府中町役場で建築技師として活躍する小柴さん。大学卒業後、民間企業で10年間施工管理の仕事に従事し、やりがいを感じながらも将来を見据えて公務員への転職を決意しました。民間から公務員へ、建築技師として働くリアルな日常や、転職を経て気づいた働き方の本質、そして府中町役場で働く魅力について、ご自身の経験を交えながら語っていただきました。
- 先輩の転職〜転職を意識したきっかけ
- 町の未来を支える建築技師の仕事。異動で広がる新たな世界
- 「知らなかった世界を知る喜び」と「大幅に改善されたワークライフバランス」
- 民間出身だからこそ感じたギャップと、府中町の本当の魅力
先輩の転職〜転職を意識したきっかけ
―本日はよろしくお願いいたします。まずは、これまでのご経歴について教えていただけますか。
小柴:大学を卒業してから約10年間、民間のサブコン(サブコントラクター)で施工管理の仕事をしていました。主な勤務地は広島県内で、県内を2年に1度のペースで転々としておりました。その後、令和2年5月に府中町役場に入庁し、現在に至ります。
―どのようなきっかけで転職を考え始めたのでしょうか。
小柴:仕事自体は楽しくて、自分に合っていると感じていましたが、周囲も含め残業が多かったんです。これは建設業界全体が抱える課題ではありますが、この先、自分の将来を考えた時に働き続けるのが難しいのではと考えました。
そんな中、私にとって大きな出来事がありました。社内で特に尊敬し、慕っていた先輩が、私が転職する1年前に県内の別市役所に転職されたんです。その先輩から「給料は下がったけど、それ以上の価値がある。家族との時間も取れるし、予定も立てやすい。精神的なストレスも減った」という話を聞いて。
仕事に対する価値観が似ていると感じていた先輩からの言葉だったので、すごく心に響きました。それならば自分も一度挑戦してみようか、そう思えたんです。
町の未来を支える建築技師の仕事。異動で広がる新たな世界
―入庁されてからどのようなお仕事を担当されていたのですか?
小柴:最初の5年間は建築課でした。主な業務は、町有公共施設の建築や修繕に関する調査、設計、工事監理といった営繕業務です。府中町では基本的に新しい施設を建てることはほとんどないので、既存の建物をどう改修・修繕して長く使っていくかが重要になります。具体的には、大規模修繕の設計と積算を行い、予算が確保できたら、その工事の監理を行うという流れです。この設計・積算と工事監理を毎年繰り返していく5年間でした。
―具体的には、年間どれくらいの案件を担当されるのですか?
小柴:大小合わせて、年間で6件前後の工事を担当します。係長1人と私たち一般職員2人の3人体制だったので、一人あたり3〜4件の案件を毎年担当していました。工事が始まると、監督職員として現場に立ち会い、図面通りに施工されているかを確認するため、週に1回は現場に足を運びます。ただ、業務の8割くらいは役場内での書類作成やチェック、パソコンを使った設計・積算作業が中心です。
―設計もご自身でされるのですね。
小柴:はい。専門性が非常に高いものや新築の場合は外部に委託しますが、自分たちで対応可能なものは、予算削減の観点からも自前で設計します。私が在籍していた期間で最も大きな事業は、町内5つの小中学校の屋根と外壁を大規模改修するというものでした。
工事費が数億円規模になることもありましたが、3人で調査、図面作成、積算、チェックと手分けして進めていました。前職の知識や経験を活かしながら、町の財産を守る仕事に直接関われることは、大きなやりがいでした。
―大変な点はありましたか?
小柴:府中町のような規模の自治体では、建築技師は建築・電気・機械設備のすべてを担当する必要があります。大きな自治体であれば専門ごとに担当が分かれているのですが、ここではそうはいきません。
入庁当初は分からないことばかりで、上司や先輩に質問したり、公共工事の仕様書を読み込んだりと、必死に勉強しました。業者の方は当然私を専門家だと思って話をしてきますから、対等に議論し、自信を持って「ここはこうしてください」と指示できるようになるまでには、3年くらいかかったかもしれません。建築の分野は本当に幅が広いので、今でも新しいことに出会うたびに勉強の毎日です。
―そしてこの4月からは、教育委員会に異動されたそうですね。
小柴:こちらでは、町内の小学校5校と中学校2校の施設管理者として、施設の点検や修繕計画の策定、故障箇所の修繕手配などを行っています。
それに加えて、今後の5年間で学校施設をどのように改修し、活用していくかという長期計画の策定も担当しています。例えば、老朽化したプールをどうするか。建て替えるのか、あるいは民間委託や廃止という選択肢も視野に入れるのか。
建築の専門知識を活かして、コストや工法、メリット・デメリットなどを比較検討し、上層部が判断するための専門的なデータを取りまとめるという、裏方としての重要な役割を任されています。

「知らなかった世界を知る喜び」と「大幅に改善されたワークライフバランス」
―民間でのご経験と、公務員としての現在の仕事、両方を経験されて、今どのような部分に面白さややりがいを感じていますか。
小柴:公務員になって、これまで専門外だった建築や機械設備の知識はもちろん、工事を進める上での法的な手続きやルールなど、背景まで含めて学ぶ機会がたくさんあります。その結果、自分の知識がどんどん増えていく実感を得られるのが、とても楽しいですね。
異動すれば、また全く新しい分野の法律や事務処理を覚えることになります。これを苦痛だと感じる人もいるかもしれませんが、私は「新しいことを知れた」「視野が広がったな」と前向きに捉えられるタイプなので、常に楽しみながら仕事ができています。
―ワークライフバランスについてはいかがですか。転職の大きな理由だったと思いますが。
小柴:それはもう、大幅に改善されました。残業は部署によりますが、今の部署でも月20時間前後です。カレンダー通りに休めますし、自分の仕事をきちんと管理すれば、休暇の予定も格段に立てやすくなりました。
心身ともにリフレッシュする時間が確保できるようになったのは、本当に大きいですね。
また、府中町では、男性職員でも子どもが生まれれば当たり前のように育児休業を取得しています。数ヶ月の単位で休めるのは、やはり公務員ならではの環境だと思います。自分の時間や家族との時間を大切にしたい人にとって、これ以上ない職場環境だと感じます。
民間出身だからこそ感じたギャップと、府中町の本当の魅力
―逆に入庁してから、民間との違いに驚いたことや、ギャップを感じたことはありましたか。
小柴:周囲の方が非常に優しいですね。仕事の進め方で意見がぶつかることはあっても、いざ何かを質問すれば、みんな本当に親切に教えてくれます。競争意識、といったものは無いかと思います。
とはいえ、チームで頑張ろう!という考え方でもなく個人個人で仕事をしているとは思います。少なくとも私は、内部の人間関係で抱えるストレスは圧倒的に少ないと感じています。
―最後に、これから公務員を目指す方、特に府中町役場に興味を持っている方へメッセージをお願いします。
小柴:府中町役場は、ジョブローテーションを通じて常に新しい知識に触れ、視野を広げながら成長し続けられる環境です。また、ワークライフバランスを重視し、自分の時間や家族との時間を大切にしたい人にとっては、最高の職場だと思います。
―本日はありがとうございました。
取材・文:パブリックコネクト編集部(2025年7月取材)