北海道稚内市役所で働く一橋さんと國部さんのインタビュー記事です。
進学・就職のために稚内市を離れていたもののUターンし、さらに民間企業から公務員へ転職したお二人に、転職の経緯や現在の仕事内容、そして改めて地元稚内市で働く魅力ややりがいについて伺いました。
転職やUターンを考えている方、そして地方自治体の仕事に興味がある方は必見です!
ーまずは簡単に自己紹介をお願いします。
一橋:稚内市出身で、小中学校から高校まで稚内で過ごしました。学生時代はバスケットボールに打ち込み、大学は道内の大学に進学し、経済学部経営学科を専攻していました。
卒業後は札幌の商社に就職し、建材事業部でルート営業を担当していましたが、令和6年4月に稚内市役所に入庁しました。
國部:私も稚内市出身で、小中高と稚内で過ごしました。大学は山梨県の大学に進学し、国際政策学部総合政策学科を専攻していました。卒業後は東京の人材派遣会社に就職し、法人営業を経験しました。
その後、Uターンで稚内に戻り、農業関連の会社に転職しました。牧草の肥料を販売する営業の仕事をしていたのですが、その会社が稚内から撤退することになり、一橋さんと同じく令和6年に稚内市役所に転職しました。

ー転職のきっかけや、公務員を目指した理由を教えてください。
一橋:最初に就職した時から、いつかは地元である稚内に帰りたいという気持ちはもっていたのですが、実際に社会に出て働く中で、「いずれ帰るなら早い方が良いのでは」と考えるようになり、Uターンを決意しました。大好きな家族と近くで暮らしたいという思いや、一度地元を離れてみて改めて感じた稚内の良さも、決断を後押ししてくれました。
そして、自分が育った稚内の人たちに恩返しができる仕事は何かと考えた時に、市役所が一番だと思ったのが、公務員を目指した理由ですね。
國部:前職で酪農家さんの営業を担当する中で、新規就農者の方々を市が支援していることを知りました。「行政はそんなこともやっているんだ」と興味を持ったのが、公務員の仕事を意識することとなった最初のきっかけですね。
地域の農業が抱える課題の解決に貢献できる仕事に魅力も感じたため、前の会社が稚内から撤退することとなったタイミングで、稚内市役所に転職することを決めました。
ーお二人とも、「地元のために働く」という思いがあったのですね。転職活動はどのように進めましたか?
一橋:私は、前職を退職して稚内に帰ってきてから本格的に転職活動を始めました。準備期間としては、1ヶ月前後だったと思います。
正直なところ、地元ということや、社会人を経験していたということもあり、何とかなるだろうという気持ちで臨みました。市役所を受験するからといって、何か特別な対策をしていたわけではありませんでした。
もっと時間をかけて入念な準備をしていた方が良かったのかもしれませんが、結果的に稚内市役所を受ける上では十分な期間だったと感じています。
國部:私は働きながらの転職活動だったのですが、振り返ってみるとそこまで大変だったという記憶はありません。一橋さんもお話ししていたように、社会人を経験していたということもあり、面接等にはそこまで不安を抱いていなかったのも大きかったかもしれないですね。
ーお二人のお話を聞いていると、「転職」に一歩踏み出せそうですね!続いては、現在の仕事内容について教えていただけますか?
一橋:私は観光交流課に所属しており、稚内市の観光振興に関わる業務を担当しています。具体的には、観光客向けのイベントの企画・運営などを行っています。例えば、稚内市で行われる「みなと南極まつり」や「犬ぞり大会」の運営などがあります。その他にも、観光客の方からの問い合わせ対応や、ガイドブックの作成なども行っています。
イベントが多い時期は、内勤だけでなくイベントの準備で力仕事なども多く、外での作業が中心になりますが、イベントがない時期は、事務作業がメインです。

「犬たちの甲子園」とも呼ばれています。
國部:私は農政課に所属しており、主に鳥獣対策を担当しています。具体的な業務としては、猟友会と連携してエゾシカやカラス、キツネ、ヒグマ、アライグマなど、地域に被害を及ぼす鳥獣の捕獲したり、被害防止対策を実施したりしています。

夏から秋にかけては鳥獣被害が顕在化する時期なので、猟友会と連携して捕獲事業を行うほか、住民の方から「ヒグマが出た」という通報があれば、市職員として警察と一緒に現地に赴き、住民への注意喚起や安全確保などを行います。時には、アライグマ等の捕獲を市職員が自ら行うこともあります。
ー入庁してから約1年ですが、市職員として働くやりがいや魅力は見つかりましたか?
一橋:今のところ、一番のやりがいはイベント運営ですね。前職では、イベントを運営したり、それに直接関わったりする機会はほとんどありませんでした。しかし、市役所では、稚内市のイベントをゼロから作り上げていくことができます。
イベントが無事に終わった後の達成感はもちろんですが、実際に足を運んでくださった方々の楽しんでいる様子や、集まった人の数を見た時に、「頑張って本当に良かったな」という気持ちになれるのが一番のやりがいですね。

國部:私も一橋さんと近い部分がありますが、やはり住民の方々と直接接する機会が多いことにやりがいを感じます。鳥獣被害対策を行う中で、住民の方から「今年、鹿が減ったよ」とか、「この地区で事業をやってくれたおかげで被害が減ったよ」といった感謝の言葉を直接聞くことができます。
また、猟友会の方々と協力して仕事を進める中で、「対応が早くて助かるよ」といった感謝の言葉をいただくこともあります。そういった地域の方々からのダイレクトな反応や感謝の言葉が、仕事へのモチベーションに繋がっています。

