「料理を作ることが大好き」という幼少期の想いを原点に、民間企業での経験を経て世田谷区へ入区したSさん。
現在は子ども・若者部保育課の等々力中央保育園で管理栄養士として活躍しています。公務員ならではの「働きやすさ」や、民間との違い、そして利益にとらわれず「質の高い給食」を追求できる環境の魅力とは?
20名以上の栄養士仲間との強い絆や、プロとして子どもたちの成長を支える喜びについて、熱い想いを語っていただきました。
- 料理への想いを原点に。「長く安心して働く」ための公務員という選択
- コストよりも「質」を。「子どもファースト」で追求する給食作り
- 一人職場でも孤独じゃない!充実した研修とバックアップ体制が支える成長
- 多職種チームで育む子どもの未来。自分らしくいきいきと働ける場所
料理への想いを原点に。「長く安心して働く」ための公務員という選択
ーまずこれまでの経歴と、栄養士を目指したきっかけを教えていただけますか。
S:入区8年目で、現在は等々力中央保育園で働いています。 栄養士を目指した原点は、幼い頃の記憶ですね。小学生の頃から自分でキッチンに立って料理を作るのが大好きでした。それに、学校の給食って家庭では出ないようなメニューや多様な食材に出会えるじゃないですか。
毎日ワクワクしながら学校に通っていたその「感動」を、今度は自分が子どもたちに届けたいと思って栄養士の道を選びました。
進路としては、まず大学卒業後に民間の給食委託会社で働きました。病院や老人保健施設などで、高齢者や入院患者のための献立作成や食事作りを担当し、実務経験を積んでから管理栄養士の資格を取得しました。
そのタイミングで、「次のステップに進みたい」と転職を決意しました。

─そこから、世田谷区へ転職された決め手はなんだったのですか?
S: 将来のライフプランをじっくり考えた時に、「長く安心して働き続けられる環境」を求めていたのが大きいです。その点、公務員の福利厚生や給与体系の安定性は非常に魅力的でした。
数ある自治体の中でも世田谷区を選んだのは、栄養士としてのキャリアパスの広さに惹かれたからです。世田谷区では保育園だけでなく、保健所や健康づくり課など、様々なフィールドで栄養士が活躍しています。多様な経験を積めるチャンスは、非常に魅力的で、自分らしく成長し続けられる可能性を感じました。
あとは、私自身が区内の大学に通っていたので、馴染み深いこの街で貢献したいという想いもありまし
たね。
コストよりも「質」を。「子どもファースト」で追求する給食作り
ー民間企業と公立保育園の両方を経験されて、仕事の進め方や環境にどのような違いを感じますか。
S:一番の違いは、給食づくりにおける「目的」の優先順位かもしれません。 世田谷区では、何よりも「質の高さ」や「安全性」を追求しています。例えば、食材は基本的に「国産」を使用するという区全体の方針があり、食の安全を徹底して守っているんです。
コストがかかっても、子どもたちの健康のために本当に良いものを提供する。その方針があるおかげで、私たちも胸を張って仕事ができますし、それが大きな「働きがい」につながっています。

ー妥協なく取り組める環境なんですね。では、具体的な仕事内容についても教えてください。
S:現在は等々力中央保育園で、主に離乳食の献立作成や調理、調理室の衛生管理、給食に関する様々な事務を行っています。世田谷区の公立保育園には0歳児クラスがある園に栄養士が配置されており、個々のお子さんの成長に合わせたきめ細やかな対応が求められます。
幼児食については、自分の園のことだけでなく、区全体の栄養士と連携して進めています。公立保育園の栄養士がグループを組み、持ち回りで「共通献立」を作成しています。「この班は4月分担当」「別の班は5月分担当」といった具合に、半年ほど先を見越して作成しています。
ー半年先ですか!では献立作成における難しさや面白さはどんなところでしょうか?
S:幼児食に関しては、先輩や後輩の栄養士とチームで作成するので、いろいろな意見を出し合えるのが面白いですね。「季節の食材を入れたいね」「5月だからこどもの日にちなんでちまき風のご飯にしようか」など、アイデアを出し合って新メニューを考える時間はとても楽しいですね!
大変な点は、昨今の物価高ですね。栄養価や色合い、旬の食材や子どもの食べやすさなどを考えながら決まった予算の中で献立を立てなければならないので、半年先の価格変動を見越して調整するのが難しくて。また、気候変動の影響で果物の旬がずれることもあり、予測を立てながら作成するのは専門職としての腕の見せ所です。
一方、0歳児の離乳食に関しては、1ヶ月でお子さんの成長が大きく変わるので、あまり先を見越して立てることは難しいです。そのため、離乳食は各園子どもの姿に合わせて前の月に作成して注文するサイクルで行っています。
また、0歳児クラスでは、アレルギー防止の観点から「食材確認」を徹底しています。保育園で初めて食べる食材がないよう、給食で使う食材は必ずご家庭で試していただくというルールです。保護者の方と密に連携を取りながら進める必要があり、責任重大ですが、子どもの命と健康を守る大切な業務ですね。
ー一日の仕事の流れを教えていただけますか。
S:基本的な流れとしては以下となります。
【ある1日のスケジュール】
08:30 出勤・調理開始 調理室に入り、業者の納品対応や検品を行います
09:00 朝礼 その日の献立や、アレルギー・宗教食などの個別対応の確認、調理スタッフの体調確認などを行います。そして昼食調理開始。私は主に0歳児の離乳食調理を担当し、調理師さんたちが幼児食を作ります。

