「明日から、本当に現場に行くんだ…」
期待よりも不安が勝ってしまい、思わず同期で涙を流した4月のあの日。松山市の新人保育士として一歩を踏み出した彼女たちの背中には、常に温かな「眼差し」が注がれていました。
「せっかくの素敵な原石を失いたくない」と語るのは、現場と行政の架け橋を担う吉本課長です。松山市には、日々の悩みを相談できる「インストラクター制度」や、同期同士が本音で語り合える「座談会」など、一人ひとりを大切に育てる仕組みがしっかりと根付いています。
入庁から約1年が経ち、かつて涙を流した彼女たちの瞳には、今では確かな自信と子どもたちへの深い愛が宿っています。命を預かる責任の重さを噛み締めながらも、「毎日が楽しいです」と笑い合えるまでになった彼女たちの成長の軌跡を辿ります。そこには、松山市だからこそ実現できる、保育士としての理想のキャリアの形がありました。
- 憧れからプロの道へ。私たちが「松山市」を選んだ理由
- 「命を預かる」という重圧。理想と現実の間で流した涙
- 「一人じゃない」を実感する、松山市独自の手厚いサポート
- 小さな「できた」の積み重ね。1年で見違えた自分たちの姿
- 未来の仲間へ。一歩踏み出す勇気が、一生の仕事に繋がる
憧れからプロの道へ。私たちが「松山市」を選んだ理由
ーまずは、皆さんが保育士を目指されたきっかけについて教えてください。
吉本課長:私はちっちゃい頃からとにかく子どもが大好きでした。小学校の先生か保育園の先生か迷った時期もありましたが、より小さなお子さんと深く、丁寧に関わりたいという思いが強くなって、この道を選びました。
亀元:私は自分が年長だった時の担任の先生がすごく素敵で、ずっと憧れを抱いていました。大学で実習を重ねる中で「遊びの中でこそ子どもが学んでいく」という保育の面白さに魅了されたのが、最終的な決め手になりました。
大野本:私も親戚に小さい子が多かったこともあり、お世話をすることが日常の一部でした。憧れていた先生のようになりたいという夢を抱き、そのまま職業にしました。
石井:実は私、自分自身が松山市立の保育園に通っていたんです。そこで出会った先生が、私の苦手な部分もまるごと認めてくださって、それが6歳ながらに心に深く響いて、「私もこんな先生になりたい!」と心に決めたのがきっかけです。

ー数ある自治体の中で、なぜ「松山市」の公立保育園を選ばれたのでしょうか?
吉本課長:私はとにかく、一つの職場で長く働き続けたいと考えていました。松山市は福利厚生などの制度が非常に整っていますし、何より大好きな地元に戻ってきたいという気持ちが強かったですね。
石井:研修制度が充実していることが、私にとって大きな魅力でした。保育士だけでなく、事務職や保健師、消防の方と一緒に受ける研修もあり、多角的な視点が持てると思ったんです。
大野本:私は西予市の出身ですが、より規模の大きい自治体で、多くの価値観に触れながら自分を成長させたいと考えたため、松山市を選択しました。
亀元:松山は都会すぎず、でも生活に困ることがない絶妙なバランスがありますよね。学生時代を松山で過ごして、この街の心地よさに惹かれたことが大きかったです。

