府中町役場健康推進課で働く栄養士の元川さんのインタビュー記事です。病院での経験を経て、地域住民の健康を支える「予防」の仕事に魅力を感じて転職。子育て世代から高齢者まで、幅広い世代の健康をサポートするやりがいについて語っていただきました。
病院から地域へ、管理栄養士としての新たな挑戦
ー自己紹介をお願いします。
元川:栄養学だけでなく、運動など健康について幅広く学べる大学へ進学し管理栄養士の資格を取得、その後はまず病院で3年4か月働きました。その後、令和6年に府中町役場に入庁し現在に至ります。
ー自治体の栄養士を目指したのはなぜですか。
元川:病院を退職後、広島に戻ってきたタイミングで、府中町で栄養士の募集があることを知りました。病院での経験を経て、長く働き続けやすい環境や、健康づくりに携われることに魅力を感じ、応募しました。
ー府中町の採用試験対策はどのように行いましたか。
元川:仕事を辞めていたので試験対策の時間はありました。1次がSPIと専門試験、2次が集団討論と面接試験だったと思います。集団討論や面接試験は不安でしたが、当日メンバーの雰囲気が柔らかく意見が言いやすかったこと、面接官の方も優しく、リラックスして受けることができました。自治体の面接は堅いイメージがあったのですが、そんなことはなかったですね。
子育て世代から高齢者まで。町民の健康を支える「予防」の栄養士業務
ー栄養士の体制を教えてください。
元川:入庁時は先輩栄養士2人と私の合わせて3人体制でした。現在は1人退職され、2人体制になっています。入庁以来、健康推進課に所属しています。
ー具体的にどのような業務から始められましたか。
元川:入庁して1年目は、母子事業に関する業務がメインでした。最初の1か月は一通り見学させていただき、2か月目から実際に担当しました。子育て支援課が担当している乳幼児栄養相談や離乳食教室など母子に関する事業に栄養士として参加し、離乳食の進め方について話をしたり、相談に応じたりしています。
また、電話相談の依頼があれば随時対応しています。これらの業務を先輩栄養士と分担して対応しています。
他にも、高齢者の方に認知症予防セミナーで認知症予防の食事に関する講演会を実施したり、健康フェスタという健康推進課主催のイベントでは、野菜計量体験を実施し野菜摂取目標量の周知をしたりしています。
病院時代は給食施設での調理や給食管理、献立作成、アレルギー対応などの業務だったので、同じ栄養士でも全く業務内容が違いますね。
特に今年度からは直近に策定された、「府中町健康づくり計画」の推進に向け、新たな事業を創出する必要があります。また、これまで新型コロナウイルス感染症の影響で、事業が縮小されていたものもあるので、今後は少しずつ実践活動を再開するべく、検討中です。
ー実際にどのような新しい事業を企画されていますか。
府中町の食育推進計画には「毎日朝食を食べる人の割合を増やす」という目標があります。朝食の重要性を伝え、実際に簡単な朝ごはんを作る調理実習などを実施したいと考えているところです。
上司も「やりたいことがあったらどんどんやってほしい」と言ってくださるので、他の市町村の取組も参考に、新しい事業を実施していきたいと思っています。
多岐にわたる相談業務と自己成長
ー府中町独自の施策などもあるのですか?
元川:「すこやか栄養相談」という、個別の栄養相談を月に1度、実施しています。健康な方が食生活のお悩みについてご相談していただけるだけでなく、府中町の医療機関と連携をしているため、糖尿病などの治療中の病気がある方でも、かかりつけの医師から指示をいただき、町で栄養相談を実施することが可能です。
ーどのように勉強されていますか。
元川:座学で本などを読んで勉強するのと、研修に参加しています。また、先輩栄養士と、相談事例の情報交換もしています。
やりがいは住民からの感謝の言葉
ー栄養士として働くやりがいや喜びを感じる瞬間はどのような時ですか。
元川:町民さんと関わることが多いので、栄養相談や、離乳食教室等を通して、「聞けて良かった」「安心した」と言ってもらえると嬉しいです。その部分でやりがいを感じます。
例えば、お子さんの偏食などで悩んでいるお母さんの相談を受けた後、私が提案したことを実践して食べてくれるようになったと感謝のお電話をかけてくださる方もいました。そのときは、非常に嬉しかったですね。
風通しの良い職場環境とチームワーク
ー職場の雰囲気について教えてください。
元川:栄養士だけでなく、保健師の方や事務職の方にも相談しやすい雰囲気です。基本的には一人一人で作業していることも多いですが、何かあったら誰にでも相談できる環境はありがたいですね。
ーワークライフバランスについてはいかがですか。
元川:栄養相談などが重なる時は残業をすることもありますが、基本的には定時で帰るようにしています。有給休暇も比較的とりやすいと感じています。
ー先輩職員が退職されて、業務量が増えたかと思いますが、調整はできていますか。
元川:3月、4月頃は大変でした。引き継ぎの時間が短く、新たな業務を調べながら行っていたため時間がかかることが多かったです。しかし、先輩栄養士が母子事業を多く持ってくださったり、他の係員の方も気にかけて栄養士業務以外の業務を引き受けてくださったり、とてもありがたかったです。
自治体栄養士を目指すあなたへ
ーどのような人に来てほしいですか。
元川:協力し合いながら進めていける人がいいですね。私は、先輩栄養士と栄養相談の情報交換を行う時間が、とても勉強になると感じています。自分だけでは気づかなかった考え方や提案方法など、勉強させていただいています。
何かあった時だけではなく、気軽に相談しあえる関係であればいいなと思います。
ー本日はありがとうございました。


取材・文:パブリックコネクト編集部(2025年8月取材)