「長く働き続けたいからこそ、公務員保育士という道を選びました」と語る、入区5年目の桜保育園保育士職員のTさん。自身も世田谷区で生まれ育ったという彼女は、愛着のある土地で子どもたちの成長を見守る日々に充実感を感じています。
2歳児クラスの担任として、子どもたちとどう向き合い、自身の成長に繋げているのか。異動を経て感じた変化や、先輩から学び取る「保育の引き出し」、リアルな1日のスケジュールまで、たっぷりとお話を伺いました。
- 「地元愛」と「安定」。私が公務員保育士を選んだ等身大の理由
- 異動では新しい環境が、保育の視野を広げてくれた
- 1日のスケジュール
- 「できた!」の瞬間に立ち会える、2歳児クラスの感動
- 先輩の技を見て、自分の「引き出し」へ。若手から中堅へ、焦らず歩める環境
- 目指すは、先輩と後輩の「つなぎ役」
「地元愛」と「安定」。私が公務員保育士を選んだ等身大の理由
ーまずは自己紹介と、現在の所属について教えてください。
T:新卒で入区し、最初の4年間は東弦巻保育園で勤務していました。そこでは0歳児から持ち上がりで3年間担当し、その後別の0歳児クラスを1年担当しました。
そして5年目の今年、初めての異動を経験し、現在の桜保育園で2歳児クラスの担任をしております。

ー保育士を目指したきっかけと、その中で世田谷区を選んだ理由は何だったのでしょうか。
T:小さい頃から自分より年下の子と遊ぶのが大好きで、中学生になる頃には「将来は保育士になりたい」と心に決めていました。
就職活動をする際、世田谷区を選んだ一番の理由は、私自身が世田谷区で生まれ育ったことです! 慣れ親しんだこの土地で保育ができたら素敵だなという思いがありました。
また、せっかく保育士になるなら長く続けたいと考えていました。安定して長く働く環境を考えた時、公務員保育士という選択肢が一番魅力的だったんです。
異動では新しい環境が、保育の視野を広げてくれた
ー5年目で初めての異動を経験されたとのことですが、環境が変わることに不安はありませんでしたか?また、異動を通して感じた変化について教えてください。
T:正直、最初は緊張しました。4年間慣れ親しんだ園を離れて、新しい環境、新しい先生方、そして新しい子どもたちと一から関係を築いていくわけですから。でも、実際に異動してみて感じたのは、ポジティブな変化の方が大きかったですね。
ー具体的にどのような発見があったのでしょうか。
T:保育園が変わると、当然ですが一緒に働く職員の顔ぶれも変わります。5年間で本当に色々な先生方と出会うことができました。その中で、「こういう場面ではこんな考え方があるのか」「この先生のアプローチは素敵だな」と、自分の中にはなかった多様な保育観や価値観に触れることができました。
一つの場所に留まっていると、どうしても考えが凝り固まってしまうことがありますが、異動によって強制的に新しい風が入ってくることで、物事を多角的に捉えられるようになりました。
これは公務員として複数の園を経験できる大きなメリットだと思います。新しい環境で自分の良さを再確認できたり、逆に改善点に気づけたりと、保育士としての視野がグッと広がったと感じています。
1日のスケジュール
ーそれでは、具体的な1日の流れについて詳しく教えてください。
T:はい。勤務はシフト制ですが、今回は「遅番」の日の流れをご紹介します。
【ある1日のスケジュール(遅番の日)】
- 09:35 出勤
- 着替えなどの準備をして、2歳児保育室へ向かいます。
- 09:00 園庭遊び
- 天気が良ければ園庭へ。1歳から5歳まで異年齢の子どもたちが一緒に遊ぶ時間です。怪我のないよう見守りつつ、私たちも一緒に体を動かして遊びます。

- 10:30 入室・着替え
- お部屋に戻り、トイレや着替えを済ませます。「自分でやりたい」という子どもたちの気持ちを大切にサポートします。
- 11:15 給食
- 子どもたちと一緒に食事をとります。食具の使い方を伝えたり、楽しく食べられるような雰囲気を作ります。

- 12:10 午睡(お昼寝)
- 食べ終わった子から遊び、順次お布団へ。寝かしつけや呼吸確認などの見守りを行います。
- 12:30 休憩・書き物
- 子どもたちが寝ている間に、職員は交代で休憩を取ります。連絡帳の記入や会議を行うこともあります。
- 15:00 起床・おやつ
- お布団を片付け、手を洗ってみんなでおやつの時間です。
- 15:45 室内遊び
- 夕方の時間は主に室内で。お迎えが来るまで、それぞれの好きな遊びを楽しみます。
- 16:30 引き継ぎ・遅番へ
- ここでは2歳児の当番の職員と一緒に保育を行います。室内で過ごし、保護者の方がお迎えに来た際には保育園での子どもの姿や体調の変化などをお伝えしています。
- 18:00 引継ぎ・延長番へ
- 延長番の職員に引継ぎを行い、片付け・戸締り作業などを行った後に遅番は事務所へ向かいます。退勤時間まで事務作業などを行います。
- 18:20 退勤
ー保育後の事務時間での仕事内容を詳しく教えてください。
T:事務時間には上記の他には自分の担当している行事の仕事を進めることもあります。(また事務作業中も電話はかかり、保育室から呼び出しがくることもあります。)
例えば、11月に行われた「発表会」では係を担当し、7月末から係として少しずつ動き始めて台本作りや大道具の制作、保護者向けのお便り作成などを進めてきました。また、当日は司会を担当しました。
自分のクラス以外の行事にも関わるので大変さはありますが、無事に終わった時の達成感は格別でした!

