世田谷区では毎年10月に、保育園・児童相談所で給食をつくる調理職を募集しています。
これから、世田谷区で働きたいと考えているみなさんを応援するために、保育園調理の現場で働く職員に、調理の仕事についてインタビューをしました。
前半にひきつづき、保育園調理の魅力について、技能長に語り尽くしていただきます!
※令和6年9月のインタビューです。
―「食育」とは、具体的にどんな事をやるんですか?
調理活動や、園庭で育てている野菜を見せたりとか……去年なんかは私の親戚から根っこが付いたままの長い稲穂を貰ってきて、それを子どもたちに見せました。稲から一個ずつもみ殻を取ってここに米が入ってるんだねって。さらに、ちっちゃい精米器を持っていって、玄米を目の前で精米して、そうするといつもの白いお米になるのをみせて。それから炊飯器で炊いてみせてみました。
こんな一個ずつ籾にはいってて、全部取って…ってみんなすごく大変なんだから無駄にしちゃいけないんだよ、って教えたり。子どもたちも自分たちの背の高さくらいある稲穂をみて、こんなに大きくなるんだ、とか驚いてくれたりしますね。
―確かに、稲からごはんに変わっていく過程ってなかなか見られないですよね。子どもたちもお米一粒一粒を大事にすると思います。こういうアイディアはどうやって考えるんですか?
各クラスでこんなことやりたいっていうのを担任と相談して、3歳児のクラスだったらこんなことができるよね。とか、もう少し年長さんだったらこういうことがやりたいとか。
―食育は、どのぐらいの頻度で行うんですか。
クラスにもよるんですけど、3歳児のクラスなんかは、毎月その季節の野菜を観察しようというのをやっています。たとえば9月は、オクラを子ども達に見せました。触ったりすると、とげとげがあるんだとか。8月はナスとキュウリ、これから冬の時期になったら、きっと里芋やサツマイモなどを見せていくと思います。
5歳児のクラスでは、はてなボックスみたいな感じで中を見えないようにして、野菜を入れておいて触ってみて、それが丸いねとかとげとげしてるとかいって、トマトとかじゃがいもとか答えて言って、答えを発表して盛り上がったり、食材に触れてもらう機会を設けています。
園も行事がたくさんあって、子どもたちも忙しいので、定期的にかならずやる、というのは難しいのですが、タイミングがあるときには年間計画の中に組み入れて色々と企画しています。
―食育が子どもに与える影響とは?
たとえば、昔、お魚には骨があるから、気をつけて食べようねというのをやったことがあったのですが、そのあとにお魚が出た時に、「ほらあった。」ってわざわざ骨を見つけて見せてくれたりする子もいました。
(園長)調理さんが食育で見に来てくれると、子どもたちが頑張って食べてみようかな、となるみたいで、調理さんがきたから食べれたよ、というのが結構あります。子どもたちって周りからの影響がすごく大切で、いつもの先生じゃない先生からすごいね、って褒められたくって苦手なものを食べられるようになったりとか、調理さんが来てくれるだけで「あ、来てくれた」と喜んだりしますね。
―保育園ごとに特色があったりしますか。
栄養士さんがいる園だと、栄養士さんが中心になっていろいろと考えたりしますし、栄養士さんがいない(0歳児がいない)園だと、調理が企画を考えたりすることもあります。栄養士さんがいないと大変なこともありますが、逆に先生方と密に話して企画を立てていくので、自分の成長を実感できます。
―調理の仕事が、私生活で役立つことってありますか?
保育園で作った献立がおいしくて、それがうちの定番になるということもあります。
あとは、衛生面についてものすごく細かいので、家でも衛生面に気を遣うようになりましたね。
―ずばり、食卓で定番になったメニューとは?
