新宮市で土木技術職として働く下岡さんのインタビュー記事です。
民間企業での経験を経て公務員に転職した下岡さんは、地元への深い愛着と使命感を胸に、日々まちづくりに奮闘されています。
そのやりがい、仕事内容、職場の雰囲気、そして子育て世代にとってのワークライフバランスについてお話を伺いました。
故郷へのUターン転職と土木への道のり
ーまず、これまでのキャリアと新宮市役所に入庁された経緯を教えてください。
下岡:私は新宮市で生まれ育ち、地元の高校を卒業後、大学は県外の名古屋に進学しました。
大学卒業後は民間の道路会社で3年間勤務しました。前職はアスファルト舗装を行う会社で、神奈川県横浜市を拠点に道路の維持管理がメインでしたね。
その後、平成27年度に新宮市役所に入庁しました。
ー土木技術職を目指したきっかけは何でしたか?
下岡:高校進学時、地元で行きたい高校がありました。そこには普通科と建設工学科があり、進路で悩んでいた時に先生から「建設工学科のほうが合っているのでは」とアドバイスをいただき、進学を決めました。
そこで授業を受けるうちに、建設の仕事に強く惹かれ、「道路を作ってみたい」という気持ちが芽生えたことが、この道に進む大きなきっかけです。
ー地元である新宮市役所への転職を決めたきっかけは何でしたか?
下岡:一番のきっかけは、結婚です。結婚を機に妻が「地元に帰りたい」と言い出したことが大きな転機となりました。
これまで業者側として請負の仕事をしてきたので、「地元に戻るなら、今度は発注者側の立場になって、まちづくりに貢献したい」と考えるようになったんです。
また、ちょうど大学卒業の頃に東日本大震災が発生し、同時期に地元でも紀伊半島大水害が起こりました。
ボランティアで甚大な被害を目の当たりにした経験から、いつか来るであろう南海トラフ地震に備え、地元のために働きたいという気持ちが心の奥にありました。
妻の言葉が、その思いを後押ししてくれた形です。

市民生活を支える土木技術職の仕事
ー現在の都市建設課での具体的な業務内容について教えてください。
下岡:都市建設課では、新宮市が管理する道路や河川の維持管理、改良工事を担当しています。設計から発注、現場管理まで一貫して携わり、台風などの自然災害で被災した道路の災害復旧事業にも力を入れています。
年間工事件数は事業としておよそ20件ほどです。4月に入札準備を進め、早いものだとゴールデンウィーク明けには工事が始まります。
業務分散を工夫していますが、上期に入札が集中し、年度末の1月~3月は完成書類や検査で最も忙しくなりますね。
現場に行く機会も多いですが、事務所での事務仕事も多いため、いかに業務時間内で効率良く終わらせるかを意識しています。必要な時に現場へ足を運び、基本は事務所で作業を進めています。

ー土木技術職として特にやりがいを感じるのはどんな時ですか?
下岡:やはり、自分が生まれ育った場所の工事に携われることですね。子どもの頃の通学路や遊び場など、思い出深い場所の工事を担当することがあります。
そんな時、「この場所がまた新しくなるんだな」と思うと、心に響く懐かしい気持ちになります。
また、私には4人の子どもがいるのですが、彼らに「この道はパパが作ったんだよ」と胸を張って言えるような、地域が大きく変わる工事に携われることも大きなやりがいです。
家族に誇れる仕事ができるのは、本当に嬉しいですね。

