高校時代の原体験から福祉を志し、千葉の民間法人で「福祉らしくない福祉」に挑戦。出産を機に地元・奈良へ戻り、次なる舞台に選んだのは橿原市役所でした。
対象を限定せず、市民の「困りごと」に幅広く寄り添う公務員の社会福祉士。多様な職種の仲間から刺激を受けながら、家庭と仕事を両立させる小泉さんに、橿原市で働くリアルな魅力と、日々実感する「繋ぐ支援」のやりがいについて伺いました。
- 未知の環境を求めて。民間法人で学んだ「福祉の枠を超えた」支援
- 多岐にわたる相談。こども家庭課で向き合う「親子の未来」
- 刺激的な専門職集団。職種を超えたチームプレーの魅力
- 「繋ぐ」ことで見えてくる希望。成功体験が原動力に
- 制度を活用し、理想のワークライフバランスを実現
未知の環境を求めて。民間法人で学んだ「福祉の枠を超えた」支援
ー小泉さんのこれまでのご経歴と、福祉の道を志したきっかけを教えてください。
小泉:出身は奈良県で、橿原市の隣にある市で育ちました。地元で高校まで過ごした後、京都の大学で社会福祉士と養護教諭の資格を取得できる学科を専攻しました。
福祉を志したのは、高校3年生の時です。私の身近に精神的な病気を抱えている者がいて、私にとってはそれが「当たり前の日常」として育ってきました。でも、自分の進路を考えた時に改めて生い立ちを振り返り、「本人だけでなく、その傍らで悩み、支え続けている家族をもっと救える仕事はないだろうか」と感じたのが大きなきっかけです。
支える人を、さらに支えられる専門家になりたい。その想いが私の原点です。
ー新卒では千葉県の民間法人に就職されたそうですね。なぜあえて遠方の地を選ばれたのでしょうか?
小泉:最初から地元の近場だけで完結してしまうと、自分の選択肢や視野を狭めてしまう気がしたんです。そこで出会ったのが、千葉県にある「福祉らしくない福祉」を掲げる面白い法人でした。
そこでは障がいのある方の就労支援を行っていたのですが、例えば「ハム」の製造・ブランディングに力を入れ、その収益で利用者さんの工賃を一般企業並みに引き上げるという取り組みをしていました。
切磋琢磨できる仲間と共に、「福祉の枠」に捉われない支援の形を追求した5年間は、私のキャリアにおいて非常に貴重な財産になっています。
ー充実したキャリアを積まれていた中で、奈良に戻り、橿原市役所へ転職された理由を教えてください。
小泉:夫の転職や自分自身の出産が重なったことが大きな転機でした。初めての子育てを経験する中で、やはり実家の支援が受けられる地元に戻ろうという話になったんです。
転職先を考える際、民間法人の良さも知っていましたが、今回は「公務員」という道を選びました。民間時代は1つの事業所にいらっしゃる「お客様」という限られた範囲での支援でしたが、「もっと対象を広げて、どんな悩みであっても幅広く拾い上げたい」と考えるようになったんです。
公的な機関であれば、相手を選ばず、深刻な状況になる前の「困りごと」にアプローチできます。その中でも、県よりさらに市民の方に近い距離感で関われる「市」単位がいいなと。
特に橿原市は人口が多く多様な方がいらっしゃいますし、私自身も橿原の高校に通っていたので馴染みがあり、ここでなら自分の経験を最大限に発揮できると感じました。

多岐にわたる相談。こども家庭課で向き合う「親子の未来」
ー現在の「こども家庭課」での具体的なお仕事内容を教えてください。
小泉:児童福祉の相談援助がメインです。内容としては「子ども家庭相談」や、不登校への対応、さらには虐待相談といった重いケースまで多岐にわたります。
他にも、保健師や保育士が定期的に家庭訪問を行う「養育支援訪問」の計画作成や、一時的にお子さんを預かる「ショートステイ」の調整など、窓口業務も含めて幅広く担当しています。
ー毎日、どのような相談が寄せられるのでしょうか?
小泉:例えば、「イヤイヤ期の育児に疲れ果ててしまい、毎日夕方になるとどうしていいか分からなくなる」といった切実な電話相談があります。また、こどもの安全が心配なケースでは、関係機関から情報を得て、すぐにお子さんの安全確認や命の危険がないかの調査に向かいます。
市民の方々にとって、市役所は最後の砦であることが多いです。私たちの対応一つで、そのご家庭の未来が大きく変わるかもしれない。そんな責任の重さを、窓口や電話越しに常に感じています。
ー非常にハードなお仕事だと思いますが、小泉さんなりのメンタルケア術はありますか?
小泉:お子さんの悲しい状況を受け止めることも多いので、自分自身の心のケアは本当に大切です。最近は「五感を研ぎ澄ます時間」をあえて作るようにしています。
忙しい毎日の中でも、ふとした時に電車の音をじっと聴いたり、外の空気の匂いを感じたり……。そうやって「今この瞬間の自分」を客観的に捉えることで、過酷な現場から少し距離を置き、フラットな状態に戻れる気がしています。

