栃木県下野市役所で働く福田さんのインタビュー記事です。
コーヒーチェーンの副店長から公務員へ。全く異なる業界からの転職を経て、福田さんが見つけた新たなやりがいについて伺いました。前職での経験を活かし、市民に寄り添いながら「未来のまちづくり」に貢献する現在の姿や、仕事への向き合い方の変化など、転職を考えている方にとってはとても参考になる内容となっています。
教員への道から一転、働きたい会社との出会い
ーまずは、福田さんのこれまでの経歴について教えてください。
福田:出身は下野市近隣の町です。大学進学を機に地元を離れ、教育学部で国際教育を専攻しました。
小・中・高の教員免許を取得する傍ら、多文化共生や、JICA(国際協力機構)の活動にも興味を持っていました。
大学卒業後は大手コーヒーチェーンに就職し、副店長として店舗運営等を任されていました。その後、令和4年度に下野市役所に入庁しました。

ー元々は教育の道を志していたのですね。なぜそこからコーヒーチェーンに就職されたのでしょうか?
福田:当初は教員になることを考えていたのですが、大学時代にアルバイトをしていたコーヒーチェーンの社風や経営方針に、とても大きな魅力を感じたんです。
そこは、ただコーヒーを売るだけでなく、スタッフ一人ひとりの個性や生き方を尊重した人材育成を行っていたり、コーヒー豆の生産者が抱える児童労働の問題解決に取り組んでいたりと、非常に価値観を共有することのできる会社でした。
「働くなら、自分が成長できて、心から『いいな』と思える環境で長い仕事人生を過ごしたい」と考えていた私にとって、その会社の姿勢はとても輝いて見えたんです。尊敬できる社員の方々にも出会え、いつしか教員としてではなく、ここの社員として働きたいと強く思うようになりました。
ー働きたい会社に出会えたのですね、そこから転職に至った経緯も教えていただけますか?
福田:きっかけは、新型コロナウイルスの感染拡大でした。当時、私は成田空港の店舗で働いていたのですが、コロナ禍で空港からぱったりと人の姿が消えてしまったんです。その光景を目の当たりにして、自分の価値観が大きく変わりました。
一つは、家族の近くで暮らしたいという思いです。自由に移動ができない状況になって初めて、地元や家族の大切さに気づかされました。それまでは新しい場所で働くことにもとても魅力を感じていたのですが、地元で長く、安定的に働きたいと思ったんです。
もう一つは、「生活の基盤を支える仕事」への関心です。コロナ禍では毎日のように行政の方々が様々な対策に奔走するニュースを見ていました。そんな姿を見て、人々の生活の根底を支える仕事の重要性を改めて認識し、行政の仕事に興味を持つようになりました。
動画で出会った「下野市」の魅力
ー地元に戻るという選択肢の中で、なぜ近隣である下野市を選んだのでしょうか?
福田:地元の町や、高校時代を過ごした市も候補として考えましたが、色々調べる中で下野市のホームページにたどり着きました。
そこには「プチハピしもつけ」という、市の魅力を紹介する情報サイトがあったのですが、その動画を見ると、行政だけでなく、市民の方々が主体となって「一緒にまちを良くしていこう」という温かい雰囲気や、新しいことに挑戦しようとする前向きな姿勢が伝わってきました。
生まれ育った地元に貢献をしたいという想いもあったのですが、新しい場所で、その土地の魅力を発見しながら仕事をするのも楽しそうだな、という興味が湧いたので、最終的には下野市1本に絞り受験することにしました。

ー全く異なる業界から市役所への転職に、不安はありませんでしたか?
福田:正直とても不安でした(笑)
特に「堅苦しそう」というイメージが一番のネックでしたね。前職が個性を尊重する企業だったので、そのギャップはとても大きいだろうなと思っていました。
ただ、実際に働いてみたら、思っていたよりもずっとアットホームで柔軟な方が多くて、すぐに安心しました。もちろん、仕事を進める上では市役所ならではの「堅い」一面もありますが、困ったことがあればすぐに相談できますし、上司や同僚にも恵まれて、とても働きやすい環境だと思っています。

