秋田県能代市役所で働く蛯澤さんと長岡さんのインタビュー記事です。
高校を卒業し、この4月から社会人として、そして市役所職員としての一歩を踏み出したお二人に、高卒で公務員になるという選択、そして地元・能代市で働くことの魅力ややりがいについて、フレッシュな視点からお話を伺いました。
入庁前は、仕事や人間関係に不安を抱いていたそうですが、今では毎日が楽しいと笑顔で語るなど、「働く」について率直な想いが伝わる内容となっています。
地元の市役所で働くという選択
ーまずはお二人の自己紹介と、現在の仕事内容を教えてください。
蛯澤:出身は青森県ですが、小学生の頃からは能代市で育ち、市内の高校を卒業後、令和7年4月に能代市役所に入庁しました。入庁してからはまだ約3ヶ月となります。
税務課市民国保税係で、主に原動機付自転車(原付)や小型特殊自動車(トラクターなど)の登録・廃車手続き、そして軽自動車税に関する業務を担当しています。
長岡:私は生まれも育ちも能代市で、市内の高校を卒業後、蛯澤さんと同じく令和7年4月に入庁しました。
市民保険課の窓口サービス係に所属していて、住民票の異動や発行など、市民の暮らしの基本となる業務を担当しています。

ーお二人が公務員、そして能代市役所を志望した理由を教えてください。
長岡:高校2年生の秋頃、母に連れられて市役所の窓口を訪れたことがあったのですが、職員の方の対応がとても丁寧で、手続きがスムーズに進んだことを見たのが市役所で働くことに興味を持った最初のきっかけです。
当時は大学進学を何となく考えていたのですが、特にやりたいことも見つからず、大学受験に対してあまりやる気が出ていなかったんです。そんな時、担任の先生に相談したら、「高卒で公務員という道もあるよ」とアドバイスをいただきました。
そこで窓口での経験を思い出し「私もあんな風に人の役に立ちたい」と考えたことから、進学ではなく、卒業後は能代市役所で働きたいと思うようになりました。
蛯澤:私は小学生の頃から、消防士や警察官といった「国のために働く人」に憧れていたのですが、中学生になって将来のことを具体的に考えた時、親や先生に相談する中で「市役所職員で働くのもいいんじゃないか」と言われたんです。親としては消防や警察は危険が伴うというイメージもあったみたいですね。
確かに、消防や警察も魅力的だったのですが、いつからか自分の中で「市職員として地元に貢献したい」という気持ちが強くなっていることに気づいたんです。そこからはもう、能代市役所一筋で、合格を目指して勉強してきました。
ーやはり、能代市役所を選んだ一番の理由は「地元だから」でしょうか?別の市町村という考えはなかったですか?
蛯澤:やはり地元で働きたいという思いが大きかったです。家庭の事情で大学進学は考えていなかったので、高校卒業後に地元で働くということは決めていました。
ただ、能代市に必ず合格するというわけではないので、他の市町村も併願はしていました。結果的に合格することができたのですが、能代市役所から一番に合格の連絡が来た時は、本当に嬉しかったです(笑)
長岡:私も、やはり地元である能代市役所が第一志望でした。働くのであれば、慣れ親しんだ地域でという思いが強かったですね。
ただ、私も他の市町村と併願はしていました。採用試験や面接の経験が全くなかったため、試験慣れするために能代市よりもスケジュールの早い自治体を受験しました。担任の先生からも、場数は踏んだほうが良いとアドバイスをいただいていました。
試験を乗り越えて
ー高校生活と両立しながらの公務員試験、どのように対策しましたか?
