石川県津幡町の唯一の公立病院、河北中央病院で働く理学療法士の小森さんと作業療法士の市川さんのインタビュー記事です。急性期から在宅復帰までを一貫してサポートできる体制や、行政と連携して地域社会へ飛び出していく「公立病院ならでは」のやりがいについてたっぷりと語っていただきました。
- 急性期から生活期まで。地域に深く関わりたいと選んだ「唯一の公立病院」
- 分断されないリハビリ。少人数だからこそ叶う「患者さんに寄り添う」体制
- 出前講座に地域ケア会議。公立病院ならではの「地域に出る」面白さ
- 毎日のカンファレンスと顔が見える関係。風通しの良いチーム医療
- 患者さんの「その後の人生」を支えるために。私たちが求めている人物像
急性期から生活期まで。地域に深く関わりたいと選んだ「唯一の公立病院」
ーまずは自己紹介と、これまでのご経歴、そして河北中央病院に入職された経緯を教えてください。
小森: 理学療法士の小森です。療養病棟のある病院に6年間勤め、転職し19年目になります。
市川: 作業療法士の市川です。私は津幡町に来て11年目になります。それまでは関東圏にある規模の大きい病院で働いており、その後は急性期から療養型まで、様々な機能を持った病院で経験を積みました。
結婚を機に石川県へ引っ越してくることになり、就職先を探していた際にこちらからお声がけをいただき入職しました。
ー河北中央病院は、地域の中でどのような役割を担っている病院なのでしょうか?
小森: 当院の病床数は60床で、そのうち14床が「地域包括ケア病床」となっています。津幡町で唯一の公立病院として、急性期の治療から、療養期、維持期、そしてご自宅に帰られた後の生活期まで、患者さんをトータルで診ているのが大きな特徴です。
ーリハビリテーション科には、現在どれくらいの方が在籍されているのですか?
小森: 理学療法士が8名、作業療法士が6名、言語聴覚士が1名、介護福祉士が1名、助手が1名という体制です。当院では入院・外来患者さんのリハビリテーション、通所リハビリテーション・訪問リハビリテーションを行っています。スタッフはそれぞれの専門性を活かして担当業務を行っています。

分断されないリハビリ。少人数だからこそ叶う「患者さんに寄り添う」体制
ーどのような体制なんですか?
市川:当院は、良い意味でそこまで人数が多くないため、私たちセラピストが「患者さんを最初から最後までずっと診ていられる」体制です。一人の患者さんの変化を途切れることなく追いかけられるのは、大きなやりがいに繋がります。
もちろん、途中で担当が変わることもありますが、小さな病院なので必ず近くにいて状況を把握できます。私自身、この体制はとても自分に合っているとプラスに捉えています。
出前講座に地域ケア会議。公立病院ならではの「地域に出る」面白さ
ー公立病院ならではの「地域に出る」お仕事もあると伺いました。具体的にどのような活動をされているのですか?
小森: 津幡町では、「リハビリテーション連絡会」や「認知症部会」「介護医療連携部会」といった様々な組織があり、町内のリハビリテーション専門職が行政と連携しています。私たちもそこに参加し、理学療法士・作業療法士としての専門性を活かして、地域全体を支えるための取り組みを一緒に考え、実行しています。
また、地域住民の方に向けた「出前講座」も行っています。健康指導や体操の指導、啓発活動などです。他にも、町の防災訓練に参加したり、健康まつりで体力測定などを行ったり、車椅子の操作練習の講師を務めたりと、町から依頼があればどんどん地域へ出向いています。
ーそうした地域での活動には、皆さん順番に参加されているのですか?
小森: 基本的には、その分野やテーマに合わせて担当者を1名ずつ出しています。例えば「骨粗しょう症」についての出前講座の依頼があれば、骨粗しょう症マネージャーの資格を持っている私が担当しますし、「認知症」のテーマであれば、作業療法士である市川さんにお願いするといった形です。
自分の得意分野や専門性を活かして地域の方にお話しできるのは、とても有意義な機会です。 また、「地域ケア会議」という、地域で困っている事例について多職種で意見を出し合う会議があるのですが、そこには若手のスタッフにも積極的に参加してもらっています。色々なケースを検討することは、非常に良い勉強になりますからね。
市川: 私たちは、これが当院の大きな「魅力」だと思っています。最近は地域ケア会議などのように、リハビリ専門職が地域社会から必要とされる場が増えており、地域住民のために働くことのできる環境が整っている点も他にはない特徴だと思います。
小森: 私たちが地域に出ていくことで、住民の皆さんの健康への意識が高まり、「地域のみんなで元気になろう」という機運に繋がっていると感じます。地域の未来のために私たちらしいアプローチができるのは、公立病院ならではの面白さですね。

毎日のカンファレンスと顔が見える関係。風通しの良いチーム医療
ー病院内での「多職種連携」や「チーム医療」はどのように行われていますか?
小森: 毎日午後1時30分から「病棟カンファレンス」を実施しています。医師をはじめ、看護師、医療ソーシャルワーカー(MSW)、薬剤師、管理栄養士そして私たち理学療法士・作業療法士など、患者さんに関わるすべての職種が集まります。「どのような目標に向かって、各職種がどうアプローチするか」を全員ですり合わせています。
ーカンファレンス以外でも、相談しやすい雰囲気なのでしょうか?
小森: はい。当院は60床という規模なので、スタッフ全員の顔と名前が一致しています。疑問があればすぐに担当の看護師や他職種に声をかけて相談できる環境です。この「風通しの良さ」と「連携のしやすさ」は、当院の大きな強みだと感じています。
市川:全員がフラットに意見を言い合えるので、とても仕事がしやすいです。かといって、ただ和気あいあいとしているだけでなく、「締めるところはしっかり締める」というプロ意識を持った、メリハリのある素晴らしい雰囲気の職場です。

患者さんの「その後の人生」を支えるために。私たちが求めている人物像
ーお休みや残業など、ワークライフバランスについて教えてください。
小森: 残業は本当に少ないと思います。月末や月初に書類業務が重なると少し残ることはありますが、普段は定時の17時15分から、遅くとも17時30分や18時までにはほとんどのスタッフが帰宅しています。保育園のお迎えにも十分間に合う時間です。
お休みは完全週休2日制(土日祝休み)ですが、入院患者さんのリハビリ対応のために、土曜日だけは午前中(半日)のみ、リハビリスタッフの中から1名が交代で出勤しています。スタッフの人数が多いので、土曜出勤が回ってくるのは2ヶ月に1回程度ですね。
ー最後に、河北中央病院で働く「やりがい」と、求職者の方へ向けたメッセージをお願いします。
小森: 私たちの仕事のやりがいは、患者さんの機能が良くなることだけではありません。「退院した後の人生」という、その先の生活までを見据えて関わることができる点にあります。
市川: もちろん、最初のうちは「規模の大きな病院で最先端の急性期医療を経験したい」と考える若い方も多いと思いますし、それは当然のことだと思います。ただ、「地域の方々に長く関わり続けたい」「行政と連携して地域医療の根幹を支えたい」という想いをお持ちであれば、当院は最高の環境です。
ー本日はありがとうございました。
取材・文:パブリックコネクト編集部(2026年2月取材)
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インタビューを通して、お二人が「地域」と「患者さんのその後の人生」にどれほど真摯に向き合っているかが深く伝わってきました。「治して終わり」ではなく、地域で安心して暮らし続けられるよう、行政や多職種と手を携えてサポートする。それこそが、唯一の公立病院である河北中央病院の最大の魅力なのだと感じます。



