることはありますか?
半田:嬉しかったのは、やはり利用者の方から直接感謝の言葉をいただけた時ですね。
以前、施設の不具合が見つかった際に、急いで修繕を完了させ、利用者の方から「これで安全に船が出入りできるよ、助かったよ」と直接声をかけていただくことがありました。
私たちは維持管理がメインの仕事ではありますが、先ほどお話ししたとおり利用者の方との距離が本当に近いんです。なので、当たり前の安全を守ることで「ありがとう」と言ってもらえると、本当にやってよかったなと実感することができます。
背景は様々。二人が焼津市を選んだ理由
ー話は変わりますが、小木さんはなぜ民間から公務員へ、そして焼津市を選ばれたのですか?
小木:一番の理由は、子どもが生まれて「ワークライフバランス」を重視したいと思ったことです。
前職は全国転勤があったこともあり、家族と定住して安定的に働きたいという思いが強くなりました。出身は浜松市なのですが、大学時代に焼津によく遊びに来ていて「いい街だな」と感じていたことや、大学時代の友人がこのエリアに多かったこともあり、焼津市で働きたいと思いました。
ー民間企業に転職するという選択肢はなかったのですか?
小木:全く考えなかったわけではありませんが、民間企業だとどうしても「利益追求」が最優先になり、時には他社に厳しい対応を迫られることもあります。それが自分には少し合わないなと感じていたんです。
公務員なら、市民の方に寄り添い、地域に貢献することを第一に働けると思ったのが、市役所を選んだ大きな理由ですね。
ー半田さんはいかがですか?
半田:私は生まれも育ちも焼津市なんです。
小さい頃から市民手作りのお祭りがあったり、夏になると市民の多くが「魚河岸シャツ」を着て歩いていたりと、焼津特有の一体感が好きだったんです。「働くならやっぱり地元がいいな」と思い、焼津市役所を志望しました。
ー実際に働いてみて、入庁前のイメージとのギャップはありましたか?
半田:「公務員=デスクワーク」だと思っていたんですが、実際はイベント業務があったり、今の部署のように現場に出ることがすごく多いことに驚きました。
ひたすら机に向かっているイメージを持っていたのですが、実際には全然そんなことはなかったですね。
小木:私はギャップというか「決裁」の文化に驚きました(笑)
前職では、何かをやろうとする際、毎回紙を回して承認を得て…というプロセスはなかったので、ここまでしっかりとやっているんだなと思いました。
また、みなさん本当に真面目ですね。これは「お堅い」というわけではなく、ポジティブな意味ですよ。市役所の職員は勤務時間内、本当に真摯に仕事に向き合っていると感じています。
港町・焼津で叶える理想の働き方
ー先ほどワークライフバランスの話が出ましたが、実際の働きやすさはどうですか?
小木:大井川港管理事務所に限って言えば、今は残業がほぼありません。
民間の頃は上限規制ギリギリまで残業して、帰宅が深夜になることもありましたが、今は基本的に定時で帰れるので、家族との時間をしっかり確保できています。
有給休暇も、組織として「年間10日は取得しよう」という目標を持っているので、1年目の私であっても気兼ねなく取らせてもらっています。
半田:小木さんの言うとおりで、周囲の職員が積極的に休暇を取るので、誰でも取りやすいという雰囲気があるのだと思います。
オンとオフの切り替えがしっかりできる、働きやすい職場だと思います。

ーでは、お二人が思う「焼津市の魅力」はどのようなところですか?
半田:やはり、3つの港を持つ港町ならではの「食」ですね。
大井川港漁業協同組合直営の食堂「さくら」で食べる新鮮な海の幸は格別です。生しらすや桜エビなど、他ではなかなか味わえないものが日常的に楽しめます。あとは「焼津温泉」や、富士山の景色も最高ですね。
小木:私も「海と一緒に生きている」という感じがすごく好きですね。
他の都市だと高い堤防に囲まれて海が見えないこともありますが、焼津は海が近くて景観も綺麗です。
あと、子育て支援も手厚いです。焼津駅の近くに「ターントクルこども館」という子どもが一日中遊べるような施設もあるんです。
ーでは最後に、求職者の方へメッセージをお願いします。
半田:市役所の仕事は多岐にわたり、異動のたびに新しい勉強が必要で大変なこともありますが、その分だけ自分が成長できる職場です。
周りの方も優しく教えてくれるので、不安に思うことなく、ぜひチャレンジしてほしいです。
小木:公務員は地域に定住して働けるので、将来の人生設計が立てやすいのが大きな魅力です。
仕事だけでなく、趣味や家族との時間も含めて、人生そのものを充実させたい方は、ぜひ焼津市役所という選択肢を考えてみてください。
一緒に働けることを楽しみにしています!

ー本日はありがとうございました。
貨物船やタンカー船を迎え入れ、地域経済を支えるというスケールの大きな仕事。けれど、その根底にある原動力は、「利用者からの『ありがとう』」や「家族と過ごす夕食の時間」という、とても等身大で温かな幸せでした。「海と一緒に生きている」という言葉通り、仕事の責任感と個人の暮らしが、自然なリズムで調和している。そんな焼津市ならではの豊かな働き方が伝わってくるような素敵な取材でした。
取材・文:パブリックコネクト編集部(2025年11月取材)



