栃木県下野市役所で土木技術職として働く小暮さんのインタビュー記事です。
民間企業で約5年間、土木の施工管理として現場の最前線に立った後、故郷である下野市へUターン転職した小暮さんに、働き方や環境が大きく変わる中で感じたやりがいや、転職で手に入れたワークライフバランスについて語っていただきました。
- より大きな仕事に憧れて「土木」の道へ
- 将来を見据えた転職。市役所という選択
- 活かされる経験と、ここで働くやりがい
- 民間と市役所、働く上での違いとは?
- 手に入れたのは「家族との時間」
- 経験を活かす。未来の仲間へのメッセージ
より大きな仕事に憧れて「土木」の道へ
ーまずは自己紹介と、これまでのキャリアについて教えてください。
小暮:下野市の出身で、大学は埼玉にある理系大学に進学し、建築と土木について専攻していました。
卒業後は民間企業に就職し、土木の施工管理技士として約5年間、主に国交省が発注するトンネル工事や橋梁工事などの現場管理に携わりました。
そして、令和4年度に下野市役所に転職し、現在は都市建設部上下水道局で下水道関連の業務を担当しています。

ー大学では建築と土木の両方を学ばれていたのですね。
小暮:もともと理系科目が好きで、その中で建築に興味を持ったのがきっかけです。
ただ、大学で学ぶうちに、よりスケールの大きな構造物に関われる土木の世界にも魅力を感じるようになりました。
就職活動中はどちらの道に進むか迷いましたが、企業説明会で土木職が携わる大規模工事のやりがいについてお話を聞くうちに、自分も大規模なインフラ整備に挑戦してみたいという思いが強くなり、土木の道へ進むことを決めました。
将来を見据えた転職。市役所という選択
ー転職には何かきっかけがあったのでしょうか?
小暮:一番の理由は、ワークライフバランスを見直したいと思ったからです。前職は現場仕事が中心で、休日出勤や夜間の呼び出しも多く、全国各地への転勤もつきものでした。
やりがいもとても大きかったのですが、年齢を重ね、将来的に家庭を持つことを考えたときに、「特定の場所に腰を据えて、安定した生活を送りたい」という気持ちが強くなったんです。
ちょうど5年という節目を迎えたことと、担当していた現場も落ち着いたタイミングであったこともあり、これを機に転職しようと決意しました。
ー転職先としては、自治体を第一に考えていたのですか?
小暮:地元に腰を据えたいという目的がありましたので、地元の民間企業も視野に入れていましたが、働き方といった観点で自治体で働くことを第一希望に考えていました。
転職に際し色々と調べている中で、やはり自治体の働き方や福利厚生は魅力に感じていましたね。
ー働きながらの転職活動は、やはり大変でしたか?
小暮:当時は宮城県で勤務していたのですが、現場が忙しく、働きながら転職活動をするのは難しいと判断したんです。
そこで、思い切って工事がひと段落したタイミングで退職し、一度実家に戻ってから試験対策に専念することにしたんです。次の仕事が決まる前に退職してしまったのでプレッシャーは大きかったのですが、「なんとかなるだろう」という根拠のない自信がありましたね(笑)
退職してから試験まで2ヶ月ほどでしたが、集中して勉強し、無事に合格することができました。
活かされる経験と、ここで働くやりがい
ー現在の業務内容と、仕事のやりがいについて教えてください。
小暮:現在は下水道課に所属し、主に下水道管路の整備に関する業務を担当しています。
具体的には、工事の設計を基に積算を行って発注し、業者の現場監理や監督まで、一連の流れすべてに携わります。前職とは立場が逆になりましたが、設計段階から工事の完了まで、事業全体を広く見渡せるところが、市役所で働く技師ならではのやりがいだと感じています。

ー特に思い出に残っているような業務などはありますか?
小暮:入庁2年目の時に行った工事が印象に残っています。農業集落排水を公共下水道へ統合する事業で、複数の工事をほぼ1人で担当しました。
前職の経験がベースにはあったものの、扱う分野が異なるため入庁後は新しく覚えることばかりでした。この工事では、積算や下水道特有の考え方など、1年目に上司から教わったことを実践しながら、業者と調整を重ねました。
翌年度の供用開始が予定されていたためスケジュールはタイトでしたが、無事に工事を完了させられた時は、大きな達成感がありましたね。