現在の仕事内容。前職経験は活きるのか
ー現在はどのようなお仕事をされているのでしょうか?
福田:市民協働推進課に所属しています。主な仕事は、市民の方々が自主的に行うまちづくり活動の支援です。
例えば、市役所の広場でお祭りを企画する団体や、下野市の特産品である干瓢の魅力を広める団体、地元の高校生の活躍の場を作る団体など、様々な市民団体があります。そうした団体に対して補助金を出したり、活動のPRをお手伝いしたりしています。
また、市民の方々と協力して、人権意識を高めるための啓発活動なども行っています。

ー異なる業界からの転職ではありますが、前職での経験が活きていると感じることはありますか?
福田:前職では副店長として店舗の運営や人材の採用、育成など様々な経験を積んできたので、活きていると感じることもたくさんありますが、一番は、窓口での対応ですね。
前職では海外の方を含め、毎日非常に多くのお客様と接していたので、窓口業務で市民の方々のお話を伺ったり、適切な部署へご案内したりする際に、苦手意識をもつことなく対応できていると感じています。

やりがいと働き方の変化
ー市役所で働く中で、どういったことにやりがいを感じていますか?
福田:以前、商工観光課にいた時に、これからお店を開業する方の店舗改装を支援する業務を担当していたのですが、相談に乗っていたお店が実際にオープンし、お客様で賑わっている様子を見かけた時は、本当に嬉しかったですね。「このお店の誕生に、少しだけ貢献できたんだな」と、見るたびに温かい気持ちになります。
今の仕事では、市民団体の皆さんが「もっと地域を盛り上げたい」「こんなまちにしたい」という熱い想いを持って活動されている姿に、日々刺激を受けています。
その想いをサポートし、10年後、今よりもっと素敵な市になっている未来を想像できることが、今の私の大きなやりがいです。
ーやはり、前職とは仕事の向き合い方や感じるやりがいは異なるものですか?
福田:仕事への向き合い方は大きく変わりましたね。前職では「目の前のお客様やスタッフをいかに幸せにするか」という短期的な視点が中心でしたが、今は「5年後、10年後のまちをより良くするために」という長期的な視点で物事を考えられるようになりました。
確かに目の前のお客様に喜んでいただくこともとても嬉しいのですが、すぐに結果が見えなくても、自分の仕事が未来のまちづくりに繋がっていると感じられるのは、大きなやりがいだと感じています。
ー働き方にはどのような変化がありましたか?
福田:ワークライフバランスがとても充実するようになったと思っています。
前職も労務管理はしっかりしていましたが、店舗勤務だとどうしても急なトラブルで呼ばれることなどもありました。
今は、自分のペースで仕事の段取りを組めますし、プライベートの時間もしっかり確保できています。家族もできたので、今後の生活を考えると、将来の見通しを立てつつストレスなく働ける今の環境は本当にありがたいですね。
未来の仲間へのメッセージ
ー最後に、これから下野市役所を目指す方々へメッセージをお願いします。
福田:下野市役所は、本当に働く環境としてオススメできる場所です。穏やかで優しい方が多く、アットホームな雰囲気の中で、しっかりと仕事に取り組むことができます。
私のように、全く違う業界から転職してきた人間でも、周りの方々のサポートのおかげで、すぐに慣れることができました。転職には不安がつきものだと思いますが、一歩踏み出す勇気が、きっと新しい世界を見せてくれるはずです。
前職での経験も、今の仕事も、どちらも私にとって大切なキャリアです。その経験があったからこそ、今の働き方の良さを実感できています。
もし転職することや、市役所で働くことに迷っている方がいたら、ぜひ一歩踏み出していただければと思います。
皆さんと一緒に働ける日を楽しみにしています!

ー本日はありがとうございました。
取材・文:パブリックコネクト編集部(2025年7月取材)