広島県府中町役場で保健師として働く成瀬さんのインタビュー記事です。大学卒業後すぐに入庁し、複数の部署を経験。現在は自身の子育て経験を活かし、町の子育て支援に奮闘しています。異動はまるで転職のようだったと語る成瀬さん。府中町の保健師として働く魅力や、仕事のやりがい、充実したワークライフバランスについて、詳しくお話を伺いました。
- きっかけは看護実習での気づき。病気になる前の「予防」で地域に貢献したい。
- まるで転職のよう。多彩な業務でスキルを磨く保健師の仕事。
- 「来てくれてありがとう」の一言が原動力。自身の経験が、母親たちの安心に変わる瞬間。
- 手厚い子育て支援と、住民の活気。コンパクトな町だからできる、温かい繋がり。
- マンツーマンの育成制度と、助け合う風土。子育てと両立できる、安心のワークライフバランス。
きっかけは看護実習での気づき。病気になる前の「予防」で地域に貢献したい。
ー成瀬さんのこれまでのご経歴について教えていただけますか?
成瀬:大学卒業後、平成31年度に新卒で府中町役場に入庁し、健康推進課に配属されました。そこで数年勤務し、1年間の育児休業を取得した後、今年度から子育て支援課で勤務しています。
ーもともと保健師を目指していらっしゃったのですか?
成瀬:大学の看護実習がきっかけです。実習で生活習慣病が重症化して入院されている方を多く見てきました。皆さんから「もっと早く健康に気を付けていれば」という後悔の言葉を聞くうちに、病気になる前の「予防」がとても重要だと感じるようになったんです。
病気になってからではなく、地域で暮らす人々が健康であり続けるためのお手伝いがしたい。そういった思いから、地域に貢献できる保健師という仕事を志望しました。
ーなぜ府中町役場を選ばれたのでしょうか?
成瀬:府中町は広島市に隣接していて交通の便も良く、私自身もよく訪れる馴染みのある場所でした。調べていくうちに、コンパクトな町の中に子育て支援施設やショッピングモール、水分峡といった自然を感じられる場所などがギュッと集約されている点にすごく魅力を感じたんです。
まるで転職のよう。多彩な業務でスキルを磨く保健師の仕事。
ー入庁後、最初はどのようなお仕事をされていたのですか?
成瀬:最初の配属先は健康推進課で、住民ボランティアの方々とウォーキングなどの健康づくりイベントを企画したり、検診や予防接種の事業を担当したりしていました。社会人経験が全くなかったので、最初は電話応対から先輩に教わるような状態でしたが、周りの方々の温かいサポートのおかげで、少しずつ慣れていくことができました。
ーその後、育休を挟んで子育て支援課へ異動されたのですね。
成瀬:はい。健康推進課から子育て支援課への異動だったので、仕事内容も対象者も全く異なり、本当に転職したような気分でした。今は母子手帳の交付や、赤ちゃんが生まれたご家庭への訪問、健診での保健相談などを担当しています。府中町では「地区担当制」をとっており、担当地区の妊娠期から子育て期まで、切れ目なくサポートしていくのが役割です。
ー部署が変わると仕事内容も大きく変わるのですね。
成瀬:そうですね。異動の内示から実際の異動までが短期間なので、引継ぎは大変です。自分の仕事を引き継ぎながら、新しい業務も覚えなければなりません。後任の人が困らないように、1年間の業務の流れを誰が見ても分かるように資料化しておくことを常に心がけています。
「来てくれてありがとう」の一言が原動力。自身の経験が、母親たちの安心に変わる瞬間。
ーこれまでで特にやりがいを感じたエピソードがあれば教えてください。
成瀬:今担当している赤ちゃん訪問での出来事です。訪問したお母さんから、「普段、赤ちゃんと二人きりで大人と話す機会がないから、今日こうして来てくれて、話を聞いてもらえて本当に嬉しかった」という言葉をいただいたんです。産後、孤立したように感じてしまうお母さんは少なくありません。そんなお母さんの心に少しでも寄り添い、助けになることができたのかなと思えた瞬間、この仕事をしていて本当に良かったと、大きなやりがいを感じました。
ーご自身の出産・子育ての経験が、今のお仕事に活きていると感じることはありますか?
成瀬:すごくあります。今、私も2歳の子どもを育てている真っ最中なので、お母さんたちの悩みや不安が、自分のことのように理解できるんです。教科書的な知識だけでなく、自身のリアルな経験をもとにお話しすることができます。
同じ母親としての目線で共感し、寄り添えることは、今の私ならではの強みだと感じていますし、それがお母さんたちの安心に繋がれば嬉しいです。
手厚い子育て支援と、住民の活気。コンパクトな町だからできる、温かい繋がり。
ー府中町の保健師として働く中で、感じる魅力はありますか?
成瀬:まず、府中町はコンパクトな町なので、町全体の状況を把握しやすいという特徴があります。保健師間で「この地区にはこういう支援が必要な方がいる」といった情報を密に共有できるので、住民の方一人ひとりに目が行き届きやすく、手厚いサポートに繋がりやすいと感じますね。
ー子育て支援が充実しているというお話もありましたが、具体的に教えていただけますか?
成瀬:例えば、出産前から電話で相談に乗る「産前コール」や、産後2週と4週のタイミングで様子をお伺いする「産後コール」があります。
また、近隣市町では実施していない9か月児を対象とした「赤ちゃん広場」も開催しており、切れ目のないサポート体制が整っています。気軽に相談できる機会が多いのは、お母さんたちの安心に繋がると思います。
ー働いてみて気づいた、府中町の他の魅力はありますか?
成瀬:地域住民の方々の活動がとても活発で、協力的な方が多いことです。「府中町運動普及推進協議会」のように、ボランティアで地域を盛り上げるためにイベントを企画・運営してくださる団体がいくつもあるんです。入庁して、実際に地域の方々と関わる中で知った、府中町の素晴らしい魅力の一つです。
マンツーマンの育成制度と、助け合う風土。子育てと両立できる、安心のワークライフバランス。
ー後輩の育成にも関わっていらっしゃると伺いました。
成瀬:はい、昨年度は「育成担当職員」として、新しく入ってきた後輩のサポートを担当しました。府中町には、新入職員一人ひとりに先輩職員が一人ついてマンツーマンで指導する制度があるんです。教える立場になってみて、改めて自分自身の知識を再確認することも多く、後輩と一緒に自分も成長させてもらった貴重な経験でした。
ー職場の雰囲気はいかがですか?
成瀬:今の部署も以前の部署も、職場の雰囲気はすごく良いです。異動したばかりで分からないことだらけの私からの質問にも、皆さん嫌な顔一つせず、優しく答えてくださいます。「このケースはどう対応しようか」と一緒に考えてくれる先輩ばかりで、本当に心強いです。

ー最後に、ワークライフバランスについてお伺いします。子育てをしながらの働き方はいかがですか?
成瀬:ワークライフバランスは非常に取りやすい環境だと感じています。子どもは急に熱を出したりしますが、そういった時にも看護休暇を気兼ねなく取ることができます。周りの職員も子育てに理解のある方ばかりで、温かい雰囲気の中で休ませてもらっています。私自身は保育園のお迎えがあるので、基本的には定時で退勤できるよう、常にスケジュールを管理しています。仕事と子育てを両立しやすい、とても働きやすい職場だと思います。
ー本日はありがとうございました。
取材・文:パブリックコネクト編集部(2025年7月取材)