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橿原市役所

橿原市は人口約12万人、奈良盆地の南部に位置し、面積約39.5㎢と比較的コンパクトながら、多様な側面を持っています。 万葉の時代を偲ばせる大和三山と藤原宮跡、江戸時代の街並みを残す今井町、初代神武天皇をお祀りする橿原神宮など、豊かで重層的な歴史に恵まれています。 一方では、鉄道網や道路網が発達する交通の要衝であり、製造業の拠点が複数あるほか、大手のショッピングモールには和歌山や大阪からも買い物客が訪れています。 そんな田舎と都会のはざまで、便利に生活しながら楽しく豊かな自然・歴史・文化を満喫できる本市では、「子育てしやすい街 日本一」を目指して、様々な施策を展開中です。

「やっぱり保育が好き」ベビーカーを押しながら流した涙を力に。30代で再挑戦した公立保育士、園長として語る子どもと歩む幸せ

橿原市役所

2026/04/30

「やっぱりあっち側に戻りたい」──。


専業主婦として過ごした日々、保育所の前を通るたびに溢れた涙。一度は現場を離れたものの、保育への消えない情熱を胸に、30代で再び橿原市の保育士として歩み始めた米田さん。現在は園長として、178名の子どもたちと50名以上の職員を支えています。
 

歴史遺産に囲まれた橿原市ならではの魅力や、子どもたちに救われた感動秘話など、現場を知り尽くした園長だからこそ語れる想いを伺いました。
 

 


 

再び「保育」の道へ。涙を拭い、30代で選んだ公務員への挑戦

ーまずは米田さんのこれまでの歩みと、橿原市で働くことになった経緯を教えてください。

 

米田:私は幼少期を橿原市で過ごしました。親戚も市内に住んでおり、私にとって橿原は「ちっちゃい頃に住んでいた懐かしい街」であり、週に一度は親戚の家に遊びに行くような、とても身近な場所でした。

 

大学卒業後は、一度私立の保育園に就職し、4年ほど働いた後、公立園で講師として担任の経験も積みました。その後、結婚を機に専業主婦になり、しばらくは育児に専念する日々を送っていました。

 

 

ー専業主婦から再び保育の道に戻ろうと思われたきっかけは何だったのでしょうか?

 

米田:当時は二人の子を育てていて、家庭生活はとても幸せでした。でも、ベビーカーを押して近所の幼稚園や保育所の前を通りかかると、子どもたちの楽しそうな声やピアノの音が聞こえてくる。その瞬間、なぜか自然と涙が溢れて止まらなくなってしまったんです。

 

離れてみて初めて、保育士という仕事が自分にとってどれほど大切なものか、痛いほど実感しました。「自分はあっち側に行きたいんだ」「私はこの仕事が、心の底から大好きだったんだ」と、自分の本当の気持ちに気づかされたんです。

 

そんな折、昔お世話になった園長先生が「橿原市で30代の経験者枠の採用試験が始まるから、受けてみたら?」と背中を押してくださったんです。家庭でも相談し、「受かったらそれが神様のくれた道だ」と覚悟を決めて挑戦しました。

インタビュー風景

子どもと職員の幸せを背負う。園長として踏み出した、涙と笑顔の第一歩

ー現在、橿原市の公立園はどのような体制になっているのでしょうか?

 

米田:現在、橿原市にはこども園が5園、単独の幼稚園が8園あり、合計13園の体制です。実は橿原市は全国的に見ても非常に早い段階(2012年度)から「市独自のこども園」をスタートさせています。

 

幼稚園・保育所のそれぞれの良さを大切にしながら、養護は深く、そして質の高い保育教育に取り組んできました。令和8年度からは、5つのこども園すべてが国の制度に基づいた「認定こども園」へ移行し、さらに保育教育内容の充実を図っていきます。

 

 

ー今年度から園長を務められているとのことですが、改めて園長という役割についてはどのようにお考えですか?

 

米田:園長としての仕事は、一言で言えば「園児の安全と幸せを守ること」に尽きます。そしてそこにプラスして、「ともに働く職員たちも、日々の仕事を通じて幸せになっていけるような職場環境を作ること」。

 

それが園長として最も大きな、そして大切な役割だと考えています。

 

 

ー非常に大きな責任を伴う立場ですが、就任にあたってプレッシャーなどはありましたか?

 

米田:実は、人事で園長職が決まったときは、正直「私にはまだ早い」と不安でいっぱいでした。職員をまとめる人間性もまだ足りないのではないか、何百人もの命を守りきれるだろうかという重圧がものすごくて……。

 

恥ずかしながら、責任の重さを一気に感じてしまい、就任前の3月末の一週間くらいはずっと号泣していたんです(笑)。

 

 

ーそんな葛藤を抱えながら迎えた初日の4月1日は、どのようなお気持ちでしたか?

 

米田:緊張でガチガチになりながら門の前に立っていると、登園してきた子どもたちが満面の笑みで走ってきて「おはよう!」と言ってくれました。いつもと変わらないその一言、その笑顔を見た瞬間、「あ、私いけるかも」って思えたんです。

 

保育士は“子どもを支える仕事”だと思われがちですが、実は私たちが子どもたちに救われていることはたくさんあるんですよね。まさに、そのことを体感した瞬間でした。

大切なのは子どもの「わくわく」。失敗さえも温かな絆に変えた、忘れられない金メダルの思い出

ー保育において、時代が変わっても「これだけは変わらない」と大切にされている信念はありますか?

