「学生時代は部活一筋。体力には自信があるけれど、勉強は苦手だった…」 「ずっと座ってデスクワークなんて、自分にできるんだろうか?」 そんな不安を抱えながらも、高橋さんは「市民の生活に一番身近」な仕事に魅力を感じ、公務員の道を選びました。
入庁後、高橋さんが配属されたのは区画整理課。地権者と直接向き合い、移転の交渉を行う「究極の市民対応」とも言える部署です。 想像していた「お堅い」イメージとは裏腹の「堅くない」職場で、時には草刈りや蜂の巣駆除まで行う日々に、入庁前の不安はいつしか消えていました。
部活動で培った「代表」としての自信を胸に、公務員というキャリアを選んだ高橋さんに、入庁半年で感じる仕事のやりがいや「聞きやすい」職場の魅力、そしてリアルな働き方について、率直に語っていただきました。
「究極の市民対応」。区画整理課の仕事とは?
ー本日はよろしくお願いします。高橋さんは入庁後約半年と聞いていますが、そろそろ慣れてきましたか?
高橋:そうですね。仕事内容に関しても、全部とは言えないですが大半はやることが分かってきて、次に何をしたらいいか判断できるようになってきたので、自分でも慣れてきているなと思います。
ー学生から社会人になって、生活リズムの変化はいかがでしたか?
高橋:入庁前はまず生活リズムを整えるのが一番大変かなと思っていました。でも、周りの先輩方も皆さんしっかりしたリズムで働かれているので、それに釣られるというか、合わせていくうちに、いつの間にか慣れていましたね。
生活リズムを合わせることは、思ったほど大変ではありませんでした。

ー周囲に釣られてリズムが合ってきたのですね。続いては、高橋さんが今所属されている部署と、お仕事内容について教えていただけますか?
高橋:現在は都市政策部の区画整理課補償担当として勤務しています。
一番大きな仕事は、都市計画に基づいて道路などを整備する際、その計画地に既存のお家などが重なってしまう場合に、地権者(土地の権利者)の方に決められた「換地(かんち)」へ移転していただくようお願いに伺うことです。デスクワークというよりはコミュニケーションが中心の仕事かなと思っています。
ー地権者さんのお宅に伺って、交渉や調整を行っているのでしょうか?
高橋:そうですね。なんとなくですが、営業の仕事に似ていると思っています。地権者さんにアポイントを取って、ご自宅まで伺ってお話をしています。一般的な窓口業務よりも、もっと身近なところで市民対応をしている感覚ですね。
ーまさに「究極の市民対応」ですね。最初の配属がこの区画整理課だったわけですが、配属を聞いた時は率直にどう思われましたか?
高橋:本当に自分の知識が少なくて…。まず「区画整理って何をするんだろう?」と、仕事内容が全く想像つかない状態でした。部署名だけ聞いても「なんだこれ?」と思っていたのが本音です(笑)
ー全く未知の世界からのスタートだったのですね。入庁してから半年、どのように仕事を覚えていったのですか?
高橋:最初の3ヶ月(4〜6月)は、基本的にペアを組んでいる先輩の交渉にまずは「ついていくだけ」という感じでした。
私の担当では、交渉は基本的にペアで行くルールなんです。後々「言った・言わない」のトラブルにならないよう、先輩が話した内容を私がメモに取り、交渉の記録を作る、というのが最初の3ヶ月の主な仕事でした。
その交渉記録を作りながら、ペアの先輩がどんな話をしているのかを見て、聞いて、学んでいった形です。
現在の事業はもう終盤まで来ているので、今はどちらかというと来年度の移転対象者の方に向けた交渉準備を進めている段階です。

