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「一歩抜け出した存在であれ」—40年の絆から語る、地域に愛され、信頼される松山市職員の姿

松山市役所

2026/05/21

「生まれも育ちも松山。この街が、私の誇りです」—そう語るのは、昭和61年から約40年という長きにわたり、松山市のスポーツ推進の現場を支え続けてきた加藤さん。

加藤さんは、市から委嘱される「スポーツ推進委員」として、また堀江公民館の館長補佐として、常に市職員の「最も近いパートナー」であり、時に「厳しい外部の目」として、二人三脚で歩んできました。

現場で汗を流し、地域住民のリアルな感情に触れ続けてきた加藤さんの目には、松山市役所の職員はどう映っているのか。そして、これからの松山を担う若手職員に求められる「覚悟」と「醍醐味」とは。外部の視点だからこそ見える、信頼される公務員の条件を伺いました。

 


「スポーツであれば…」から始まった40年。地域への恩返し

ー加藤さんは昭和61年から現在の活動をされているとのことですが、そもそも始めたきっかけは何だったのでしょうか?

 

加藤:37歳の時でした。もともとは地元・堀江地区の体育協会の役員をしていたのですが、当時の公民館長から「松山市全体の活動にも携わってほしい」と声をかけられたのが始まりです。

 

私は根っからの高校球児でしてね、「自分はスポーツ以外では、人様に貢献できるようなことがない人間だ」と思っていました。なので、スポーツを通して人の役に立てるのならと、これも何かの縁かと思い引き受けたんです。

 

ー40年という歳月、松山市のスポーツの変遷を最前線で見守ってこられたのですね。

 

加藤:そうですね。松山市スポーツ推進委員協議会の会長も務めてきましたが、昔と今ではスポーツのあり方が大きく変わりました。以前は地区対抗で勝ちにいく「競技スポーツ」が主流でしたが、今は「誰もが楽しめる参加型」を好む方も増えてきています。

 

それを受け止める我々スポーツ推進委員も、昔は「自分がルールを決めるんだ」という強気なタイプが多かったですが、今は住民に寄り添うタイプが増えました。これは、共に歩む市職員の気質の変化とも関係しているのかもしれませんね。

「ボランティア」と「仕事」。立場を越えて一つのチームになる

ー市職員の方々と一緒にイベントを企画・運営する際、どのような関係性を意識されていますか。

 

加藤:市内41地区、それぞれに年間行事があります。基本は市がスケジュールを組み、我々スポーツ推進委員が現場を動かすようなイメージです。

 

ここで大切なのは、スポーツ推進委員はあくまで「ボランティア」の側面が強い一方で、市職員は「仕事」であるという立場の違いを、お互いが尊重し合うことです。

 

ーボランティアと仕事、互いの想いがずれてしまうこともありそうですね。

 

加藤:そのとおりです。どちらかが一方的に主張しすぎては、地域の皆さんが混乱してしまいます。私の場合は、市の大きな方針を汲みつつ、現場である地域の状況に合わせて調整役に徹します。

 

例えば、会議で41地区の代表が市に対して、それぞれの要望をぶつけてくることがあります。我々が要望の内容を調整したり、事前に市の担当職員と打ち合わせをして、市の担当職員と一緒になって対応しています。この「阿吽の呼吸」があるからこそ、数千人規模の大会も大きなトラブルなく、市民の皆さんに楽しんでもらえるんです。

 

市職員は、我々にとって単なる「行政の担当者」ではなく、同じ目標を持つ「仲間」なんです。これは市職員からしても同じだと思っています。

 

時代の荒波を共に乗り越える。「何を守るのか」苦渋の決断

ーこの数年はコロナ禍や猛暑など、運営側も非常に難しい判断を迫られたのではないでしょうか。

 

加藤:本当にそのとおりです。特に最近は「熱中症対策」を最優先事項として考えるようになりましたね。

 

以前、7月に開催していた高齢者が多く参加するスポーツ大会で、参加者が体調を崩されたことがあったんです。ある地区の方から「猛暑の中、高齢者向けの大会をやる必要があるのか」と非常に厳しい言葉をいただきました。

 

昔から同じ時期に開催していたので、私も含め、地域の人たちも「7月の恒例行事」のように考えていたため、どうしたものかとなってしまいますよね。

 

ーそれは、現場としても胸が痛む言葉ですね。

 

加藤:ええ。ですが、よく考えてみればこれは当然の指摘なんです。すぐに市に「日程を変えよう」と提案しました。

 

しかし、長年パターン化された行事を動かすのは、参加団体の都合も考慮しなければならずとても大変です。それでも、担当職員はアンケートを取ったり、粘り強く交渉したりして、2〜3年かけて調整を続けてくれました。

 

最終的には「命を守ることが最優先」という参加団体の共通認識を醸成することができ、無事に大会の開催時期を変更することができました。

 

こうした困難な調整をいとわず、「市民のため」と汗をかいてくれる職員の姿を見ると、「この人たちのためにも、我々も頑張ろう」と強く思いますね。

 

市民は「一歩抜け出した判断力」を求めている

ー長年、協力する立場で接してこられた加藤さんの目に、松山市の職員はどう映っていますか?

