「歴史が大好きな人、ぜひ来てください!」
そう力強く語るのは、栗東市役所スポーツ・文化振興課で文化財保護を担当する雨森さんです。財団法人での発掘調査員として約20年のキャリアを積んだ後、平成23年に栗東市役所へ入庁。
歴史民俗博物館での展示企画、子育て応援課での窓口対応、スポーツ振興と文化財保護の兼務を経て、現在は再任用職員として、文化財保護の最前線を走り続けています。
今回は、栗東市の文化財保護の仕事について、その魅力とやりがいをお聞きしました。
奈良時代の遺跡に惹かれて。発掘調査から始まった、文化財との長い縁
ーまず、入庁されるまでの経歴を教えていただけますか?
雨森:大学は教育学部で、社会科・歴史の課程を選びました。歴史を勉強していくうちに考古学に魅了されて、そのまま専攻するようになったんです。卒業後は財団法人に就職して、約20年間、発掘現場にずっと出ていました。
ー発掘調査というのは、具体的にどのようなお仕事なのでしょうか?
雨森:2パターンあって、1つは遺跡を計画的に調査していくものがあります。もう1つは、建物やビルを建てる前などに、地面の下の遺跡を記録にのこすため事前に調査するものです。こちらの方が圧倒的に多くて、私もそういった開発に伴う調査に主に関わってきました。
面積によって調査期間は変わりますが、広いものだと半年から1年、家を建てる前のような小規模なものだと1〜2か月ほどでしょうか。年間2〜4件ほどこなしていましたね。
ーその後、栗東市役所への入庁という流れになったのはどのような経緯ですか?
雨森:あるきっかけがあって、栗東市にも文化財の専門家が必要だという話になり、入庁する流れになりました。財団での発掘調査はとても楽しかったのですが、市役所に行けば、仕事の幅がさらに広がると感じたんです。
専門外への異動。それでも続けてきたのは、つながりが増えていったから
ー入庁後は歴史民俗博物館への配属だったそうですね。
雨森:はい。博物館では主に展示を担当しました。考古学の分野を中心に、いくつか企画展も行いましたし、敷地内の古民家で子どもたちの歴史学習のお手伝いもしました。栗東市内にはお寺が多くて美術品や仏像もたくさんありますし、東海道と中山道という2つの江戸時代の街道も通っています。そういった多彩な文化を展示するのはやりがいがありましたね。
ー展示の企画というのは、どんなことを考えながらやるのでしょうか?
雨森:まずストーリーを頭の中で構成して、こういう順番で見てもらったら内容が理解できるだろうか、とか、導線をどうしたらよいかを考えます。思ったように配置できた時は、楽しいですね。展覧会を見た来館者の方から『ここにこんな遺跡があったんですね!』と言ってもらえると、頑張って企画して良かったなと思います。
ーその後は、子育て応援課への異動も経験されたそうですね。
雨森:びっくりしました。異動はあるかなと思っていましたが、まさか自分がここまで違う分野に行くとは正直想像していませんでした。ひとり親家庭への児童扶養手当の担当をしていたんですが、税の仕組みや福祉の知識がまったくゼロからだったので、周りの方に頼ってばかりでしたね。
ーまったく異なる業務でしたが、後々何かプラスになることはありましたか?
雨森:結果的には非常に勉強になったと思います。生活保護など福祉分野の担当職員ともつながりができて、今まで関わることのなかった人たちと連携する機会が生まれました。市役所の中でいろんな仕事に触れることで、広く視野が広がった感じがしますね。
ースポーツ・文化振興課への異動では、スポーツ振興も担当されたんですか?
雨森:文化財の仕事ができるかと思ったら、スポーツ振興も担当することになりました(笑)。でも、スポーツ振興の仕事では、地域のスポーツ推進委員さんやコミュニティセンター、学校の先生など、本当にたくさんの方と関わりました。
今でも地域で顔を合わせると声をかけてもらえますし、人のつながりが増えたことは財産になっています。どんな仕事をしていても、地域の方との関係があると、仕事はスムーズに進みますから。

文化財保護の3つの仕事。百年先に残すための、長いスパンの営み
ー現在の文化財保護に関する仕事について教えてください。
雨森:大きく3つあります。1つ目は文化財保護。指定文化財の所有者さんへの支援や、新たに市の文化財として指定していく仕事です。2つ目が埋蔵文化財の調査で、開発があった際に届出対応を行い、実際に発掘調査を行ったり、調査の監理をしています。
3つ目が栗東市出土文化財センターの管理運営です。栗東市内で発掘されたものを収蔵する施設で、そこでの展示や体験イベントも企画しています。私は主に1つ目と3つ目を担当しています。
ー仕事のやりがいはどんなところに感じますか?
雨森:文化財の仕事って、非常に長いスパンで動くんです。取り組んでも1か月後に結果が出るようなものではなくて、何年もかけてじっくり進めていくことが多いと思います。街道沿いにある重要文化財の保存活用計画も、昨年度まで計画づくりをしていて、今年からいよいよ修繕や活用のフェーズに入ります。
そういった長い仕事が実を結んでいくのを見届けられるのは、大きなやりがいです。
ー再任用という形で引き続き働くことにしたのは、どういった思いからですか?
雨森:やり残したことがまだたくさんあるんです。重要文化財の保存活用と、もう1つ、昔から非常に重要な遺跡があって、その価値をきちんと明らかにしていく報告書を今まとめているところなんです。その遺跡の将来の姿を描けるまではやっぱり関わらせてもらわないといけないなと思っています。


栗東の歴史と文化が好きな人へ。一緒に、この町の宝を残していきたい
ー栗東市の魅力はどんなところでしょうか?
雨森:京都や大阪にもすぐ行ける利便性の高さと、深い山や豊かな自然、そして歴史文化が共存しているところです。東海道と中山道という2つの街道が通っていたり、古墳や遺跡も多く、こんなに歴史文化に恵まれたまちはなかなかないと思います。
ーどんな方と一緒に働きたいですか?
雨森:やっぱり歴史や考古学、文化財が好きで、栗東市の特有の文化にも興味を持てる人と働きたいですね。文化財保護の仕事は、すぐに目に見える成果が出るものではないけれど、確実にこの町の宝を未来につなげていく仕事です。長いスパンで物事に向き合える人なら、きっと深いやりがいを感じてもらえると思います。
ー最後に、栗東市への受験を考えている方へメッセージをお願いします。
雨森:栗東市には本当に素晴らしい歴史文化があります。遺跡もお寺の美術品も、街道文化も。そういったものをこれから一緒に守って、次の世代に伝えていただける方を待っています。歴史が大好きな人、ぜひ来てください!

ーありがとうございました。
考古学への興味から始まり、発掘現場、博物館、そして文化財保護へ。雨森さんのキャリアは、好きなことを軸にしながら、着実に深みを増してきた歩みでした。
未来に何かを残すことを、毎日の仕事として積み重ねていく仕事が、栗東市にはあります。歴史や考古学に情熱をもつ方にとって、これほど充実した職場はそうないかもしれません。
取材・文:パブリックコネクト編集部(2026年6月取材)



