熊本県津奈木町役場で一般事務職として働く柿本さんと、管理栄養士として働く岡村さんのインタビュー記事です。
民間企業からの転職者と、大学を卒業したばかりの新卒者。異なる経歴を持つお二人が、なぜ津奈木町を選んだのか。
そして、実際に働く中で感じる仕事のやりがいや職場の雰囲気、今後の目標について、リアルな声をお届けします。
- それぞれの道から公務員へ。二人を結んだ津奈木町という選択
- 移住定住から健康サポートまで。町を支える若手の仕事
- 嬉しいことも大変なことも。成長を実感する日々
- 不安を安心に。新人を温かく迎え入れる津奈木町のサポート体制と職場のリアル
- それぞれの未来予想図。津奈木町で描くこれから
それぞれの道から公務員へ。二人を結んだ津奈木町という選択
ーまずはお二人の自己紹介と、公務員を目指した経緯を教えてください。
柿本:出身は隣の水俣市です。大学卒業後は福岡で民間企業に勤めていました。
1社目は人材サービス会社に所属し、派遣という形で携帯ショップや家電量販店で5年ほど販売スタッフとして働き、その後、派遣先だった会社からお誘いを受けて通信販売代理店の営業として入社しました。
公務員を目指したきっかけは、別の市役所で働く父の存在が大きいです。その仕事ぶりを間近で見て、自分も地域に貢献できる仕事がしたいと思うようになりました。
岡村:私は八代市の出身で、大学は福岡県でした。大学では管理栄養士の国家試験合格を目指して栄養学を学び、卒業後に新卒で津奈木町役場に入庁しました。
私の母も公務員で、その影響はあったと思います。大学の実習で保健センターに行った際、行政栄養士の仕事を体験させてもらったことが直接のきっかけです。
病気になってからではなく「予防」という観点から、様々な施策を通して住民の健康にアプローチできるのは行政ならではの魅力だと感じ、行政栄養士の道を目指すことにしました。

ーお二人ともご家族の影響があったのですね。柿本さんは一度民間企業を経験されていますが、どのような経緯で公務員に?
柿本:大学の就職活動の時から公務員試験は受けていたのですが、なかなか合格できなくて。一度は民間企業で社会人経験を積むことにしました。
ですが、30歳という節目を迎えた時に改めて将来を考え、やはり公務員として働きたいという思いが再燃しました。
本気で目指すなら今しかないと思い、勤めていた会社を退職して勉強に専念し、ご縁があって今年の4月から津奈木町で働くことになりました。

ー数ある自治体の中から、なぜ津奈木町を選んだのでしょうか?
柿本:隣町ということもあり、子どもの頃から馴染みがあったのが一番の理由です。全く知らない土地で新しいキャリアをスタートさせるよりも、少しでも土地勘のある場所で働きたいという思いがありました。
岡村:私は大学での研究がきっかけです。特定健診の受診率について研究していたのですが、その中で津奈木町が受診率の高い地域を表彰しているという先進的な取り組みを知りました。
住民の健康意識を高めるためのユニークな施策に強く惹かれ、この町で働いてみたいと思うようになりました。ちょうど管理栄養士の募集が出ていたので、迷わず応募しました。
移住定住から健康サポートまで。町を支える若手の仕事
ー現在の具体的な仕事内容について教えてください。
柿本:私は移住定住と交通体系に関する業務を担当しています。
移住定住の仕事では、津奈木町への移住を検討されている方向けの「お試し住宅」の運営や、全国で開催される移住フェアなどのイベントに出展して町のPR活動を行っています。
交通体系の仕事では、地域の大切な足である「肥薩おれんじ鉄道」に関する業務が主です。町からの補助金の手続きや、鉄道会社の経営改善策について、熊本県や鹿児島県の関連自治体と連携して協議を進めています。
他にも、高速道路の建設促進に関する業務など、多岐にわたる仕事に携わっています。
岡村:私は管理栄養士として、住民の方の健康をサポートする仕事をしています。
主な業務は、水俣市と合同で行っている乳幼児健診での集団指導や個別の栄養指導です。
その他にも、健診データなどを見て、食生活の改善が必要と思われる方のご自宅を訪問し、直接お話を聞きながら栄養指導を行うこともあります。
対象は乳幼児からご高齢の方まで、本当に幅広いですね。
また、地域における食育や健康づくりを担う食生活改善推進員の活動支援にも携わっています。街頭キャンペーンや健康教室での調理支援などを通じて推進員の皆さんが円滑に活動できる環境づくりに取り組んでいます。

ー1日のスケジュールはどのような感じですか?
岡村:乳幼児健診がある日は、午後はずっと健診業務になります。
午前中は、出勤後にメールやスケジュールを確認し、窓口や電話での相談対応、そして午後の指導で使う資料の作成などを行っています。
住民の方に分かりやすく伝えられるよう、資料作りにも力を入れています。
嬉しいことも大変なことも。成長を実感する日々
ー仕事をする上で、やりがいや嬉しさを感じるのはどんな時ですか?
柿本:具体的な出来事というよりは、日々の業務の中にやりがいを感じています。疑問に思ったことや「こうした方がもっと良くなるのでは?」という自分の意見を伝えた時に、先輩方が頭ごなしに否定せず、真摯に耳を傾けてくれるんです。
「そういう視点もあるね」と受け止めてくれた上で、「でも、こういう制度もあるから、こういう方法はどうだろう?」と、より良い方向へ導くアドバイスをくれます。
自分の意見が尊重され、組織の一員として貢献できていると感じられる瞬間は、とても嬉しいですね。