ー前職の経験は、どのような場面で活かされていますか?
小暮:一番は業者との調整や現場対応ですね。前職では受注者側だったので、業者がどういうことを考えているのか、どういう点で困るのかがよくわかります。
もちろん、私たちは発注者として市の考えを伝えなければなりませんが、相手の立場を理解した上で円滑なコミュニケーションが取れるのは、大きな強みだと感じています。
民間と市役所、働く上での違いとは?
ー実際に働いてみて、民間企業と市役所で「ここが違う」と感じる点はありますか?
小暮:先程からお話ししているとおり、受注・発注の立場が異なるため、違いを感じるところは多いのですが、特に人間関係や職場の空気感は大きく変わったと思っています。
民間時代は、同じ施工管理のプロが集まる中で、常に同僚の中で競争意識がありました。成長意欲の表れでもあるのですが、どこかピリピリした緊張感があったんです。
一方、市役所には「協力して仕事を進めよう」という協調性の文化が根付いています。もちろん責任感は同じように求められますが、1人に負担が偏るのではなく、グループ全体でサポートし合う雰囲気があるので、精神的なストレスはかなり軽減されました。
また、仕事の進め方に関しては、前職の方がスピード感を持って進められていた印象があります。民間企業はスピード感が求められますが、市役所は何かを進めるためには決裁が必要で、1つの決裁を取るにも多くのプロセスを踏む必要があります。
最初は違和感がありましたが、これも税金を使って事業を行う公務員ならではの、丁寧で間違いのない仕事の進め方なのだと理解しています。
ーちなみに、小暮さんは入庁前、公務員に対してどのようなイメージを持っていましたか?
小暮:よく言われるかもしれませんが「お堅い」イメージを持っていましたね。でも、入ってみると皆さんとてもフランクで、部署を超えて活発にコミュニケーションを取っています。入る前のイメージより、実際のところずっと働きやすい環境だと感じています。

手に入れたのは「家族との時間」
ー転職の大きな理由だった「働き方」に変化はありましたか?
小暮:劇的に変わりましたね!実は前職は現場で共同生活をしていたということもあり、常に心が休まらない環境だったのですが、今は自分の家に帰り、家族と過ごす時間があります。
仕事と家庭、どちらも大切にしながらバランスよく働くことができていると感じています。実は先日、子どもが生まれたのですが、3ヶ月半の育児休業も取得させていただきました。
ー育休も取られたのですね。取得時の周囲の雰囲気はいかがでしたか?
小暮:まず、前職では育休を取得しようという発想がなかったですね。今では働き方改革も進んでいるかもしれませんが、少なくとも当時は男性として育休を取得したいなんて言えるような雰囲気ではなかったです。
それが、下野市では男性職員が育休を取るのは当たり前のような雰囲気です。私の場合、直属の上司が1年間の育休を取得していたこともあり、相談に乗ってもらうこともできましたし、希望通りの期間で育休を取得することができました。
周囲の理解もあり、後ろめたさを感じることなく、育休を取得することができたと思っています。
ーそれは素敵な環境ですね。ちなみに、育休中の生活はいかがでしたか?
小暮:仕事とはまた違った大変さがありましたね。特に生まれて最初の頃は、慣れない育児に悪戦苦闘しましたが、妻と協力し合って乗り越えることができました。仕事では感じることのないような感情を味わい、とにかくバタバタとしていましたが、何物にも代えがたい貴重な時間でした。
最終的に、妻からも「取ってくれてありがとう」と言ってもらえたので、本当に育休を取得して良かったと思っています。
経験を活かす。未来の仲間へのメッセージ
ー最後に、これから技術職として働くことを考えている方へメッセージをお願いします。
小暮:民間で施工管理を経験されている方にとって、自治体の土木技術職はとても魅力的な選択肢の一つだと思います。
特に、私のようにワークライフバランスを重視したい、家族との時間を大切にしたいと考えている方には、ぜひお勧めしたいです。給与面では下がってしまう場合もあるかと思いますが、それ以上に得られるものが大きいと私は感じています。
下野市は、職員1人ひとりの働き方を尊重してくれる、とても風通しの良い職場です。もし転職に迷っているなら、ぜひ一歩踏み出してみてください。
きっと新しいやりがいと、豊かな生活が待っていると思います。

ー本日はありがとうございました。
取材・文:パブリックコネクト編集部(2025年7月取材)