滋賀県長浜市役所の未来こども若者課で働く職員のインタビュー記事です。大学卒業後、金融機関で5年間勤務し、結婚を機に故郷である長浜市役所へ転職。
税金の滞納整理から、若者の挑戦を支援する企画まで、幅広い経験を持つ職員に、仕事への想い、民間経験が活きた瞬間、そして長浜市役所で働くやりがいと魅力について詳しくお話を伺いました。
- 金融機関から公務員へ。人生の転機で見つめ直した「働き方」と「地元への想い」
- 対話で課題を解きほぐす。滞納整理課で活きた民間経験
- 「やってみたい」をカタチにする。未来こども若者課での新たな挑戦
- 仕事の原動力は「自分ごと」。長浜市の未来を、わが子たちの未来へ
金融機関から公務員へ。人生の転機で見つめ直した「働き方」と「地元への想い」
ーこれまでのご経歴を教えていただけますか。
職員:大学卒業後、金融機関に5年間勤め、その後長浜市役所に転職しました。現在は6年目になります。最初の4年間は滞納整理課で税金の徴収業務を担当し、昨年から未来こども若者課に異動しました。
ー金融機関から転職を考えたきっかけは何ですか?
職員:結婚です。生まれ育った長浜に今後も住み続ける中で、県外への転勤の可能性もあるキャリアでは、通勤に片道2時間かかる勤務地もありました。将来的なライフプランを考えると、ワークライフバランスをしっかり保てる働き方に見直したいと思ったのがきっかけです。
ーなぜ公務員という道を選んだのでしょうか。
職員:前職の先輩にも公務員になる方が多く、話を聞く機会がありました。そこで、街づくりに直結した仕事に魅力を感じたんです。「人の役に立ちたい」「誰かを手助けしたい」という仕事の軸は、銀行でも公務員でも共通しています。地域に深く関わり貢献できる公務員の仕事は、私の軸に合っていました。自分が育った長浜市で働くことで、故郷をより良くしていくことに直接貢献できると考え、他の自治体は受けませんでした。
対話で課題を解きほぐす。滞納整理課で活きた民間経験
ー入庁後、最初の4年間は滞納整理課に配属されたのですね。どのようなお仕事でしたか。
職員:主に税金を滞納されている方への対応です。長浜市では、電話や訪問ではなく、まずお手紙を送付し、ご連絡や来庁された方の対応が中心でした。
ーシビアな交渉が必要な業務かと思いますが、いかがでしたか。
職員:法律という「正論」をただ伝えるだけでは反発を招くことも多く、対応に悩みました。そこで私は、対話を通じてご本人に納得していただいた上で、一緒に納税計画を考えることを重視していました。前職での金融知識を活かし、家計の見直しや固定費の削減などを提案するなど、ファイナンシャルプランナーのような関わり方をしました。
ーなぜそこまで踏み込んで対応されたのですか?
職員:最終的な目的は「徴収」です。その目的を達成するために、相手の気持ちや状況をどう捉え、どうアプローチするかが重要だと考えました。一方的に伝えるのではなく、相手に納得して納税していただくことが、お互いにとって最も円滑に業務を完遂できる方法だと考えたからです。これは、私なりに見つけた自分らしい仕事の進め方でした。

「やってみたい」をカタチにする。未来こども若者課での新たな挑戦
ー現在は未来こども若者課にいらっしゃいますが、どのような部署ですか?
職員:こどもや若者に関する計画を策定する企画部署です。移住定住、ふるさと納税、関係人口の創出など、幅広い分野を担っています。保育園の管理や家庭相談は別の課が担当しており、私の仕事は企画・計画が中心です。
ー具体的な担当業務を教えてください。
職員:主に関係人口の創出と、こども・若者に関する事業を実施しています。関係人口については、首都圏で活躍されている長浜市ゆかりの方々のコミュニティ「東京-長浜リレーションズ」の運営を担当しています。メンバーはボランティアで、故郷を盛り上げたいという熱い想いを持って活動してくださっています。
ー具体的にどのような活動をされていますか?
職員:「Startup Weekend」という起業体験イベントや、起業アイデアをブラッシュアップするプログラムなどを実施しています。私たちは、メンバーの専門性を活かした事業の実現をサポートする事務局的な役割を担っています。
ーもう一つの、こども・若者に関する事業というのは?
職員:長浜駅前にある施設に、高校生・大学生限定のサードプレイス「itteki(いってき)」を設けています。ここは、学校や学年の垣根を越えて、若者たちが放課後に自由に集える場所です。
ー「itteki」では、どのようなことが行われているのですか?
職員:若者たちの「やりたい」という想いを見つけ、その実現を後押ししています。例えば、お菓子作りの得意な高校生が、施設内のチャレンジキッチンでお菓子を販売するイベントを企画・支援しました。その経験がきっかけで、製菓の専門学校に進んだ子もいます。
ー企業の協力も得ながら、ゼロから企画を実現していくのですね。
職員:潤沢な予算があるわけではないので、地域の企業との連携が非常に重要になります。企業側のニーズも汲み取り、「itteki」のメンバーとつなげています。学校では聞けない高校生たちの本音に触れられる場所として、企業の皆さんにも価値を感じていただいています。
ー最近、特に手応えを感じたエピソードはありますか?
職員:これまで別々に担当していた「東京-長浜リレーションズ」と「itteki」の事業を連携させられたことです。先日の「Startup Weekend」に「itteki」に通う高校生たちに参加を呼びかけたところ、社会人が中心だったイベントに高校生や大学生が加わり、非常に活気あふれる場になりました。点と点だった事業が線で繋がり、新たな価値を生み出した瞬間でした。

仕事の原動力は「自分ごと」。長浜市の未来を、わが子たちの未来へ
ー滞納整理課での課題解決と、未来こども若者課での企画立案。全く異なる業務ですが、どちらも楽しめているのですね。
職員:はい、どちらも楽しいです。部署や業務内容が変わっても、自分らしさをどう発揮できるかを常に考えています。現部署でも、様々な方と連携しながら想いをカタチにしていくプロセスに、大きなやりがいを感じています。どんな業務でも、自分なりのやりがいを見つけて達成することを意識しています。
ー仕事の原動力となっているものは何ですか?
職員:今は、自分のこどもたちの存在が大きいですね。この子たちが将来、この長浜でどうしたら幸せになれるだろう、と考えるようになりました。市の仕事を「自分ごと」として、自分の家族の未来と重ね合わせながら働けることが、一番の原動力になっています。
ーこれから長浜市役所を目指す方へメッセージをお願いします。
職員:前向きな方と一緒に働きたいです。私の担当業務は、決まった仕事をこなすより、目の前の課題やアイデアを実現していくことが求められます。苦労も多いですが、それを楽しみながら、前向きに頑張れる方だと嬉しいです。どんな業務に就いても、前向きに取り組めば、きっと良い方向に進んでいくはずです。
ーワークライフバランスについてはいかがですか?
職員:金融機関時代と比べて、格段に良くなりました。定時で帰れば18時には家に着き、こどもたちと夕食を共にし、一緒に遊ぶ時間が増えました。育児休業も、男性が当たり前に取得できる雰囲気で、非常に働きやすい環境です。

ー本日はありがとうございました。
取材・文:パブリックコネクト編集部(2025年8月取材)