栗東市役所の農林課で働く髙嶋さんのインタビュー記事です。大学では社会福祉を学び、「より多くの人の支えになりたい」という想いを抱いた髙嶋さん。
農福連携への関心や、栗東市の挑戦する姿勢に惹かれ入庁を決意しました。希望とは異なる配属ながらも、農業サイドからまちづくりに貢献する日々に迫ります。学生時代の熱意がどうキャリアに繋がったのか、そのリアルな声をお届けします。
- 「人の支えになりたい」―福祉の学びから市役所の道へ
- 決め手は「挑戦する姿勢」と「人の温かさ」
- 現場で見つけた新たなやりがいと、公務員のイメージを覆す仲間たち
- 「住みたいまち」を目指して。新人職員の挑戦は続く
「人の支えになりたい」―福祉の学びから市役所の道へ
ーまずは、髙嶋さんが公務員を目指された経緯についてお聞かせください。
髙嶋:大学では社会福祉学を専攻していました。このため、就職では社会福祉士になって働くという道ももちろんありましたが、私自身はもう少し視野を広げて、より多くの人の生活の支えになりたいと考えるようになりました。
「社会福祉」について学んだ際に、「高齢者や貧困者といった特定の層ではなく、すべての人々の幸せ」を目指す取り組みが社会福祉であると知り、感銘を受けたためです。そこで、市役所で働くことが思い浮かびました。
―そうなんですね。
髙嶋:それと、もともと生活保護のケースワーカーを題材にした漫画作品を読み「人の人生に深く関わる」市役所の仕事」に興味を持っていました。
また、学生時代に参加した「農福連携」のプロジェクトも市役所を応募するきっかけとなりました。これは、障がいのある方の一般就労を、農業を通じて支援する取り組みです。農場で働くことを通じてスキルを身につけ、次のステップとして一般企業への就職を目指す、といった内容でした。
このプロジェクトに参加したことで、農業という側面からも障がいのある方の力になれることを知り、農業そのものにも興味が湧きました。福祉という一つの分野に留まらず、色々な仕事に挑戦してみたいという思いが強くなり市役所という働き方に、より一層魅力を感じるようになりました。

決め手は「挑戦する姿勢」と「人の温かさ」
ー就職活動では最終的に栗東市を選んだ決め手は何だったのでしょうか。
髙嶋:私は愛知県出身で、栗東市に地縁があったわけではありません。ただ、大学の4年間を過ごした滋賀県が本当に住みやすく、「ここで働き、暮らしたい」という想いがありました。
栗東市に強く惹かれたのは、その「挑戦する姿勢」です。当時、大規模な「(仮称)栗東ホースパーク」の計画が進んでいることを知り、自治体でありながら新しいことに果敢に取り組む姿勢に、まちの大きな可能性を感じました。
もう一つ、決定打になった出来事があります。実は、インターンシップとは別に、個人的に人事課の方に「お話を聞かせてほしい」とアポイントを取ったんです。

