広島県大竹市役所で働く辻さんのインタビュー記事です。大学で建築を学び、家族の姿から公務員の働き方に惹かれ入庁。県庁への出向を経て気づいた大竹市の「風通しの良さ」や、設計から工事まで一人で完結させるからこそ得られる達成感について伺いました。
- 家族の姿から公務員へ。現場未経験でのスタートと苦悩
- 広島県庁への出向。巨大組織で学んだ「合意形成」の大切さ
- 顔が見える距離感と温かい仲間たち。大竹市役所の魅力
- 分業しない大竹市だからこそ。設計から完成まで見届ける「大竹会館」の達成感
家族の姿から公務員へ。現場未経験でのスタートと苦悩
ーまずは簡単な自己紹介と、大竹市役所に入庁した経緯を教えてください。
辻: 平成29年度に入庁し、現在9年目になります。入庁から最初の5年間は都市計画課の建築住宅係で営繕の仕事をして、その後2年間、広島県庁の都市計画課へ出向しました。大竹市に戻ってきてからは再び都市計画課の同じ係で建築技術職として働いています。
ーなぜ公務員を選んだんですか?
辻:父親が自衛隊で姉が市役所勤めという公務員一家だったことが大きいです。土日もしっかり家にいて、帰ってくるのも早い家族の姿を見て育ったので、「将来家族を持つなら、こういう時間を作りやすい仕事が良いな」と自然と考えるようになりました。
ー入庁後、最初に配属された都市計画課ではどのようなお仕事をされたのでしょうか?
辻: 市役所が所有する建物、例えば図書館や公民館などの改修工事や新築工事を担当する「営繕」の仕事です。設計業者さんと協力しながら図面を描いたり、工事にかかる予算を弾き出したりして、工事を発注し監督していくのが主な業務になります。
年度の初めに「今年はどの施設を改修する」といった計画が決まっており、年間で設計と工事を合わせて10〜15本ほどの案件を並行して進めていきます。
ー学生時代から現場に出ていたわけではない中で、最初から工事の監督をするのは大変ではなかったですか?
辻: それは本当に大変でした。大学から直接市役所に入ったので、最初は現場の用語が全く分からなかったんです。業者さんが何を作ろうとしているのか、この工事にどの工程が必要で何が不要なのかが判断できず、すごく苦労しました。 でも、分からないなりに現場で職人さんに教えてもらったり、先輩に質問したりしながら、少しずつ知識を身につけていきました。
広島県庁への出向。巨大組織で学んだ「合意形成」の大切さ
ー入庁から5年後、広島県庁へ出向されたとのことですが、これは希望して行かれたのですか?
辻: いえ、大竹市では若手の技術職が順番に県庁へ2〜3年出向するという流れがありまして、私の順番が回ってきたという感じです(笑)。 配属先は県庁の「都市計画課」でした。名前は同じですが、大竹市の営繕業務とは全く異なり、大規模な都市計画道路の決定に伴う協議の整理や、市町が使う補助金の県窓口として国へ報告するといった、より広域でスケールの大きな仕事でした。
ー規模の大きな県庁での仕事はいかがでしたか?
辻: 最初は本当に訳が分からなかったですね。大竹市だと10年に1回あるかないかというような大きな都市計画の決定が、県庁では毎年いくつも動いているんです。
500ページもあるような手引きを読み解きながら、経験豊富な県職員の方に聞いてなんとか進めていきました。 ただ、一番痛感したのは組織の大きさゆえの難しさです。自分が「こう進めたい」と思っても、上司やさらにその上の部長へと説明していく中で、ひっくり返ってゼロに戻ってしまうことも少なくありませんでした。
ー大竹市とは進め方が違ったのですね。
辻: 県庁では、事前にしっかりと関係各所と話をして、念入りに合意形成を得てからでないと物事が進まないということを身をもって学びました。 大竹市に戻ってきてからは、自分一人で悩んで抱え込むのではなく、少しでも迷ったら「こうしようと思うのですが」と、早めに上司に相談して共有するようになりました。巨大な組織で揉まれた経験は、今の仕事の進め方において非常に役立っていると思います。

顔が見える距離感と温かい仲間たち。大竹市役所の魅力
ー県庁を経験したことで、大竹市役所の良さに改めて気づくことはありましたか?
