「将来、何をしたいんだろう…?」
高校時代、誰もが一度は抱える漠然とした不安。
そんな悩みの渦中にいた高校生の転機は、通学時の車窓からふと目に飛び込んできた、一面の「桃の花」の景色でした。
「笛吹市で働きたい」
その直感だけを頼りに、高校卒業と同時に地元ではない山梨県笛吹市役所の門を叩いた菊島さん。入庁から7年、今、どのような想いで仕事と向き合っているのでしょうか。
「あの日の自分に声をかけるなら、『その直感を信じていいんだよ』と伝えたい」と語る菊島さんの言葉は、これからの進路やキャリアに悩んでいる方にとって大切なヒントになるかもしれません。
- 「ここで働きたい」―心を動かしたのは、電車の窓から見えた”桃の花”の景色
- 「すごくお堅いイメージ」が一転。あたたかい人で溢れる職場
- 異動はまるで転職。すべてが市民の生活に繋がる、やりがいに満ちた仕事
- 若手も主体的に動く。市民のために、やりがいを感じて
「ここで働きたい」―心を動かしたのは、電車の窓から見えた”桃の花”の景色
― 簡単な自己紹介と、公務員を目指された経緯について教えてください。
菊島:出身は笛吹市の隣にある甲府市です。高卒で入庁し、現在7年目です。
高校2年生までは進学か就職か、すごく悩んでいたんです。「これをやりたい!」という強い目標があれば、大学で専門的に勉強したいと思っていました。
でも、私の性格上、やりたいことがはっきりしないまま進学してもきっと続かないだろうな、と。それなら、思い切って仕事をはじめてみようかな、と考えるようになりました。

― 民間企業など公務員以外の選択肢もあったかと思いますが、なぜ笛吹市役所を選ばれたのですか?
菊島:笛吹市役所の志望動機にも書いたんですけど、きっかけは、通学時の電車の窓から見えた景色なんです。
春になると、電車から桃の花が一面に咲いているのが見えるんです。そのきれいな景色を見て、「ここで働いたら素敵かもしれない」と直感的に思いました。
元々、地元が隣だったこともあり、笛吹市にはよく遊びに来ていましたし、親戚も住んでいました。人と人との距離が近い、温かい雰囲気があるなと感じていたんです。
道に迷った時に「軽トラックの後ろに乗ってけ!」と甲府まで送ってくれようとしたおじさんがいたり(笑)。そういう地元ではあまり経験したことのない「人の温かさ」に触れていたことも大きかったですね。

「すごくお堅いイメージ」が一転。あたたかい人で溢れる職場
― 高校生の菊島さんにとって、公務員の仕事にはどのようなイメージがありましたか?
菊島:正直に言うと、すごく「お堅い」イメージがありました。静かな雰囲気で、少し話しかけづらいというか…。少し緊張する場所、という感じでしたね。
― そのイメージは、実際に試験を受けられてみて変わりましたか?
菊島:はい、がらっと変わりました!面接官の方々がすごく優しく話しかけてくれたり、とても和やかな雰囲気で。もちろん緊張はしましたけど、あたたかい場所なんだなと感じたことを覚えています。
― 入庁して7年経ちますが、働きやすさはいかがですか?
菊島:私は高卒で、アルバイトの経験もなかったので、本当になにもわからない状態で入庁しました。でも、まわりの皆さんがあたたかく見守ってくれたこともあり、とても働きやすいと感じています。
加えて、笛吹市は人と人との距離が本当に近いんです。職員の数も多すぎないので、ほとんどの職員の顔と名前がわかります。だから、「あの業務のことは、〇〇課の〇〇さんに聞きに行こう」という連携がスムーズにできています。

異動はまるで転職。すべてが市民の生活に繋がる、やりがいに満ちた仕事
― これまで3つの課を経験されたとのことですが、それぞれの仕事内容について教えてください。
菊島:最初の配属は戸籍住民課で、2年間証明書を発行する仕事をしていました。証明書発行の窓口だったので、まだ社会人経験のなかった私にとっては、ここでコミュニケーション、人との話し方などを学びました。
次の保育課では窓口業務とは逆に、内部的な仕事が中心でした。国から交付金、予算関連業務、市内の保育園の管理などの業務です。戸籍住民課とは異なり、制度的な部分にも関わりました。
― これまでの仕事で、特に印象に残っているエピソードはありますか?
菊島:保育課時代に給食費を無償化するプロジェクトがあったときです。保育園の給食費は一律の金額ではないので、それをどうやって無償化するかなど、さまざまな課題がありました。その解決のために、担当の職員みんなで連日議論を重ねました。
一つひとつ課題を潰していき、「どうすれば私たちの理想が実現できるのか」を必死で考えました。大変でしたが、新聞に「笛吹市、給食費無償化」と掲載されたときは、本当にやってよかったなと思いましたね。