刺激的な専門職集団。職種を超えたチームプレーの魅力
ー職場の雰囲気や、チーム体制について教えてください。
小泉:こども家庭課は、実は驚くほどの専門職集団なんです。全体で35名ほどいますが、事務職は2名だけで、他は全員が保健師や社会福祉士などの資格を持っています。
私の係も、係長を含めた保健師2名、社会福祉士2名の正規職員と、8名のベテラン会計年度任用職員で構成されています。
ー専門職が多い職場ならではの良さはありますか?
小泉:毎日が刺激の連続です!他部署や外部の先生、病院のスタッフなどと話す機会も多いのですが、「専門家なら、この状況をそう捉えるんだ!」という発見が常にあります。
橿原市は本当に風通しが良くて、上下関係の壁を感じません。係長に対しても、私たちメンバーが「このやり方、もっとこう変えた方が効率的じゃないですか?」と自然に意見を言える雰囲気があります。
隣の席の人や上司に、案件が深刻になる前にすぐ相談できる。この【職種を超えたチームプレー】ができるからこそ、難しい課題にも向き合えるのだと思います。

「繋ぐ」ことで見えてくる希望。成功体験が原動力に
ーこれまでの仕事の中で、特に印象に残っているエピソードがあれば教えてください。
小泉:非行傾向があり、学校に行けなくなっていたお子さんのケースです。その子は既存の学校という枠組みの中ではどうしても居場所が見つけられず、外のコミュニティに繋がりを求めていました。
私はその子の背景にある特徴を理解し、不登校の子でも安心して通える「放課後等デイサービス」を提案し、関係各所と調整して繋ぎました。結果的に、そこで彼は学校でも親でもない大人と出会い、新しい居場所を見つけることができたんです。
ー市役所という立場だからこそ、できた支援ですね。
小泉:そうですね。相談に来てくれた方を、最適なサービスへと橋渡しできた時こそ、一番のやりがいを感じます。
私たちの仕事は、自分たちだけで完結するものではありません。他部署や地域の事業所を巻き込んで、うまくその方の生活の質が上がっていくのを実感できる。お子さんの表情が少しずつ明るくなるのを見届ける。その「繋ぎ手」としての役割に、社会福祉士としての誇りを持っています。

制度を活用し、理想のワークライフバランスを実現
ー子育て中とのことですが、橿原市での働きやすさはいかがですか?
小泉:私には未就学児の子どもが2人いますが、制度が本当に整っていて助かっています。現在私は「部分休業」という制度を使い、朝の1時間を子どもとの時間に充てて、9時半に出勤しています。この1時間があるだけで、朝のバタバタで子どもに怒らずに済みます(笑)。
ー急なお休みなどへの理解はありますか?
小泉:もちろんです。子どもの急な発熱で休ませてもらう時も、チーム全体でフォローしてもらっています。「子の看護休暇」も最大限に活用させてもらっていますし、周囲もそれを受け入れてくれる環境です。
残業もゼロではありませんが、自分の裁量で調整できる部分が大きいです。「今日は子どものイベントがあるから早く帰る」といったスケジュール管理がしやすいですし、有休も、先に予定を押さえてしまえば、平日でもしっかり休めます。
橿原市は、「専門職としての志を高く持ちながら、家庭も大切にしたい」という欲張りな願いを叶えてくれる職場だと思います!
ー最後に、橿原市役所の社会福祉士を目指す方へメッセージをお願いします。
小泉:橿原市は、家庭と仕事のバランスが非常に取りやすく、それでいて専門職として日々成長を感じられる刺激的な環境です。
いろんなバックボーンを持った専門職の仲間と切磋琢磨し、市民の方の「困りごと」を希望に変えていく。そんな「繋ぐ支援」に魅力を感じる方、ぜひ一緒に働きましょう!

ー本日はありがとうございました。
小泉さんの言葉の一つひとつからは、常に相手の背景を汲み取ろうとする、温かくもしなやかな強さを感じました。過酷な相談現場にあっても、あえて五感を意識して自らを律し、同僚や市民の方に常にフラットに接する姿は、専門職としての「誠実さ」そのものです。
2人のお子さんを育てる母としての表情と、プロのソーシャルワーカーとしての眼差し。その両方を等身大で語る姿に、橿原市という街が持つ懐の深さが重なって見えました。
取材・文:パブリックコネクト編集部(2026年3月取材)



