鹿児島県南さつま市役所では、誰もがより受験しやすい採用試験に向けた改革を進めています。改革に至った経緯や目的と共に、具体的な改正ポイント等を職員採用担当の森さんにお聞きしました!

ー今回改正に至った経緯を教えていただけますか?
森:受験者数が年々減ってきていたことがきっかけの1つでした。全国的にも公務員志望者が減ってきていることが課題として挙げられていたたため、まずは「どうすれば受験しやすいのか?」というヒアリングを行ってみたんです。
それこそ、職員であったり、職員の親族や関係者、高校の進路指導の先生にもヒアリングを行ってみました。すると、最初にわかったのは、やはり「公務員試験」に壁を感じている方が多いということですね。特に高校生の場合、民間を志望していた生徒がせっかく高校3年時に自治体の業務に興味を抱いたとしても、そこから公務員試験対策をすることには壁があり、なかなか受験に踏み切れないということでした。
ならばということで、これまで行っていた教養試験を廃止し、一般的な適性検査を取り入れることとしました。
応募の段階ではハードルをあまり上げず、その後の面接の中でしっかりと人物を見たうえで採用しようという狙いです。

ー確かに最近では教養試験・専門試験を実施せず、一般的な適性検査を導入する自治体も増えてきていますね。その他に、南さつま市ならではの取り組みはありますか?
森:育児や介護を理由に正規職員を退いてしまった方が、復職の機会に中々恵まれないという現状にも注目しました。特に若くして結婚して子育てをしていた女性が、子どもの成長に伴いいざ再び働こうとした際、中途採用や社会人経験者枠を受けようとすると、「正規職員として〇年以上の勤務」という要件が引っかかってしまい、応募すらできない状況だったのです。子の成長に合わせて長い間アルバイト等を行っていたような方ですね。
我々が市役所職員として求めているのは、〇年以上という「経歴」ではなく、その人が持つコミュニケーション能力や人の為に働くことができるのか、そして自ら考えて効率よく働けるのかといった点です。
単なる職歴や筆記試験では測ることのできないこれらの能力や特性については、面接の中でしっかりと評価すべきという考えから、「正規職員として〇年以上の勤務経験」という職歴の要件を撤廃しました!
女性が育児、介護を経て正規職員として復職する(できる)割合が全国的に見ても減少傾向にあるということを耳にしましたので、まちを活性化するためには女性活躍が重要だと考えたんです。
そのため、試験案内においても、「女性の復職を応援しますよ!」「受験しやすいですよ!」ということをしっかりと伝えることにしました。
もちろん、この見直しによって女性だけではなく、これまでに様々な事情で正規職員として働くことができていなかった方々が、活躍できる機会を提供したいと思っています。適性検査の中で一定の学力は確認しますが、過去の経歴はリセットして、面接でその人自身を判断したいと思っています。

ー履歴書上の経歴ではなく、その方の中身を重視するようになったということですね。実際に要件を緩和してみて、反響はいかがでしたか?
森:改正後の7月に行われた募集では、応募者数だけを見ても前年度の2倍以上の方に申し込みをいただきました。さらに、職歴要件を撤廃したことで受験できた方はその内約3割を占めていました。
私たちのメッセージは、着実に受験者の方々にも届いているんじゃないかと思っています。

ーこのほかにも、何か見直しは行いましたか?
森:要件の見直しといったものではないのですが、昨年度から同じ職種の募集でも「ふるさと枠」と「移住者枠」というものを設けました。ふるさと枠とは、南さつま市にゆかりがある方や地元に対する強い思いをお持ちの方を対象とした募集枠です。例えば、就学や就職を機に一旦南さつま市から出て行ってしまった方で改めて地元で活躍したいと思われている方や、配偶者や祖父母等が南さつま市の出身で、子育てを機に南さつま市で働きたいと思っている方が受験できるような区分ですね。
一方で移住者枠とは、ふるさと枠とは反対で縁もゆかりも無かった方が、南さつま市で働いてみたいと思った際に受験できる区分です。

ー「ふるさと枠」「移住者枠」とてもユニークな区分ですね。これらは試験内容が異なるのですか?
森:実はこれらの区分はどちらで受験しても試験内容は同じなんです。Uターンしたい人や、移住したいと思っている人が受けやすいように、あえて別々に枠を設けました。Uターンしたい人も、移住してみたい人も、どんどん受けていただきたいといった、メッセージ性を込めた募集枠みたいなものですね。
ただ、この募集枠についても、しっかりと思いを持った方が、それぞれの区分を受験していただいておりますので、受験者側としても、試験をする側としても、どういった思いで受験しているのかといったことが申込の時点で明確になっているというのはとてもいいことだと思います。
試験内容はどちらの区分でも同じという話をしましたが、受験している区分によって、受験者がPRすることや、面接官が質問する内容は当然異なってきますよね。
ーメッセージ性のある募集区分、確かにタイトルだけでよく伝わりますね。最後に採用担当として求職者の方に伝えたいことはありますか?
森:市役所職員は、筆記テストだけで測るような頭のよさよりも、コミュニケーション能力や、効率的に進めようとする力、人の為に頑張ろうとする思い、そして何よりも地域貢献したいと思う気持ちを備えていることが大事だと思っており、私たちもそうった人材を積極的に採用するつもりです。
受験のためのハードルはなるべく高くせず、学力や書面上の経歴では測れない部分を、面接でしっかりと見せていただきたいと思っています。
まずは南さつま市のことを良く知ってもらい、これまでの経歴は一度リセットしたうえで「ここで働きたい!」という思いを聞かせてください!
ーどうもありがとうございました!