― 入庁7年目。現在はどのようなお仕事をされていますか?
菊島:今は固定資産税の担当で、主に土地の評価などを行っています。これまでの仕事とは全く違う分野なので、また一からの勉強です。市役所の異動は2~3年周期であるのですが、本当に転職するような感覚ですね。
― 部署ごとに全く違う仕事に挑戦できるのは、市役所の仕事の魅力の一つかもしれませんね。
菊島:そうですね。飽き性の私には、2~3年で職場が変わるのはありがたいことかもしれません。毎年わからないことが出てきて、それを解決するために勉強して知識をつけて、3年目にはスーパーマンにならなきゃいけない(笑)
自分の成長が仕事を通して実感できる。そこも今振り返ると、とても楽しいと感じられています。若手もベテランも関係ない。全員で協力し合うのが笛吹市役所のスタイルなので、異動をしても安心して取り組むことができています。
若手も主体的に動く。市民のために、やりがいを感じて
― 入庁前のイメージと、実際に働いてみて感じた一番のギャップは何でしたか?
菊島:若い職員でも、こんなに仕事に主体的に参加できるんだ、というところですね。入庁前は、上の人の指示をただ聞いているだけだと思っていました。
でも、実際は全然そんなことはなくて。
主任だから、リーダーだから、というのは関係ありません。「あなたはこの課に何年目だよね」という視点で見られます。だから、たとえ若手でも自分自身が主体的に動かさなければいけない仕事もありますし、逆に自分よりはるか年上の方が後から異動してきて、「菊島さん、ちょっと教えて」と聞かれることもあります。
職員の年齢関係なく、市民の生活を守るために、みんなで頑張っているんだという実感があります。
―「わからないことがあっても大丈夫」という雰囲気があるのでしょうか。
菊島:はい、その雰囲気があると思います。毎年異動で新しい人が入ってくるので、「わからなくて当たり前だよね」という空気からスタートできるんです。だから、私だけができない、とプレッシャーに感じることは少ないですね。
全員で協力しないと仕事が進まない、という意識が根付いているので、自然と会話が生まれて、みんなで解決しようという流れになります。
― ワークライフバランスについてはいかがですか?お休みは取りやすいですか?
菊島:とても取りやすいと思います。以前の保育課では、コロナ禍ということもあり多忙な時期もありましたが、それでも土日はきちんと休めましたし、有給も取れていました。
私も「好きなアイドルのライブがあるから休みます!」と言える環境ですし、みんなが積極的にお休みを取られるので、若手も休みやすいですね。
― 進路に悩んでいた高校生時代の菊島さんに今声をかけるとしたら、どのような声をかけたいですか?
菊島:「やりたいことが見つからなくても焦らなくて大丈夫だよ」と伝えたいですね。そして、「なにか心に、ビビっときたものがあったら、思い切ってそっちに進んでみてほしいな」と。
私の場合は、通学電車の窓から見た「桃の花」の景色でした。あのときの直感を信じていいんだよ、と声をかけたいです。
大学に行かなくても、その4年間でできることはたくさんあります。高卒だからこそ「わかりません!」を武器にして、なんでも飛び込んでいけばいい。まわりの人がきっと助けてくれるから大丈夫。
今はまだ具体的な目標がなくても、仕事をはじめてみれば、必ずやりがいや楽しさが見つかるから心配しなくていいよ、と伝えたいですね。
― 今日はありがとうございました。
電車から見えた一面の桃の花。
「笛吹市で働きたい」と直感を信じて一歩を踏み出した菊島さん。
「わからないことがあっても大丈夫」。
そんな言葉が自然と出てくるのは、互いに支え合うあたたかい職場環境があるからこそ。部署を異動するたびに新しい学びがあるという働き方も、その成長をみんなで楽しんでいるかのように見えました。
誰かの当たり前の日常を、真摯に支える公務員という仕事。
今回のインタビューを通して、「仕事も、暮らしも、人生も。すべてをありのままに楽しんでいいんだ」と語りかけてくれているような、そんな気持ちになりました。
取材・文:パブリックコネクト編集部(2025年8月取材)