ー民間企業で働いていた時と比べて、公務員の働き方にギャップを感じることはありますか?
一橋:「公務員って、本当に何でもやるんだな」というのが率直な感想ですね(笑)
國部さんのお仕事もそうですが、市役所には様々な部署があり、それぞれ業務内容が全く異なります。そのため、部署が変わるだけで、まるで転職したかのように色々な仕事を経験することになるのだなと感じました。
前職は営業だったので、常に会社の利益を追求して働いていましたが、市役所では意識すべき点も全く異なります。また、何事も法律や例規に基づいて仕事を進めなければならないという点は、前職と比べると少し堅苦しさを感じることもありましたね。

國部:世間一般では「公務員は楽な仕事」というイメージがあるかもしれませんが、実際は全くそうではありません。
ある程度仕事に慣れた頃に、また別の部署に異動して一から新しい仕事を覚えなければならないというサイクルを繰り返すことを考えると、民間企業の仕事と比較しても、ある意味では過酷なのではないかと感じることもあります。
また、民間企業で働いていた時は、どちらかというと数字や成果が重視される環境でしたが、市役所では手続きや過程が非常に重要視されます。これは、行政がしっかりとした手続きを踏まないと、後々大きな問題に繋がる可能性があるためだと理解していますが、最初は一橋さんと同じように、堅苦しさというか、少し戸惑いも感じましたね。
ーこれまでの経験やスキルで、現在の公務員の仕事に活かせていると感じるものはありますか?
國部:これはもう、間違いなくクレーム対応の経験ですね。窓口でどんなに厳しいご意見をいただくことがあっても、精神的に参ってしまうことはありません。これは、おそらく新規採用の方々よりも耐性があると思います(笑)
あとは、コミュニケーション能力です。前職でも営業をしていたので、初めてお会いする市民の方や業者の方、猟友会の方々など、初対面でもある程度スムーズに話をまとめたり、雑談を交えながら良好な関係性を構築したりすることは得意な方だと感じています。
一橋:私は前職の経験が1年半と短く、営業力が飛躍的に向上したと自信を持って言えるわけではありません。そのため、具体的に「これが活かせている!」と断言できるものは正直ありません…ただ、営業職として、そして社会人としての基本的なマナーやスキルは身につけてきたと思うので、その点はスムーズに業務に馴染むことができたと思います。

ー転職してみて、ワークライフバランスや心境に変化はありましたか?
一橋:前職では残業代がみなし残業として給与に含まれ、成果に対するインセンティブというものもなかったため、モチベーションを保つのが難しい部分もありましたが、行政の仕事は福利厚生がしっかりしているので、働きやすさは格段に向上したと感じています。給料やモチベーションもとても安定しているので、転職して本当に良かったと思っています。
國部:私の場合、前の会社も福利厚生や働き方には恵まれていたため、ワークライフバランスといった点では大きな変化はありませんでした。給料や手当などが民間の時のように能力や成果に応じて大きく変わるわけではないので、モチベーションに関しても広い意味で安定していますね。
公務員は成果が大きく報酬に返ってくるものではないと理解しているので、成果に対する対価を求めるのではなく、「ここまでできたぞ!」という自己肯定感や、地域に貢献しているというやりがいを大切にしながら仕事に取り組むようになりました。
ー稚内市の魅力について教えてください!
一橋:稚内市の魅力はたくさんあって一言では言い表せないですね(笑)
美しい景色、おいしい食べ物、そして何よりも人が優しいですね。あまり知られていないかもしれませんが、災害が少なく安全という点も魅力だと思っています。自分が育った街ということもありますが、一度地元を離れてみて、改めてその良さを実感しています。
國部:私は以前、関東や甲信越地方に住んでいましたが、他の地域と比較しても、稚内市は本州、特に東京へのアクセスが良いと感じています。
最北の街なのでアクセスが悪いと思われがちですが、実際には自宅から東京まで2時間半程度で行くことができます。人が多すぎず、雑然としていない田舎でありながら、少し足を延ばせば大都市にもアクセスしやすいというのは、大きな魅力だと思います。
ー最後に、転職を考えている方や、地方自治体の仕事に興味がある方へメッセージをお願いします。
國部:市役所の業務は、本当に多岐にわたります。民間の企業では経験できないような仕事内容や、様々な業者の方々との関わりがあります。部署によっては、本当に多種多様な人たちや業者、団体と関わることができるので、人脈も広がりますし、地域で何か困ったことがあった時に助けてもらえるような関係性を築くこともできます。
稚内市で働くことは、キャリアアップやコミュニケーション能力の向上といった面で、非常にプラスになることが多いと思います!
一橋:私自身Uターンをして稚内市の魅力を改めて感じることができ、この場所のために働きたいと思えるようになりました。そして、行政が一番稚内市のために貢献できる場所だと信じています。稚内市をより良い街にするため、一緒に働く仲間が増えることを心から願っています。
稚内市にUターンを考えている方、または稚内市に来てみたいと思っていただける方、ぜひ稚内市で一緒に働きましょう!
ー本日はありがとうございました。
取材・文:パブリックコネクト編集部(2025年4月取材)