蛯澤:筆記試験対策が中心でしたね。市役所で働いている先輩に勉強方法を聞いたり、自分で参考書を買ってひたすら問題を解いていました。
学校の先生に協力していただき、面接の練習もしていたのですが、やはりまずは筆記を突破しないと始まらないと思っていたので、筆記試験対策に一番力を入れました。
長岡:私も同じで、まずは筆記を突破しないとという思いがあったので、筆記試験の対策を重点的に頑張りました。独学だったので、親に参考書を買ってもらったり、図書室で借りたりして、問題数をこなすことを意識していましたね。
面接は、先生がつきっきりで練習をしてくれました。能代市役所では集団討論もあるのですが、集団討論については、公務員志望の同級生と放課後に集まって繰り返し練習していました。
ーこれから受験する後輩へ、試験対策について何かアドバイスはありますか?
蛯澤:筆記試験の勉強ももちろん大切なのですが、面接や集団討論といった二次試験以降の対策を頑張ってもらいたいですね。
私は筆記試験対策ばかりで、集団討論の練習をあまりしていなかったんです。そのため、集団討論本番ではとても苦労した思い出があります。自分の意見をしっかり持ちつつ、周りと協調する練習をしておくと、自信を持って臨めると思います。
長岡:私がアドバイスするとしたら、とにかく「情報収集」は大事だということです。集団討論のお題はその時まで分からないので、能代市が今どんなことに力を入れているのか、どんな課題があるのかといった知識を、市のホームページや広報、LINEなどで調べておくことが大切です。
生まれ育った能代市なのですが、調べてみると知らなかったことが思った以上にたくさんありました。
幅広い知識があれば、どんなお題が出ても自分の言葉で話せるようになりますし、その後の面接試験でも必ず活かせると思います。
「働く」ということについて
ー採用が決まってから入庁するまで、どのような気持ちでしたか?
蛯澤:一番気にしていたのは、最初どこの課に配属されるかですね。周りの先輩から「〇〇課になったらしいよ」なんて冗談を言われて、その度にドキドキしていたのを覚えています(笑)
能代市は実はバスケットボールがとても盛んな街でもあるんです。私も小中高とずっとバスケをやってきたので、そんな「バスケの街」でスポーツに関わる仕事がしたいという思いはありました。
結果的に、最初の配属は税務課と、スポーツとはあまり関係のない部署だったのですが、どんな形であっても地域のために働いているという点では大きな責任感とやりがいを感じています。
また、周りの同級生が大学生活をスタートさせる中、自分だけが「働く」ということにも、少し不安はありましたね。
長岡:私も、どこに配属されてどんな仕事をするのか、全くイメージが湧かなかったので不安に思っていました。
私はアルバイト経験もなかったので、窓口で上手く話せるだろうか、きちんと対応できるだろうか、ということばかり考えていましたね。
ー入庁して約3ヶ月、仕事には慣れましたか?また、どんな時にやりがいを感じますか?
長岡:最初は不安でいっぱいでしたが、今は毎日やりがいを感じています。先輩方が本当に優しくて、とても丁寧に業務のことを教えてくれるので、少しずつではありますが一人でできることも増えてきました。
何より、手続きを終えた際に、市民の方から「ありがとう」「助かったよ」と声をかけていただけることが一番のやりがいですね。その一言で、もっと頑張ろうって思えます。
蛯澤:私も、最初は専門的な税の知識が全くない状態で、右も左も分からないまま必死に業務を覚えていきました。特に配属されてすぐの4月、5月は軽自動車税の繁忙期でもあるので本当に大変でした。
ただ、3ヶ月経った今、ようやく自分の担当業務をスムーズにこなせるようになったと感じています。電話や窓口で、自分だけで対応を終えられるようにもなり、3ヶ月前と比べると成長したんだな、と実感することができます。
窓口対応や徴収事務で「税」を扱うのですが、自分が市民のお金という重要な部分を担っているということに、日々大きな責任感とともにやりがいを感じています。
想像とは違う?能代市役所の職場環境
ー入庁前、市役所やそこで働く人についてはどのようなイメージを持っていましたか?
