渋谷区の公立保育園で働く、ベテラン保育士の後藤さんと、新人保育士の鈴木さん。それぞれの視点から渋谷区の魅力、保育士としてのやりがい、男性保育士としての歩みや働き、そして未来の保育士へのメッセージを語っていただきました。
ーご経歴を教えてください。
後藤:専門学校を卒業し、私立の保育園に2年ほど勤めました。その後、渋谷区に入区して22年目になります。幡ヶ谷保育園で6年間勤めたあと、富ヶ谷保育園で6年間、代々木保育園で8年間、そして昨年度から元代々木保育園に配属され、4歳児クラスの担任をしています。
鈴木:大学卒業後に入区して半年です。私も元代々木保育園に配属され、0歳児クラスを担当しています。
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ー転職・就職先として公立保育園を選んだきっかけをお聞かせください。
後藤:転職のきっかけは、渋谷初の男性保育士として活躍されていた先輩の存在です。憧れの存在でもあったのですが、その方に勧められるうちに「これから先も保育士として働くのであれば公立でやっていきたい」と思うようになりました。
鈴木:福利厚生や給与も考慮し、公立を選びました。また、ステップアップして保育課に異動となれば、渋谷区全体の保育の底上げやマネジメントに携わることができるのではないか?と考えたことも理由の一つです。
ー鈴木さんにお聞きします。試験対策はどのように行っていましたか?また、面接の雰囲気についてもお聞かせください。
鈴木:参考書を買って繰り返し勉強し、「保育所保育指針」を読み込んだほか、大学の公務員対策講座を受講していました。
面接では、面接前に人事の方と一対一でアイスブレイクする時間があり、「緊張しなくていいよ」とお声がけいただいたおかげで、リラックスした状態で面接に臨めました。
ー入区後の教育体制についてもお聞かせください。
鈴木:教育体制としては、特別区全体での事務対応や企画・立案などを学ぶ研修がありました。他の区や他の職種の方ともお話することで、様々な価値観に触れられる良い機会でした。また、渋谷区の公立保育園独自の研修ではそれぞれの園の特色を共有し、保育に関する引き出しが増えましたね。
ー元代々木保育園の保育方針についてお聞かせください。また、クラスの年齢構成や職員配置はどのようになっていますか?
鈴木:元代々木保育園の目標は「もっともっと自分大好き・友達大好き、ときめきひらめき探究する子・よく寝てよく聞いて良く笑う子」。
また、子どもの気持ちや求めていることに対してしっかり応えていく中で愛着形成を図る「応答的保育」が基本方針です。目標や方針をもとに、それぞれの年齢に合った保育について園長やリーダーと話し合って決めていきます。
後藤:元代々木保育園の園目標は職員だけでなく保護者、子どもたちにも覚えやすくしたい思いから、目標の頭文字が「も・と・よ」になるように職員みんなで考えました。
0歳から5歳までの6クラスに、各12〜15名ほどの園児が在籍しています。現在の職員配置は0歳児クラスが5名、1歳児クラスが4名、2歳児クラスが3名、3歳児クラスが2名、4歳児クラスが2名、5歳児クラスが1名です。
ー現在の業務内容をお聞かせください。
後藤:4歳児クラスの担任として、子どもたちの生活における自立や主体的な活動の援助、人間関係の形成などに携わっています。そのほか、集団活動の楽しさを味わう各種行事の企画も業務の一つです。
鈴木:私の担当は0歳児クラスです。ミルクや離乳食の介助、オムツ替えや着替えといった生活のほとんどに携わります。事務仕事や行事準備など、やらなければいけないことは他にもたくさんありますが、今は目の前の子どもと全力で遊んで楽しむことがメインですね。
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ー保育士として、面白さややりがいを感じる部分についてお聞かせください。
後藤:子どもの表現や感覚って、自分にはないものが多いんです。たとえば、電話に「はい、4歳(クラス)の後藤です」と言って出ると、子どもたちは「先生は4歳なんだって!」と盛り上がるんです。とても純粋で面白い発想を持っているんですよね。
大人が当たり前だと感じていることにも純粋に感動している様子を見ると、「もっと新鮮な気持ちで子どもの思いに共感しよう」と思えるんです。子どもたちがキラキラ輝く姿を間近で見られることは、保育士ならではの魅力ですね。
鈴木:0歳児の子どもたちを見ていると、嬉しいときはすごく嬉しいし、嫌なときは絶対に嫌と反応します。「ここまで素直なのか」と奥の深さを感じますね。
また、入園してきた頃はずり這いで進んでいた子が今では歩いていたり、離乳食を食べていた子が形のある食事を食べていたりする。その様な成長をそばで見守ることができるのは大きな喜びです。
さらに、見慣れない人が入ってきたときに、人見知りを起こして泣いてしまって、私に助けを求めてくる姿を見ると、しっかりと時間をかけて向き合ってきたことで、子どもたちにとっての安心できる人になれているんだなと感じます。
ー保育の中で、後藤さんが特に大変だと感じた出来事はありますか?
