島根県の中央部に位置し、世界遺産「石見銀山」や温泉津温泉などの歴史的資源に恵まれた大田市。今回は、大田市役所の建設部で活躍する室田さんと産業振興部で活躍する安井さんのインタビュー記事です。実は高専時代の同級生であり、共に民間企業を経てUターン転職で入庁したというお二人。技術職として民間と公務員の両方を知るからこそ語れる「仕事のやりがい」や「働き方の変化」、そして「大田市役所ならではの魅力」について、本音で語っていただきました。
- 民間での経験を経て芽生えた「計画の上流」に携わりたいという思い
- 技術職のキャリアパス:専門性を高める幅広い部署ローテーション
- 「作るプロ」から「街のマネージャー」へ。仕事内容とやりがいの変化
- 住民と共に作り上げた温泉街と、同級生チームで挑んだ橋梁架替
- 活気ある職場の雰囲気と、円滑なコミュニケーション
- 求めるのは「街への興味」と「仕事に向き合う姿勢」
民間での経験を経て芽生えた「計画の上流」に携わりたいという思い
ーこれまでのご経歴と、大田市役所に入庁された経緯について教えていただけますでしょうか。
室田:地元の高専を卒業後、まずは松江市内の民間建設会社に就職しました。そこでは約6年間、県内の様々な土木工事の現場監督として働いていました。その後、大田市役所に入庁し16年ほどになります。
もともと民間にいた頃から、行政の方々と仕事をしており、「発注者」としての仕事に興味を持ち始めたのがきっかけです。現場で図面通りにものを作る仕事も面白かったのですが、そのさらに上流にある「街をどう整備するか」という計画段階から携わってみたいという思いが芽生えました。
安井:実は、私と室田は高専時代の同級生なんです。私は大学課程の専攻科まで進んでから就職したのでタイミングは少しずれていますが、新卒では大阪に本社がある鉄道工事の会社に入社しました。そこで丸9年働き、10年目に入るタイミングで大田市役所に転職しました。
転職の理由は体調面と将来の働き方を考えたことです。鉄道の仕事はどうしても列車が走っていない夜間の仕事が多くなります。昼夜が逆転するような生活は大変でもあり、体質的にも合わなかったため、思い切って転職いたしました。

技術職のキャリアパス:専門性を高める幅広い部署ローテーション
ー実際に入庁されてからは、どのような部署を経験されてきましたか。また、技術職の方はどのようなキャリアパスを歩むのでしょうか。
室田:技術職の配属先としては、主に土木課、都市計画課、下水道課、水道課、農地整備課などがあります。私はこれまで、土木課を2回、そして現在の都市計画課も2回経験しています。事務職の方と同じように数年ごとの異動はありますが、基本的にはこれら技術系の部署をローテーションしながら専門性を高めていくイメージですね。
同じ「課」であっても、担当する係や立場が変われば業務内容はガラリと変わります。例えば土木課にいた時は現場に出ることが多かったですが、都市計画課ではデスクワークや計画策定の比重が高まります。
安井:私は土木課の時は工事の発注や現場管理など、民間に近い仕事をしていました。その後、水道課に異動したのですが、同じ「工事」でも土木と水道では勝手が全く違い、最初は苦労しました。それでも工事発注など現場に近い業務が多かったです。
現在は農地整備課にいますが、ここは工事発注というよりはマネジメントに近い仕事が増えてきました。調整役として動いたり、若い職員が工事で困っていれば相談に乗って一緒に解決したりと、仕事の質が変わってきています。
異動するたびに新しい知識が必要になりますが、その分、街づくりの様々な側面を知ることができるので、飽きることがありません。

「作るプロ」から「街のマネージャー」へ。仕事内容とやりがいの変化
ー民間時代と比べて、仕事の進め方や意識にギャップはありましたか。
室田:かなり違いますね。民間の時は、一つの工事に対して金額の細かい部分まで管理し、工程の一つひとつに神経を尖らせて仕事をしていました。一方、市役所の仕事は、もちろん細かい部分の確認も必要ですが、それ以上に「事業全体の大枠」を決めていく仕事です。視点がより広くなったと感じます。
安井:現場の細かい施工は、信頼できる地元の事業者さんにお任せして、私たちは「こういう街を作りたい」「こういう公共工事が必要だ」という計画を立て、それを発注して事業者さんに動いてもらう。プロデューサー的なポジションに変わった感覚があります。
ー「現場で作る」ことから「事業を回す」ことへ変化したわけですね。その変化の中で、仕事の面白さややりがいをどのように見つけていかれましたか。
室田:正直なところ、最初は「自ら現場で作る」という達成感が薄れ、物足りなさを感じることもありました。ただ、市役所の仕事は一つの工事で終わりではなく、いくつもの工事を経て一つの大きな事業が完成します。その事業が完成した時、住民の方がすごく喜んでくださるんです。そこに、民間時代とはまた違った大きな喜びや達成感を感じるようになりました。