蛯澤:私は、学生の頃からバスケットボールを通じて能代市役所の先輩方と関わる機会が比較的多かったんです。そのため、市役所の人といえば「明るい」「みんなバスケが大好き」といったイメージを持っていましたね。
市役所の仕事については、正直なところあまり関わる機会がなかったということもあり、具体的なイメージは持っていませんでした。
長岡:蛯澤さんとは全く逆のイメージでしたね(笑)
とにかく「堅い」というイメージが強かったので、上手く話せるかな、人間関係は大丈夫かな、と心配していました。
ーお二人とも全く逆のイメージを抱いていたのですね。実際入ってみていかがでしたか?
蛯澤:事前のイメージではないのですが、税務課と聞いてピシッとした堅い職場をイメージしていました。でも実際のところ、税務課の方もみなさんすごく気さくで、職場はフワッとした温かい雰囲気でしたね。
バスケ好きというイメージはまさにそのままでした。私自身も市役所のバスケ部に入ったのですが、学生の頃の部活動とは全く違う雰囲気で、みんなでバスケを楽しむことができています。
長岡:入庁前のイメージとは全然違い、みなさん本当に優しくて話しやすい方ばかりでした。
私が何度も同じことを質問してしまったことがあったのですが、そんな時でも「大丈夫だよ、何回でも聞いて」と言ってもらえたのはとても嬉しかったですね。その言葉のおかげで、安心して仕事に取り組めています。
業務外では雑談で緊張をほぐしてくれることも多くて、職場としてとても働きやすいと思っています。
未来の後輩へ
ー高校卒業後すぐに社会人になってみて、学生のうちに「これをやっておけばよかった」と思うことはありますか?
蛯澤:間違いなくパソコンスキルです!特にExcelの数式やWordでの文書作成は、毎日の業務で必ず使います。高校の授業ではPowerPointが中心で、Excelなどはほとんど触ってこなかったので、入庁してからすごく苦労しています…このスキルがあれば、仕事がもっと楽に進められただろうなと痛感していますね。
長岡:仕事とは少し離れますが、「もっと友達と遊んでおけばよかった」と思います(笑)
進学する友人も多く、地域柄、大学進学で県外に出るケースが多いのですが、そうなってしまうと友達とはなかなか会えなくなってしまいます。自分が働いているとなおさら会える機会も減ってしまうので、高校生の時間がいかに貴重だったか、今になって感じています。
ー地元のお二人が感じる『能代市の魅力』を教えてください。
蛯澤:やはり「バスケの街」であることです。バスケミュージアムがあったり、全国の強豪校が集まる「能代カップ」が開催されたり、バスケ好きにはたまらない環境です。
先程もお話ししましたが、私も現在市役所のバスケチームに所属していて、週末になると練習試合に参加したりしています。いずれはスポーツに関連する部署で、バスケをきっかけとして街全体をもっと盛り上げていけると嬉しいですね。

長岡:私は、能代市の「四季を通して楽しめる」という点が魅力だと思います。
春は桜、夏は花火やお祭り、秋は美味しい食べ物と紅葉、冬は雪景色やライトアップと、一年中飽きることがありません。冬には市役所もライトアップされるのですが、昔からそれを見に来ることも楽しみにしていました。
大好きなこの街で、季節の移ろいを感じながら暮らせることが幸せですね。

ー最後に、これから公務員を目指す若い世代へメッセージをお願いします。
蛯澤:市役所の仕事は、どの課にいても必ず「市民のため」に繋がっています。大変なこともありますが、自分が地域に貢献できているという実感と責任感は、大きなやりがいになります。
ぜひ、能代市役所で一緒に働きましょう!
長岡:公務員に対して「堅い」「難しそう」というイメージがあって、不安に思う人も多いかもしれません。
でも、能代市役所は本当に温かい職場で、分からないことがあっても周りの先輩方が必ず助けてくれます。
一人で抱え込まずに成長できる環境なので、安心して飛び込んできてください!待っています!
ー本日はありがとうございました。
取材・文:パブリックコネクト編集部(2025年7月取材)