ー来年度に向けて、主担当とし動いていくようになるのでしょうか?
高橋:そうですね。自分が主担当としてやる場面があるとすれば、来年度に向けて準備している方々への説明が、一番早いタイミングになると思います。
イメージとのギャップ。「堅くない」職場と「草刈り」
ー高橋さんが入庁前に持っていた「市役所」のイメージは、どのようなものでしたか?
高橋:市役所というより「公務員」という職業に対してなんですが、市民の方や一般の方によく見られているというか…。外での行動一つとっても、ちゃんと責任を持って取り組まないといけないな、というのが採用試験を受ける時からのイメージでした。
あとは、やっぱりデスクワークが主な業務で、来庁された市民の方に窓口で対応しながらひたすら書類仕事をしている、「お堅い」職業というイメージも持っていましたね。
ー実際に入庁してみて、そのイメージは変わりましたか?
高橋:大きく変わりましたね。まず、自分がいざ焼津市役所の職員になってみて思うのは、「お堅い」というのは、ただの偏見だったということです。
もちろん、仕事中は皆さん真面目に取り組んでいますが、プライベートな話をする時なども、本当に話しかけやすい方が多くて、自分の中では良い意味で裏切られましたね。
ただ、入庁前に思っていた「市民の方から常に見られている」というイメージは、むしろより強く意識するようになりました。
仕事をやってみて気付いたのですが、市役所の業務って、市民の皆さんの協力なしではできないことが本当に多いんだな、と痛感しています。今の業務で移転をお願いする時も、協力してもらえなければ事業は進みません。
そういう業務をやっていく中で、市民の方から見られているという意識は常に持たなければいけないし、そういう意識を持った人たちがやるべき仕事が市役所には多いんだな、ということを改めて認識しました。
ー働くことで気づいたこともあったのですね。何か仕事面でもイメージと違ったことはありましたか?
高橋:ありましたね(笑)これは今でもよく覚えています。
配属されてすぐ、区画整理課の仕事は「移転してもらって道路を作る」ことだと大まかには理解したのですが、移転に伴い一時的に入居していただく仮設住宅の管理や、区画整理地内の道路管理も区画整理課の仕事なんです。
仮設住宅にできた蜂の巣の駆除や、管理地の草刈りなど、デスクワークが多いと思っていた自分としては、全く想像つかない仕事がこの半年の間でいくつもありましたね。
実際に働くまでは、市職員がこんなことまでやっているとは、思いもしなかったですね。

「部活一筋」から公務員へ。不安と現在の働き方
ー市役所で働くにあたり、何か不安に感じるようなことはありましたか?
高橋:学生時代は部活動に打ち込んでいて、どちらかというと体を動かす場面が今までの人生で圧倒的に多かったので、ずっと座ったままデスクワークなんてできるのかな…という不安がありました。
勉強もあまり得意な方ではなかったので、いろいろなことを覚えたり、書類に囲まれた仕事についていくことにあまり自信がなかったんです。

ーその不安は、実際に入庁してみてどうでしたか?
高橋:そうですね。今になって思えばそこまで心配することはなかったのかなと思います。
今の部署が思っていたよりも現場に出ることが多くて、デスクワークばかりではなかった、というのもありますが、何より「聞きやすい」環境だったのが大きいですね。
分からないことがあったらすぐに聞ける環境だったので、入庁前に業務のことをそこまで深く考えなくても良かったのかなと思っています。
ー職場の雰囲気にも助けられたのですね。
高橋:今の担当は、住民との交渉や調整が多いということもあってか、コミュニケーション能力に長けている人が特に多いと思っています。
また、とにかく丁寧に教えてくれる先輩方も多いですね。特に私のペアの先輩は、年も離れているのですが、本当に手取り足取り教えてくれます。
質問したことに対して「結果」だけを教える方もいると思うんですが、ここではその結果に至る「過程」までしっかり教えてもらえるので、日々の成長につながっていると感じています。