辻: 大竹市役所の「風通しの良さ」と「スピード感」を強く実感しました。大竹市は組織の階層が深くないので、課長や部長にもすぐに直接話に行けるんです。そのため、方針がパッと決まりますし、上司の思いがすぐに仕事に反映されるので、非常に仕事がしやすいと感じています。
ー職場の雰囲気や人間関係についてはいかがですか?
辻: 大竹市は規模が小さいため、他の部署の職員の顔と名前がだいたい分かります。そのため、何か協議に行く際も「初めまして」から入る必要がなく、すごくスムーズに仕事が進みます。 そして何より、職員同士が本当に仲が良いですね。同じ建設部のみんなでキャンプをしたり、レクリエーションで競艇に行ったりもします。組合の青年部でも、休暇制度の学習会の後にみんなでニュースポーツであるモルックをして交流を深めたりと、部署や職種の垣根を越えた繋がりが強いです。
ーそれはとても楽しそうですね!
辻: ただ、そうした交流が強制的ではないのが大竹市の良いところだと思います。県庁時代は組織が大きい分、上の人の意向で飲み会のセッティングをしなければならないような空気を感じることもありましたが、大竹市にはそういった気遣いは不要です。「仕事は仕事としてきっちりやるけれど、プライベートで嫌なら無理して付き合わなくてもいいよ」というサッパリとした温かい空気があるので、とても居心地が良いですね。
分業しない大竹市だからこそ。設計から完成まで見届ける「大竹会館」の達成感
ー建築技術職としての「やりがい」はどのような時に感じますか?
辻: やはり、自分が携わった仕事が「建物」として目に見える形でずっと残っていくことですね。紙の中だけで終わる仕事ではなく、使う人のことを考えながら、どんなデザインや大きさにしようかと頭を悩ませて形にしていく過程は、建築職ならではの面白さです。
ーこれまでで一番印象に残っている建物は何ですか?
辻: 入庁2年目で設計から担当し、令和2年に完成した「大竹会館」という新しい施設です。10数億円規模の大きな新築工事で、完成まで約3年かかりました。右も左も分からない時期だったので手探りでしたが、最初から最後までメインで担当できたことは非常に大きな経験になりました。今ならもっとうまくやれるのに、と思う部分もありますが、完成した建物を見た時の達成感は今でも忘れられません。
ー大規模な施設を丸ごと担当できるのは、大竹市ならではの魅力ですね。
辻: そうなんです。県や政令指定都市などの大きな自治体だと、同じ建築技術職でも「意匠(建築)」「電気」「機械」と細かく担当が分業されています。 しかし、大竹市ではそれらが分かれていないため、本来3人でやるようなところを一人で全部見なければなりません。もちろん知識の幅が必要で大変な部分もありますが、その分「建物の全てを分かって、自分が一人でやり遂げた」という圧倒的な満足感を得ることができます。これは、規模の小さな大竹市だからこそ味わえる醍醐味だと思います。
ー残業やお休みなどの働きやすさについてはいかがですか?
辻:月平均20時間弱です。予算要求の時期である11月や、工期の終わりを迎える2〜3月、そして新たな工事を発注する4〜5月あたりは忙しくなりますが、それ以外の時期は比較的落ち着いており、メリハリをつけて働くことができています。
ー最後に、これから大竹市役所を受験しようと考えている方へメッセージをお願いします。
辻: 大竹市は今、まちが新しく生まれ変わろうとしている非常に面白い時期にあります。最近では「下瀬美術館」がオープンしたり、大竹駅が綺麗にリニューアルされたりしました。さらに今後は、道の駅や市役所近くの新駅の構想も出てきています。 こうした新しい施設ができれば、私たち建築技術職の仕事もさらにダイナミックになり、活躍の場が広がっていくはずです。
職員たちも仲が良いですし、「自分の手でまちの景色を変えてみたい」「最初から最後まで建物づくりを見届けたい」という方は、ぜひ大竹市役所に来てください!

ー本日はありがとうございました。
取材・文:パブリックコネクト編集部(2026年3月取材)
「最初から最後まで建物の全てを分かって、一人でやり遂げる達成感」。辻さんの言葉には、大竹市ならではの建築技術職の奥深い魅力が詰まっていました。