「できた!」の瞬間に立ち会える、2歳児クラスの感動
ー現在は2歳児クラスを担当されていますが、この年齢ならではの面白さや、子どもの成長を感じるエピソードを教えてください。
T:2歳児クラスは、言葉でのやり取りが少しずつ楽しくなってくる時期です。4月の頃はまだうまく伝えられなかった子が、身振り手振りや簡単な言葉を使って自分の思いを伝えられるようになる過程は、このクラスならではの醍醐味ですね。また、月齢による個人差も大きいので、その時々で多様な姿を見せてくれるのも面白いところです。
月齢の高い子たちが2人で協力して難しいパズルを完成させたことがありました。「〇〇ちゃんと2人でやったんだよ!」と見せてくれた時は、お友達との関わりの中で社会性が育っていることを実感しましたね。

ー長期的な視点で成長を感じた出来事はありますか?
T:今年の夏にゴーヤを育てたんです。最初は子どもたちも「ゴーヤって何?」という状態だったのですが、毎日お水をあげて、黄色いお花が咲いて、そこから実がなって……という過程を一緒に観察しました。
夏の終わりには「もっと大きくなるんじゃない?」「色が黄色くなってきたのはなんでだろう?」と、子どもたち同士で話し合う姿が見られて。スーパーで売っている野菜を見るだけでは分からない、「植物が育つ過程」や「大きさの変化」を肌で感じてくれたことが嬉しかったです。自分たちで育てたからこそ、興味や発見が深まったんだなと実感しました。
先輩の技を見て、自分の「引き出し」へ。若手から中堅へ、焦らず歩める環境
ー保育をする中で、対応が難しい場面もあるかと思います。大切にしていることや工夫していることはありますか。
T:私が一番大切にしているのは、「日々の保育の中で子どもと全力で遊ぶこと」です!信頼関係の土台はそこにあると思っています。
対応が難しい場面、例えばいけないことをしてしまった時などは、まずはその子の気持ちを必ず受け止めるように心がけています。どんなに行動自体がダメだったとしても、「嫌だったんだね」「こうしたかったんだね」と、その子の背景にある感情に寄り添ってから話をするようにしています。
ー最初からそのように余裕を持って対応できていたのですか?
T:いえ、最初は全然できませんでした(笑)。1年目の頃は「こうすべき」「しなきゃいけない」という思いに囚われてしまって、心に余裕がなかったんです。でも、持ち上がりで同じ子どもたちの成長を見守り、先輩方の関わり方を見て学ぶ中で、「その子にはその子のペースがある」ということに気づけました。

ー先輩方からの影響は大きいのですね。
T:とても大きいです。例えば、見通しを持って行動すること。「秋ぐらいにはこんな姿が見られるようになるから、今のうちにこういう保育を仕掛けておこう」といった年間を通じた視点は、経験豊富な先輩だからこそ分かることです。そういったアドバイスをもらいながら日々勉強中です。
また、子どもへの声掛け一つとっても、「あ、その言い回し上手だな」「子どもがすごく納得しているな」と思ったら、すぐに真似させてもらいます(笑)。自分の中になかった関わり方を、先輩の姿からそのまま吸収して実際にやってみる。そうやって少しずつ自分の「保育の引き出し」を増やしてきました。
これからは、更に自分なりにアレンジを加えたり、新しい遊びを提案したりして、もっともっと引き出しを増やしていきたいです。子どもたちが「保育園楽しい!」と思える瞬間を、私自身のアイデアで作っていけるようになるのが目標です。

目指すは、先輩と後輩の「つなぎ役」
ー職場の雰囲気や人間関係について教えてください。
T:この保育園は明るい先生が多くて、和気あいあいとしています!事務所内でもいつも職員同士が互いに声をかけ合い、相談しやすい雰囲気がありますね。
チームワークも抜群です。例えば園庭では異年齢の子どもたちが一緒に遊ぶのですが、どうしても目が離せない時などは「ここ見ててもらってもいいですか?」とクラスの垣根を越えて声を掛け合っています。また、人手が足りない時はすぐに他のクラスからヘルプが入るなど、園全体で子どもたちを見守る体制が整っています。

ー後輩の職員も増えてきたと思いますが、接する上で意識していることはありますか?
T:私もまだ若手のつもりだったんですが、気づけば中堅の入り口に立っていますね(笑)。後輩とは基本的に仲が良いので、あまり「先輩風」を吹かせないようにしています。何か伝える時も「私はこう思うけど、どう?」と意見を聞いたり、私自身も分からない時は知ったかぶりをせず「一緒に先輩に聞きに行こうか」と声をかけたりしています。
これからは、後輩にとっては「話しやすい先輩」、先輩にとっては「後輩の意見を伝えられる存在」として、職員間の「つなぎ役」になれたらいいなと思っています。
ーありがとうございました!
取材・文:パブリックコネクト編集部(2025年12月取材)