ー働き方、いわゆるワークライフバランスについてはいかがですか?
高橋:そこはイメージ通りで、仕事とプライベートを両立できています。
もちろん部署や時期にもよるかと思いますが、今のところ遅くまで残業するといったことはほとんどなく、土日もしっかりと休めています。
ー有給休暇も取りやすい環境なのでしょうか?
高橋:有給もすごく取りやすいですね。
新人としては、誰かと希望が重なったら自分が譲らないといけないのかな…と思っていたのですが、周りの方も上手く調整をしてくれて、休みやすい環境を作ってくれていると感じます。
若いから全然取れないとか、遠慮しないといけないという雰囲気は、全く感じたことが無いですね。
「代表」としての自信。私が公務員を選んだ理由
ー少し遡って、高橋さんが公務員を志望された理由を教えていただけますか?
高橋:先ほど「公務員は市民から見られる仕事」というイメージが強かったと話しましたが、その部分に関して、自分がもし公務員になったら…と想像した時に、自分ならしっかりやれるだろうという自信が自分の中にあったんです。
私は今まで部長やチームの「代表」をやらせてもらうことが多く、自分が所属する団体を代表して話をする経験が多かったので、「市民の方から見られても大丈夫だ」という思いが、公務員を目指す大きなきっかけだったと思います。
ー公務員以外の選択肢も考えましたか?
高橋:将来を考えた時に、一般企業を考えたこともありましたが、自分の中では公務員になりたいという想いが強かったですね。
父が消防士をしていることもあり、公安系の仕事を考えたこともあったのですが、学生時代にスポーツで膝を怪我してしまったということもあり、職業として体を使い続けることに不安がありました。
また、消防や警察に比べ、市役所の仕事は「生活に一番身近」な部分に関わることが多いというのも自分の中でとても魅力的でした。

面接対策は「カンペなし」。若手職員としての想いとは。
ー公務員試験に向けて、どんな対策をされましたか?
高橋:まずは教養試験ですね。そこが自分的には一番不安だったので、書店でテキストを買ってきて、独学でひたすら勉強しました。
面接に関しては、私はあまり人とコミュニケーションを取ることに不安がなかったので、「自分の伝えたいことをしっかり伝えられるようにしよう」という意識だけもっていました。
高校3年生の時に、大学受験のために部活の顧問の先生に面接指導をしてもらった時のノートがあったので、それを見返して、礼儀や所作に関しては復習しました。
ー実際に誰かを相手にした面接練習はやらなかったのですか?
高橋:それはやっていないんです(笑)
聞かれたことにどう答えるか、という部分については、繰り返し面接練習をするよりも「聞かれていることを正しく理解すること」が大事だと思っていました。
私の考えですが、全部決めたことを喋ろうとすると、もし喋れなかった時に焦ってしまうと思うんです。なので、話したい「軸」だけを決めておき、聞かれた内容に紐づけて話すようにしたほうが、慌てることなく、自然な回答ができると思います。
ー確かに話したいことを暗記していると、途中で詰まってしまったときに焦ってしまうかもしれないですね。質問が変わりますが、入庁して半年、今感じる市役所の仕事の「やりがい」はどんなところにありますか?
高橋:今やっている仕事で言うと、やっぱり市の事業に関して、地権者の方に「協力してよかった」って思ってもらうことが、自分がやっていて一番嬉しいと感じる瞬間です。
もちろん、見返りを求めてやるような仕事ではないのですが、「気持ちよく納得してもらうために一生懸命やろう」という原動力みたいなものは、この半年間ですごく感じました。
市役所の仕事は生活に身近な部分が多いからこそ、感謝されたり、喜んでもらえることも多いと思います。そういう言葉をいただけるのが、一番の魅力であり、嬉しいことだなと思います。
ーでは最後に、これから焼津市役所を目指す学生さんたちに向けて、メッセージをお願いします!
高橋:市役所の仕事は、本当に市民の方の「生活に近い部分」で仕事ができる、というのが私の中では一番の魅力だと思っています。そういう部分で誰かを支える仕事をしたいと思う方は、きっとやりがいを感じられると思います。
また、市職員というと「お堅い」っていうイメージが強いかなと思うんですけど、焼津市役所は全くそんなことありません。これは自信を持って言えます!
もし市役所で働きたいと思った場合は、まずチャレンジしてもらいたいのと、その選択肢の一つとして焼津市役所を検討してもらえると嬉しいですね。
ー本日はありがとうございました。
「自分ならしっかりやれる自信があったんです」。 部活動で「代表」を務めてきた経験を、まっすぐな目で語ってくれた高橋さん。その言葉には、決して驕りではない、確かな責任感と覚悟が感じられました。
「デスクワークが不安だった」という入庁前の悩みも、今では「そこまで心配することはなかった」と笑います。 それはきっと、彼が飛び込んだ焼津市役所という場所が、どんな仕事でも、すべてを「過程」から丁寧に教えてくれる、あたたかい場所だったからなのでしょう。
高橋さんの半年間での「成長」を感じられるような、中身のとても濃い取材でした。
取材・文:パブリックコネクト編集部(2025年10月取材)