10:30 食事介助 離乳食が出来上がります。その後は0歳児クラスへ行き、食事介助を行います。実際に自分が作った離乳食を食べさせたり、担任の先生と食べ具合について話し合ったりします。

11:30 幼児クラス巡回 、幼児食の配膳が進むと、今度は幼児クラスをラウンド(巡回)します。「これ美味しい?」「苦手なの?」と子どもたちとコミュニケーションを取ったり、先生たちと「この大きさどうですか?」と相談したりしながら、喫食状況を確認

12:15 給食・休憩 ラウンドが一段落したら自身の昼食と休憩をします。
13:15 片付け・おやつ調理 給食の片付けを調理員と行い、午後の離乳食やおやつを作ります。

14:30 食事介助・巡回 0歳児クラスへおやつを届け再び食事介助や幼児クラスの様子を見に行き巡回します。
15:30 事務作業 デスクワークで事務作業を行います。
17:15 退勤
一人職場でも孤独じゃない!充実した研修とバックアップ体制が支える成長
ー専門職として働く上で、組織の体制やサポートについてはどう感じていますか。
S:非常に頼もしいです!保育園には栄養士が基本的に1名配置なので、入区前は「一人で悩みや判断を抱え込むのではないか」という不安もありました。しかし、実際に入ってみると全く孤独ではありませんでした。
世田谷区は公立保育園の数が多く、栄養士も20名以上在籍しています。若手から中堅、ベテランまで経験年数のバランスも良く、層が厚いです。月に1回は必ず全員が集まる業務連絡会もありますし、献立作成や研究班の活動など、園を超えて顔を合わせる機会が頻繁にあります。
何か困ったことがあれば、すぐに先輩に相談できますし、「こういう時はどうしてる?」と情報を共有し合える横のつながりが非常に強いです。この組織的なバックアップ体制は、世田谷区ならではの大きな強みであり、安心して働ける理由の一つです。
また、人材育成にも力を入れており、研修制度が非常に充実しています。食育研修や離乳食研修など、専門性を高めるための研修に年に何度も参加できるので、常に新しい知識を得て成長し続けることができます。

ー働きやすさや職場環境についてはいかがですか。
S:とても働きやすい環境だと感じています。福利厚生が整っていることはもちろんですが、職員一人ひとりが尊重されていると感じます。
特に私の場合は、現在の園に配属される前、調理担当として勤務した経験もありました。その後、異動を経て栄養士としてのキャリアを重ねていますが、適性や状況に応じた配置転換もあり、長く働く上で柔軟な組織だと感じています。
忙しい時期、例えば4月の新入園児受け入れや年度末などはバタバタしますが、年間を通しての見通しが立ちやすく、ワークライフバランスも取りやすいですね。
多職種チームで育む子どもの未来。自分らしくいきいきと働ける場所
ー日々の業務の中で感じる「やりがい」や、多職種との連携について教えてください。
S:毎日が本当に楽しいですね。一番のやりがいは、やっぱり子どもたちの笑顔です。給食の時間にクラスを回ると、「これ美味しかったよ!」「苦手だけど一口食べたよ」と子どもたちが声をかけてくれます。その素直な反応が何よりのエネルギーです。
保育園は、保育士、看護師、調理師、そして栄養士と、様々な専門職が集まるチームです。例えば、「子どもたちの健康と食」をテーマに看護師とコラボレーションして健康栄養教育を行ったり、保育士さんと「この子の食べ進みが悪いけど、どう工夫しようか」と相談し合ったり。それぞれの専門性を活かしながら、一つのチームとして子どもの成長を支えられることに大きな意義を感じています。

ー最後に、記事を読んでいる方へメッセージをお願いします。
S:世田谷区は、栄養士として、そして一人の人間として、いきいきと働ける場所です。「食」を通じて子どもたちの成長に関わりたい方、安定した環境で専門性を磨きたい方には、これ以上ないフィールドだと思います。先輩たちの背中を見ながら、「こんな栄養士になりたい」という目標を持って働ける環境がここにはあります。
社会貢献性の高い仕事に誇りを持ちながら、私たちと一緒に世田谷区の子どもたちの未来を支えていきましょう!
取材・文:パブリックコネクト編集部(2025年12月取材)



