南丹市役所の土木建築部の営繕課で働く森本 健太(もりもと けんた)さんに、これまでの経歴や仕事と職場環境についてお話を伺いました。
—これまでのご経歴を教えてください。
森本:出身である京都市の高校を卒業後、南丹市の建築学校に通い、在学中に建築士の資格を取得。その後、地元に近い長岡京市にある木材を取り扱う内装関係の会社へ設計士として就職し、約3年間スキルを磨きました。
更にスキルアップを目指して、主に金属を取り扱う会社へ転職し7年間ほど勤務し、同じように設計を担当しながら、民間の仕事の他に公共施設の設計も行っていました。そこで初めて市役所で活躍されている「建築士」がいることを知りました。
—公務員の技術職になろうと思った理由は?
森本:コロナ禍真っ只中の頃、会社の給料が上下する状況が何年か続いたため、今後の生活を考慮し転職を考えました。安定という意味も含め、公務員として転職を考えたタイミングで自身が建築士を目指し4年間建築を学んだ地域で建築技師の募集があり、何かのご縁を感じました。
別の市でも建築技師の募集があったのですが、南丹市の雰囲気が自然豊かで好きだったことや、前の会社で南丹市の仕事に携わる機会が多々あり、違う視点から市に対して何かできることがないかなと思っていたため南丹市を選びました。
—現在の所属部署について教えてください。
森本:令和3年4月に入庁し、土木建築部の営繕課に配属となりました。土木建築部は他にも道路河川課、都市計画課の3課で構成されています。営繕課では、主に市営住宅を含めた公共施設の管理や、他の課が抱えている建築工事を請け負ったり、工事の発注をする業務をしています。
また営繕課には、主に市営住宅関係を取り扱う住宅係と、私が所属している公共施設整備係の2係があります。課長含め計9名体制となっており、うち建築技師が4名在籍しています。
—仕事はどのように進めているのでしょうか?
森本:基本的には公共施設を保有する課の依頼により、営繕課にてヒアリングをおこなった後、メイン・サブの2人体制で業務を進めます。
今年度は大きな修繕関係をメインで2件、サブを3件ほど担当。原則は年度内の工事になるので、年間を通して、これらの計画や進捗を考えながら工事全体を管理しています。
市の工事案件では業者の方とやり取りする上で、互いにトラブルを避けるため、単独での対応はしていません。主担当となる主任監督員が動く立場となり、工事業者の方とお話をしたり、契約金額に影響する工事内容の変更が出てきた場合は、その内容について協議をします。
また、依頼を受けている担当課とのやり取りも、全て主担当が行います。副担当は、主担当が別件や急用で不在の場合などに補助をおこなう、サポート的な役回りとなります。
—仕事のやり方は民間の頃と違いますか?
森本:全然違います。前の会社では営業の方が工事案件を取ってきた後は、現地調査を含め、計画から工事の管理まで全部自分1人でしていました。極端な話ですが、社長のOKさえあればお金のこと(契約内容など)も全て自分で決めていました。現在は、他の職員や係長に繋いで、課長の決裁を取ってという順序が必ずあります。
工事現場では、状況により即断即決が必要なことが多々あり、民間工事では費用負担などお金のことは後回しになる場合もありました。しかし、公共工事は公費を使用している以上、そういうわけにはいきません。内容を精査し、費用を含めて妥当か判断する必要があります。現場の進捗に大きく関わるので戸惑いはありましたが、今は公務員として働く上で必ず必要なことと理解し、特に報告・連絡・相談は徹底しています。上司の判断が必要な場合は、自身の中で整理し、直ぐに報告するよう心がけています。
—設計の仕事のやり方も民間の頃と違いますか?
森本:設計業務の中身については、大きくは変わりません。ただ市が発注する工事になるので、金額の根拠を全て示さなければならないところが難しいかなと思います。何をするにしても根拠を求められますので、金額とか予算のことについてはかなり慎重に進めていく必要があります。その辺りは難しくて、今でもまだまだ勉強中です。
また、設計は完全に外部へ業務委託しており、成果品として提出された設計図書を営繕課の担当者が確認をしてから工事を発注します。民間ではまっさらの図面に一から自分が設計し図面を作成していたのでそこは大きく違うところでしょうか。
—技師としての面白味はどのようなものがありますか?
森本:市の公共施設の工事は、民間ではできません。公民館や学校など公共施設の修繕や新築工事の完了後に、地域住民の方や学校の関係者の方など、特に学校の生徒さんから「綺麗になってる、ありがとう」の感謝の声が直接聞けるのは、市の建築技師としてはものすごくやりがいを感じます。
やはり公共施設は公務員でしか取り扱えないので、その地域の住民であったり市民のために直接働けるっていうところが、公務員の建築技師としてのやりがいだと思います。
—職場の雰囲気はどうですか?
森本:年齢層でいえば、60代の方から大学出たての20代職員までと幅広い層がいるのですが、職場の風通しはかなり良い方ではないでしょうか。空いた時間はみんなで和気あいあいと、上司部下関係なく雑談も含めて話したりも結構多いです。上の方も、若手職員のことをよく見てくださっていて働きやすい環境だと感じます。
—入庁してからの教育体制は?
森本:1年間、建築技師の先輩についていただき、1から10まで丁寧に教えてくださいました。その中で小規模の修繕工事を発注から最後完成まで担当として受け持ち、業務を進めながら学んでいきました。
自分が主担当となった工事については指導員の方が副担当として入ってくださったので、基本的なところから全て教えていただきました。
—他の課との交流は?
森本:仕事上でのやり取りや連携で、やりにくいと感じることはないです。皆さん、色々なスポーツであったり飲み会であったり、交流は結構多い方だと思います。私も市役所の野球部に入っていて、普段の仕事では交流のない人と話せる良い機会でもありますね。
—勤務時間やお休みについて教えてください。
森本:勤務時間は8時半から17時15分までです。基本的には定時で帰れていますが、工事発注前や工事完了前後の精算時は残業はあります。長時間の残業とならないよう、日々のスケジュールを管理し、効率よく時間を決めてやるようにしています。
繁忙期は、工事発注時期の年度初め4月5月6月と、工事の規模にもよりますが工事完了が重なる12月から3月末までにかけての期間です。
土日祝は休みですが、工事によって市の立会いが必要な場合に、年何回かの休日出勤はあります。
—転職して良かったなと思う点は?
森本:転職前のイメージでは、公務員として働く人は堅苦しい人が多くて、1年ずっと机に向き合って仕事をしているのかなと思っていました。入ってみると、そういうことは全然なく、民間と職場の空気感は変わりませんでした。
自身は職種上、逆に現場対応の方が多いぐらいですし、1日のほとんどが席に着いていないという状況も、時にはあります。
また、様々な知識も豊富に必要になってくる場合があるので、日々勉強でやりがいという部分での面白さを今感じています。
—今後、やっていきたい仕事はありますか?
森本:社会人になってから建築関係しか携わっていませんが、役所内には他のジャンルで活躍されている技師さんもいます。例えば、道路河川課の土木技師というジャンルであったり、水道部局の水道技師や農林関係の方では農業土木という仕事など、いろいろな仕事があります。
この先、様々な技術職員と関わりながら、多方面より知識を集め、スキルアップをしていきたいです。
また、建築といっても電気設備や機械設備も含まれています。まだまだ学ぶことがたくさんあります。これからも公共建築工事の勉強を重ね、建築技師としての知識を最大限活かし、公共建築工事を通して南丹市へ貢献したいと思います。
—本日はありがとうございました。