私が好きなのは高野豆腐の寄せ揚げです。高野豆腐をもどしたものを短冊切りにして、ハムや玉ネギとかと一緒にかき揚げにして甘酢あんかけをかけたものなんですけど、保育園の調理で初めて作りました。今まで高野豆腐って煮るしか知らなかったし、揚げると全然違うんですよ。最初それにびっくりして、おいしい!と思って家で作ってみました。家の子どもたちも食べるんですけど、お友達に教えても、揚げるの⁉ってまずは驚かれて、やってみたらおいしかったという人は結構いました。自分では想像もつかないレパートリーを増やせるので、おいしいものを作った時は、人に教えたくなっちゃいますね。
―若手職員とはどのように接していますか。
若い人なりの考えとか思いを聞くことで、自分も成長するし、新しい発見にもなります。
事務作業とかでパソコン使うのですが、私はそういう世代じゃないからパソコンが苦手なのですが、若い保育士の先生に相談していろいろと教えてもらったりして、そういうところは特に助けてもらってるなと思います。
―調理のお仕事を目指したきっかけについて教えてください。
中学生ぐらいの時からお料理が好きだったんですよ。なので、調理師か、栄養士になろうかと考えていました。栄養士はわたしの中では、何かを作るというより、献立を作ったり計算するみたいなイメージがあったので、やっぱり作る方がいいなと思って調理師に絞りました。
高校を卒業してすぐ、調理師学校に入って、キッチンで働きはじめて、結婚して前の職場を辞めて、ちょっと余裕ができた時に、たまたま世田谷の区報に「給食調理」ってあって。
給食だったら子育てしながらでも夜の仕事じゃないからOKかな、みたいな感じで応募して、最初は学校の給食のおばちゃんになるつもりでした。それで、辞令を受けた時に保育園に配属されて、保育園調理ってあるんだ!ってびっくりしたのを覚えています。。
今となっては保育園の方がだんぜん楽しいし、子どもの遊ぶ声とかを聞くだけでも元気をもらえます。
―もともと、調理師になりたい、という明確な理由があったんですね。
元々、料理が本当に好きだったから。やっぱり、好きなことを仕事にするのは幸せなことじゃないですか。今、すごい幸せですね。
―民間の調理と違うところは?
前の仕事は住み込みで働いていて、夜の宴会のためのお食事で、朝から何時間も仕込みをして、夕方に仕上げて、それを調理してお出しするという感じでした。保育園に入ったばかりの時は、8時に納品されて、10時半に100人分仕上げるときいて、え、大丈夫!?みたいなね。スピード感に圧倒されて。それが、メンバーのあうんの呼吸でルーティンが流れていき、ちゃんと仕上がっていくんですよね。素晴らしいなと思います。
―毎日100人前を数時間で仕上げるのは、職人技ですよね。
そうなんですよ。納品がちょっと遅いと業者さんに電話して、「すみません、もう出てるんですけど」とか言われて、やきもきすることもありますけど、ちゃんと時間にはできあがるんですよね。
大人向けのものを作っていた前職よりも、子ども向けで、その当日に全部消費するものを短時間でがっと作るっていう集中力は、生活の中でも発揮されていて、自分にはいい刺激になっていると思います。
おいしく作る以上に、子どもたちの口に入るものなので安全にも気をつかっていて、野菜もきれいに一枚ずつ何回も洗って。みんなで愛情を込めて作っていますね。
―いま調理師として働いている人に保育園調理をアピールするとしたら?
やっぱり、公務員だから時間が決まってるっていうのが、一番の良いところかなって思いますね。本当に殆ど残業はないです。業務時間だけ集中して必死に頑張れば、後は自分の時間にできるよっていうところがレストランとかと違うところですね。
―保育の調理になるために身につけておいた方がいいスキルはありますか。
体力も必要かもしれないけど、前向きさ、素直さが一番大事です。技術的なことはやりながら覚えていけばいいと思います。全然調理の仕事をしていなかった人でも、今はバリバリと仕事をこなしている調理師もいっぱいいます。後ろ向きにならず、前向きに素直に経験を積んでいけることが大切です。
保育園があまりに細か過ぎて、今までやってきたこととの違いに戸惑っちゃう人も多分いると思います。料理を作るだけだと思っていたら、そんな事務作業もあるのかとか、思ったより子どもに関わるんだとか、そういうギャップを感じる人もいるので、作るだけじゃないんだよ、というところは知ってもらいたいです。
―これから調理を目指す若者にひとことメッセージをお願いします。
子どもからエネルギーを貰えるから楽しいよ!っていうのを一番伝えたいです。調理をやる人って、どこで働いても、お客さんがおいしかったって言ってくれることが喜びになると思うんですけど、子どもたちが顔とか名前を覚えてくれたりすることもあるし、「調理さん調理さん!」とこられると、かわいいなって思いますね。子どもたちから貰うエネルギーは、何物にも変えられないと思います。
世田谷区では、調理職などの技能職を募集中しています!
詳しくは、こちらの区公式ホームページをご確認ください。