 

米田:それはもう、絶対に【子どもファースト】であることです。子どもたちが今、どんなことにわくわくし、何を「面白そう!」と感じているのか。その心の動きを一番大切に見守ることを、何よりの基本にしています。

 

もしこれが【大人ファースト】になってしまうと、大人の都合で「こんな劇をさせたい」と内容を詰め込みすぎてしまったり、形を整えることに必死になってしまったりします。

 

そうではなく、あくまで子どもを主役にして、彼らの内側から溢れるわくわくを育んでいく。その信念だけは、これからもずっと持ち続けていたいですね。

 

 

ーこれまでの保育士人生で、特に忘れられないエピソードを教えてください。

 

米田:今も大切に保管している「チップスターの蓋で作った金メダル」のお話です。4歳児の担任をしていた頃、音楽会で私が大きなミスをしてしまったんです。ナレーションの順番を間違えてしまい、進行をぐちゃぐちゃにしてしまいました。

 

終わった後、情けなくて申し訳なくて、子どもたちの前で「先生、間違えてごめんね」と謝りながら泣いてしまったんです。

 

 

ー子どもたちはどのような反応だったのでしょうか?

 

米田:子どもたちが私を囲んで、「先生、頑張ったから大丈夫やで!」「一生懸命やって間違えたのは、はなまるやで!」って励ましてくれたんです。それは、普段私が子どもたちに伝えていた言葉でした。

 

そして翌日、一人の子がその手作りのメダルを首にかけてくれました。「先生も頑張ったから金メダル」。今でも大切な大切な宝物です。

園児にもらった金メダルの写真

新人もベテランも支え合う、温かなチーム作り

ー職場の雰囲気作りにおいて、意識されていることはありますか?

 

米田:園長としては「職員が幸せに働ける環境」を作ることが最優先です。職員の心が満たされていなければ、子どもたちに質の高い保育は提供できないと考えています。

 

年度の前半は、私が不慣れだったこともありピリピリしてしまったという反省もありますが、行事などを通じて職員同士の連携が深まり、今はとても活気があります。先日も、職員全員で劇遊びをして大笑いしたばかりです。

 

 

ー若手保育士へのサポート体制について教えてください。

 

米田:橿原市には真面目で一生懸命な若い先生が多いです。でも、真面目すぎるがゆえに、「準備した通りに進まない」ことに悩んでしまうこともあります。

 

そこで今年度は、1年目と2年目の先生をあえて同じ園舎の近いクラスに配置しました。休憩時間やちょっとした合間に、悩みや喜びをすぐに共有できるようにしたんです。

 

ベテランの先生たちも、そんな若手もともに園を創っていく大切な仲間として、温かな眼差しで見守ってくれています。

 

 

ー若手の先生たちには、どのようなアドバイスをされていますか?

 

米田:いつも伝えているのは「11個目の発想を楽しもう」ということです。保育士が10通りの計画を立てても、子どもは必ず11通り目の予想外なことを仕掛けてきます。

 

計画を完璧にこなすことよりも、子どもが予期せぬ反応を見せたときに、一緒に「面白いね!」と笑い合える。そんな余裕を持ってほしいんです。橿原市の公立園には、そんな若手の挑戦や失敗を包み込んでくれる、大きな懐があります。

職場の風景

広大な「藤原宮跡」が園庭に。四季を五感で楽しむ贅沢な環境

ー橿原市、特に第1こども園(現:藤原京認定こども園)ならではの「働く環境」としての魅力は何でしょうか?

 

米田:何と言っても、目の前に広がる「藤原宮跡」という最高のロケーションです。歴史の教科書に出てくるような場所を、私たちは日常的に「自分たちの園庭」のように使わせてもらっています。

 

春は、黄色い菜の花とピンクの桜がどこまでも続く絶景の中をお散歩します。夏は、木々の中で蝉時雨を浴びながら虫捕りに熱中し、秋はどんぐりを拾い、満開のコスモス畑を走り抜ける。冬は冷たい空気の中、広い宮跡でマラソン大会。

 

季節ごとに姿を変える歴史遺産に触れながら、五感全てを使って遊ぶことができる。これは都会の園では絶対に味わえない、橿原市ならではの贅沢な体験です。

自然の写真

ー最後に、橿原市で保育士を目指そうとしている方々へメッセージをお願いします。

 

米田:保育という仕事に、怖がらずに飛び込んできてほしいです。ドキドキしたり、壁にぶつかったりすることもあると思います。

 

でも、大丈夫です。困ったことがあっても、大抵のことは子どもたちの笑顔が解決してくれます。そして、残りの悩みは私たち先輩職員が全力で受け止め、支えます。

 

「子どもが好き」というその純粋な気持ちさえあれば、ここでは誰もが輝けます。豊かな自然と歴史に抱かれた橿原市で、私たちと一緒に子どもたちの輝く未来を育んでいきませんか?皆さんと一緒に働ける日を、心から楽しみに待っています。

 

 

ー本日はありがとうございました。

 

インタビュー中、当時の出来事を思い出して涙ぐむ米田さんの姿に、その保育への純粋な愛情を感じ、胸が締め付けられるような思いがしました。それは、単なる理念としてではなく、米田さんの生き方そのものに「子どもファースト」の精神が宿っているからこそ。

 

橿原の豊かな自然に包まれながら、こんなにも温かな眼差しに見守られる子どもたちは、きっと幸せに違いありません。

 

 

取材・文:パブリックコネクト編集部(2026年3月取材)

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