和歌山県新宮市役所の水道事業所で電気技術職として働く南さんのインタビュー記事です。
災害をきっかけに地元への貢献を志し、公務員の道へ。人々の生活に不可欠な「水」を安定供給するため、電気の専門知識を活かして日々奮闘する南さん。
スケールの大きな仕事のやりがいや、少数精鋭ながらも温かい職場の雰囲気、そして未来の仲間へのメッセージを語っていただきました。
公務員の電気職を志したきっかけ
ーまずは自己紹介と、これまでの経歴を教えてください。
南:出身は三重県で、新宮市の隣町です。高等専門学校(高専)で電気電子工学を専攻し、卒業後に新宮市役所に入庁しました。今年で14年目になります。
ー学生時代から電気の道に進もうと決めていたのですか?
南:正直に言うと、学生時代は漠然とした気持ちでした(笑)。当時はあまり景気が良くない時代で、電気のメーカーや製造部門は比較的就職に結びつきやすい分野かなと。少し現実的な理由でしたが、それがきっかけです。
ただ、電気は家庭の電力から社会インフラまで、人々の生活にとって欠かせないものです。勉強を進めるうちに、「巡り巡って人のためになる分野だな」という思いが強くなっていきました。
ーそこから公務員、そして新宮市役所を選ばれたのはなぜでしょうか?
南:実は、元々公務員を第一志望にしていたわけではないんです。就職活動をしていた平成23年に、紀伊半島を大規模な風水害が襲い、私の地元を含む地域が甚大な被害を受けました。
その出来事を目の当たりにして、自分が生まれ育った地域のために働きたい、人々の生活を守る仕事がしたいと強く思うようになったのが、大きな転機でした。
そんな時、たまたま新宮市役所の水道事業所で電気職の募集を見つけたんです。
「自分が学んできた専門知識を活かして、人々の生活を直接支えられる。これほど大きなフィールドはないんじゃないか」と感じ、急遽方向転換して公務員の道に進むことを決意しました。

生活を支える「水道」のプロフェッショナル
ー現在の仕事内容について、具体的に教えてください。
南:私は水道事業所の電気職という専門職で採用されたため、入庁以来ずっと同じ部署で働いています。
主な業務は、上水道施設の管理です。浄水場やポンプ場、配水池といった施設に設置されている機械や電気設備の日常点検、そして設備の修繕や更新を行う工事の監理が中心となります。
また、蛇口から出る水の安全性を確保するため、定期的に水質検査を行っています。
これは専門の業者さんに外注していますが、その検査結果を確認し、品質に問題がないかをチェックするのも重要な仕事の一つです。
ー専門性が高く、責任も大きいお仕事ですね。小学生の社会科見学の対応もされると伺いました。
南:はい、それも大切な仕事の一つです。市内の小学生が「水道水がどうやって作られるのか」を学ぶために、浄水場へ見学に来てくれるんです。
その際に、「川の水が、この機械を通ってこうやって綺麗になるんだよ」と、実際の設備を見せながら説明します。見学後に子どもたちからお礼状が届くのですが、「〇〇という機械が印象的でした」といった感想を読むと、「しっかり話を聞いてくれていたんだな」と、とても嬉しい気持ちになりますね。
ー1日のスケジュールと、年間の仕事の流れを教えていただけますか?
南:1日の流れとしては、まず朝出勤したらメールをチェックし、工事業者さんからの連絡や進捗状況を確認します。
午前中は設計協議や打ち合わせ、資料作成などのデスクワークが多く、午後からは実際に現場へ出て、工事の進捗を確認したり、設備の点検を行ったりします。
年間で言うと、4月は、まず新年度予算で確保された工事を進めるため、工事入札手続きを済ませます。工事費の積算は前もって行っておき、新年度の予算を3月議会で承認いただいた後に、入札公告に掲げる工事設計書を調製します。これが4月上旬の動きになります。
入札担当課を入札を実施し、順調にいけば5月頃には工事の契約が済みますので、現場説明を行った後に準備工や現場着手に進みます。
案件によりますが、年度途中から年度末の3月にかけ、複数の現場を掛け持ちして工事監理する、というのが大まかな流れです。担当工事以外にも突発的な設備の不具合の修繕発注にも都度対応します。
年度によって担当する件数は変わりますが、平均すると年間3〜5件ほどの工事を担当しています。規模の大小はありますが、設備工事は、運用中の施設を整備することになるので、切替えや移設手順など綿密な調整が必要です。
また、整備部品の製作納期に期日を要するものがあるため、工期を長めに設定する傾向にあります。一つ一つの現場に充てる月日は長いので、件数以上に中身の濃い業務になりますね。