ー「公立園」だからこそ感じられるメリットはありますか?
石井:数年おきに「異動」があることは、とてもプラスだと思っています。いろいろな園を経験することで、自分の保育の引き出しを常に更新していけるのが楽しみです。
大野本:私もそう思います。一つのやり方に固執せず、多くの先生や子どもたちと出会うことで、着実に保育士としてのレベルアップができる環境だと感じています。
「命を預かる」という重圧。理想と現実の間で流した涙
ー実際に現場に出てみて、理想と現実のギャップを感じることはありましたか?
石井:憧れていた分、最初は戸惑うこともたくさんありました。子どもとの関わりだけでなく、保護者の方や上司との連携など、大人同士のコミュニケーションの重要性を痛感する毎日でした。
亀元:私はいい意味のギャップで、「周囲の温かさ」に驚きました。ある程度忙しいことを覚悟して入ったのですが、現実は思った以上に忙しかったり悩みも多く…。そんな時、周囲の先輩方にずっと見守っていただき、1人で抱え込んでしまうようなことなく、ここまでなんとかやってこれました。
大野本:私は、子どもに会える保育士という仕事の幸せを毎日実感しているのですが、実習では見えていなかった「事務作業の緻密さ」には、最初は正直驚かされました。
ー最初の頃は、不安に思うことも多かったのではないでしょうか?
大野本:やはり、食物アレルギーの対応や未摂取食材のチェックといった安全管理については、とても不安が大きかったですね。一歩間違えれば大変なことになりますので、毎日が真剣勝負です。
石井:本当にその通りですね。4月頃は「命を預かる」という責任の重さがどっしり肩に乗ってきて、給食を出す際にも手が震えるような感覚がありました。
吉本課長:みんな、最初は同じ道を通るんですよ。特に松山市の新任職員は責任感が強い子が多いと思っています。4月の研修を終え、いよいよそれぞれの園に配属されるという時期に同期同士集まる機会を設けたのですが、半分くらいの子が不安で泣いてしまったんですよ。
ー4月の「涙」について、皆さんも覚えていますか?
亀元:鮮明に覚えています(笑)「明日から本当に一人でクラスに入るんだ」と思うと、もう不安しかありませんでした。同期のみんなと顔を合わせた瞬間、急に涙が溢れてしまいました。
石井:私も「自分に大役が務まるんだろうか」という不安でいっぱいでした。でも、あの場にいたみんなと一緒に泣けたことで、少しだけ心が軽くなったのを覚えています。
「一人じゃない」を実感する、松山市独自の手厚いサポート
ー吉本課長は、そんな新人の皆さんの姿を見てどのように感じられましたか?
吉本課長:泣いている彼女たちを見て、「この素敵な原石たちを絶対に失いたくない」と強く思いました。現場の厳しさで心が折れてしまう前に、行政の立場からも、私たちがしっかりと支えなければいけないと決意した瞬間でしたね。
ー具体的にどのようなフォローアップを行っているのでしょうか?
吉本課長:まずは5月末に「第1回座談会」を開催しました。これは形式的な研修ではなく、あくまで「息抜き」をしてもらうための場です。本音を吐き出してもらうことを一番の目的にしました。
石井:あの座談会には本当に救われました。私はもともと弱音を吐くのが苦手な性格なのですが、同期が「実は私も…」と話してくれたことで、「あ、私も自分の気持ちを言っていいんだ」と、溜まっていた思いをはきだすことができました。
亀元:「不安を感じているのは私だけじゃない」と知るだけで、明日からまた頑張ろうという勇気が湧いてきました。吉本課長が優しく話を聞いてくださったのも、大きな心の支えになりました。
また、私はインストラクター制度にもとても救われたと思っています。
ー「インストラクター制度」とはどのようなものなのでしょうか?
亀元:年齢の近い先輩がインストラクターとしてついてくださる制度です。何でもすぐに相談できるという点が心強いです。3ヶ月ごとに一緒に目標を振り返る時間があり、着実に一歩ずつ進んでいる実感が持てます。
大野本:園長先生との年2回の面談も非常にありがたいです。現場の悩みだけでなく、私自身のキャリアについても親身になって考えてくださいます。
吉本課長:市役所の保健師との面談もありますし、全方位で皆さんを見守る体制を整えています。私たちは、皆さんが笑顔でいてくれることが何より大切だと思っているんです。
小さな「できた」の積み重ね。1年で見違えた自分たちの姿
ーつい先日、第2回目の座談会も開催したと伺ったのですが、1回目との違いはありましたか?
吉本課長:驚くほど雰囲気が違っていました。今回は泣いている子は一人もいませんでした(笑)
みんな、自分の言葉でしっかりと現場の状況を報告してくれて、その瞳にはそれぞれ力強さが宿っていました。
大野本:2回目は「自分ができるようになったこと」を共有する時間でした。自分では気づかなかった成長を同期が認めてくれたりして、「私、この1年頑張れたんだな」と自信にも繋がりました。
亀元:1年前は目の前のことをこなすだけで精一杯でしたが、今は「次はこれをしてみよう」と、少しずつ先を見通して動けるようになったと感じています。
ーそんな成長を感じた日々の中で、特に喜びを感じるのはどのような瞬間ですか?
石井:子どもが初めて歩いた瞬間や、新しい言葉を話した瞬間に立ち会えるのは、この仕事だけの特権だと思っています。「先生!」と笑顔で駆け寄ってきてくれる姿を見ると、どんな疲れも吹き飛んでしまいますね。
大野本:保護者の方から「大野本先生が担当でよかったです」と言っていただけた時は、本当に嬉しかったです。自分自身を本当の意味で「先生」と認めてもらえたような気がして、胸がいっぱいになりました。
亀元:毎日子どもたちと一緒に大笑いできること自体が幸せです。行事の時に、ベテランの先生たちが全力で仮装して楽しんだりする松山市のオープンな雰囲気、私は大好きなんです(笑)
未来の仲間へ。一歩踏み出す勇気が、一生の仕事に繋がる
ー働きやすさや、ワークライフバランスについてはいかがですか?
吉本課長:休暇制度はもちろんですが、福利厚生も非常に充実していて、職員の健康管理や余暇の充実を支援するために、多様なメニューが用意されています。
オンとオフをしっかり切り替えて働けるのが、公務員として働く良さの一つですね。
石井:定時で帰れる日も多いですし、休日には同期と松山のカフェ巡りをして、しっかりリフレッシュしてい
ます。
ー最後に、これから保育士を目指そうと考えている方へメッセージをお願いします!
吉本課長:保育に対して前向きな気持ちがある方なら、私たちは全力で歓迎します。公務員試験というハードルはあるかもしれませんが、それを超えた先には、あなたを温かく迎える仲間と、可愛い子どもたちが待っています!
亀元:不安を感じるのは当たり前のことです。でも、松山市にはその不安を一緒に背負ってくれる先輩が必ずいます。安心して私たちの輪の中に飛び込んできてほしいです。
大野本:保育士の仕事は、毎日が驚きと感動の連続です。子どもたちの成長を一番近くで見守れるこの幸せを、ぜひ皆さんと一緒に味わいたいと思っています!
石井:自分が育ったこの街で、今度は自分が子どもたちの笑顔を作っていく、そんな素敵な経験が、あなたを待っています。
一緒に働ける日を楽しみにしています!

ー本日はありがとうございました。
「4月の頃はみんなで泣いたんです」と笑いながら語る皆さんの瞳は、1年という月日が育んだ確かな強さに満ちていました。今回の取材を通じて感じたのは、新人保育士を単なる「即戦力」として考えるのではなく、大切に磨くべき「原石」として育てる松山市の組織文化です。吉本専任課長の親心のような深い愛情と、それに応えるように成長した3人の新人保育士さんたち。命を預かるという厳しい現実があるからこそ、支え合う仲間の存在が何よりも尊いものになります。そんな当たり前で、けれど一番大切なことを、若手保育士の皆さんに教えていただいたような気がします。
取材・文:パブリックコネクト編集部(2026年2月取材)