後藤:子どもとの関わり方がうまくいかないときは、やはり大変ですね。私自身の思いと子どもの気持ちとの間にギャップが生じることもあります。たとえば、みんなで何かをするというときにどこかへ行ってしまう子がいたんです。
現在は子どもの気持ちを尊重する保育に変わりましたが、当時はみんなと一緒に行動することが重視されていたため、一人外れてしまった子に対して「どうしてやりたくないのか、どうしたらみんなの中に入って遊べるのか」とすごく悩みましたね。そういった場合には、園長先生や先輩保育士に相談しながら乗り越えてきました。
ー鈴木さんは、新人保育士として難しさを感じる部分はありますか?
鈴木:経験や知識が少なく余裕もないため、まだまだ臨機応変な対応ができない毎日です。子どもは日々変化し、昨日とは全くの別人のようになることもあります。マニュアルに当てはまらない状況にどう対処すべきなのか、自分で判断できないのが難しいところです。さらに、余裕のなさは子どもに伝わってしまうんですよね。
今はまだ、先輩保育士やトレーナーが「こうした方が良いよ」と提案をしてくださったり、私の悩みに対して話し合う時間を作っていただけます。今後は、何が起きても焦ることなく最善の策がパッと出て動ける、心に余裕のある保育士になりたいですね。
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ー小さなお子様を預かるお仕事は難しさがありますよね。ちなみに、後藤さんは、いつ頃から余裕が出てきたと感じましたか?
後藤:余裕といいますか、自分の保育の形がわかってきたのは、保育士として働き始めて10年を過ぎたあたりからでしょうか。先輩方からご指導を受ける中で色々な保育方法を学び、「自分にはこのやり方が合っている」「こういう保育はやっていて楽しい」と感じるようになりました。
ー保育士として、特に印象に残っている出来事はありますか?
後藤:1〜2年目の頃に見ていた園児が、渋谷区の先生(保育士)になっていたことです。知ったときはすごく嬉しかったですね。園児と先生という関係だった私たちが、今は職員同士として同じ場所にいる。長く勤められたからこその出会いだと感じました。
鈴木:働き始める前のエピソードなのですが、幼稚園に通っていた頃にすごく好きだった先生と偶然お会いしたんです。渋谷区の保育士になったこと、先生のような素敵な先生になれるよう頑張りたいという話をしたら、涙を流して喜んでくださって。
その姿を見たときに、色々なことを教わってきた先生と今、同じスタートラインに立てたのだ、と。先生のように子どもたちの憧れとなるような人になりたい、と強く思いました。
ー男性保育士として働く中で感じた良い点、困った点をお聞かせください。
後藤:力仕事や防犯面においては頼りにされることも多いですね。また、お父さんとお母さんがいるように、男性保育士と女性保育士がいるというのは子どもにとってすごく良いことだよね、とお話いただくこともあります。
困った点といえば、私が入区した頃は男性保育士が先輩1人だけで心細さもありましたし、園内の設備も整っておらず、着替えやお手洗いは気を遣うことが多かったですね。現在は男性保育士も増えておりますし、環境も整ってきています。
鈴木:女性保育士が多い職場だからこそ、「男の先生だ」「たかいたかいして!」と子どもたちが興味を持って接してくれます。また、数が少ないからこそ男性保育士同士の結束は強いですね。先輩保育士(後藤さん)のことは兄貴のように信頼し、尊敬しています。
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ー保育士として働く上で感じる、渋谷区の良いところ、改善してほしいところを教えてください。
後藤:ICT化が進み、事務負担がかなり軽減されました。新人保育士からベテラン保育士まで、それぞれのキャリアに応じた研修も充実しています。保育士として非常に働きやすいのではないでしょうか。
鈴木:渋谷区を選んだ理由の一つとして、ICTの導入をはじめとする先進的な試みが魅力的だったことが挙げられます。研修もオンラインで参加できるようになったので、なかなか園から出られない保育士にとってありがたい環境ですね。改善してほしいところは、入ってきたばかりということもあると思いますが、今のところ思い浮かばないです。
ーお二人の目指す保育士像についてお聞かせください。
後藤:子どもたちとその保護者、そして同僚保育士からも信頼される。安心して子どもを任せられ、安心して一緒に働ける。そんな保育士を目指しながら日々取り組んでいます。
鈴木:後藤先生をはじめ、これまで自分が憧れてきた先生のように、尊敬してもらえるような保育士になりたいですね。そのためには、先ほどお話ししたような心の余裕や周りに目を配れる力が必要となってきます。色々な経験を積み、自分の引き出しを増やしていきたいですね。
ー最後に、渋谷区の保育士を目指す方へ一言お願いいたします。
後藤:保育士の仕事は、大変なことも多いです。ですが、子どもたちから力をもらえるし、何よりすごく楽しい。就職活動の苦しい時期を頑張って乗り越えた先には、保育士としての豊かな時間が待っています。ぜひ、子どもたちのサポートを共にできたら嬉しいですね。
鈴木:私自身が就職活動をしていた頃を思い返すと、保育士は時期が遅めなので、周りのみんなが遊んでいる間にも試験勉強や実習をしなければなりませんでした。
でも、たくさん勉強して入ったからこそ頑張ろうと思いますし、少しぐらいの挫折を味わったとしても「ここで挫けるわけにはいかない」という気持ちになれるんです。就職活動を行う1年間は、もしかすると何十年先も働くかもしれない場所を決める大切な時間なので、将来の自分のために、ぜひ頑張ってください。
ーありがとうございました。