岡山県真庭市役所で保健師として働く森元さんのインタビュー記事です。看護師として7年間勤務した後、世界一周の旅を経て、夫の故郷である真庭市へ。現在は保健師として活躍されています。看護師から公務員への転職、保健師の仕事のリアル、子育てとの両立、そして真庭市で働く魅力について、ご自身の経験を交えながら語っていただきました。
ーまず、簡単にご経歴を教えていただけますか?
森元:真庭市役所に入る前は看護師として7年ほど、大阪や岡山の病院で勤務していました。もともと保健師になるつもりはなく、一生看護師として働こうと思っていたんです。
ーそうだったんですね。ではなぜそこから真庭市役所へ保健師として転職されるきっかけはあったんですか?
森元:真庭市に引っ越してくるタイミングで、夫も私も仕事を辞める必要がありました。そこがちょうど二人とも無職になる良い機会だと思って、そのタイミングで夫と世界一周の旅に出ました!8ヶ月ほど、西回りでまわりました。
―すごいですね!
森元:それまで日本で定住して暮らしていた時は、家があって食べる物もあって、という安定した生活でした。それが旅の間は、まさにその日暮らし。毎日どこに泊まろうか、無事に次の目的地に着けるだろうかと考える不安定な生活になりました。
夫はそういう変化を楽しめるタイプだったんですが、私は正直、すごく苦痛で(笑)。やっぱり、馴染みの場所、馴染みのお店、そして馴染みの布団で安心して眠りたい!って強く思いましたね。定住したい、という気持ちが強くなりました。
ーなるほど、世界一周の経験が安定した生活への思いを強くしたのですね。帰国後、すぐに保健師になろうと思われたのですか?
森元:いえ、最初は看護師として働き続けたいと思っていました。ただ、ちょうどその頃に出産も経験しました。そうすると、病院での夜勤がある働き方は、子育てとの両立を考えると難しいなと感じ始めました。
ー子育てとの両立という課題が出てきたのですね。
森元:その時に保健師の求人が出ていることを知り、世界一周で感じた衣食住や地域への関心とも繋がるかもしれないと思いました。それに、夜勤がない働き方なら子育てとも両立しやすいなと。
ーなるほど、それで保健師の道へ進むことを決意されたのですね。
森元:ただ、まずは試しにという気持ちから臨時職員として働き始めました。そこで半年ほど働いた後、「ちゃんと腰を据えて働きたい」と思うようになって。それで、日中働き夜にファミリーレストランで公務員試験の勉強をして(笑)、試験に受かり正規職員として働き始めました。
ーでは入庁されてから、どのようなお仕事を経験されましたか?
森元:実は入庁してから異動は経験していません。平成29年に入庁して、間に子どもを二人出産したので、育休・産休を挟んで、ずっと同じ健康推進課にいます。この4月からも異動がなかったので、9年目に突入します。これは珍しい方だと思います。
ーそうなのですね!健康推進課では具体的にどのようなお仕事をされているのですか?
森元:毎年のように課内での担当業務は代わり、今年度は予防接種担当で、子どもや高齢者の接種に関する住民への周知や医療機関への支払いなどの業務がメインです。
ー担当業務は変わっていくのですね。他にはどういった業務がありますか?
森元:地域担当制というものがあり、その地区の住民の方々、赤ちゃんからお年寄りまで、皆さんの健康を見守る仕事を行っています。健康な方には健康を維持してもらうための支援を、病気や不安を抱えている方には、その不安が少しでも和らぐように、地域で穏やかに暮らせるように寄り添います。
あとは、母子担当として赤ちゃんが生まれたご家庭への訪問ですね。お家にお伺いして、赤ちゃんの体重を測ったり、お母さんやお父さんの育児の相談に乗ったりします。
他にも高齢者の方の見守りや健康相談、健康に関する教室を開いたり、精神的な悩みを抱える方の相談に乗ったり、経済的な支援が必要な方と関係機関を繋いだり…。本当に様々です。
ーお一人でおこなっているのですか?
森元:いえ、1人ではなく、先輩・同僚と相談しながら組織で考え、また私たち保健師だけでなく地域の民生委員の方や病院、学校など様々な機関と連携しながら支援を進めていきます。
ー病院で働いていた時と比べての違いはどういった点で感じますか?
森元:最も感じるのは、関わる人それぞれの思いが違うことでしょうか。ご本人の思い、ご家族の思い、そして私たち支援者も1人1人の思いや支援は、みんな違います。
病院だと、例えば手術をした患者さんなら、「こうすれば早く回復する」「こうすれば痛みが和らぐ」という、ある程度科学的に確立された手立てがあります。
保健師の仕事には、そういう明確なものがないことが多いんです。その人にとって何が一番良いのかは、その人の価値観や生活状況、家族関係など、本当に色々な要素が絡み合って決まります。
こちらが「こうするのが一番良いはずだ」と心から思って支援を行っても、ご本人が「No」と言えば、それは「No」なんです。ご本人と私たち支援者の意見が一致しても、一番身近なご家族の意見もあり、進められないこともあります。
ーそれぞれの思いを尊重しながら、最適な道を探っていくのですね。それは根気がいりそうです。
森元:はい、対象となる方のタイミングを見計らいながら、じっくりと信頼関係を築いていくことが大切です。こちらが焦って一方的に進めようとしても、うまくいきません。時には、ぐっと我慢して、相手の話に耳を傾け続けることが必要です。
ーそのような大変な対応をされている分、やりがいを感じる瞬間もあるのでしょうか?
森元:そうですね、病を患い入院していた患者さんが退院したら施設看護から地域看護に変わります。保健師は、地域看護を担うため地域で長く住民の方と関わり続けることができます。私が平成29年に入庁して、初めて赤ちゃん訪問で会った子が、今はもう小学校2年生になっているんです。
ーそれは感慨深いですね!
森元:はい。そのお母さんがまた次の子の出産で届け出を出しに来てくれたり…。そういう長い時間軸の中で、人の人生に関われるというのは、他ではなかなか経験できない、この仕事ならではの醍醐味だと思います。それは本当に嬉しい瞬間ですね。
あと、職場環境として、色々な職種の方と一緒に働けるのも魅力です。病院だと院内のスタッフと関わること多いですが、ここでは事務職の方や他の専門職の方など、庁舎内外の多様な視点を持った方々と関われるのが面白いですね。
あとは、市役所のバレーボールチームにも所属しているので、そこで他の課の職員との交流もありますね。仕事とも、家庭の場とも違う場所なので、こういった場で気分転換できるのも非常にありがたいですね。
ー職場の雰囲気も良いのですね。
森元:はい、子育て中の職員も多いので、お互い様の精神で助け合える雰囲気があります。子どもの急な発熱などで休まなければならない時も、理解があるのでありがたいです。
ーそれは心強いですね。最後に、これから真庭市役所の保健師を目指す方へメッセージをお願いします。
森元:保健師の仕事は、本当に奥が深いです。住民の方一人ひとりの人生に寄り添い、その方にとっての最善を一緒に考え、支援していく仕事です。大変なことも多いですが、その分、大きなやりがいを感じられる仕事だと思います。特に真庭市は、地域との繋がりが深く、住民の方々の生活に密着した支援ができる環境です。色々な経験を活かせる職場ですし、子育てしながらでも働きやすい環境も整いつつあります。ぜひ、私たちと一緒に真庭市で働きましょう。
―ありがとうございました。
取材・文:パブリックコネクト編集部(2025年03月取材)