岡村:私は住民の方との関わりの中にやりがいを感じます。
特に嬉しかったのは、乳幼児健診などで何度も顔を合わせるうちに、町民の方から話しかけてもらえるようになったことです。
最初は緊張してなかなかコミュニケーションが取れなかったのですが、最近では「うちで採れたこの野菜、どうやったら美味しく食べられる?」なんて気軽に質問してくださる方もいて。
少しずつ地域に馴染めているのかな、信頼関係が築けているのかなと感じられて、本当に嬉しいです。
また、栄養相談の中で、お話しした内容に対して「それは知らなかった!勉強になったよ」と言っていただけた時は、自分の知識やスキルが、誰かの健康な生活に繋がっているんだと実感でき、大きなやりがいを感じます。
ー逆に、仕事で大変だと感じることは何ですか?
柿本:私は大学時代から10年以上、福岡で過ごしてきたので、津奈木町に関する知識がまだまだ不足している点です。
町の地理はもちろん、地域で活躍されている事業者さんのこと、住民の方々の暮らしぶりなど、学ばなければならないことが山積みです。
移住を検討されている方に町の魅力を的確に伝えるためにも、もっと深く町を知ることが今の自分にとっての課題であり、難しいと感じる部分です。

岡村:私は、社会人経験がなかったので、電話対応と窓口対応がとにかく大変でした。特に電話は相手の顔が見えないので、最初はすごく緊張して、お名前を何度も聞き返してしまったこともあります(笑)。
基本的なビジネスマナーから学んでいくのは、大変でしたね。
不安を安心に。新人を温かく迎え入れる津奈木町のサポート体制と職場のリアル
ー入庁後の研修制度や、専門職としての教育体制についてはいかがですか?
柿本:入庁直後に簡単なオリエンテーションがありました。辞令交付の後はすぐに配属先での業務が始まるのですが、その後も都度研修の機会があります。
例えば、自治体職員としての基礎を学ぶ研修から、行政システムに関する研修など、新人だけでなく2、3年目の若手職員と合同で受ける機会が設けられていて、継続的に学べる環境だと感じています。
岡村:私は専門職ですが、津奈木町役場には他に管理栄養士がいないんです。ですが、保健所の方が定期的にヒアリングに来てくださり、業務上の疑問や専門的な質問に答えてくれる機会を設けてもらっています。
例えば、複数の病気を合併している方への栄養指導など、複雑なケースについて相談に乗っていただけるので、一人でも安心して業務に取り組めています。
病気によって優先すべきことが違うので、そういった専門的なアドバイスをいただけるのは本当に助かりますね。
ー入庁前と後で、職場のイメージにギャップはありましたか?実際の雰囲気も教えてください。
岡村:入庁前は、役場ってもっと真面目で静かな場所だというイメージがあったんです。でも、実際に働いてみたら、とても明るくて活気のある職場で、それが一番のギャップでした。皆さんいつも笑顔で、和気あいあいと仕事をしています。
また、風通しの良さは日々感じています。管理栄養士として専門的な判断に迷うこともあるのですが、疑問に思ったことがあれば、いつでも周りの先輩に「これってどう思いますか?」と相談できる環境があるのは、本当にありがたいです。
皆さん、忙しくても必ず手を止めて話を聞いてくれるので、一人で抱え込まずに仕事を進めることができています。

柿本:本当にそうですね。風通しは抜群に良いと思います。自分の所属している政策企画課の先輩や上司はもちろんですが、他の課の方々とも気軽に話せる雰囲気があります。
また、町の行事や、有志で活動している社会人サークルなどを通して、課を越えた交流の機会が多いのも津奈木町役場の特徴だと思います。
私はビーチバレーやソフトバレーのサークルに参加していて、良いリフレッシュになっていますし、仕事以外の繋がりができるのも嬉しいですね。
それぞれの未来予想図。津奈木町で描くこれから
ー最後に、お二人の今後の目標と、未来の後輩へのメッセージをお願いします。
柿本:私の目標は、津奈木町をさらに活性化させることです。前職で培った企画力や行動力を活かして、新しい仕掛けをどんどん行っていきたいです。
そして、移住定住担当として、町内の方はもちろん、他の自治体や県外からも「津奈木町って面白そうだね」「住んでみたいね」と思ってもらえるような、たくさんの人が集まる魅力的な町にしていきたいです。
岡村:私は、まず津奈木町の食文化や特産物について、もっと深く学ぶことから始めたいです。そして、その地域ならではの食材を活かした、住民の方の生活に寄り添った栄養指導ができるようになりたいです。
一方的な指導ではなく、一人ひとりの話に耳を傾け、その方が楽しみながら実践できるような方法を一緒に見つけていける、そんな管理栄養士になることが目標です。
ー本日はありがとうございました。
取材・文:パブリックコネクト編集部(2025年8月取材)