住民と共に作り上げた温泉街と、同級生チームで挑んだ橋梁架替
ーこれまで担当された中で、特に印象に残っている仕事はありますか。
室田:私は大田市の中でも温泉津(ゆのつ)町という温泉街がある地域の出身なのですが、その温泉街の整備事業が特に印象に残っています。舗装の色をどうするか、どんな照明にするかといった設計内容を、地元の方々と何度も話し合いながら決めていきました。
ー地元の方と一緒に作り上げていったのですね。
室田:はい。「どんな整備にしたら良い温泉街になるか」を考える会が立ち上がり、私も毎回その会議に出席して意見を交わしました。そうやって膝を突き合わせて話し合う中で、地元の方々とも深く仲良くなれましたし、事業が完成した時に「ありがとう、いい街になった」と言っていただけた時は、本当にやって良かったと思いました。
安井:私は、市役所の中で「同級生チーム」で仕事ができたことが記憶に残っています。高専の先輩方も庁内にいらっしゃるのですが、ある時、私が水道課、室田が都市計画課、そして先輩が土木課にいるタイミングで、それぞれの部署が連携して一つの橋の架け替えプロジェクトを行うことになりました。
今でもそのときの話をすることがありますが、気心の知れたメンバーで大きな仕事ができたのは楽しかったですね。仕事上の付き合いを超えて、人間関係が広がっていくのは、地元で働く公務員ならではの面白さだと思います。

活気ある職場の雰囲気と、円滑なコミュニケーション
ーマネジメントやコミュニケーションで意識されていることはありますか。
室田: 市役所では通常、現場のような「朝礼」はあまりないのですが、私は毎朝、部下の職員と簡単な打ち合わせをするようにしています。毎日顔を合わせて声をかけることから、部下が相談しやすい空気を作りたいと思っています。
ー働き方の面はいかがですか。民間時代と比べて、ワークライフバランスに変化はありましたか。
安井:劇的に変わりました。民間にいた頃は転勤も多く単身赴任でしたし、もし続けていたら、結婚して子供がいても家族と向き合う時間は取れなかったと思います。今は子供の行事にはほぼ全て参加できています。それができるのも、公務員という環境のおかげだと感じていて、今の生活には非常に満足しています。
室田:土日祝日がカレンダー通りに休みで、有給休暇も普通に取得できます。この環境のおかげで、仕事とプライベートのメリハリがつくようになりました。今の働き方だからこそ、家族との時間を大切にできていると実感しています。

求めるのは「街への興味」と「仕事に向き合う姿勢」
ーどのような方と一緒に働きたいですか。
安井:明るくて元気があって、仕事に一生懸命向き合える人と一緒に働きたいです。技術やスキルよりも、まずはそこが根底にないと信頼関係は築けませんから。特に、民間経験者の方で「今の働き方は合わないけれど、仕事自体は好きだ」という方には、公務員は非常に向いていると思います。
室田:一生懸命働いてくれる方であれば、一生懸命休んでくれても構いません(笑)。市役所の仕事に興味を持って、一つひとつの業務に責任を持って取り組んでくれる方と一緒に仕事がしたいですね。

ー本日はありがとうございました。
特に印象に残ったのは、「住民の方からの感謝」について語る点。熱のこもった眼差しからは、技術者としての誇りと郷土愛が強く感じられました。民間企業での厳しい現場経験があるからこそ、現在の恵まれた環境に感謝しつつ、それ以上の価値を地域に還元しようとする姿勢が印象的です。
UターンやIターンを考えている技術者の方にとって、大田市役所は自身の経験を活かしながら、人間らしい豊かな生活も手に入れられる、まさに理想的なフィールドではないでしょうか。
取材・文:パブリックコネクト編集部(2025年10月取材)