 

加藤:昔に比べて、非常に「親しみやすい存在」になったと感じています。以前の職員はスーツにネクタイが当たり前で、どこか「お役所」という敷居の高さや、とっつきにくさがありました。

 

しかし今はクールビズなども浸透し、カジュアルな服装で現場に来る職員も増えましたね。そして何より、身なりだけでなく、物腰も柔らかく、市民と同じ目線で対話しようとする姿勢が強まっていると感じます。

これは市民との距離を縮めるという意味で、とても良い変化だと思っています。

 

ー親しみやすさはとても大切なポイントですね。一方で、こうあって欲しいと思われる点もありますか?

 

加藤:そうですね。今お話しした内容を否定するように聞こえてしまうかもしれませんが、親しみやすくなった反面、時と場所に応じた「毅然とした態度」や「プロとしての風格」を忘れないでほしいという思いはあります。

 

大きな式典や県の総会など、礼節をわきまえるべき場所で、親しみやすさばかり先行してしまっては、「公務員としてどうなのかな」と首をかしげる古い人間も、地域には少なからずいます。

 

地域の方は、思っている以上に「松山市の職員」という看板を見ているものです。見た目はカジュアルでも、中身は誰よりもルールやマナーを率先して守り、いざという時に「この人に聞けば間違いない」という安心感を与えてくれる。そんな「プロフェッショナル」であってほしい、というのが我々の本音です。

 

ー多くの職員と関わってきた加藤さんから見て、特に「頼りになる」と感じる職員像を教えてください。

 

加藤:やはり、リーダーシップがあって決断が早い職員ですね。我々スポーツ推進委員は約140名もいます。

意見が割れた時に、回答を濁したり「持ち帰って検討します」と上司の顔色を伺ってばかりだと、現場の熱量は一気に冷めてしまいます。

 

ー若手職員の場合、知識や経験で加藤さんたちに及ばず、中々判断がつかないこともあるのではないでしょうか?

 

加藤:もちろん、異動したての職員より、我々の方が地域のことに詳しいのは当たり前です。でも、知識の差は関係ありません。たとえ若くても、「私はこう思う。だからこうしましょう」と言い切れる、一歩抜け出した判断力を持つ人は、我々からも信頼されます。

 

最近の職員さんは優しくて物腰も柔らかいですが、いざという時に「公務員として毅然とした態度」で方向性を示してくれる。そんな頼もしさについても、これからの若い職員の皆さんには期待したいですね。

「松山が好き」という想いがあれば、市役所は最高のフィールドに

ー最後に、これから松山市役所を目指す方や、街づくりに興味がある方へメッセージをお願いします。

 

加藤:松山は四国最大の都市でありながら、瀬戸内海に面し、温暖で本当に住みやすい街です。私の妻は愛媛県内の南予地方の山間部から出て来ましたが、「こんなに良い街はない」と惚れ込んでいます。

 

私は県外の会議でも必ず「松山市の加藤です。」と誇りを持って自己紹介します。

 

松山市の職員になるということは、この大好きな街を、自分の手で直接良くしていく「特権」を持つということです。一筋縄ではいかない課題も多いですが、誠実に、そして前向きにチャレンジできる人なら、我々市民は全力でバックアップします。

 

皆さんと一緒に、ワイワイ言いながら新しい松山を作っていける日を楽しみにしています。

ー本日はありがとうございました。

 

「自分はスポーツ以外貢献できることが無い」そう謙遜しながらも、地域のために40年を捧げてきた加藤さんの言葉には、とても説得力がありました。

加藤さんが求める「一歩抜け出した職員」という言葉。それは、単に事務をこなすのではなく、市民の命や喜びを背負う「覚悟」を持ってほしいという、愛あるエールなのだと感じました。行政という枠組みを超え、地域の方から「あなたに任せた」と言ってもらえる、松山市役所で働く本当の価値は、こうした「人との深い信頼関係」の中にこそあるのだと、改めて考えさせられるような取材でした。

 

取材・文:パブリックコネクト編集部(2026年3月取材)

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