ー業務における大変さや、難しさを感じるのはどのような点ですか?
下岡:最も大変で難しいのは、関係機関、特に地域住民の方々との調整です。
私たち行政は「良くしていきたい」という思いで工事を進めますが、住民の方々にとっては、工事期間中は不便が生じます。
実際に生活している方々の不便さや苦しみは、住んでいる人でなければ分からない部分。そこにギャップが生まれ、一筋縄ではいかない調整も少なくありません。
時には厳しいご意見をいただくこともあります。それでも最終的にご理解とご協力をいただき、「良くなったよ、ありがとう」と言っていただけると、大きなやりがいにも繋がります。
ー住民の方とのコミュニケーションで意識していることはありますか?
下岡:住民の方に説明する際は、丁寧すぎる言葉遣いにならないよう意識しています。
新宮市には高齢の方が多いので、かしこまりすぎると相手が身構えてしまうこともあるため、「おばあちゃん、ここ工事するから、迷惑かけるけど、きっと良くなるから頼むよ!」といった親しみやすい言葉をあえて使うことが多いですね。
経験が活きる職場環境と風通しの良さ
ー前職の経験が現在の仕事に活かされていると感じることはありますか?
下岡:民間企業での「受注者側」と市役所での「発注者側」では業務内容が大きく異なりますが、土木工事に関する専門用語や業界の慣習は共通しています。
まっさらな状態で入るよりも、業者さんとの会話で「何が言いたいか」をすぐに理解できる点は、前職経験が活かされています。
提案の背景を汲み取りやすく、スムーズなやり取りが可能です。
また、実は公務員になる前は、行政が「杓子定規で融通が利かない」と感じることも多々あったんです(笑)。
しかし、実際に入庁して発注者側の立場に立ってみると、職員が単に断っているのではなく、法令のもとで市民の要望実現を懸命に検討し、協議を重ねていたことが理解できました。
民間時代には見えなかった行政の裏側の努力を知れたのは大きな学びです。
ー新宮市役所、特に都市建設課の職場の雰囲気や人間関係について教えてください。
下岡:都市建設課は、ほとんどが技術職の職員で、同じ高校の卒業生や共通の学びが多いので、職員間の会話も多く、明るい雰囲気です。
私の所属する土木係は私と係長の2人体制ですが、係長は同級生で地元も同じなので相談しやすいです。課長補佐も年齢が近く、話しやすいですね。
総じて、職場全体の風通しは非常に良いと感じています。
問題があればすぐに情報共有ができていますし、若手職員も課全体で大切に育てようという意識が強いです。今年の入庁者も、課全体で成長を見守り、サポートしています。

ワークライフバランスの実現と子育て支援
ー残業や休暇の取得状況、子育てとの両立における職場のサポート体制について教えてください。
下岡:以前は現場作業が多く事務仕事も溜まってしまい、夜9時頃まで残業することもありました。
しかし、最近は業務時間内で仕事を終わらせられるよう意識的に調整しており、今年の残業時間は、以前よりも少なくなってきています。
休暇も取りやすい環境で、私には4人の子どものうち3人が保育園児なので、急な体調不良で看護休暇を取得させてもらうことも多いです。
課全体として子育て中の職員が多く、お互いの状況を理解し協力し合えるため、休暇制度を積極的に利用する文化が根付いていますね。
もし市役所に入庁していなかったら、これほど充実したワークライフバランスと、4人の子どもを持つ生活は実現できなかったかもしれません。
子育て世代にとって非常に働きやすい職場だと感じています。
新宮市で働く土木技術職を目指す方へ
ー最後に、新宮市で土木技術職として働くことを考えている方へメッセージをお願いします。
下岡:新宮市役所は、若手職員を課全体で大切に育てようという意識が非常に高いです。皆さんの成長を積極的にサポートします。
土木技術職の仕事は、決して事務作業ばかりではありません。現場に出て、市民や様々な関係者と直接対話し、調整する機会が非常に多いです。
人と関わることが好きな方、地域のために働きたい方には、大きなやりがいを感じられるはずです。
また、ワークライフバランスを重視する方にとって、公務員は非常に良い選択肢です。
私自身も、家族との時間やプライベートを充実させることができています。役所に入った頃、平日に夕方のニュースを見た時は本当にカルチャーショックでしたね(笑)。
やりがいと働きやすさが両立できるこの新宮市役所で、ぜひ、私たちと一緒にまちづくりに貢献していきましょう!皆さんの応募をお待ちしています!

ー本日はありがとうございました。
下岡さん、本日は貴重なお話をありがとうございました。
幼い頃の通学路や遊び場が、ご自身の手で新しく生まれ変わることに喜びを感じ、子どもたちに「パパが作った道だよ」と胸を張って言えるというお話が、とても心に響きました。
東日本大震災と紀伊半島大水害の経験から、いつか来るかもしれない災害に備え、地元のために働きたいという強い想いを抱かれていたことに、新宮市への深い愛を感じます。
新宮市を支えるのは、下岡さんのような温かい想いを持った方々なのだと、改めて感じた取材でした。
取材・文:パブリックコネクト編集部(2025年9月取材)