ーご自身で連絡を?
髙嶋:はい。突然のお願いにもかかわらず、担当の方は業務内容だけでなく、「なぜ栗東市で働くのか」といった個人的なことまで率直に話してくださり、車で市内を案内までしてくださいました。学生一人ひとりに真摯に向き合ってくれる温かい姿勢に触れ、このまちで働きたいという気持ちが確信に変わりました。
ー熱意が伝わりますね。実際の採用試験はいかがでしたか?
髙嶋:最終面接は、市長や副市長をはじめとした幹部職員の方々がずらりと並んでいて、独特の厳かな雰囲気でした。緊張しすぎて、最後の「あなたの強みは?」という質問に、思わず「体力だけは自信があります!」と答えてしまったほどです(笑)。手応えは全くありませんでしたが、なんとか合格することができました。
現場で見つけた新たなやりがいと、公務員のイメージを覆す仲間たち
ー現在は農林課に配属とのことですが、どのようなお仕事をされていますか?
髙嶋:農林課の土地改良係で、主に田んぼの「ほ場整備」を担当しています。田んぼの区画整理や農道の補修、大雨で崩れた法面の対応などが主な業務です。他にも、大雨で木が倒れた際にはチェーンソーを持って現場へ向かったり、獣害対策で罠にかかったイノシシの確認に行ったりと、デスクワークだけでなく現場に出る機会が非常に多いです。週に1回は現場に出ます。
ー入庁時の配属希望は出されたのですか。
髙嶋:はい。学生時代に農福連携に携わっていた経験から、福祉関連の部署を希望していました。ただ、実際に農林課に配属されて業務に取り組んでみると、直接的ではないものの、農業というサイドから農福連携の事業に関わることができる、ということに気づきました。これは自分にとって大きなやりがいですし、現場に多く行けるという点も、自分には合っていたなと、今では感じています。
ー入庁して3ヶ月、仕事には慣れましたか?サポート体制などはありましたか?
髙嶋:栗東市には「新規採用職員育成推進員」というものがあり、新規採用職員一人ひとりに同じ部署の先輩がついてくれます。私の場合は係の上司が担当で、業務の進捗を確認してくれたり、いつでも相談に乗ってくれたりするので、非常に心強いです。もちろん、受け身になるだけでなく、まずは自分で挑戦し、時には失敗しながら仕事を覚える姿勢を大切にしています。
ー仕事の大変さと楽しさ、それぞれどんなところに感じますか?
髙嶋:公務員として、税金が給料となっているという責任の重さは、常に感じています。だからこそ一つひとつの業務にしっかり取り組まなければいけない、と身が引き締まる思いです。
楽しいと感じる部分は、やはり現場に行くことです。デスクワークだけでなく、実際に自分の目で見て、体を動かして仕事ができる点に、大きなやりがいと楽しさを感じています。

「住みたいまち」を目指して。新人職員の挑戦は続く
ー入庁前のイメージと、何かギャップはありましたか?
髙嶋:入庁前は、面接でお会いした方々の印象から、公務員は論理的で「カチッとした真面目な人」が多いのだろうと漠然と思っていました。しかし、実際に入ってみると、そのイメージは良い意味で完全に覆されましたね。本当に個性的で、面白い方が多いんです。
例えば、同期には学生時代に沖縄のタバコ農園で働いていたというユニークな経歴の持ち主がいます。先輩には、自分でブランコを作ってしまったり、猟銃の免許を持っていて獣害対策の罠も自分で仕掛けてしまったりするような、パワフルな方もいらっしゃいます。公務員という枠には収まらない、多才で魅力的な人たちに囲まれて働ける環境は、本当に刺激的です。
ー職場の雰囲気については、いかがでしたか。
髙嶋:職場の雰囲気については、ギャップは感じませんでした。これは、先ほどお話ししたように、入庁前に人事課の方に親切に対応していただいた経験があったからです。その時に感じた「親切な方が多いんだろうな」というイメージは、入庁後も変わっていません。本当に、表裏のない温かい雰囲気の職場だと感じています。
ー最後に、髙嶋さんの今後の目標についてお聞かせください。
髙嶋:志望理由とも重なりますが、栗東市はホースパークの建設をはじめ、これからますます発展していくポテンシャルを秘めたまちだと感じています。民間企業だけでなく、自治体も時代の変化に取り残されないよう、新しい挑戦を続けていく必要があります。京都や大阪といった大都市圏に近く、豊かな自然と歴史も併せ持つこのまちは、まだまだ多くの可能性を秘めています。
まずは、日々の業務に真摯に取り組み、市民の皆様から信頼される職員になることが第一の目標です。そして将来的には、「栗東市出身で良かった」「栗東市に住んでみたい」と思ってくださる方が一人でも増えるような、そんなまちづくりに貢献できる職員になりたいです。その大きな目標に向かって、少しでも力になれたらと思っています。
ー本日はありがとうございました。
取材・文:パブリックコネクト編集部(2025年6月取材)