50年先も残る仕事。大きなやりがいと責任
ー仕事のやりがいや面白みを感じるのは、どのような時ですか?
南:私たちの職場は少数精鋭で、若いうちから責任のある大きな仕事を任せてもらえる環境です。
経験年数が浅い段階から様々な種類の工事を担当できるので、プレッシャーもありますが、その分、成長のスピードは早いと感じます。
「自分がこの大きな工事を進めているんだ!」という実感は、大きなやりがいにつながっていますね。
ー特に印象に残っているお仕事はありますか?
南:10年ほど前、私がまだ20代半ばの頃ですが、ある地域の小規模な浄水場を新しく整備するという、5年越しの大きなプロジェクトがありました。私はその事業に、用地取得の段階から関わることになったんです。
地権者の方との交渉から始まり、設計、造成工事、そして浄水場の建物を建て、機械を設置し、実際に運用を開始するまで、全ての工程に一貫して携わりました。
何もない更地の状態から、人々の生活に不可欠な水道水を送り出す施設が完成した時の達成感は、今でも忘れられません。

ー逆に、仕事で大変なことや苦労することはありますか?
南:水道施設は多くの機械や電気設備が複雑に連携して動いているので、故障の予兆を掴むのが難しい点です。突然機械が停止してしまうこともあり、その時は本当に慌てます。
水づくりを絶対に止めるわけにはいかないので、普段から代替手段を準備しておくなど、常に緊張感を持って業務にあたっています。
「いつもと音が違うな」といった小さな変化があれば、重点的に監視をしたり、点検の頻度を高めたりしていますが、予兆なく突然トラブルが発生することもあります。
そうした緊急事態に迅速かつ的確に対応するためにも、機械の特性を深く理解し、常に知識をアップデートしていくことが求められますね。
もちろん大変なことも多いですが、地域住民の暮らしを根底から支えているという大きな使命を感じますし、非常に尊い仕事だと感じています。

少数精鋭でも安心。頼れる仲間と働きやすい環境
ー職場の雰囲気や人間関係について教えてください。
南:私たちの課は、施設係と給水係の2つの係からなる技術職の集団です。基本的にはそれぞれが担当の工事を受け持ち、自分の裁量で仕事を進めていくスタイルです。
もちろん、一人で抱え込むわけではありませんので、難しい問題に直面した時は、経験豊富なベテランの先輩方が「こうしたらいいんじゃないか」と的確なアドバイスをくれます。
少数精鋭だからこそ、お互いの状況がよく見えますし、チームとしてサポートし合う文化が根付いていますね。若手でも安心して挑戦できる、とても心強い環境です。
ーワークライフバランスはいかがですか?
南:非常に取りやすいと思います。有給休暇の取得も推奨されていて、上司の方から「休みいつ取るの?」と声をかけてくれるほどです。
残業も、いわゆる「付き合い残業」のようなものは一切ありません。自分の仕事の進捗に合わせて、必要であれば残業するという形で、自分でコントロールできます。
体に不調をきたすような働き方になることはないので、プライベートの時間もしっかり確保できています。
未来の仲間へのメッセージ
ー最後に、新宮市役所の電気技術職を目指す方へメッセージをお願いします。
南:私たちが整備に携わった水道施設は、一度作られると、短くても50年、60年と、非常に長い期間にわたって使われ続けます。
自分が定年退職した後も、自分が手掛けた施設が地域の人々の生活を支え続ける。そう考えると、私たちの仕事は本当に尊いものだと感じています。
こうした長期的な視点で地域に貢献することにやりがいや関心を感じる方であれば、きっと大きな充実感を得られるはずです。
ぜひ、私たちと一緒に新宮市の未来を支える仕事をしましょう。

ー本日はありがとうございました。
取材・文:パブリックコネクト編集部(2025年8月取材)